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#WebXR ( WebVR/WebAR ) の現状確認 2022 Winter

2022/12/01に公開

whoami

@ikkou a.k.a HEAVEN chan です。長らく WebXR 周辺の動向を追っていて、年次で WebXR に関する『現状確認』エントリを投下しています。

https://zenn.dev/ikkou/articles/fdb344a713cdf0

https://zenn.dev/ikkou/articles/c2832ccbe6a078

また、CEDEC では時節を踏まえた動向を発表しています。

https://speakerdeck.com/ikkou/webxr-frontline-2022

https://speakerdeck.com/ikkou/recent-webxr-in-covid-19-pandemic

本エントリでは『現状確認 2022 Winter』として、CEDEC 2022 で発表した『WebXR 最前線 2022』を軸に、2022-12-01 現在までの WebXR 全般に触れていきます。

WebXR の基本的なお話しは末尾に Appendix として掲載しています。

本エントリを読めば WebXR の最新の動向が “概ね” 理解できることを目的としています。

また、WebXR とは? そもそも XR とは? といった、そう多く変わることのない普遍的な情報は末尾に Appendix として過去分から一部編集して再掲しています。

Update 2021 Winter to 2022 Winter

『#WebXR ( WebVR/WebAR ) の現状確認 2021 Winter』から 1 年間の差分の中で気になるトピックスをピックアップしました。

  • ✔ iOS 16 に WebXR Device API は実装されなかった 👎
  • ✔ Mozilla Firefox Reality のサポートが終了 👎
    • Wolvic が引き継いだ 👍
  • ✔ The Metaverse Standards Forum の設立と W3C の参画
  • ✔ WebXR Device API と関連する Module/API のステータス更新 👍
    • WebXR Device API と WebXR Augmented Reality Module - Level 1 が Candidate Recommendation Draft に昇格 👍
    • The <model> element のステータスが Draft Community Group Report に昇格
  • ✔ 主要ブラウザの WebXR Device API 対応状況
  • ✔ XR 関連デバイスの WebXR Device API 対応状況
    • Meta Quest 2 / Meta Quest Pro でパススルー WebAR が実現 👍
  • ✔ Lightship VPS for Web で WebAR としての VPS が実現可能に 👍

iOS 16.1.1 における WebXR Device API の対応状況

iOS/iPadOS は WebXR Device API には対応していません。

標準状態では WebXR Device API が有効化されていない 2022-12-01 現在最新の iOS 16.1.1 ですが、設定 → Safari → 詳細 → Experimental Features (実験的な WebKit の機能) から、以下の WebXR Device API と関連する Module を有効化できます。

  • WebXR Augmented Reality Module (immersive-ar)
  • WebXR Device API
  • WebXR Gamepads Module
  • WebXR Hand Input Module

以下に有効化されていない「標準」状態と、有効化している状態を示します。

WebXR Device API と関連する Module が有効化されていない「標準」状態

iOS 16.1.1 のデフォルト設定ではすべてオフになっています。この状態のまま WebXR Samples で確認すると WebXR Device API に対応していないことがわかります。

WebXR Device API と関連する Module を自身で有効化している状態

有効化は JavaScript を使ってブラウザ経由で、ということはできません。ユーザー自身で設定 → Safari → 詳細 → Experimental Features という深い階層までいき、明示的に変更しなければなりません。

有効化することで WebXR Device API のフラグは立ちますが、実際には WebXR Device API における WebVR(immersive-vr) も WebAR(immersive-ar) も動作しません。

これらの設定は 2022-03-15 に正式リリースされた iOS 15.4 から実装されています。残念ながらメジャーバージョンアップを経た iOS 16.1.1 の現時点でも状況は変わっていませんが、興味のある方は関連する次のエントリもご覧ください。

https://zenn.dev/ikkou/articles/6f546b11ced571

Firefox Reality の終焉と Wolvic の登場

2022-02-03 に Mozilla が開発していた Gecko エンジンベースの WebXR 向けブラウザの雄であった Firefox Reality のサポートが終了しました。

https://support.mozilla.org/ja/kb/end-support-firefox-reality

Firefox Reality の資産は Igalia 社に引き継がれ Wolvic としてリリースされています。
ストアページから Firefox Reality が消えている時は焦らずに Wolvic をインストールしてください。

https://www.wolvic.com/en/

使い勝手は Firefox Reality と大差ありません。

The Metaverse Standards Forum の設立と W3C の参画

2022-06-21 に Khronos Group が主幹事となり、メタバースの相互運用の標準化を図る団体 として The Metaverse Standards Forum が設立されました。

https://metaverse-standards.org/

Web に関連する団体としては Web3D Consortium に加え、Web の仕様を策定している W3C が創設メンバーとして参画し、それぞれメッセージを寄せています。

