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特異点はタイムスケールの問題

2024/01/17に公開

https://zenn.dev/ken_okabe/articles/2024-01-12-singularity

という、翻訳記事をUPした。

ポイントは、

  • 科学技術における特異点(Singularity)という概念は、数学や物理学の特異点とは異なる

  • 特異点を示すための指数関数というのは自己相似のグラフなので、任意の点をズームして拡大しても指数関数になっているし、逆にズームアウトしても指数関数になっているので、どこでも常に特異点になってしまう

  • 著者(Kevin Kelly)は、従って技術的特異点というのは無意味だという主張をしている

特異点は常に近く、常に今ここにあり、常に過去にあります。言い換えれば、それは無意味です。

実は自分は、前からこの指数関数と技術的特異点について記事を書こうとしていて、【指数関数 自己相似】などのキーワード検索してリサーチしていたところ、この記事の翻訳がヒットした。


この 指数関数というグラフは自己相似であり、任意のズームの尺度によって、どこでも特異点に見える 、というのは、まったくそのとおりなのだが、 それぞれの尺度に応じたタイムフレームで、そのそれぞれの特異点に見えるものの意味が変わってくる 、ので無意味というわけではない、と論じるのがこの記事の要旨です。


これが顕著なのが地球カレンダー

地球カレンダー (ちきゅうカレンダー)は、約46億年におよぶ地球の歴史を1年に見立て、人間の時間スケールに馴染みの深いカレンダーになぞらえたもの[1][2]。地球史カレンダーや進化カレンダー[3]、地球進化史カレンダー[4]とも呼ばれる。

地球カレンダーでは地球誕生を1月1日の午前0時、今現在を12月31日の午後12時と仮定し、地球史上の出来事をカレンダー上の日付にプロットする[2][3]。例えば、ヒトの誕生は年越しの23分前にあたる12月31日午後11時37分の出来事である[1][5]。1億年がカレンダー上では約8日に換算される[6]。カレンダー上の1日ごとに約1300万年が経過する計算になり、冥王代や原生代では1日でほぼ変化しない光景が顕生代では著しく変貌する[4]。

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地球全体の歴史を1年に詰め込んだタイムフレームでは、 1年の最終日の12/31のたった1日に人類すべての歴史が詰め込まれている。

従って、地球の歴史の尺度では、今日が劇的な変化が起こった技術的特異点の当日、ということになる。

さらに、農耕が始まったのは、その1年の最後の日がさらに押し迫った、 23時58分

さらに、西暦になったのは、 23時59分47秒 と、たった数秒前、とどんどんイベントの濃度が濃くなってくる、言い換えれば短期間で技術的革新が起こっている。


https://kunibiki-geopark.jp/geo-study/2019/03/05/timescale/

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タイムフレームを地球史のようにして、人類の誕生、あるいは農耕技術の誕生、さらに産業革命、というような技術的飛躍を考えると、たしかに、そのタイムフレームにおいては、 すでに特異点、常に特異点 と言える。


では、直近50年くらいのタイムフレームでは、指数関数はどういう挙動を示しているだろうか?

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これはたまたま、西暦2000年が区切りが良いことを利用して、2000年をX軸の0として、別に大した意味はないが、もっとも基本的な指数関数 y = e^xの定義域を-50(1950年)から35(2035年)までプロットしたものである。

このグラフでは2020年頃から急激に変化が起こる、これが一般的に認知されているAI(人工知能)における技術的特異点だと考えて構わない。


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これは、同じ指数関数 y = e^xの定義域を-25(1975年)から0(2000年)までプロットしたものである。

これは、たとえば、インターネットの普及度合いを示す、技術的特異点とみなすこともできるし、PC/CPUの性能の技術的特異点のグラフとみなすこともできる。


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2000年から現在まで、2000-2024のグラフならばどうだろうか?

これはChatGPTなどの生成系AIの進化具合などと捉えることもできる。


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今後10年間、2023-2035ではどうだろうか?

このタイムフレームではあと5-6年は全く変化がなく、7-8年後からなにか急激な変化が起こるように見受けられる、それは、たとえば生成系AIの論理的思考能力なのかもしれない。

要するに指数関数の急激的変化を技術的特異点と呼ぶのであれば、それはあらゆるタイムフレームで「最初のほうはゆっくり最後のほうは急激に変化する」挙動を示して、それが何についてか?というのはタイムフレームの尺度によって解釈は変わってくる、ということ。


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2030-2035とタイムフレームを細分化したとしても、同じで、最初の数年の変化は緩やかであり、最後の数年で急激な変化が起こるように見える。

これもなんらかのAIの進化と見なすと、最初の数年はあまり変化が感じられず、最後の数年で大きな変化が起こる、とみなせる


指数関数は、まったくもってどのタイムフレームを切り取っても、似たような挙動を示しそれはそのタイムフレームにおける技術的進化の意味の解釈がそれぞれ変わってくる。

地球スケールでタイムフレームを取ると人類の登場、農耕の登場、産業革命と解釈することができるし、2000年までの25年間で考えるとインターネットの発展と解釈できるし、その後のAIの発展を考えるにしても、タイムフレームの尺度で様々な解釈が可能になる。

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