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textlint-rule-preset-ai-writingを試す

に公開

はじめに

最近、ライティングの仕事を始めてみました。とはいえこういう時代ですので、積極的に AI を活用しつつも、しかし AI には難しいことを入れ込むバランスを養っていきたいなと考えています。

ある時期から LLM は上手な文章を高速に書くようになったので感心するどころか絶望する一方で、AI 的と感じられる文章構成や言語表現が頻出することも感じていました。

そんなところ、AI 的な文章表現を検出する textlint のプリセットである textlint-rule-preset-ai-writing のリリース情報を X で発見しました。ので早速試してみました。

textlint と textlint-rule-preset-ai-writing

まず、textlint は azu 氏が開発した自然言語のための lint ツールです。多数のルールプリセットが公開されており、複数のルールプリセットを組み合わせることでより多様で高度なパターン検出が可能になります。テックブログやヘルプページといったドキュメントの文章校正に利用されている事例が見られます。

https://textlint.org/

https://zenn.dev/kgsi/articles/a88273d293abe07c5acb

そして textlint-rule-preset-ai-writing は AI 生成文章によく見られる誇張表現などのパターンを検出し、より自然な日本語表現を促す textlint のルールプリセットです。

https://github.com/textlint-ja/textlint-rule-preset-ai-writing

執筆時点で、以下のようなルールがあります。

ルール名 説明
no-ai-list-formatting リストアイテムで機械的な印象を与える可能性のある記述パターンを検出します。
no-ai-hype-expressions AI ライティングで過度に使用されがちな誇張表現やハイプ的な表現を検出します。
no-ai-emphasis-patterns AI が機械的に生成しがちな強調パターンを検出します。
ai-tech-writing-guideline テクニカルライティングのベストプラクティスに基づいて、文書品質の改善提案を行います。詳細なガイドラインについては docs/tech-writing-guidelines.md を参照してください。

セットアップ

インストール

npm install --save-dev textlint textlint-rule-preset-ai-writing textlint-rule-preset-ja-technical-writing

または

yarn add -D textlint textlint-rule-preset-ai-writing textlint-rule-preset-ja-technical-writing

公式で textlint-rule-preset-ja-technical-writing との組み合わせて使用することが推奨されているため、こちらの例でも記載しています。

設定

プロジェクトのルートに .textlintrc を作成し、以下の設定を追加します。

{
    "rules": {
        "preset-ja-technical-writing": true,
        "@textlint-ja/preset-ai-writing": true
    }
}

それぞれのドキュメントで求められることに合わせて、ルールプリセットが持つ個別のルールを無効化したり、許容する範囲や条件などをカスタマイズできます。

詳しくは GitHub の README を参照してください。

実行方法

npx textlint [FILE_NAME]

一般的なコーディングにおける lint ツールのように CI で利用することはもちろん、MCP サーバとして起動できるため AI に文章生成させたあとすぐ文章校正させるといった使い方もできます。

やってみる

まず書かせる

Claude にあえて指摘しがいがありそうな抽象的なテーマで記事を書かせたのち、シンプルな設定で textlint を実行してみました。

「AI の進歩によって 10 年後の社会がどう変わっているか」についての記事を作成してください。

生成された記事は 3000 字程度で以下のような感じ。全文は参考までに最下部に記載しました。

# AI がもたらす 10 年後の社会:変革と共生の時代へ

2025 年から見た 2035 年の社会は、AI の進化によって私たちの想像を超える変化を遂げているだろう。この記事では、AI の進歩が社会にもたらす具体的な変化を、仕事、教育、医療、日常生活の観点から考察する。

(略)

結果確認

エラーは全部で 7 件でした。

ルール名 説明 件数
no-ai-list-formatting リストアイテムで機械的な印象を与える可能性のある記述パターンを検出します。 4 件
no-ai-hype-expressions AI ライティングで過度に使用されがちな誇張表現やハイプ的な表現を検出します。 2 件
no-ai-emphasis-patterns AI が機械的に生成しがちな強調パターンを検出します。 0 件
ai-tech-writing-guideline テクニカルライティングのベストプラクティスに基づいて、文書品質の改善提案を行います。 1 件

no-ai-list-formatting

11:1   error  リストアイテムで強調(**)とコロン(:)の組み合わせは機械的な印象を与える可能性があります。より自然な表現を検討してください。 @textlint-ja/ai-writing/no-ai-list-formatting
(ほか3件は同一のため省略)

