疑うって疲れるよね。でも、その疲れこそが『筋の良い』仕事を生み出す話
はじめに:なぜ、私たちは「疑う」ことをやめられないのか?
「それって本当に正しいの?」「もっと良い方法があるんじゃないか?」
あなたも、ふとそう考え、目の前の仕事や、チームのルールに疑問を投げかけた経験はありませんか?
その問いかけは、時に周囲との摩擦を生み、自分自身をも疲れさせます。でも、その「疑い」は、決して無駄な行為ではありません。むしろ、より良いもの、より本質的なものにたどり着くために、私たちエンジニアが持つべき最も重要な姿勢の一つです。
この記事では、健全な 「疑い」がもたらす3つの価値 と、それに伴う疲労がどう報われるのかを、一緒に考えていきたいと思います。
「健全な疑い」がもたらす3つの価値
「疑う」という行為は、一見ネガティブに聞こえるかもしれません。しかし、それはより良いアウトプットやチームを作るための、強力な武器になります。
1. 本質的な問題解決
あなたの目の前にあるバグ、タスクの遅延、ユーザーからの問い合わせ...。私たちは、ついその場限りの対処法で解決しようとしがちです。
でも、ちょっと立ち止まって「なぜこの問題は起きたんだろう?」と疑ってみてください。
その問いかけは、単なる表面的な事象ではなく、システムの設計ミスや、チーム内のコミュニケーション不足といった根本原因にたどり着くための第一歩です。健全な疑いこそが、一時しのぎのパッチではなく、再発防止につながる本質的な解決策を生み出します。
2. チームの質の向上
「Aさんのアイデア、すごく良いね!」
もちろん、チームメンバーの意見を尊重することは大切です。しかし、そこからもう一歩踏み込んで、「そのアイデア、本当に良いのかな? もっと良いアプローチはないだろうか?」と、悪意なく疑ってみる勇気も必要です。
あなたが提示した「もしかしたら…」という別の視点が、議論を深め、当初のアイデアをさらに洗練されたものにするかもしれません。互いに健全な懐疑心を持ってフィードバックし合うことで、チームとしての知が広がり、最終的なアウトプットの質は格段に上がります。
3. 個人の成長と視野の拡大:自分を疑い、過信しない
そして、最も大切な疑いが、自分自身への疑いです。
「このやり方が一番効率的だ」「この設計がベストだ」と確信したときこそ、危険なサインです。私たちは、一度成功したやり方に固執し、視野が狭くなってしまいがちです。
「本当にこれでいいのか?」「他にアプローチはないか?」と自問自答する習慣が独りよがりな判断を防ぎ、新しい可能性を見出すきっかけになります。常に自分を疑う謙虚な姿勢こそが、あなたが技術者として成長し続けるための、揺るぎない土台になるのです。
「疑う」ことの疲労と向き合う
さて、ここまで「健全な疑い」の価値を力説してきましたが、それが決して楽な行為ではないことは、あなた自身が一番よくご存知だと思います。
誰かの意見に「そうだね!」と肯定するのは、とても気持ちが良いことです。そして、自分の意見が肯定されるのは、もっと気持ちが良い。しかし、その「心地よさ」に慣れてしまうと、私たちは思考を止めてしまいます。
常に「なぜ?」と問い続けることは、とてつもないエネルギーを消費します。それはまるで、誰もが通る舗装された道ではなく、獣道を自力で切り開いていくようなものです。
この疲労の正体は、主に2つあります。
一つは、純粋な「思考の負荷」です。
「これでいい」と受け入れる方が、よほど楽です。しかし、私たちはより良い選択肢を探すために、わざわざ思考の負荷を自分自身に課しています。
もう一つは、「人との摩擦」です。
特に、チームの既存のやり方や、同僚のアイデアを疑うとき、それは小さな反発を生むかもしれません。たとえそれが建設的な意図であったとしても、相手にどう受け取られるかという不安は、私たちを消耗させます。
ですが、あなたが感じているその疲労は、正しい道を進んでいる証拠です。
その疲れは、より良いものを作るための「先行投資」であり、チームを正しい方向に導くための「羅針盤」そのものなのです。
おわりに:疑いの先に待つ「信頼」と「達成感」
「健全な疑い」は、孤独な作業ではありません。
あなたの「なぜ?」という問いかけは、チームメンバーの思考を促し、新たな議論を生み出します。そして、共に困難な問題の根本を解決できた時、その疲労は大きな達成感に変わるでしょう。
そして何より、互いの考えを悪意なく「疑い」、より良いものを追求し合ったチームには、言葉では言い表せないほどの深い信頼関係が生まれます。
疑うことは、ただ疲れるだけではない。
その先に、確かな成長、そしてチームとの揺るぎない信頼が待っている。
あなたが感じているその疲れは、正しい道を進んでいる証拠です。
明日からも、その「健全な疑い」を大切にしてください。
Discussion