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「症状から調べるデバイスの医学」というサポート担当向けツールを作って市場問い合わせ対応を効率化してみた

2024/12/04に公開

この記事は株式会社ビットキー Advent Calendar 2024 4日目の記事です。
昨日に引き続きProduct Insight所属の高石@ksk_takaが執筆します。

はじめに

  • 昨日の記事の続きです。
  • 「症状から調べるデバイスの医学(通称:デバイスの医学)」というツールを導入することでハードウェアデバイスに関しての前衛問い合わせ対応を効率化したお話です。

昨日と昨年の記事のおさらい

昨日の記事にも記載しましたが、ビットキーでは市場からの問い合わせ対応を dev_前衛 と呼ばれるSlackチャンネルに集約しています。

また、dev_前衛チャンネルに投稿された内容は、Google Spread Sheetを経由して、Notion(前衛問い合わせデータベース)に自動で連携されています。

この「問い合わせデータベース」に蓄積された情報を下に、「FIT:Failures In Time」という指標でデバイスごとの品質を可視化した、というのは昨年のアドベントカレンダーにも記載したとおりです。

FIT(Failures In Time)という指標を用いて自社デバイスの品質を可視化したお話

上記の記事では「機種ごとのFITの推移が分かるようになった」という記載に留めていますが、 実際には、「機種ごと」だけではなく、更に「個別の機種の中で起きている事象ごと」の発生傾向が捉えられる様になっています。

例えばbitlock MINIという主力のスマートロックについては、添付の様な「事象ごとの月次発生傾向」がすぐに見れる状態になっています。

この様に、「機種ごとの不具合事象の発生傾向」が掴めているので、以下の対策が打てます。

  1. 頻繁に起きている不具合事象について、抜本的な対策を打つ
  2. 頻繁に起きている不具合事象について、市場で再発してしまった場合に迅速に問い合わせ対応できるようにする

「1」については例えば以下の様な対策を実施しています。
ハードウェアデバイスの電気的な課題に対してファームウェア観点で立ち向かう話(電源電圧のドロップ対策)

で、「2」がこの記事の本題です。

「デバイスの医学」を検討するに至った背景

そもそも「何故『デバイスの医学』というツールを検討することになったのか」についてです。
主に以下の課題解決を目的としています。

「サポート担当の心理的な負荷」の除去

  • 以下の様な心配事の解消
    • 「この対応で合っているだろうか」
    • 「この内容をエンジニアに相談していいだろうか」

「サポート担当・エンジニア担当の属人性」の排除

  • 知識の属人的な偏りを極力除去し、「対応するときはここを見ればいい」という共通認識の醸成

「エンジニア担当の問い合わせ対応工数」の削減

  • 問い合わせ工数を削減し、抜本的な品質改善に向き合う工数が増えることによる以下の期待
    • 未知・未解決不具合の早期解決
    • 中長期的なデバイス品質の改善

お客様の現場で起きている課題解決の迅速化

  • 「何の事象が起きているか」「どの事象が起きたときに何をすれば良いか」を明確にすることで
    お客様から受けた問い合わせに対して迅速に・自信を持って対応できる体制の実現

デバイスの医学作成にあたり留意したこと

  • とにかく「使いやすさ」「見やすさ」を重視。
  • 曖昧な表現は極力避ける(調べて出てきた結果を見て迷うことがない様にする)
  • エンジニアが触っているデータベースは絶対に壊さない(サポート担当が安心して触って良い状態を担保)
  • 過去に蓄積してきた問い合わせ対応情報が極力活きるようにする
  • 気軽にメンテナンスできるようにGoogle Spread Sheetベースで運用

できあがったもの

サンプルを添付します。

サポート担当の作業

  • 機種名、事象、シリアル番号、ファームウェアバージョンを入力する
  • Health check実行ボタンを押下する
    • (Google App Scriptでデータコネクタというサービスを呼び出し、デバイスのログを抽出)

上記の入力に対する「デバイスの医学」のアウトプット

  • 該当機種における不具合事象を、発生率順に降順ソート
  • ファームウェアバージョンや製造lotの入力に応じて事象をフィルタリング
  • 「Health check機能」により裏側で実施された該当シリアル番号に対するログ解析の結果に応じて、結果をカスタマイズ(デバイスのログから怪しい事象が判断できる場合は赤でハイライト)
  • 加えて事象ごとの発生率や事象が発生するlot情報なども一撃で出せるように整理

デバイスの医学を利用するようになって得られた成果

上記の、実際に以下の様な効果が得られました。

  • デバイスの問い合わせ解析に掛かる工数を1/3以下に低減(もともと解析に当たるエンジニアが専属で複数人おり3人月程度消費していたが、現在は1人月以下に)
  • サポート担当の心理的負荷の低減
  • お客様問い合わせから暫定的な事象解消までのリードタイムの大幅短縮

最後に

[明日の|5日目]の株式会社ビットキー Advent Calendar 2024は、Firmwareチーム所属の@hu11911
が担当します。

Bitkey Developers

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