📄

第5回全国医療AIコンテストを開催しました

2023/07/29に公開

全国医療AIコンテストとは

https://zenn.dev/tpt_ochanomizu/articles/dad722d9410f0a
2019年から始まって第5回となった医療AIの講演会とコンペティションが一体となったイベントです。医療AIに興味のある学生・医師・社会人が集まって、AIを応用した医療・介護・ヘルスケアの最先端についての講演会と医療データ解析コンペティションを行います。
第5回となる今回は、神戸大学医学部の団体が主催を担当させていただきました。
主催:神戸大学システム医学研究会 (KSMC)

また本イベントは以下の団体・企業様のご支援のもと開催されました。この場をお借りしてお礼申し上げます。
共催(敬称略):大阪大学AI & Machine learning Society/AI Medical Society (AIMS)、大阪大学医学部情報医科学研究会 (Python会)、大阪公立大学医療×IT研究会 (OCUMIT)、一般社団法人臨床医工情報学コンソーシアム関西
協賛(敬称略):BIPROGY株式会社
特別協力(敬称略):ナレッジキャピタル

講演

今回は6名の先生方にご講演いただきました。各講演について部員が作成したレポートを掲載します。

「メディカロイドがDXを通して目指す未来の医療」

講演者:田村 悦之 (株式会社メディカロイド, シスメックス株式会社) , 中平 増尚(Medicaroid, Inc. President)
株式会社メディカロイドの田村悦之様およびMedicaroid, Inc.の中平増尚様より、手術の進化に伴い、手術支援ロボットを主体とする先進的な治療技術の数々が紹介されました。手術映像から鉗子やカメラの動きを分析し、執刀医のSkillを評価することで、手術の質を向上させることができます。また、これまでFDA MAUDEデータのEvent Textが膨大であり、状況の記載方法に整合性がないことがデータ解析の難点でしたが、AIによるSkill評価がここでも役立つことが新たな発見でした。技術の進歩に伴い、デバイスから収集されたデータの権利者が明確でないという課題や、執刀医がAIによるSkill評価の結果を受け入れるといった個人の考え方の変革が必要ということが示唆に富む内容でした。

「医学生のための医療AI」

講演者:西森 誠 (神戸大学大学院医学研究科 分子疫学分野 助教)
先生ご自身の経験を交えながらプログラミング未経験者からAI研究者になる道程を噛み砕いてご紹介くださりました。ITの基礎知識と機械学習・深層学習の知識を網羅的に学ぶ方法やAIモデルの開発において効率向上の為のポイントを具体的にお教えいただきました。更に発展編として、マルチモーダルな情報を使用した医療AI開発における注意点もご紹介いただきました。医療データセットが小さいことが多いため、特別な工夫が必要です。例えば、AugMixを利用して通常のAugmentationで起きる現実離れした画像が得られる問題を回避することや、SimCLRを使用してラベルのない画像について事前学習を行うコツが新しい発見でした。臨床的意義を理解した医療従事者自身がAIを作るというストーリーは、AIをやってみたいと考えている医学生や医師にとってロールモデルにもなりうる大変興味深い内容でした。

「NVIDIAが開発した自然言語処理フレームワークと大規模臨床言語モデルの紹介」

講演者:Colleen Ruan (NVIDIA合同会社)
①今回は自然言語処理のテーマでNVIDIAの取り組みやソフトウェアについて説明して頂きました。NVIDIA NeMo Megatronなどのソフトウェアが今後の自然言語処理に大きな影響をもたらすことが期待されます。ChatGPTのようなLLMが世間を賑わせていることもあって、深い内容の質問も飛び交い特に活発に質疑応答が行われました。
②NVIDIAの自然言語処理フレームワークについての解説と、実際の事例等について講演をいただきました。分子やタンパク質のモデリングを生成するモデルについての紹介があり、興味深かったです。MEGATRONについてはモデルを分割して計算を計算資源をどのように有効利用するかについて等フレームワークの詳細についての説明があり、理解しやすかったです。今後は大規模なモデルがより主流になっていくと考えられるため、このような仕組みを活用することの重要性がより高まっていくのではないかと思いました。