Web3D Consortium のプレジデントであるNicholas Polys博士 は、「Metaverse Standards Forumは、安全、協調的(相互運用可能)、持続的、広範な複合現実のコンテンツを実現する唯一の機会を提供します」と述べています。「Web3D Consortiumのメンバーは、3Dグラフィックスの相互運用性とWWWエコシステムの標準化に関して、数十年にわたる研究を行っています。ISO-IEC Extensible 3D (X3D) Version 4との統合は、新しい価値を生み出し、メタバースのクリエイターと参加者に重要な保証を提供すると考えています」。

W3C Immersive Web StrategistのDominique Hazaël-Massieux氏 は次のように述べています。「World Wide Web Consortium(W3C)は、メタバースのための相互運用可能なプラットフォームの構築において、他の標準化団体やメタバース関係者との連携を加速させるためにMetaverse Standards Forumに参加します。フォーラムの中で、W3CのImmersive Webビジョンは重要な役割を果たすと考えています」。

https://jp.khronos.org/news/press/Metaverse-Standards-Forum-2022

2022-11 現在の The Metaverse Standards Forum の最新動向は公開されているスライドを参照してください。WebXR に関連するものとして、設立当初は存在していなかった「glTF/USD 3D Asset Interoperability (visuals, behaviors)」ワーキンググループが発足していることなどを確認できます。



Ref. https://portal.metaverse-standards.org/document/dl/3321

WebXR Device API と関連する Module/API のステータス

WebXR Device API と関連する Module/API の現況は次の通りです。

W3C の勧告プロセスは、かなり大雑把に言うと Editor’s Draft → Working Draft → Candidate Recommendation を経て正式勧告に至ります。より細かなプロセスは次のページが詳しいです。

https://triple-underscore.github.io/w3c-standards-types-ja.html

Candidate Recommendation Draft

WebXR Device API は、2022-03-31 時点で Working Draft から Candidate Recommendation Snapshot に昇格した後、2022-04-26 に Candidate Recommendation Draft に昇格しています。

https://twitter.com/ikkou/status/1509474562538631168

WebXR Augmented Reality Module - Level 1 は、2021-08-24 時点で Unstable API の注釈表記ありで Working Draft に昇格した後、2022-11-01 に Candidate Recommendation Snapshot に、2022-11-02 に Candidate Recommendation Draft に昇格しています。

https://twitter.com/ikkou/status/1587435880691929091

Working Draft

Editor’s Draft

Draft Community Group Report

Draft Community Group Report は Community Group / Business Group が主導する仕様で W3C 公式の仕様ではありません。将来的に Editor’s Draft に昇格することもあります。

The <model> element は Feature Incubations から Draft Community Group Report に昇格しています。

その他、immersive-web/navigation を始めとして、Draft Community Group Report (cg-report) にも至っていない複数の仕様を含み、Immersive Web Community Group / Immersive Web Working Group で議論されている仕様は次のページを参照してください。

https://www.w3.org/immersive-web/list_spec.html

個人的にはパフォーマンス改善系に相当する WebXR Layers module と WebGPU を連携させるための WebXR/WebGPU binding が気になっています。

主要ブラウザの WebXR Device API 対応状況


Ref. https://caniuse.com/?search=WebXR

Chromium エンジン

Chromium エンジンを搭載している Microsoft Edge、Google Chrome、Meta Quest 2 や Meta Quest Pro に搭載されている Meta Quest Browser (旧 Oculus Browser)、そして Web3 で話題の Brave は WebXR Device API に標準対応しています。ただし Android デバイスの場合は ARCore supported devices であることが必要です。

かつては必要だった chrome://flags の変更が不要です。現在はその設定項目もありません。

Gecko エンジン

Gecko エンジンを搭載している Firefox は in-development ステータスです。

Chromium エンジン系とは異なり、about:configdom.vr.webxr.enabledtrue に変更する必要があります。ただし肝心の Immersive VR Session は動作しません。

WebKit エンジン

WebKit エンジンを搭載している iOS, iPadOS, macOS の Safari も長らく In Development ステータスです。

iOS については Mozilla がリリースしている WebXR Viewer を使えば WebXR Device API のフラグが立ち、immersive-ar が動作するようになります。


