アリーナチャンピオンシップ5 TOP8レポート with 一般TCG理論
前置き
こんにちは。さすらいのデータエンジニアのこみぃです。
本日は久々に、データエンジニアのこみぃではなくマジック・ザ・ギャザリングのプレイヤーのKommyとして記事を書いています。
アリーナチャンピオンシップとは?
アリーナチャンピオンシップはマジック・ザ・ギャザリングのオンライン版であるMTG Arena上で毎月行われる予選を抜けた人が出られるという、現状の競技レベルのマジック・ザ・ギャザリングではMTG Arenaでは一番上のイベントです。
全世界のプレイヤーが予選に参加するにもかかわらず参加者は一回の大会で32人という、まあまあ狭き門となり、参加するだけでもまあまあ大変です。(次の次からこの形式は少し変わります)
ただ、私のように特定の月にものすごく上振れると参加できたりもしますので、プロ以外お断りですみたいな感じでもありません。
この大会で優勝もしくは準優勝すると年末にあるオフラインの最高峰の大会である世界選手権への参加権利を得られるということで、今回はものすごく準備して本戦に臨みました。
結果的に準々決勝敗退のトップ8ということで、残念ながら世界選手権はお預けとなりましたが、まあまあな結果を残すことができました。
そんなわけで、本日はこの大会を振り返り、一般生活にも使える知見に落とし込んでいきましょう。
予選ウィークエンド with 青単@スタンダード
私が予選を抜けたのは2023年10月で、フォーマットはスタンダードでした。
このときは「イクサラン 失われし洞窟」リリース直前で、ドメインランプをトップメタにして各種ミッドレンジデッキがTier2、たまにちらほらアグロみたいな状況でした。
メタの推移的にドメインランプがアグロ対策を少し増やしていて、おそらくアグロは駆逐されるだろうという予想があったので、ドメインランプとミッドレンジにはかなり強く戦える青単を選択したところ、予選のDay2で望外の6勝をおさめ、無事に突破になりました。
当時は青単はノーマークであり別に強いデッキでもなかったのですが、自分のメタ読みを信じて持ち込めたのが良かったです。
今回のレポートでは、この「自分を信じて」というフレーズがテーマになりますので、その一つの例として予選の話も書きました。
ちなみに「イクサラン 失われし洞窟」に再録された「魂の洞窟」と、新規カード「大洞窟のコウモリ」により青単はもはや息をしていません。
リリース後はしばらくはこんな感じでした。
「魂の洞窟」再録の件、嫁に話しました。
途端に泣き崩れる嫁。すまんな、もう青単は使えない。
青単で生活している人もいるんです。俺はウィザーズをゆるさない。
まあでも、一年間楽しめてアリーナチャンピオンシップにも出られたので良しとします。いままでありがとう、「傲慢なジン」。
本戦に向けての準備
さて、1月に発表された本戦のフォーマットはドラフトとエクスプローラーでした。
リリース直後の新フォーマット「タイムレス」のデバッグをさせられる憂き目からは無事に逃れましたので、頑張っていこうという感じですね。
ドラフト
ドラフトの準備期間にとにかく考えていたのは以下の2点でした。
探索的にプレイをすること
大会のドラフトは一発勝負で、トップ8進出のラインを考えると2-1以上にはしたいところでした。
少なくとも0-3はしたくないということで、周りがどんなピックをしていて自分がどんなパックを開封することになっても2-1できる必要があります。
このため、普段から特に探索的であることを心がけて練習していました。使ったことがないカードは一度は使ったり、やったことのない色を積極的に試したりといった感じです。
最終的に青白だけは最後までかなり苦手意識があったものの、その他の色についてはどんな色が来ても戦えるくらいには自信を持てていました。
8人ドラフトであることを加味すること
MTG Arenaのプレミアドラフトは違う卓でドラフトした人とのBO1という形式ですが、本戦では8人ドラフトなのでそこの違うは意識する必要があると考えていました。
例えばこのカード。みんなだいすきオランウータン。
プレミアドラフトでこのカードをメインボードに入れる人はいないと思いますし、かなり遅い順目に回ってきますが、8人ドラフトではかなり強力なカードだと考えていました。卓の中に絶対にいる青や白のデッキに劇的に効きますし、卓ドラフトではアーティファクト・クリーチャーによる2マナの水増しなどがあり腐りにくいからです。
