Encraft #21 「QAキャリアこれから会議──AI時代をどう生きる?」開催レポート
株式会社ナレッジワークのQAエンジニア かとあず です。
AI時代にQAエンジニアとしてどう生きるかをテーマに、現場のリアルな議論と運営側の視点をまとめた開催レポートです。
本記事では2025年12月9日(火)に開催した勉強会 QAキャリアこれから会議──AI時代をどう生きる? の開催レポートをお届けします。
本イベントは、AIの進化や開発プロセスの変化を背景に、QA(Quality Assurance)というロールやキャリアがこれからどう変わっていくのかを、現場のリアルな視点で語り合うことを目的としたものです。
当日はQAを中心に、開発やマネジメントなどさまざまなバックグラウンドを持つ方々にご参加いただきました。
Encraftとは?
Encraft(エンクラフト)は株式会社ナレッジワークが提供する、"Enablement" と "Craftsmanship" をテーマにした勉強会です。
技術にこだわりを持つ人々が集まって互いに知見を交換し、できることを増やしていく場を提供します。
イベント概要
- イベント名:QAキャリア これから会議──AI時代をどう生きる?
- 形式:パネルディスカッション
- 主催:株式会社ナレッジワーク
- 登壇者:
- パネリスト:
- 松谷 峰生(株式会社MIXI)
- 青海 貴大(株式会社令和トラベル)
- 上原 晃義(株式会社ナレッジワーク)
- 総合司会・モデレーター:
- 家登 あずさ(かとあず)(株式会社ナレッジワーク)
- パネリスト:

パネリストとモデレーター 左から 上原、青海さん、松谷さん、家登
現場のQAリーダーたちが、AI導入や自動化の実践、キャリアの選び方、そしてこれからのQAに求められるスキルやマインドについてディスカッションしました。
QAエンジニアとしてキャリアの方向性に悩んでいる方、AI時代のQAの役割を改めて考えたい方、他社の取り組みや現場のリアルを知りたい方に、新しい視点と行動のヒントを持ち帰っていただける内容をお届けすることを目的に開催したイベントです。
パネルディスカッションのテーマ
パネルディスカッションでは、以下の3つをメインテーマとして議論を行いました。
- このままのやり方で通用する?変わりゆくQAの現実
- どう生き残る?スキルとキャリアの現実解
- どう動き出す?明日から変えられる一歩を見つけよう
この3つのテーマは、「現実を知る」「選択肢を知る」「行動に移す」という流れで、QAエンジニアとしてこれからを考えるためのステップを意識したテーマ構成としました。
あらかじめ用意した問いに加え、当日その場で寄せられた質問も取り上げながら、双方向のディスカッションを大切にしました。

会場の様子
印象に残った議論・発言
QAが直面している現実
AIの活用によって開発スピードが向上する一方で、 「QAがボトルネックになりつつある」という現場のリアルな声が共有されました。
これまでのようにテストを実施するだけでなく、仕組みづくりまで踏み込むことが、これからのQAには求められている、という点が印象的でした。
QAの仕事は奪われるのか?
AIの発展や、開発者がQA的な活動に関わるケースが増える中で、 「QAの仕事が奪われつつあるのではないか」という率直な問題提起もありました。
一方で、
- CS(カスタマーサポート)との協業
- 仕様検討段階でのバグ潰し
- 他領域への影響力の拡張
といった形で、QAが価値を発揮できる領域はむしろ広がっている、という意見もあり、立場や経験による視点の違いが見える議論となりました。

好奇心を持ってAIに触れ、ポジションを取っていくとお話しする、ナレッジワーク上原
キャリアとしてのQAをどう考えるか
キャリアの話題では、
- QA/テスト一本に特化し続けることのリスク
- 自動テスト導入への関与
- PM、企画、開発など、別ロールへのチャレンジ
といった話が挙がりました。
QAを軸にしつつも、複数のスキルや経験を掛け合わせてキャリアを築いていくことが、AI時代において重要である、というメッセージが共有されました。

リスクを回避するために別方向に手を伸ばしていくことを推奨するとお話しする、MIXI松谷さん
AIは銀の弾丸ではない
「AIを使うだけで品質が良くなるわけではない」という点も、パネリスト間で共通した認識でした。
- AIはあくまでツールのひとつであること
- 他のツールとどう組み合わせるか
- 業務をAIに合わせてどう再設計するか
これらを判断するための知識や経験こそが、品質向上には不可欠だという話が印象に残っています。