WebXR Viewer アプリを使えば iPhone でも immersive-ar を使ったコンテンツを体験できる

XR 関連デバイスの WebXR Device API 対応状況

新しいハードウェアの登場にあわせて WebXR Device API に対応している XR 関連デバイスも増加しました。

Chromium エンジンを搭載する XR 関連デバイス

  • Meta Quest Browser を内蔵している Meta Quest, Meta Quest 2, Meta Quest Pro
  • Edge を内蔵している HoloLens 2
  • 独自の Pico ブラウザを内蔵している Pico Neo 3 Link, PICO 4
  • 独自ブラウザの Helio を内蔵している Magic Leap, Magic Leap 2

Meta Quest Browser のアップデートでパススルー WebAR が実現

Meta Quest Browser をアップデートすることで、モノクロパススルー機能を持つ Meta Quest 2、そしてカラーパススルー機能を持つ Meta Quest Pro でパススルー WebAR が実現できるようになりました。Meta Quest 2、Meta Quest Pro ともに一般的には VR HMD に区分されますが、比較的容易にパススルー WebAR を体験できるようになっています。

Wolvic をインストールした XR 関連デバイス

現時点で標準ブラウザとして Wolvic がインストールされている XR 関連デバイスは存在しませんが、今後発売される Lynx R-1 の内蔵ブラウザは Wolvic であることが発表されています。

また、VIVE シリーズのストアである VIVEPORT からは既に Firefox Reality が消えているため、新しくセットアップする際には Wolvic をインストールする形になります。

Nreal Light / Nreal Air

眼鏡型 AR デバイスの Nreal Light (コンシューマー版) と Nreal Air は Android アプリの「FarePlay For NReal (Light+Air)」をインストールすることで、WebXR に対応します。
これは iPhone における WebXR Viewer アプリのような立ち位置と言えます。

WebAR における VPS の登場

VPS はカメラ経由で得た映像と事前に取得している空間の位置合わせを実現する技術です。本エントリーでは VPS そのものの詳細に触れないので、興味のある方は次の資料をご覧ください。

https://speakerdeck.com/ikkou/the-world-of-vps

2022 年はこの VPS がムーブメントのひとつになり、一般化しつつあります。その多くはネイティブアプリを対象としていますが、Niantic の Lightship VPS for Web や Hexagon AB の Immersal のように、WebAR でも動作する「WebVPS」とも呼べるものも登場しています。

特に Lightship VPS for Web は VPS に強みを持つ Niantic 社が WebXR とりわけ WebAR に強みを持つ 8th Wall 社を買収した上でリリースした機能であり、今後さらに伸長していくことが考えられます。

https://nianticlabs.com/news/lightship-vps-web/

2022 年の WebXR コンテンツの概観と 2023 年の WebXR 界隈の予測

2022 年の WebXR コンテンツの概観

2021 Winter では「Meta 社の社名変更をきっかけに『メタバース』が突然キャズムを超えて降ってきた感があります。WebXR 周辺で言えば Hubs Cloud をはじめとする WebVR による独自のバーチャル空間作りは決して珍しいものではありませんが、この流れに乗って 2022 年は大きく進むかもしれません。」と書いていましたが、XR 業界としては猫も杓子もメタバースだったと言えるのではないでしょうか。

その流れで (WebXR Device API の使用有無は問わず) ブラウザで動作するメタバースプラットフォームがたくさん登場しました。体感として 5 割くらいは Mozilla Hubs Cloud の拡張プラットフォームでしたが、なかには Vket Cloud のように独自の VR エンジンで展開しているプラットフォームも登場しました。手段はさておき、こうした流れは結果として「スマートフォンひとつあればアプリのインストールもせずにメタバースを体験できる」という状況が加速したように感じています。

2023 年の WebXR 界隈の予測

2021 Winter では「引き続き新型コロナウイルス感染症は各方面に影響を及ぼしていますが、日本国内においては 2021-11-30 時点での新たに確認された感染者数が 132 人とされ~」と書いていましたが、2022-11-30 時点での新たに確認された感染者数が 138,396 人と桁違いに多くなり、引き続きコロナ禍の渦中にあります。