指摘を受けたのは以下の文章。

### 新たな職業の誕生

-   **AI トレーナー**: 特定分野の AI を教育・調整する専門家
-   **デジタル倫理コンサルタント**: AI 導入における倫理的課題を解決
-   **人間-AI 協調デザイナー**: 人と AI の最適な協働方法を設計
-   **AI バイアス監査官**: AI システムの公平性を監視・改善

英語の技術文書ではよく見る表現です。とはいえ日本語としては AI 生成的に見えてしまう表現ですね。OSS などでは日本語でも使っている例もよく見ますし、必要に応じて無効化すれば良いのでしょう。

no-ai-hype-expressions

22:41  error  「完全に」という絶対的な表現は過度に断定的である可能性があります。「多くの場合」などの表現を検討してください。 @textlint-ja/ai-writing/no-ai-hype-expressions
41:39  error  「大幅に」という表現は誇張的である可能性があります。具体的な数値や割合を示すことを検討してください。         @textlint-ja/ai-writing/no-ai-hype-expressions

指摘を受けたのは以下の文章。

### パーソナライズド学習の実現

各生徒に AI 学習アシスタントが割り当てられ、個人の学習速度、興味、才能に合わせた完全にカスタマイズされた教育プログラムが提供される。従来の「学年」という概念は薄れ、各自が自分のペースで学習を進める。
### メンタルヘルスケアの充実

AI カウンセラーが 24 時間対応可能となり、メンタルヘルスケアへのアクセスが大幅に改善。人間のカウンセラーと AI が連携し、より効果的な治療を提供。

誇張表現というか、LLM が何事も「とても素晴らしいもの」かのように語るのは強化学習のせいなのでしょうかね。やはり人間のパートナーとしての役割を強く求められてしまっているということなのでしょうか。AI の精神病理のことすら考えてしまいます。

それはさておき、こうした抽象化を伴う推論は人間が補足すべき典型的な領域だろうと自分は考えています。技術文書であれば具体性・客観性を補足する。そうでもなければ、想定読者に応じて(なんとなく)推論可能(だと思える程度)に表現を変更すると良さそうです。

no-ai-emphasis-patterns

エラーが 0 件だったため、よくわかりません。

ai-tech-writing-guideline

41:39  error  【具体性】定量化されていない変化表現が検出されました。具体的な数値や割合の提示を検討してください。 @textlint-ja/ai-writing/ai-tech-writing-guideline

指摘を受けたのは以下の文章。

### メンタルヘルスケアの充実

AI カウンセラーが 24 時間対応可能となり、メンタルヘルスケアへのアクセスが大幅に改善。人間のカウンセラーと AI が連携し、より効果的な治療を提供。

同じように誇張表現が指摘されています。こちらは ai-tech-writing-guideline のルールなので、技術文書としては定量化をした方が良いと勧められています。

まとめ

少なくとも現状、AI で生成した文章によく見られる微妙な表現は明らかにあります。それらを修正するかどうかは各々の判断であるにせよ、「これどうしようかな〜」と考えるべきポイントを示してくれる素敵なツールだと思いました。しばらく継続的に使ってみるつもりです。

LLM はどうしても英語データを多く学習している側面がありますし、そもそも LLM という性質上、マイノリティ言語が駆逐される危惧もしばらく前から感じています。日本語話者にとって、こうした日本語に特化したツールは大切にした方が良いものではないかと思います。

日々、AI を使った記事生成を実際によく行っているので、「たびたびこういう表現を直してるなー自分」と気づいたら、積極的に Contribute したいなと思いました。


参考:生成した記事

# AI がもたらす 10 年後の社会:変革と共生の時代へ

2025 年から見た 2035 年の社会は、AI の進化によって私たちの想像を超える変化を遂げているだろう。この記事では、AI の進歩が社会にもたらす具体的な変化を、仕事、教育、医療、日常生活の観点から考察する。

## 1. 労働市場の再編成

### AI パートナーシップ時代の到来

10 年後、多くの職業で AI は「置き換える存在」ではなく「協働するパートナー」となっている。プログラマーは AI ペアプログラミングが標準となり、医師は AI 診断支援システムと共に働き、デザイナーは AI と創造的な対話を通じて作品を生み出す。

### 新たな職業の誕生

-   **AI トレーナー**: 特定分野の AI を教育・調整する専門家
-   **デジタル倫理コンサルタント**: AI 導入における倫理的課題を解決
-   **人間-AI 協調デザイナー**: 人と AI の最適な協働方法を設計
-   **AI バイアス監査官**: AI システムの公平性を監視・改善