他にもいくつか考えていたのは以下のようなことです。
- 2マナ域は取り合いになるからプレミアドラフトよりも遥かに点数を高めに取ったほうがいい。相手のデッキを弱くすることにもつながる
- 「墓石の徘徊者/Gravestone Strider」はアグロに入れても機能する堅実な2マナ域であり多色デッキのキーカードなので見たら取る
このあたりは身内での練習会に積極的に参加したものの十分な試行回数とは言えませんので、結局は自分の感覚を信じられるかという話になってくると思います。ここでも出てきましたね。「自分を信じる」
結果的には自分を信じてよかったと思う程度には事前の想定はあたっていたように思います。
エクスプローラー
エクスプローラーは直前にあったプロツアーシカゴがかなり参考にできる状況でしたので、思考はそこからスタートしました。
当初は吸血鬼とフェニックスの2強だと思っていたので、個人的にかなり思い入れのあるカードであるフェニックスを使おうと考えていました。
しかし、試せば試すほど「ドロスの魔神」が強く、もはやフェニックスは吸血鬼の敵ではないという認識になりました。天敵であるフェニックスを乗り越えた吸血鬼がいよいよ一強体制を築くだろうということで調整が進み、調整の過程でアマリアコンボに対しても良いサイドプランが見つかったことで、素直に吸血鬼を選択することになりました。
魂のデッキであるフェニックスを諦める選択、自分よりも強いであろう強豪プレイヤーとのミラーマッチを戦う覚悟を決めての吸血鬼の選択と、ここでも「自信を持って」強い選択ができたかなと思います。
ちなみに結果的には別の方のフェニックスが優勝することになるのですが、自分の選択が間違っていたとは思いません。
大会当日
ドラフト 2-1
さて、いよいよ当日のお話です。まずはドラフトからということで、1パック目を開けたときに出てきたのがこちら。
もっとこう、アイゾーニとか、なあ!!!
黒が弱いと言われている環境でこのパック。決断を保留して「衛生管理用自動機械/Sanitation Automaton」を取るか、赤白の諜報ランドを取るかなど真剣に悩みました。
しかしここでも自信を注入。「俺は黒をやれる男だ俺は黒をやれる男だ俺は黒をやれる男だ」と自分に言い聞かせて黒の除去を取りました。
結果的にできたのがこちらで、その後もレアには恵まれませんでしたが、その中で最善のピックができたと思います。
ヴァニファールやらケイヤやらを乗り越えて首尾よく2-0できたものの2勝対決では強豪Slax選手(Jesse Hampton)に敗けて2-1という結果に。
ピックはかなり最善に近いものだった自信があるものの、R3ではプレイの差でメインを取られているのでまだまだ精進が必要なようです。
エクスプローラー 4-2
エクスプローラーは開幕で苦手なクイントリウスコンボを引いて絶望するも勝利し、その後フェニックス(今大会の優勝者)を破って4-1となり、いい感じに。
最終戦で大会唯一のグルール機体にボコボコにされるものの、4-2でDay2に進めるかなりいい感じのDay1となりました。
Day2は開幕でクイントリウスコンボにボコられて後がなくなって絶望するも、その後ミラーマッチとアマリアコンボを制してトップ8を確定させました。
準々決勝敗退
さて、ここまで終始強気で自信を持ったプレイができていたのですが、準々決勝では最後の最後で弱気になってしまい、それによって敗けたかなと思います。
R3の初手に思考囲いを唱えたときに、相手が6マナに達するまでに倒そうと考えて除去を落としたのですが、これが明確に敗着でした。
事前のプランではクイントリウス戦は「手札破壊で相手のコンボパーツを落としてから後はひたすら引かれないことを祈って殴る」というプランにしていたはずでした。
ここまでは「フェニックス相手に4ターン目までは呪文貫きはケアしない」とか「アマリア相手にはコンボパーツを持たれていたら敗けだったとしても3ターン目に切り裂き魔を出す」など自分の事前の準備を信じるプレイを一貫してしていたのですが、最後の最後で弱気になって早く勝負を決めたくなってしまったという感じです。
まだまだ大舞台の経験が足りなかったのだなということで、精進が必要ですね。
ちなみにそんな敗退の瞬間がこちらです。悔しい!
