新卒デザイナーが給与プロダクトに向き合って学んだこと
はじめに
はじめまして。
ジンジャーのプロダクトデザイナー、福永美菜穂です。
2024年4月にjinjer株式会社に初の新卒デザイナーとして入社しました。
プロダクトデザインからグラフィックデザインまで幅広く携わらせていただき、現在はジンジャー給与のメインデザイナーを担当しております。
今回はジンジャー給与の新機能のデザイン、新アプリケーションのデザイン経験を通じて出てきた3つの課題と実施したことについてお話しさせていただきます。
課題1:最初に立ちはだかった「給与の業務理解」
最初に大きな壁になったのが、「給与の業務の理解」でした。
とりあえずプロダクトを触ってみよう!と取り組んでみたものの、見慣れない単語、複雑な設定、エラーが出てきて給与計算ができない…など問題が山積みでした。
給与計算は、法令や制度の変更、社内の運用ルールなどと密接に関わっています。
そのため、ドメイン知識が乏しい状態では本当に良いUXは作れず、依頼されたものをそのまま形にするだけになってしまうのではと危機感を覚えました。
私はどんなデザインにおいても、きちんと自分自身が理解し、納得した上で形にしていきたいと考えています。しかし、想像以上に給与業務の理解は難しく、このままでは良いデザインができないのでは、この先どうしよう...と不安を感じておりました。
💡 実施したこと
まずはドメイン知識をつける
給与のプロダクトマネージャーに勉強会を開催していただいたり、給与担当者の業務を本で読んで勉強して、ドメイン知識をつけていきました。身につけた知識をもとに、自分でジンジャー給与を動かせるように設定しました。
理解してデザインする
デザインをする際には、1つ1つの機能を理解した上でデザインすることを心がけました。
わからない機能は自分で調べ、それでもイメージできないときはプロダクトマネージャーに質問して理解することを繰り返し、デザインを進めていきました。私の初歩的な質問にも、どんな拙い説明でも怒らず丁寧に回答してくださるプロダクトマネージャーにはいつも感謝しています。
プロトタイプができたタイミングで、実際のユーザーにヒアリングする機会をプロダクトマネージャーが作ってくださいました。給与計算担当の方にヒアリングさせていただきながら、学んだ知識とユーザー像を繋げていきました。
中でも印象に残っていることが、給与計算は間違いが許されないこと、何度もチェックを重ねて毎月業務をされていることです。
前月比較という機能のデザインを作成した際、なぜこれが必要なのか、ヒアリングを通じてその機能の重要性に改めて気づくことができました。
課題2:デザインシステムに頼りすぎてしまう
ジンジャーにはデザインシステムがあり、定義されているコンポーネントを用いてデザインを作成します。デザインシステムはかなり細かく作り込んであり、効率的に一貫したデザインを作成できます。
しかし、デザインシステムにないUIが必要になったとき、「これはどのようなUIにすればいいんだろう?」と、まったく手が動かなくなってしまうことがありました。
結果、無理やり既存パターンに当てはめてしまうこともあり、ジンジャー給与のユーザーに最適なデザインにならないことがありました。
また、ジンジャー給与を使うユーザーに最適なUIがデザインシステムで実現できないとき、どこまでカスタムして良いのか迷いました。
💡 実施したこと
とにかくリサーチして引き出しを増やす
依頼を形にできないのは自分の中にUIの引き出しが足りないからだと考え、とにかく良いサービスのUIを集めました。特にGoogle、Atlassian、ClickUp、Notionなどの世界的に有名なプロダクトと他社のプロダクトのUIは必ず確認する対象として集めました。その他にも、PinterestやMobbinを使って良いUIを集めてFigmaに並べました。
調べて作ってレビューして壊すを繰り返す
集めたUIを分析して、弊社のシステムやデザインシステムの思想に合わせたデザインを複数作り、先輩デザイナーにレビューをしていただきました。レビューをもとにまた調べて作ってレビューして壊すことを繰り返していきました。
さらに、プロダクトマネージャーからもアドバイスをいただきながら、UIの最適化を進めました。
試行錯誤して作成したコンポーネントが、デザインシステムに追加されたときはとても嬉しかったです。
デザインシステムで決まっていたStepsのコンポーネントを、再度考えた時の案です。
課題3:デザイン意図を伝えられない
デザイン責任者にレビューを依頼するとき、機能の要件とデザイン意図をうまく伝えられず、もどかしさを感じる場面が多々ありました。
最初は、デザイン責任者のレビューとプロダクトマネージャーのレビューを個別にしていただくフローにしていました。
デザイン責任者に意図を説明しているときに「この仕様ってどうなってる?」と聞かれても答えられず、その場で方向性を決めきれないまま終わってしまったり。ほかにも、デザインを作成してプロダクトマネージャーにレビューしてもらうときに、要件を満たせていないことがわかり、デザインをやり直したりしていました。
給与領域は法律や会社ごとの制度など、前提の仕様がとても複雑です。