### 労働時間の変化

週 4 日勤務が多くの業界で標準となり、余った時間は創造的活動や学習、コミュニティ活動に充てられる。AI が定型業務を担うことで、人間はより高次の思考や感情的知性を要する仕事に集中できるようになる。

## 2. 教育の個別最適化

### パーソナライズド学習の実現

各生徒に AI 学習アシスタントが割り当てられ、個人の学習速度、興味、才能に合わせた完全にカスタマイズされた教育プログラムが提供される。従来の「学年」という概念は薄れ、各自が自分のペースで学習を進める。

### 生涯学習社会の確立

技術の急速な変化に対応するため、大人も常に新しいスキルを学び続ける必要がある。AI が個人のキャリアパスを分析し、必要なスキルを提案。マイクロラーニングが主流となり、通勤時間や休憩時間に効率的に学習できる。

### 実践的スキルの重視

知識の暗記よりも、批判的思考、創造性、感情的知性、コミュニケーション能力などの「人間らしい」スキルが重視される。AI と協働する方法自体が重要な学習項目となる。

## 3. 医療の革新

### 予防医療の高度化

ウェアラブルデバイスと AI の組み合わせにより、健康状態が 24 時間モニタリングされ、病気の兆候を早期に発見。個人の遺伝情報、生活習慣、環境要因を総合的に分析し、パーソナライズされた健康管理プランが提供される。

### 診断・治療の精密化

-   AI が医療画像を人間以上の精度で分析し、見逃されがちな初期症状を発見
-   薬の副作用や相互作用を AI が予測し、個人に最適な処方を提案
-   ロボット手術がより一般的になり、地方でも高度な医療を受けられる

### メンタルヘルスケアの充実

AI カウンセラーが 24 時間対応可能となり、メンタルヘルスケアへのアクセスが大幅に改善。人間のカウンセラーと AI が連携し、より効果的な治療を提供。

## 4. 日常生活の変容

### スマートシティの実現

都市全体が AI によって最適化され、交通渋滞の解消、エネルギー効率の向上、犯罪の予防などが実現。自動運転車が普及し、移動時間が生産的な時間や休息時間に変わる。

### バーチャルとリアルの融合

拡張現実(AR)と AI の組み合わせにより、現実世界に情報が重ね合わされる。言語の壁はリアルタイム翻訳で解消され、グローバルなコミュニケーションが当たり前になる。

### 家庭内の AI 執事

各家庭に AI アシスタントが常駐し、家事の自動化、スケジュール管理、買い物の最適化などを担当。高齢者の見守りや子供の教育サポートも行う。

## 5. 社会的課題と対応

### デジタルデバイドの解消

AI の恩恵を全ての人が受けられるよう、政府主導でデジタルリテラシー教育が強化される。基本的な AI サービスへのアクセスが人権として認識される。

### プライバシーとセキュリティ

個人データの管理に関する新たな法整備が進み、個人が自分のデータをコントロールできる仕組みが確立。AI によるサイバーセキュリティも高度化し、より安全なデジタル社会が実現。

### 倫理的枠組みの確立

AI の判断に関する説明責任、バイアスの排除、人間の尊厳の保護などを定めた国際的な倫理基準が制定される。企業は AI 倫理委員会の設置が義務付けられる。

## 6. 人間性の再定義

### 創造性の開花

AI が定型的な作業を担うことで、人間は創造的活動により多くの時間を費やせるようになる。アート、音楽、文学などの文化活動が活発化し、新たな表現形態が生まれる。

### コミュニティの重要性

デジタル化が進む一方で、人と人との直接的なつながりの価値が再認識される。地域コミュニティが活性化し、世代を超えた交流が増える。

### 精神的成長への注目

物質的豊かさよりも精神的充実を求める人が増え、瞑想、マインドフルネス、哲学的探求などが日常的な実践となる。

## まとめ:共生と成長の時代へ

10 年後の社会は、AI との共生によって大きく変容している。しかし、その変化は人間性を失わせるものではなく、むしろ人間らしさを再発見し、より豊かに表現する機会となる。

重要なのは、この変化を恐れるのではなく、積極的に形作っていく姿勢だ。AI は道具であり、その使い方次第で社会はより良くも悪くもなりうる。私たち一人一人が、どのような未来を望むのかを考え、その実現に向けて行動することが求められている。

技術の進歩は止まらない。しかし、その進歩を人類の幸福につなげるのは、他でもない私たち人間の役割だ。10 年後の社会が、より公平で、創造的で、人間らしい社会となることを願いつつ、今日からその未来に向けた一歩を踏み出そう。
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