torinomeを使って樹木モデルをARカード化+AR召喚してみた。
はじめに
前回の記事では、torinomeにおけるPLATEAUを参考にしたホロラボ樹木モデルについて解説しました。本記事では、そのモデルをtorinomeで使用可能な「torinome樹木アセット」としてカード化し、最終的にtorinome Planner内でAR表示するまでの一連の手順を紹介します。
1. ホロラボ樹木モデルとは
ホロラボ樹木モデルとは、PLATEAUが定義している樹木モデルのLODを参考に、ホロラボが独自に定義した「Holo_LOD」樹木モデルです。前回の記事では、弊社の熊崎が中心となり、その作成プロセスを紹介しました。
本記事では、その続編として、当モデルをtorinome Plannerで使用するためのカード化(Planner Card化)の流れを解説します。
2. torinomeにおけるカード化とは
torinomeは「torinome Web」「torinome Planner」「torinome AR」の3つのプロダクトで構成されています。その中でPlannerは、事前にtorinome Web上で登録された画像が印刷された「Planner Card」を現実世界で読み取ることで情報を取得するARサービスです。
Planner Cardの印刷例(75mm)
torinome Plannerを起動してPlanner Cardをかざす様子
登録されたモデル情報が重なって表示される様子
3. モデルのチェック
torinome Plannerでは、torinomeに登録された様々な3Dモデルをカードに紐づけて使用することが出来ますが、互換性の問題から色や形状が正しく表示されないものもありますので、事前にBlenderを使用して以下の点をチェックすることを推奨しています。
- ファイルサイズ:AR表示のパフォーマンスを保つため、適切なサイズに最適化する。
- 色の表現方法:テクスチャやマテリアルが正しく設定されているかを確認。
Blender上で「Image Texture → Principled BSDF → Material Output」の構成になっていれば基本的に問題ありません。その他の構成では色が正しく表示されない可能性があるため注意が必要です。
補助ツール:
glTF Validator を使ってGLBファイルの整合性をチェックできます。
4. マーカー背景画像の作成
Planner Cardに使う背景画像は、以下の条件を満たすよう作成します。
- モデルの内容が一目でわかる(画像や文字)
- 固有の特徴点を含む背景模様
- カメラで認識しやすいコントラスト
- 細かすぎずロストしにくい模様
- 矩形のアウトライン
今回は生成AIを活用して背景模様を作成しました。
5. 画像編集作業
背景模様と樹木ラベルを画像編集ソフトで合成します。今回は以下のツールを使用しました。
- Photoshop:背景の透過や縁取り処理に使用
- InDesign:複数のマーカーを効率的にレイアウト・PDF化
- Illustrator:少数枚の調整には便利(大量処理には不向き)
Photoshopでの処理手順:
Photoshop上での作業の目的としては、画像の切り抜きと可読性の調節になります。そのまま特徴点背景と重ねると模様で見づらいので、白い縁取りを加えます。
まずはPs上で画像を開き、自動選択ツールでバックスクリーンを選択します。実写出ない限り色は同一なので、許容値0に設定すると良いでしょう。選択したらDeleteキーで背景色を削除、そのまま選択を反転し、イチョウの木を選択した状態にします。
選択範囲>選択範囲を変更>拡張 で外側の縁を少し広げます。今回は30ptがよさそうです。
画像のように少しだけオフセットされた選択範囲になりました。
別のレイヤーを新規作成し、選択した後、選択範囲を右クリック>塗りつぶしを選択。内容>ホワイトを選択したらOKをクリックしましょう。
すると、オフセットした分だけ白く縁取られたイチョウ画像ができました。
イチョウが選択されたまま切り抜きツールをクリックすると、自動的にイチョウに合わせて切り抜き範囲を決めてくれます。できたらPNGで保存し、別ファイルとして開いた背景画像の上に配置してください。
6. torinome Web Admin Toolsでの設定
torinome Web Admin Tools にて以下の設定を行います。
- Projects:プロジェクトの作成(今回は既存のものを使用)
- Resources:3Dモデルを登録し、Resource IDを取得
- Markers:背景画像を登録し、Marker IDを取得
- Planner Cards:Resource IDとMarker IDを紐づけて登録
- Planner Sets:Planner Cardsをまとめてセット化。Plannerで使用するには必須
登録手順:
各設定項目の詳細については、公式のガイドを参照してください。
まずは先程作成したマーカーの画像を登録します。Admin Tool画面左のMarkerをクリック。
画面右のAddをクリックして設定画面を出してください。
Nameに名前を、Fileで画像ファイルを選択してください。
すると一覧にイチョウが現れ、Editの欄にIDが表示されます。ここではコピーせずともOKです。
更に画面左よりResourcesをクリックして、.g;bファイルを登録してください。Markersと全く同じなのでここでは割愛します。
これで必要な2つが揃ったので、Planner Cardsを登録します。Planner CardsよりAddをクリックして、それぞれのIDを登録してください。
このあとPlanner SetにCardを登録しますが、ここでは割愛します。詳しくはご利用マニュアルを参照してください。
7. torinome Plannerでの表示デモ
Projectの作成とPlanner Setの設定が完了したら、torinome Plannerを使用してAR表示を確認します。iPadアプリ「torinome Planner」をタップし、アカウントID/PW、Project、Planner Set、Groupを選択して起動します。
無事に表示されました。
おわりに
本記事では「ホロラボ樹木モデル」をtorinomeに取り込み、Planner Cardとして活用し、AR表示まで行う手順を紹介しました。
torinome Plannerを活用することで、あたかも建築模型を卓上で動かしているように建物・什器や樹木のレイアウトや空間の検討や、それをもとにしたディスカッションを行う事が可能となります。また、一度構成した空間は、torinome Webやtorinome ARを活用することで様々なスケールや目線での活用が可能となります。
都市の緑化計画や土木建築などの分野において、特に3Dの設計ツール等に慣れていない施主様や関係者との打ち合わせやプレゼンテーションの場などで活躍が期待されます。
もし「自分で作成したモデルをAR表示したい」「実在するものをスキャンして表示したい」といったご要望があれば、ぜひホロラボまでご相談ください。
今後も、torinomeを活用した新しい取り組みを発信していきます!
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