コロナ禍の状況を踏まえ、昨年も「GPS の位置情報をもとにするロケーションベースの WebAR コンテンツは少し難しい状況が続くかもしれません」と予測していましたが、蓋を開けてみるとコンテンツとしては厳しい状況が続いているものの、各社から VPS ソリューションが登場し、その一部は WebAR でも使えるものになるなど「手段」は充実しました。あとはこの「手段」をどのような形で「機会」とするかの見極めが肝になるのかもしれません。

コロナ禍に加えて世界情勢も芳しくなく、市況は厳しい状況が続くことが考えられますが、パススルー WebAR 然り業界としての技術的なアップデートは複数あるので、引き続き動向をウォッチしていきます。


Appendix

WebXR とは? そもそも XR とは? といった、そう多く変わることのない普遍的な情報を Appendix として過去分から一部編集して再掲します。

WebXR とはなにか?


Source. https://immersive-web.github.io/webxr-samples/

本エントリにおける各用語の定義は次の通りです。

XR の定義

XR は特に次のような ◯◯ Reality 全般を包括する言葉です。
特定の企業や団体が XR の『標準仕様』を策定しているわけではありません。

  • VR(Virtual Reality) = 人工現実感(仮想現実)
  • AR(Augmented Reality) = 拡張現実感(拡張現実)
  • MR(Mixed Reality) = 複合現実感(複合現実)

三者三様の定義が発生しがちな MR の解釈次第では ◯◯ Reality 全般を包括する言葉は MR になるかもしれませんが、現時点では XR と呼ばれています。

表記として小文字はじまりの xR と、大文字はじまりの XR がありますが、昨今では、VR/AR/MR カンファレンスの「XR Kaigi」然り、Unityの「XR Interaction Toolkit」然り、大文字はじまりの XR 表記が一般的です。

大文字はじまりになる要因として、英語圏では sentence case により文頭が大文字になる、あるいは固有名詞は文頭が大文字になる、といった事情が考えられますが確証はありません。

WebXR の定義

XR 同様に WebXR もまた WebXR そのものを定める『標準仕様』はありません。
本エントリでは WebXR を次のように定義しています。

  1. ブラウザ ( WebView を含む) を通した VR 体験を WebVR、同 AR 体験を WebAR と定義し、それらの総称を WebXR と定義する
  2. 上記を満たしていれば WebXR に関連する WebXR Device API の使用有無は問わない

WebVR とは

WebVR は VR に相当する表現・体験をブラウザを通して実現できるものです。

数年前までは例えば Google Cardboard のようなビューアーとスマートフォンを組み合わせるものが主流でしたが、初代 Oculus Quest が WebVR に対応して以降、現在は画質を始めとして体験の質が大きく向上しています。

まだ 1 度も WebVR を体験したことがない方は、お手元の PC やスマートフォンで下記のリンクから『Mozilla Hubs』にアクセスしてみてください。Meta Quest などの WebXR に対応している VR HMD をお持ちであれば、よりリッチな体験が可能です。

https://hubs.mozilla.com/

WebAR とは

WebAR は AR に相当する表現・体験をブラウザを通して実現できるものです。

多くの場合 AR はカメラを通して現実世界になにかを重畳させることが多いため、カメラ付きのデバイスを用います。これまで WebAR と言うとスマートフォンを利用するものがほとんどでしたが、2022-10 発売の PICO 4 や Meta Quest Pro などのように、カメラパススルー(ビデオシースルー)方式による WebAR 体験ができる VR HMD が今後増えてくるかもしれません。

今日現在、WebAR は WebVR に比べると体験する機会が多くあります。

まだ 1 度も WebAR を体験したことがない方で、iPhone や iPad といった iOS/iPadOS デバイスをお使いの方は Apple 公式の『Quick Lookギャラリー』にアクセスしてみてください。

このサイトでは iOS/iPadOS デバイス特有の USDZ による WebAR を体験できます。

https://developer.apple.com/jp/augmented-reality/quick-look/

Google 公式の Pixel シリーズを始めとして、Xperia や Galaxy などの Android デバイスをお使いの方は、Google 公式の『WebXR Experiments』にアクセスしてみてください。

このサイトでは Google による WebAR コンテンツを体験できます。

https://experiments.withgoogle.com/collection/webxr

ただしこのページで体験できるのは ARCore に対応した端末 (ARCore supported devices) をお持ちの方のみです。

これは、Android デバイスに搭載されている Google Chrome は WebXR Device API に対応しているものの、ハードウェアとして動作させる条件が ARCore に対応している端末であるためです。

