有限と微小の時間
挫折させないHoudiniドリルという書籍を執筆しました。
本記事は前編であるわかりやすさと正しさについての後編にあたります。ご興味がある方は前編からご覧ください。
さて、お約束どおり下記本書の特徴である2についてお話をします。
- 概念の解説項目(いわゆる座学の部分に相当する箇所)では多くのたとえを用い、イメージを想起しやすい説明を心がけました。
- 訓練の項目(いわゆるドリルに相当する箇所)ではひとつの課題に対し複数のアプローチを紹介し、時にはあえて悪い実装も紹介しつつカイゼンフローの体験を柱としました。
そしてそれらを踏まえ「学び」についての私の考え方を添えさせていただきます。この文章はいわゆるポエムですが、筆者の考え方に共感できる方は書籍にも得ることが多いかと思います。ご購入の参考にされてください。
第3章 考える(考え続ける)訓練編
CEDECの先行販売で本書を手に取っていただいた方は、本書の大部分が概念やデータの扱い方などの基礎の解説にページを割いていることをご確認いただいたことかと思います。筆者はHoudiniをうまく扱うために最も重要なポイントは基礎力だと思っていますので、手に変え品を変え様々な視点で丁寧な解説を心がけました。
そしてそれらの知識を総動員するのが第3章であり、ここがカイゼンフローを体験する章という扱いになっています。今まで訓練してきたHoudini筋とも言える基礎力を組み合わせて問題を解決していくパートです。
一般的な書籍ではわざわざ問題のある実装などは紹介せず、エレガントで気の利いた解法を詰め込んでいくことでしょう。もちろんその手法も否定はしません。
しかし、私は本書を通して読者の皆さんにHoudiniのプロになる足がかりになってほしいという思いが強くありました。それを実現するにはどのような構成にすればいいでしょうか。
それはプロの制作手順を追体験していただく。それに尽きる。そう思いました。
本書でも触れていますが、プロの現場でもまずは最もコアとなるオーダーを形にし、そこから拡張性の追加および最適化や問題のある箇所に対処していくとうフローをとることは日常的です。
この体験を通して、危険な匂いのするネットワークや筋の悪い設計・実装への感覚を養っていただき、自分自身が作成したネットワークに対して客観的なジャッジができる、そんなHoudinistになっていただければ幸いです。
この手法にご高評をいただけたならば何かしらの形で続編をご用意できるかもしれません。
学びと私たちのリソースついて
学びというのは自身で壁にぶつかって、試行錯誤した経験が最も血肉になるという意見には反対しません。そして私自身もWebデザイナ出身でかつHoudiniは独学というハードな学習を経験してきており、その過程で得た知見や苦しみに価値を見出しているのも事実です。
よりよい手法を先回りして教えて回るような本書の構成は、皆さんから学びの機会を奪うことになるはしないか、迷わなかったといえば嘘になります。
しかし、私たちの時間は有限なリソースです。社会人であれば日々の業務があり、学生であれば他のカリキュラムもあるでしょう。そしてそれ以上に私たちはそれぞれの人生を歩む一人ひとりであり、技術以外に向き合う時間も大切にすべきでしょう。
また、大きな疑問があなたの前に立ちふさがったとき、良き先達が周りにいるとも限りません。独学でこの険しい道に挑む皆さんを支える存在が必要であると思っています。
苦しみは再生産されるべきではありません。私が苦しんだ分、皆さんはポンとそのハードルを乗り越え、より本質的で充実した課題に取り組むべきです。そのために本書を執筆しました。
「挫折させないHoudiniドリル」を読了した皆さんはすでに自由を手に入れているはずです。あとはご自身が興味を持たれる表現や課題に大いに取り組んでください。
皆さんがご自分の力で歩むことができるようになるまで共にある、そんな書籍でありたいと願っています。
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