AWS Amplify Gen2への道標:Gen1からの“考え方シフト”でAWS連携型の現代的フロントエンドCI/CD基盤へ
こんにちは、AWS Community Builder 兼 AWS User Group Leaders 兼 Amplify Japan User Group運営メンバーの池田 @ikenyal です。株式会社GENDA でEMをしつつ、株式会社ZINE で取締役CTOをしています。
本記事では、Amplify Gen1を長らく使ってきた方が、これからGen2への移行を考える際の手助けになるであろう内容をまとめています。
「とりあえずボタンをポチポチしてAmplifyでデプロイできたからOK!」といった方も少なくはないでしょう。新世代「Gen2」に世代が変わるこのタイミングで、これまでと違うGen2ならではの考え方やセットアップ手法を学んでいきましょう。
以前は単純なホスティング・デプロイツールとしての側面が強かったAmplifyも、Gen2ではより近代的なCI/CD基盤として進化しました。さらにCloudFrontやS3、IAMなどのAWSリソースとの結び付きが明確になり、拡張性・高速性・セキュリティ面での強化が進んでいます。
この記事では、Gen1からGen2へステップアップする際に押さえておきたいポイントを、可能な限りわかりやすくまとめ、公式ドキュメントや参考資料へのリンクも交えながら紹介します。また、Amplifyユーザーが待望していたWAF対応がつい先日実装されたという最新のアップデートにも最後に触れます。
「Gen1は使いこなしているけれど、Gen2はまだ触っていない」というあなたに、「なるほど、こう考えればいいのか」と思えるヒントをお届けできれば幸いです。
「Gen2って何が違うの?」 全体像のイメージを掴む
Gen1:
「Amplifyが用意した決まったパターンに沿ってとりあえずデプロイする」──これがGen1時代の主な使い方でした。簡単で扱いやすい反面、運用が複雑になると拡張性や柔軟性に限界を感じる場面も多かったでしょう。もちろん、それを可能な限り拡張して高度な使い方をしているユーザーもいましたが、それをするには一定レベルの知識が必要でした。
Gen2:
Gen2では、Amplifyは「AWSインフラの一部として高度にチューニング可能なサービス」へと進化しています。CloudFront、S3、IAMなどのAWSリソースとの統合がより透過的になり、モノレポ構成や複雑なプロジェクトにも対応しやすくなりました。また、ビルドやデプロイのプロセスがアップデートされ、キャッシュ戦略や環境変数管理が賢くなったことで、パフォーマンス・スケーラビリティ・運用性が大幅に向上しています。
つまり、「Amplifyは単に簡易ホスティングツール」から「AWS全体と連携してフロントエンドを高速・柔軟に運用できるCI/CD基盤」へと生まれ変わったと考えると良いでしょう。
参考資料:
- AWS Amplify Hosting - User Guide
- Introducing the Next Generation of AWS Amplify’s Fullstack Development Experience
1. パフォーマンスとスケーラビリティの進化
Gen1:
アクセス増加に伴うパフォーマンス低下の懸念や、ビルド時間が長引くケースがありました。キャッシュ戦略も限定的で、複雑な依存関係を持つプロジェクトでは効率の悪さが目立つこともあったかと思います。
Gen2:
Gen2では、ビルド・デプロイ基盤が一新され、モノレポ構成や複数フレームワークを含むプロジェクトも高速かつ安定的に運用可能です。変更がない箇所の再ビルドを避けるインテリジェントなキャッシュ戦略が導入され、結果的にビルド時間も短縮されます。また、CloudFrontによるCDN最適化や最新ツールチェーンへの対応により、多くのユーザーが同時アクセスしてもレスポンス低下が起こりにくくなりました。
考え方のポイント:
Gen1で「とりあえず全部ビルドして全部デプロイ」していたところを、Gen2では「差分のみをビルド・デプロイし、高速にリリースする」イメージへ転換します。
2. 設定ファイルとビルドプロセスの再考
Gen1:
amplify.yml
などにビルドコマンドや環境変数を詰め込む運用が主流でしたが、柔軟性が限られ、環境変数管理やキャッシュ制御が難しい場面もありました。
Gen2:
ビルドプロセスがより洗練され、環境変数・キャッシュ戦略の扱いも改善されました。「Gen1で使っていた設定をそのままコピペ」では通用しない場合があるため、公式ドキュメント等を参照しつつ、設定を見直すことが大切です。それにより、環境変数はより安全かつ分かりやすい形で管理でき、キャッシュポリシーを適切に設定すれば、ビルド時間の短縮やデプロイフローの最適化が可能になります。
考え方のポイント:
とりあえず用意された環境に合わせるのではなく、「自分たちのビルド・デプロイ要件に合わせてAmplifyの設定をチューニングする」視点を持つと良いでしょう。
3. 権限設定・セキュリティ面での洗練
Gen1:
IAMロールやポリシー設定が裏側で暗黙的に処理され、複雑な要件に合わせるにはCloudFormationを直接いじるなど、ハードルが高い場面もありました。
Gen2:
IAMや権限関連の設定がより分かりやすくなり、Amplify CLIやコンソール上の操作で求める権限を適用しやすくなっています。
また、GraphQL APIやLambda、DynamoDBなどのバックエンドサービスと連携する際も、Gen2では最適化が進んでいるため、開発者はビジネスロジックやUX改善により集中しやすくなります。
考え方のポイント:
「Amplify固有の世界観でどうにか権限を調整する」から「AWS標準的な権限管理をAmplifyからシームレスに利用する」という方向へシフトしましょう。
4. 「AmplifyをAWS全体の一部」として捉えるマインドシフト
Gen1:
Amplifyはある種「ブラックボックス」的で、AWSリソースへの理解がなくても使えてしまいましたが、拡張や高度なカスタマイズには限界がありました。
Gen2:
AmplifyはAWSインフラの一部として考えると、より効果的に利用できます。CloudFrontやS3の設定を意識したキャッシュ・セキュリティの最適化、特定パスでのリダイレクトやヘッダー設定など、AWSリソースレベルでのチューニングが可能になり、UX改善やSEO向上へ繋がります。
考え方のポイント:
「Amplify=AWS関連サービスを簡易化するゲートウェイツール」という認識から「Amplify+AWS全体をフルに活用するCI/CDプラットフォーム」へと発想を転換しましょう。
5. マイグレーションはチャンス!全体見直しで洗練された運用へ
Gen1からGen2への移行は面倒な作業に感じるかもしれませんが、逆に考えると、プロジェクト全体を見直す絶好の機会です。
CI/CDパイプラインの改善、テスト戦略の再検討、ステージング・本番環境へのデプロイフロー最適化など、「とりあえず動いている」状態を抜け出し、より効率的でモダンな開発・運用環境を整えることができます。
公式ドキュメントを参照しながら段階的に移行することで、リスクを最小化できます。「次世代のAWSホスティング環境」へ飛び込むワクワク感を、ぜひこの機会に味わってみてください。
2024年12月18日にWAF対応がやってきた!
最後に、Amplify界隈で待望されていた最新トピックを紹介します。
2024年12月18日に、Amplify HostingでWAF (Web Application Firewall)対応が実装されました。これまではWAFを使用するためにCloudFrontを使って自前で管理したり、Amplify外で対策を行う必要がありましたが、今回のアップデートによりAmplifyホスティング自体にWAFポリシーを直接適用可能となりました。
これで一般的なWeb攻撃(SQLインジェクション、XSSなど)に対する対策を、Amplifyのみでよりシンプルに実装できるようになるでしょう。
参考資料:
まとめ
- Gen2はAmplifyを「より高速で柔軟なAWSフロントエンドCI/CD基盤」へと進化させるアップデート。
- パフォーマンス、スケーラビリティ、ビルドプロセス、環境変数管理、権限周りなど、多面的な改善が行われています。
- 「AmplifyをAWSの一部として捉え、必要に応じてAWSリソースレベルで最適化する」視点が重要です。
- 2024年12月18日のWAF対応により、セキュリティ面での安心感も一段と高まりました。
Gen1の知識や使い方を踏まえつつ、公式ガイドやドキュメントを活用してGen2へ一歩踏み出してみましょう。この移行は、ただのバージョンアップではなく、より高度なフロントエンド開発・運用へと繋がる新たな可能性をもたらしてくれます。ぜひ、この機会にGen2を試してみてください!
Discussion