反省会
さて、大会が終わったら反省会ですね。
今回はドラフトも構築も準備についてはほとんど後悔がありません。その他についてもかなり良かったんじゃないかと思います。
特に、最後以外はあらゆる選択において自身を持って強気の選択をできていたと思います。
そんな中で反省点が以下の2つです。
R6でグルール機体相手に手も足もでなかった
リストを見た瞬間に「アクロス戦争」と「毒を選べ」という明らかにアンチ吸血鬼なカードを見てメンブレしたことで最もミスをしたラウンドになったのですが、冷静に考えて別にそんな慌てる必要もなかった気がしています。
当日のアドリブ力の低さは最近感じますので、継続的な課題になりそうです。
生活リズム調整をやりすぎた
今回は1週間前から生活リズムをPDTに合わせるべく23時に起きて15時に寝る生活をしていて、それによりお仕事に非常に支障が出ました。
冷静に考えるとここまではやらなくてよかった気がしますので、次回以降はもうちょっとゆるくやろうと思っています。
ちなみに当日は体調を崩していたわけではありません。配信で映ったときに貼っていた冷えピタについて知り合いから心配されたのですが、あれは体調が悪いからではなくて興奮による体温の上昇を抑えるためです。
プレッシャーの掛かる大会だと人間は興奮で体温が上昇します。私の場合はプレイ中の体温が37.5℃くらいになります。
この状態だと定常時の思考よりも精度が鈍るのがわかってるので、特にプレッシャーのかかる大会中は冷えピタを常備していたりします。オンラインだとこのあたりがやりやすくて良いですね。
汎用的な知見への転換(一般TCG理論)
さて、この記事は一般TCG理論の記事なので、今回大会で得た知見を一般生活に応用していきましょう。
準備では探索的なアプローチをしよう
大会に向けての準備をしている期間では、準備段階での選択はその瞬間の勝率を最大化するためではなく本番での勝率を最大化するためにあります。
ですから、それまでの一定の成功体験を忘れて探索的な選択をすることが重要です。多分100点であろう選択肢が明確に目の前にある状態であっても、別の選択肢を選ぶこと自体に意味があります。
一般的な言葉でいうと「引き出しを広げる」ということでしょうか。今回はとにかくそれを意識して練習をしていて、それがうまくいきました。
事前に立てたプランを遂行することは大切
たまにそうじゃない人もいるという意見は認めるのですが、多くの人は本番では練習以上のものは出ません。私の場合は大体そうなので、そういうものだと考えています。
ですので、練習段階で立てたプランが少なくともその時点の自分にとっては最善のプレイになります。当日なにか別の考えが頭をよぎったとしても、事前に立てたプランを遂行するのが良いことがほとんどです。
もし事前に立てたプランよりも良いプランが当日見つかったなら、それは何かを見落としているか、純粋に準備が足りていないかどちらかであることが多いです。
逆に言うとそのくらい自信を持って選択できるように、ちゃんと準備して本番に臨みましょうというお話ですね。
自信は努力から、努力は勇気から、勇気は?
