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「経営する」って結局どういうこと?

2024/12/05に公開

はじめに

私は役員としての役割を担い始めてまだ日が浅いですが、その短い間に、現場の視点と経営の視点の狭間で多くの学びを得ることができました。

「経営する」とは、一見すると壮大で抽象的なテーマに思えるかもしれません。しかし、役員として現場に近い立場で試行錯誤する中で、伊丹敬之氏の著作における経営の本質は、私自身が腹落ちしたのでそれをもとにお話しできればと思います。

経営の4つの本質

1. 未来への設計図を描く


経営することの第一ステップは、組織としての活動の設計図を描くことです。経営者やリーダーは、この設計図に基づき、組織全体が一丸となって進むための羅針盤を提供しなければなりません。

この設計図が、単なる計画に留まらず、組織のメンバー一人ひとりの行動を導く指針となることで、初めてその価値を発揮します。そして、メンバーの行動が生産的であり、成果を上げるためには、明確で具体的なビジョンと戦略が不可欠です。

私自身、長期的なビジョンを示す際には、全体像を描く難しさを痛感します。しかし、組織の中でその設計図を共有し、メンバーがそれに基づいて行動する姿を見たとき、設計図が単なる計画ではなく、組織の未来を形作る基盤であることを実感します。

この「未来への設計図」は、メンバーが方向を見失わず、また個々の力を結集するための重要な鍵だと感じています。

2. 他人を通して事をなす仕組みをつくる


経営者やリーダーが全てを自分で行うことは現実的ではありません。そのため、他人を通して事をなす仕組みをつくることが重要です。

ここで鍵となるのは、組織のメンバーが自発的に行動し、組織として望ましい成果を上げるための仕掛けや働きかけをリーダーがきちんと考えることです。メンバーは個々に感情や利害を持ち、持っている情報にも差があるかもしれません。それゆえ、彼らがどのように動けば組織の目標に近づくのかを考え、それを促すための環境や仕組みを整える必要があります。

私自身、初めはメンバー個々のモチベーションや感情を理解することに苦労しました。しかし、議論や対話を重ねる中で、メンバーが抱える悩みや目標に気づき、それに応じたサポートや働きかけの必要性を感じるようになりました。

具体的には、目標設定を組織全体で共有し、各メンバーの役割が目標達成にどう貢献するのかを明確にすること。また、メンバーが主体的に考え行動できる環境を整えることです。こうした仕組みが整えば、組織全体の力を引き出し、成果を上げることが可能になると、理想論ですが考えています。

3. 想定外の事態への対処行動をとる


経営において、計画通りに物事が進むことはむしろ稀です。どれだけ仕組みや環境を整備しても、想定外の事態が必ず発生します。そして、それにどう対応するかが、組織の成功を左右します。

現場の行動を事前に細かく決めることも大切ですが、想定外の出来事が起きたとき、それに固執し続けるのは不適切な場合がほとんどです。むしろ、そうした事態に応じた修正行動を取ることが常に求められます。この柔軟性こそが、変化の激しい環境で組織が生き残り、成長し続けるために欠かせない要素です。

計画はあくまで「方向性を示すもの」と捉え、状況に応じた柔軟な行動を取ることを心掛けています。

これを実現するために、リーダーとして重要だと感じたのは次の2点です:

  1. 想定外のリスクを見越したシナリオプランニングを行うこと。
  2. メンバーが柔軟に対応できるよう、適切な判断をサポートする環境を整えること。

こうした修正行動が組織全体に浸透することで、どのような困難な状況においても、一丸となって乗り越える力を発揮できるのかもしれません。

4. 必要な決断を下す


これまで述べた「未来への設計図を描く」「他人を通して事をなす仕組みをつくる」「想定外の事態への対処行動をとる」の3つのステップ。そのいずれにも、通奏低音のように流れているのが、「決断する」ということの重要性です。

経営において、決断とは単なる選択ではありません。それは組織の未来を左右する責任ある行動であり、適切なタイミングでの決断が求められます。特に、不確実な状況下での決断は、経営者やリーダーにとって最も大きな試練の一つです。

たとえば、未来のビジョンを描く際には、「どの方向に進むのか」という決断が必要です。また、他人を通して事をなす仕組みを構築する際には、「どのリソースに投資し、どの仕組みを優先するのか」という判断を伴います。さらに、想定外の事態に対応する際には、状況に応じて計画を変更する決断が不可欠です。

決断の質を高めるには十分な情報を基に、冷静かつ迅速に判断する、といったことが必要なのかもしれません。ただ、個人的には決断の責任を受け入れ、その結果を組織とともに背負う覚悟を持つことの方が大事なのかなとも感じています。

「決断する」という行為は、経営者としてのすべての行動を支える根幹です。これを意識することで、組織全体に確信を持たせ、前に進む力を引き出すことができるはずです。

まとめ


「経営する」とは何か。その本質は、次の4つです。

  1. 未来への設計図を描く:組織のビジョンや方向性を明確に示し、羅針盤として機能させる。
  2. 他人を通して事をなす仕組みをつくる:メンバーが自発的に動ける環境を整え、組織全体の力を引き出す。
  3. 想定外の事態への対処行動をとる:計画に固執せず、柔軟に対応し、適切に修正を行う。
  4. 必要な決断を下す:すべての行動を支える「決断」の力を磨き、タイミングを逃さず実行する。

これらの要素は、単独ではなく、互いに補完し合いながら組織の成功を支えます。そして、これらの中で常に流れている「決断」という通奏低音は、経営者やリーダーが組織を前進させるための推進力となります。

この記事が、これから経営に挑戦しようとしている方や、現在経営に携わる方々にとって、考えを深めるきっかけとなれば幸いです。経営は難しい旅路ですが、その中で得られる学びや成果は、組織とともに成長する喜びに直結します。

参考書籍

https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/23/04/11/00766/

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