そのため、デザインをレビューしてもらうときにも「この仕様を踏まえてこういう意図でデザインしています」と、背景からしっかり説明しなければいけないのですが、当時の自分にはそれがうまくできませんでした。
レビューのたびに手戻りが発生し、コミュニケーションも不安定な状態だったため、自分の力不足に落ち込み、このままでは良いデザインができない...と焦っていました。
💡 実施したこと
MTG準備を徹底する
MTG前にレビュー箇所とデザインの意図をスプレッドシートに書き出し、説明できる状態にしてからレビューMTGをしていただくように徹底しました。説明できないときにはプロダクトマネージャーに仕様を確認したり、先輩デザイナーに質問して伝え方の助言をいただいたりしました。
説明が上手な方の研究もしながら、どうしたら相手に伝わる説明ができるのか観察、分析しました。
関係者を集めてレビューMTGを行う
プロダクトマネージャー、デザイン責任者、デザインシステムの責任者を集めて議論しました。
私では説明しきれないプロダクトの細かい仕様は、プロダクトマネージャーに説明していただきながらデザインレビューを進めました。
その結果、プロダクトマネージャーも、デザインチームも確認した上での意思決定を早く正確に行えるようになり、考慮すべき要件を満たしたデザインをスムーズに作成できるようになりました。
また、当初決まっていた要件も全体の体験を考慮して柔軟に変更し、より良い体験設計を行うことができました。
今も向き合っている課題
より良い体験を作るためには、見た目が美しいだけでなく、ユーザー軸、ビジネス軸、開発軸など、さまざまな軸を考慮して機能的なデザインをする必要があります。ですが、私はまだ知識も経験も少なく、最初から上記を満たしたデザインができず、レビューでご指摘いただく中で発見することが多いです。
またパターンを作成したときに、「自分はこの観点からこのデザインがいいと考える」といった説明ができず、聞き手が汲み取ってくれることに甘えてしまい、主張が曖昧になることも多いです。
💡 実施中のこと
ユーザー軸、ビジネス軸、開発軸の視点を養う
デザインマネージャーのクリスさんの記事でご紹介しているスキルマップを用いて、自分の強み・弱みを見ながら目標を立て、日々のタスクに取り組んでいます。
ユーザー軸では、ユーザー価値定義やユーザーストーリーを作成するスキルが不足しています。今後は、ユーザー価値定義やユーザーストーリーを作成したり、インタビューをしながらユーザー理解を進め、どうしたらユーザーに使いやすいデザインになるのか、意思決定の材料を集めていきます。
ビジネス軸については、プロダクトマネージャーの業務を一部担当する中で、少しずつ身につけていく予定です。現在は、自分が担当したデザインに対して仕様書を作成したり、既存機能の仕様書を確認し、チケット化まで行う業務も担当しています。
開発軸は、開発部とのコミュニケーションを増やして、開発軸を養っていきたいと考えております。今まではプロダクトマネージャーやデザイン責任者がフロントに立って説明しておりましたが、今後は自分がフロントに立ち、デザインの説明や開発観点の質問ができるようになりたいと考えております。
開発担当者さんからの質問や提案はより良いデザイン作成に非常に重要な観点をいただけるので、今後はさらにコミュニケーションをとりながら改善していきたいです。
「なぜそのデザインにするのか」をさらに明確にする
デザイン意図の説明がちゃんとできる人は、知見が深いのはもちろんのこと、話す順番もとても上手です。
説明が上手な方は結論ファーストで、結論に至るまでの意図説明も論理的で理解しやすい順番になっています。議論が広がった時に目的に立ち返って軌道修正することがとても上手です。MTGでの伝え方もデザインの一環だと考え、今後もっと上手くできるようになりたいと考えています。
上記の3軸の知見を深めて、1つ1つの意思決定で「なぜそうするのか」デザインの意図を説明し、記録していくことを今後も継続していきます。時には、自分がいいと思ったデザインにならないこともあります。そういった時でも「自分ならこうする」を常に持っておくことが大事だとデザイン責任者からフィードバックをいただきました。
まだ道半ばですが、日々のデザイン業務の中で「自分ならどうするのか」「なぜそうするのか」を説明できるようにしていきたいです。
おわりに
プロダクトデザイナーとしての1年目は、わからないことだらけで、いつも「この方向で合っているのかな?」と不安を抱えながら過ごしていました。
初めて自分がデザインした機能がリリースされたときは、動いている...!と感動しました。
そして、ユーザーの皆さまからのポジティブなお声をセールスの方々が届けてくださったときは、本当に嬉しかったです。
同時に、たくさんの方に何度も使われる機能を作っているのだと改めて認識し、身が引き締まる思いでした。UIの細部にこだわり、全体のUXを最適化したデザインをユーザーに届けられるよう、これからも精進してまいります。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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