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Azure AI Search で SharePoint のファイルを検索させることの是非

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はじめに

先日の Microsoft AI Tour Tokyo 2025 で、Microsoft MVP として Connection Hub (Azure AI Search) の対応を担当しました。その際、多くの方から Azure AI Search で SharePoint のファイルを検索したい というご質問をいただきました。本記事では、この点についての所感を記載します。

Azure AI Search が必要な理由

Azure AI Search は、AI プラットフォーム製品の一員です。もともとは Azure Search という製品で、Azure Cognitive Search という名称を経て、現在の名称になっています。AI である理由は、LLM と組み合わせた RAG の構築に最適化されているためです。他の AI サービスと組み合わせて画像データの検索やベクター検索をサポートしている点が特長です。

SharePoint にも古くから検索プラットフォームが存在します。かつては SharePoint FAST Search と呼ばれ、現在は Microsoft Search という名称になっています。Microsoft Search は SharePoint だけでなく Microsoft 365 全体を検索できるよう進化しています。ここで課題となるのは、なぜ SharePoint の検索を使わずにわざわざ Azure AI Search を使う必要があるのかという点です。

主な理由は以下のとおりです。

Azure OpenAI Web アプリを利用しているため

Azure OpenAI Service には、プレイグラウンドから簡単に Web アプリをデプロイする機能があります。

https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/ai-services/openai/how-to/use-web-app?WT.mc_id=M365-MVP-5002941

この Azure OpenAI Web アプリで SharePoint のファイルを検索したいという要望があります。Azure OpenAI Web アプリは On Your Data を使って Azure AI Search と接続できます。そのため、Azure AI Search で SharePoint のファイルを検索したいというニーズが生じます。

SharePoint の検索精度が低いと感じているため

詳細は後述しますが、AI 機能を搭載した Azure AI Search なら検索精度の問題が解決できる と期待している方が多いです。

SharePoint の検索精度が悪い原因

SharePoint の検索精度が悪いと感じている方の多くは、定性的または感情的な評価をしていることがあります。もちろん SharePoint にも原因がないわけではありません。クロールの失敗やサイトの言語設定によって期待した結果が得られない事象は存在します。ただし、それらを除外して、本当に SharePoint の検索精度が悪いかを定量的に評価しているケースは少ないです。定量的な評価がなければ、Azure AI Search に移行しても本当に検索精度が向上したか確認できず、満足できない結果になる可能性があります。

SharePoint の問題を除外しても、ファイル コンテンツの問題のこともあります。例として、以下のようなケースが該当します。

  • Excel 方眼紙でドキュメントを作成している
  • 縦書きにするため 1 文字ずつ改行している
  • Office 97-2003 形式のファイルを使用している

このようなファイルは、検索用にテキスト化するプロセスで問題となる場合があります。Azure AI Search に移行しても解決しません。

また、SharePoint に別名のファイルを作成してバージョン管理している場合も注意が必要です。SharePoint には 重複するファイルは除外する という設定がありますが、Azure AI Search にはありません。そのため、逆に精度は下がる可能性があります。

https://learn.microsoft.com/ja-jp/graph/search-concept-trim-duplicate?WT.mc_id=M365-MVP-5002941

SharePoint はファイル サーバーではありません。まずは SharePoint の使い方を理解し、適切に運用することが精度改善への確実な方法です。アーキテクチャを変更すれば改善するという考えは誤りです。

Azure AI Search の問題点

Azure AI Search には SharePoint インデクサーがあります。

https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/search/search-howto-index-sharepoint-online?WT.mc_id=M365-MVP-5002941

現時点ではプレビューであり、インデクサーの実行をスケジュールできない、増分更新ができないなどの課題があります。また、Azure AI Search には組み込みのアクセス制御リスト (ACL) 機能がなく、SharePoint から取り込んだファイルは全員が検索可能となります。インデクサーを使わないプッシュ型であれば、アクセス制御リスト (ACL) をインデックスに取り込むことができますが、SharePoint のアクセス許可の概念 (SharePoint グループ、セキュリティ グループ、固有のアクセス許可、共有リンクなど) を反映させるのは困難です。

Microsoft 365 の AI サービスの活用

ユースケースによっては、Azure OpenAI Web アプリを利用しなくても Microsoft 365 Copilot や SharePoint エージェントで対応できる場合があります。Microsoft 365 Copilot はライセンス費用が高く、費用対効果に懸念を持つ声もあります。しかし、カスタム開発や運用コストを含めて考えると、決して割高ではありません。SharePoint エージェントは従量課金制も選択できます。SharePoint Syntex を導入すれば、画像データのテキスト化など Azure AI Search と同等の機能を有効化できます。

Microsoft 365 Copilot のライセンスが調達できない場合でも、Microsoft Search の API を利用して RAG アプリを構築する方法があります。API を呼び出すだけなので、Power Platform にある程度慣れていれば簡単に作成できます。

おわりに

Azure AI Search を利用すればするほど、アーキテクチャとしての SharePoint の検索はよくできていると感じます。ぜひ、SharePoint の検索機能を積極的に活用してください。

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