さて、ここから先がこの文章で本当に伝えたいことです。
今回の記事には「自身を持つ」という言葉がたびたび出てきます。しかし、どうやったら自信を持つことができるでしょう。
受験生だったことがある方なら、湯島天神の鉛筆に書いてある有名な言葉が思い浮かぶかもしれません。
自信は努力から
これは概ね正しくて、自信を持って本番に臨むには努力をしなくてはなりません。
でも、どうすれば努力を始められるでしょうか?多くの人が本当に知りたいのはそこじゃないかなと思います。
個人的には努力は勇気から来ると思っています。努力を始めるためには「自分は努力をすれば成果を出せる人間なんだ」と思える必要があり、要するに勇気が必要です。
そして、勇気は過去の成功体験から来るものです。つまり、成果を出すためには自信を持って望む必要があり、自身を持つためには努力する必要があり、努力をするには勇気が必要であり、勇気を持つには過去の成功体験が必要です。
困りました。ループしてしまっていますね。どこかからループを始めなくてはいけませんが、どこから始めるにも大変です。
のび太くんの有名なセリフである「もうちょっとうまくなってから練習するよ」は実はよくある現象で、私自身そうだった時期が非常に長かったです。
ここで大切なのは、成功体験はマジックからだけ積む必要はないということです。要するに「自分はできるやつなんだ」と思えればいいので、マジック以外のどこかで成功体験を積むのは非常に良い方法です。
筋トレをしよう
この成功体験を積むためにおすすめしたいのが筋トレです。
筋トレは純度100%の科学ですので、正しいやり方でやれば必ず成果が出ます。やり方がわからない人もご安心ください。今はパーソナルジムというものがあり、教えてもらえます。3ヶ月も通えば基礎的なやり方はすべて身につきます。
ウエイトの重量など、明確で数値で測れる成果の他に、引き締まった肉体という報酬も得られます。これがまさしく成功体験になります。
この自信は不思議なもので、何をするにも使えます。ただ筋トレをしただけのはずなのですが、何故かマジック・ザ・ギャザリングでも使えます。お仕事でも使えます。
無限に湧きでる確かな自信。キュアマッスル。
もしあなたがなんとなくマジックを続けて競技レベルの大会に出ているけどイマイチ勝ちきれず、でも勝ちたいとは思っている人であれば。そんなあなたにそっとお伝えしたい。
カードショップで「黙示録、シェオルドレット」を手に取るのではなく、今はそれらはそっとストレージに戻して、ジムでダンベルを手に取りましょう。
本日の結論
そういうわけで、察しの良い方は私がこのレポートで本当に伝えたかったことが何なのかわかってるはずです。一緒にいきましょう。
筋トレをしよう
謝辞
さて、最後になりましたが、謝辞など。
3月中はかなりお仕事がガタガタでご迷惑おかけしたGENDAデータチームの皆様。ご迷惑おかけしました&ありがとうございました。4月からは真面目に働きます。
一緒に調整してくださった明星Hiveの皆様。ありがとうございました。おかげでいい感じの成績を残せました。
そして、応援してくださった皆様、特にミラー配信で私の名前を連呼してくださったブルナーさん。ありがとうございました。
しばらくは私生活が慌ただしいのですが、またプロレベルの大会に出られるように精進したいと思います。
結びの言葉
そういうわけで、たまにはエンジニア以外の記事もということで。
ゲーマーの皆様にもゲーマーじゃない皆様にも、なにかの参考になりましたら幸いです。筋トレはいいぞ。
最後に一つ宣伝を。
GENDAデータチームではプロダクトのデータ解析や機械学習プロジェクトを推進できるデータサイエンティストを募集しています。
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また、データサイエンティスト以外でも、なんならデータ系以外の方でも、優秀な方を常に求めています。GENDAという会社に興味があれば、是非お声おかけください。
本日はこのあたりで。
それじゃあ、バイバイ!
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