もしも ARCore に対応していない Android デバイスをお使いの方は、具体的なサービスイメージを想像しやすい AR カメラサービスの『TOBIRA』を試してみてください。

https://tobira.me/

AR の 3 種別

AR は次の 3 種別に大別できます。この種類によっても WebAR での実現方法が異なります。

  • 空間に表示するだけなどマーカーを必要としない『マーカーレスAR』
  • 二次元バーコードや画像など何らかのマーカーを必要とする『マーカーベースAR』
  • 位置情報をトリガーとする『ロケーションベースAR』

WebMR は無いのか

WebVR、WebAR があって WebMR は無いのか気になる方がいるかもしれませんが、一般的な言葉として WebMR が用いられていることはありません。

WebXR Device API Web Mixed Reality 相当の表現も含めて XR と定義しています。

WebVR、WebAR の表記について

ときに WebVR は半角スペースありの Web VR として、WebAR は Web AR や web AR といった表記を見かけることもありますが、本エントリでは半角スペース無しの WebVR と WebAR という表記に統一しています。

また、『ブラウザAR®』という表記が見られることもありますが、これは®マークがついていることからもわかる通り、クラウドサーカス株式会社さんの登録商標となっています。ちなみに『ブラウザVR』や『ブラウザXR』は商標として登録されていません。

WebXR を構成する要素技術

WebXR は XR という特性はあるものの、WebXR を構成する要素技術は Web を構成する要素技術と変わらず、HTML、CSS、JavaScript、画像や 3D モデルなどの Assets、Backend といった要素技術が必要となります。特に描画まわりで必須となる JavaScript は重要な要素を占めています。

また、カメラを用いる WebAR コンテンツの公開に際しては HTTPS が必須になることから、少なからずバックエンドの知識も必要となります。

例えば、もしも Hubs Cloud のバックエンドに手を入れようと考えているなら、AWS (Amazon Web Services) や、Reticulum で使われている Elixir/Phoenix の知識も必要となります。

XR コンテンツの開発では Unity や Unreal Engine などのゲームエンジンを用いる印象が強いかと思いますが、WebXR に関してはいわゆる『ウェブフロントエンドエンジニア』の領域となります。

しかしながら高度な開発がスキルを必要とせず、例えばソースコードをコピペしてブラウザで表示するだけでも動作するのが WebXR の良いところです。ビルドやコンパイルも必要ありません。ソースコードを書き換えてリロードすればコンテンツも更新されます。もちろんパフォーマンス面ではネイティブアプリに劣る部分もありますが、取っ掛かりの良さは XR コンテンツ開発の中でも一番です。

WebXR Device API とはなにか?

まずは WebXR を語る上で絶対に欠かせないが、本エントリの定義によれば必須要素ではない WebXR Device API です。

なお、本エントリで語られていることの多くの原典は WebXR Device API を策定している W3C Immersive Web Working and Community Groups が運営している『Immersive Web Developer』です。

https://immersiveweb.dev/

改めて WebXR Device API とはなにか?

WebXR Device API は、VR、AR、MR といった XR デバイスの「向き」や「動き」などの「状態」をブラウザから取得する JavaScript API です。とても重要なことですが、この WebXR Device API そのものが WebXR コンテンツを形作っているわけではありません。

https://www.w3.org/TR/webxr/

例えば、カメラ越しに 3D モデルを表示する場合、3D モデルは Blender 等々で別途作成し、カメラ経由での映像取得は MediaDevices.getUserMedia() が、3D モデルの描画には WebGL といった JavaScript API が担っています。

ウェブの進化とともに、ブラウザ経由で USB デバイスにアクセスする WebUSB API や、Bluetooth デバイスにアクセスする Web Bluetooth など、ブラウザから直接ハードウェアにアクセスする API が生まれていますが、WebXR Device API もそういったもののひとつです。

繰り返しになりますが WebXR Device API そのものが WebXR コンテンツを形作るわけではないので、WebXR コンテンツは、WebXR Device API を使うものと WebXR Device API を使わないものの 2 つに大別できます。

WebXR Device API を策定している Immersive Web Working Group

大前提として Web の仕様の多くは W3C が策定しています。その上で各 API の仕様は専用の Working Group (WG) が策定していて、WebXR Device API は Immersive Web Working Group が策定に向けた議論を重ねています。