「全部試す」「身近な悩み相談から使う」トライ&エラーを繰り返しているとお話しする、令和トラベル青海さん
参加者からの質問
当日は多くの質問をいただきました。特に印象に残ったのは、「AIを使ったチャレンジの中で、どのような失敗談があったのか」という問いでした。
成功事例だけでなく、失敗や試行錯誤を共有することの重要性を、参加者・パネラー双方で再認識する場面でもありました。
イベントの様子(YouTube)
イベントの様子はYouTubeでも公開しています。本記事では議論の要点や運営側の視点を中心にまとめていますが、実際のやり取りや会場の空気感が気になる方は、ぜひ動画もあわせてご覧ください。
運営の裏側
Encraftは約1年ぶりの開催となりました。ナレッジワークとしても、新しいメンバーが多く、今回がはじめてEncraftの運営に関わるという人が大半でした。
また、Encraftとしては初めて利用する会場だったこともあり、音響設定などで少し手間取る場面もありました。
それでも、役割に関係なく周囲を見て声をかけ合い、足りないところを自然にフォローする動きが随所に見られました。表に立つ登壇者や司会だけでなく、準備や当日の細かな対応を担う裏方の存在があってこそ、この場が成り立っていることを改めて感じました。
新しいメンバーを受け入れながらチームとしてイベントをつくっていく。今回イベントに関わった全員がイネーブルメントの体験をすることができました。社外の方にも、こうした空気感が少しでも伝わっていたら嬉しいです。

音響配信チームの働きの様子
また、今回のイベントでは、会場で参加いただいた方に向けて簡単なアンケートも実施しました。
この取り組みは、これまでカンファレンスのスポンサーブースで実施していた参加型ブース企画をEncraftでも実施したいと考えて取り入れたものです。
イベントに現地参加してくださった方が、待ち時間も含めて楽しめる体験になるように、という意図で用意しました。
「どんな時にAIを使っていますか?」「AIであなたの仕事はどう変わりましたか?」といった問いに、付箋で自由に書いてもらう形式にしたことで、参加者それぞれの試行錯誤や温度感が自然と可視化される場になりました。
登壇内容を一方的に聞くだけでなく、参加者自身が考え、言葉にし、他の人の視点にも触れられる時間になったと感じています。

会場アンケートの付箋
モデレーターとしてのふりかえり
筆者は今回、Encraftの運営初参加かつモデレーターという立場で、拙い進行だった部分も多くありました。しかし、パネラーの皆さんに支えられ、非常に学びの多い時間となりました。
特に難しかったのは、はじめてお会いする松谷さん、青海さんそれぞれの強みやスタンスを、その場に参加しているみなさんにどう伝えるかを意識しながら進行することでした。
また、当日は想像以上に参加されたみなさんからたくさんの質問をいただき、その中からどの質問を、どのパネリストにお答えいただくと一番価値のある時間になるかを、限られた時間の中で判断することにも悩みました。
それでも、パネリストの皆さんが問いに真摯に向き合い、言葉を紡いでくださったおかげで、会場全体で考えを深める時間をつくることができたと感じています。
「失敗を恐れず、また明日からいろいろなことにチャレンジしてみよう」
そんな前向きな気持ちでイベントを終えられたことが、何よりの収穫です。
運営として大切にしている取り組み
Triple-WIN アンケート
Encraftでは、参加者のアンケート回答に連動してナレッジワーク社がOSSプロジェクトに寄付をする試みを行っています。
参加者の1回答あたり8ドルをナレッジワークがOSSに寄付することで、参加者・OSSプロジェクト・ナレッジワークの三者をつなぐ仕組みです。
今回は27名がアンケートに回答してくださり、216ドルをopen collective経由でtypescript-eslintプロジェクトに寄付いたしました。
ご回答いただいたみなさま、ありがとうございました!
おわりに
ご参加いただいたみなさま、パネラーのみなさま、本当にありがとうございました。
QAエンジニアとしてこのままでいいのか悩んでいる方や、AI時代のキャリアに不安を感じている方にとって、本記事が何か一つでも考えるきっかけになれば幸いです。
Encraftでは、ロールや職種ごとに異なる視点から、これからの開発や品質について考える場を継続的につくっています。
次回は2025年12月23日(火)に「Encraft #22 AIプロダクトを支えるアーキテクチャ設計 ー理論と実践」というタイトルで開催予定です。
「AIプロダクト/AIエージェント開発を支えるアーキテクチャ」を4つの視点から深掘りする特集回として開催します。
理論 × 実践、思想 × 運用、バックエンド × MLOpsといった多様な角度から、現場で蓄積されたリアルなナレッジを共有します。
次回開催の詳細・お申し込みはこちら(connpass):
感想やコメントをハッシュタグ「#encraft」でポストしていただけたら嬉しいです。
それでは、また次のEncraftでお会いしましょう。
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