「AillisとKaggleと私:または如何にKaggleの知見を業務と研究に活かすか」

講演者:吉原 浩之 (Aillis株式会社, 東京大学大学院薬学系研究科 医薬政策学)
①kaggleについての説明からkaggleの問題点を提示した上でkaggleがどのような形で研究に役立つかをわかりやすく説明していただきました。精度を上げること自体ではなく、実験を繰り返すことに意味があるということで確かに研究にも役立つような力が身につくということについて納得できました。実際の応用例としてインフル診断AIでkaggleで得た知見を応用した事例についても説明していただき、具体的にそれがどのような形で実用に転換されているかについてもイメージをしやすかったです。kaggleの楽しさ、実用性の高さが伝わってきた講演でした。
②企業と大学そしてkaggleの3つに精通されているからこそできるお話も多分に盛り込まれていて、Kaggleに対する批判についても言及して頂きました。Kaggleは研究やビジネスと対立するようなものではなく、むしろこれらと共存して高めあえるコンテンツであると実感できました。金メダルをとるコツについては「気合と根性」というお話もあり、今後のモチベーションにもつながりました。

「Kaggleから学ぶドメイン知識を活かしたデータ分析手法」

講演者:石 圭一郎 (株式会社Rist)
①ドメイン知識はデータ分析において、その課題の背景についての知識になります。特に医療系のコンテストについては、ドメイン知識が専門的になりがちです。ドメイン知識によって前処理やモデル構築における発想に大きく影響を受けることやそれにより精度も左右されることがよくあるそうです。これはコンテストに関わらず、実際のビジネスにおけるヒアリングの重要性にもつながります。具体的な事例についても踏み込んで解説され、とても勉強になりました。
②ドメイン知識の重要性について説明していただき、実際にセグメンテーションの課題などでどのようにドメイン知識を役立てたかについて解説もしていただきました。医学部では機械学習については講義ではあまり学ぶことができませんが、医学に関するドメイン知識は深く学ぶことができ、医学部の学生が機械学習に取り組むうえでもドメイン知識をいかした上で取り組むということは社会的、学問的意義のある成果を出すためには重要なことだと思います。なので医学生には重要な考え方を学ぶことができたと思います。さらにどのようにデータ分析を進めていくかについても具体的な事例を交えて解説いただき、大変勉強になる講演でした。

「医療データを用いたAIコンテストの課題とルール説明」

講演者:秋山 理 (近畿中央病院, Kaggle Master)
今回はNLPをテーマとしてコンテストが行われました。監修は毎度おなじみ秋山先生です。
COVID-19のパンデミック以降、発表される論文数が爆発的に増加しているそうで、論文の内容を自動で判定するAIの需要は高まっています。今回は医学論文のタイトル、アブストラクト、雑誌名、発表年の情報からその論文が免疫学に関するものかどうかを判定するコンペです。
https://www.kaggle.com/competitions/ai-medical-contest-2023

コンテスト結果

結果は以下になりました。
一位:YYama 様
二位:colum2131 様
三位:Dynastes Hercules 様

https://twitter.com/YYama0/status/1638045084481642499

https://twitter.com/colum2131/status/1638013424696446982

イベント運営の反省点

もう少し広報に力を入れることが出来たと思われます。今回の広報は開催の約二ヶ月前に日程を公開し、Twitterを中心とした周知を行いました。もう少し余裕を持って日程を公開して様々な方法でイベントの魅力をしっかりと発信していれば、もっと多くの方に参加して頂けたかもしれません。
また本来は学会との共催や対面も含めたハイブリッド開催も視野に入れていましたが、運営としての力が及ばず実現には至りませんでした。

最後に

運営メンバーの皆様、AIMS顧問の新岡先生、登壇者の皆様、共催・協賛・特別協力の団体・企業の皆様のおかげで無事イベントを終えることができました。我々に貴重な機会を下さったこと、開催に様々な形で協力してくださったこと本当にありがとうございました。そして、これに続いて他の医療AI関連団体が次の全国医療AIコンテストを主催してくれることを期待しています。

Discussion