Immersive Web Working Group の Co-Chairs は 2020/06/10 から

という 3 名体制で構成されています。

そして W3C 本体からは Atsushi Shimono a.k.a @himorin さんが参画しています。

この WG の概要は『Immersive Web Working Group Charter』にまとまっています。

https://www.w3.org/2020/05/immersive-Web-wg-charter.html

W3C の勧告プロセス

各 WG で議論された API が勧告に至るには次のプロセスを踏む必要があります。

  1. Editor’s Draft
  2. Working Draft (WD)
  3. Candidate Recommendation (CR)
  4. Proposed Recommendation (PR)
  5. W3C Recommendation (REC)

W3C Recommendation に至るためには、仕様策定だけではなく 一定数以上のブラウザ側の実装も必要 となり、双方が共に歩んでいく形になります。こうした背景もあり、Working Group には各ブラウザベンダーの方が参画しています。

WebXR のロゴについて

WebXR Sample Pages や WebXR Device API 関連の Spec でも見かける機会の多い WebXR のロゴですが、これは Deigo Gonzalez 氏によって提案されたものです。

https://twitter.com/tojiro/status/1149091423867695104

Immersive Web WG の ML にもログが残っています。

https://lists.w3.org/Archives/Public/public-immersive-web/2019Jul/0004.html

当時はくるくるまわる WebXR のロゴも用意されていました。

https://toji.github.io/webxr-logo/

WebXR Device API の前身にあたる WebVR API について

かつては Oculus Rift CV1 や HTC VIVE などの VR HMD のみ を対象にした WebVR API の策定が進められていました。しかし時代の流れとともに取り扱うものの対象に AR デバイスや MR デバイスも加わることとなり、2017-12-12 を以て deprecated つまり非推奨 となり WebVR API の策定は停止して WebXR Device API に引き継がれています。

deprecated 化に伴い、現時点で WebVR API をサポートしているモダンブラウザは Firefox のみとなっています。WebVR API を使用している WebVR コンテンツを体験したい場合は Firefox であれば動作する可能性が高いです。

WebXR Device API に対応している XR 関連デバイス

最新の状況は本編に掲載していますが、VR HMD のみを対象としていた WebVR API から、AR、MR デバイスも対象とした WebXR Device API に変わったことで、対象となる XR 関連デバイスも変わりました。

WebXR Device API の検討が始まった 当時の Target hardware は次の通りです。

* ARCore-compatible devices
* Google Daydream
* HTC Vive
* Magic Leap One
* Microsoft Hololens
* Oculus Rift
* Samsung Gear VR
* Windows Mixed Reality headsets

Google Daydream や Samsung Gear VR など現在ではディスコンになったものも含まれていました。

WebXR Device API 関連 Module/API の対応状況

caniuse だけでは WebXR Augmented Reality Module - Level 1 をはじめとする WebXR Device API 関連 Module/API の状況がわからないので、そういったときは Immersive Web Developer の Support Table for the WebXR Device API を参照してください。ただし、必ずしも最新の情報が掲載されているとは言い切れないので、ときには自分自身で検証する必要があります。

WebXR コンテンツに WebXR Device API は必要なのか?

繰り返しになりますが、本エントリでは WebXR を次のように定義しています。

  1. ブラウザ ( WebView を含む) を通した VR 体験を WebVR、同 AR 体験を WebAR と定義し、それらの総称を WebXR と定義する
  2. 上記を満たしていれば WebXR に関連する WebXR Device API の使用有無は問わない

この定義に拠れば『WebXR コンテンツに WebXR Device API は必須要件ではない』です。

世の中には WebXR Device API を使っていない WebXR コンテンツはたくさんありますし、特にスマートフォン向け WebAR コンテンツの場合は WebXR Device API 抜きでも成立するのが数多くあります。

対して VR HMD を使う WebVR コンテンツの場合は WebXR Device API を使うことでコントローラーはもちろん、ユーザー自身の「手」をコントローラーにする「ハンドコントローラー」にも対応できるため、 WebXR Device API を使うと、各ハードウェアプラットフォーム間の差分を吸収した「ウェブ」という共通プラットフォームにおいてワンソース・マルチユースを実現する可能性があります。

ただし、現時点で WebXR Device API はまだ『策定中の仕様』であり、不安定なものである ことを意識する必要があります。

また、先ほど例として挙げた「ハンドコントローラー」に関しても WebXR Device API を使わずとも、例えば MediaPipe をはじめとする JavaScript ライブラリやフレームワークでも吸収できるので、十分な検討が必要です。


現場からは以上です!

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