Copilot Notebookを使えば「1業務1RAG」が実現できるのでは?
1. 2025年6月に登場したCopilot Notebook
Copilot Notebook は、2025年6月にMicrosoftからリリースされた
長文かつ構造的に対話できる新しいAIチャットです。
Microsoft 365 Copilotの1機能として組み込まれているのですが、
従来のCopilotチャットでは難しかった以下のことが可能となっています。
- 過去のチャット履歴を一貫して参照する
- 参照する資料を随時選択・追加できる
- 複数資料を同時に参照できる
- 返信方法を指示できる
1か月近くこれを触っているのですが、これがかなり便利でして。
業務の数だけいろんなサポートの形の可能性があると思っています。
今回このノートブックの使い方や機能を紹介します。
2. Copilot Notebook="超簡単RAG"では?
Copilot Notebookを一言で言うと、
「誰でも一瞬で作成&利用できるミニRAG」 と言える気がします。
RAGと言えば外部データから情報を検索して回答を生成する仕組みで、
Microsoftサービスでも以下の構築例などがあります。
Document Intelligenceを使用したRAG構成例
もちろん正式には異なりますし、精度や参照方法も違うわけですが、
両者が提供する価値と利用しようとする目的としては、非常に近いのではないかと思っています。
巷で言われているRAGと比べて、Copilot Notebookは、
-
強い点
- 構築不要で、ライセンスユーザーであれば誰でもすぐ使用できる
- 個人でそれぞれのファイルを追加できる
- 複数のノートブック(プチRAG)を作成できる
-
弱い点
- 追加できるファイル数は最大20個
- Word,Excel,PDF,PPTなどMS対応のファイルしかアップロードできない
…などが言えるとかと思います。
Copilot Notebookを使用すれば 組織内全員に 「1業務1ミニRAG」 が実現できるのではないでしょうか。
他類似サービスとの違い
この機能を使用していると
- Copilot Studioでできるよ!
- SharePointエージェントと似てない?
と考えてしまいます。
これらの回答としては、「Copilot Notebookは他の類似サービスのいいとこどり」 と言える気がします。
項目 | Copilot Notebook | 通常のCopilotチャット | SharePointエージェント | Copilot Studioチャットボット |
---|---|---|---|---|
提供開始時期 | 2025年6月 | Copilot標準機能 | 2024年後半〜2025年 | 2023年〜 |
特徴 | 対話履歴を構造化して長時間深掘り対話可能 | 単発的な対話に強く、コンテキスト保持は限定的 | SharePoint内の文書に特化したAI検索・対話 | 外部データソースを組み込んだカスタムRAG型 |
文書参照 | 複数文書を同時にアップロード・指定可能 | チャット開始時のコンテキストに限定 | SharePoint上の文書を自動参照 | DataverseやSharePoint、OneDrive等をRAG対象に設定可能 |
チャット履歴の保持 | Notebook形式でセッション全体を保存・再利用可能 | セッション単位で短期記憶のみ(長文には不向き) | ユーザーセッション中は維持(ただし一問一答寄り) | チャットボットとして永続的な対話設定が可能 |
カスタマイズ性 | 返信スタイル・トーンなど指定可能 | ユーザー指示に依存 | 自動生成、カスタマイズ不可 | プロンプト・応答スタイル・条件分岐など細かく設定可能 |
主な用途 | 複雑な業務課題の解決、調査レポート作成 | 日常業務の質問・補助・要約など | 社内ドキュメントQ&A・ガバナンス支援 | 社内QA、業務フローの自動化、外部公開Botなど |
利用対象者 | ビジネスユーザー、リサーチ・企画職など | 一般社員全般 | ナレッジ利用者(非IT部門含む) | 担当者、開発者、業務設計者 |
RAG機能の有無 | 明示的なRAG設定は不可(文書参照に近い) | RAGではない | 内部RAG的な挙動(SharePoint文書限定) | 明示的にRAG構成を構築可能(セマンティック検索など) |
3. 使い方
使い方は公式でも共有されているので、ここでは簡単に紹介します。
社内情報を含んだ表示には白図形で隠しています。見にくくてスミマセン。
(1) ノートブックを作成する
(2) 「参照」から追加するファイルを選択する
追加したファイル
DX動向2024 - 日本企業が直面するDXの2つの崖壁と課題
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/discussion-paper/eid2eo0000008jv4-att/dx-two-cliff-walls.pdf
デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2023年度) 全体報告書
https://www.ipa.go.jp/jinzai/chousa/m42obm0000008q65-att/skill-henkaku2023-zentai.pdf
デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2023年度) 個人調査報告書
https://www.ipa.go.jp/jinzai/chousa/m42obm0000008q65-att/skill-henkaku2023-torikumi.pdf
事例企業における自律的な学び促進の取組み
https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/ps6vr700000083ki-att/000106874.xlsx
(3) 「返信方法」を設定する(任意)
ここはChatGPTやClaudeと同じく任意です。
この設定で特に私は大きな違いは感じないのですが、
絵文字不要・箇条書きの回答くらいは便利でした。
(4) 完成・チャット開始!
以上で完成です。
色々書いていますが、主にはファイルを選択するだけです。
以下にCopilotの回答一例を添付します。
今回の内容はWeb上にも落ちているので回答難易度は高くないのですが、
これが組織内の情報や顧客情報であれば、より他のLLMと差別化した強みを発揮できます。
「各スキルレベルを解説して」
Copilot Notebook の返信
せとぅさんからの「各スキルレベルを解説して」というご質問に対して、アップロードいただいた資料をもとに、IPAが定義するスキルレベルの体系とその意味を以下に整理してご説明します。
■ IPAスキル標準におけるスキルレベルの定義
IPAの「ITスキル標準(ITSS)」では、各職種・専門分野におけるスキル習熟度を レベル1〜7 の7段階で定義しています。以下はその概要です。
● レベル1〜2:基礎的スキル
- レベル1:指導のもとで業務を遂行できる。
- レベル2:標準的な業務を自立して遂行できる。
● レベル3〜4:実務者・リーダークラス
- レベル3:チームメンバーとして業務を遂行し、技術的課題を解決できる。
- レベル4:小規模プロジェクト(10人未満)でリーダーとして業務を遂行できる。
● レベル5〜6:中堅〜上級リーダー
- レベル5:中規模プロジェクト(10〜50人)でリーダーとして業務を遂行できる。
- レベル6:大規模プロジェクト(50〜500人)でリーダーとして業務を遂行できる。
● レベル7:エキスパート・業界リーダー
- レベル7:超大規模プロジェクト(500人以上)で責任者として業務を遂行し、学会・技術フォーラム等で発表できる。
■ スキルレベルの具体的な適用例(職種別)
以下は職種ごとのスキルレベルの適用例です。
● ITアーキテクト(例:04_ITA_Skill_V3_2011.docより)
- レベル3:基本的なアーキテクチャ設計を理解・適用できる。
- レベル5:中規模プロジェクトでアーキテクチャ設計を主導できる。
- レベル7:業界標準を踏まえた設計を行い、外部発表も可能。
● ソフトウェア開発(例:08_SWD_Skill_V3_2011.docより)
- レベル3:チームメンバーとして開発に参加し、設計・実装・テストができる。
- レベル6:15人以上のチームを率いて開発プロジェクトを推進できる。
● ITサービスマネジメント(例:10_ITSM_Skill_V3_2011.docより)
- レベル4:サービスデスクや運用管理のリーダーとして業務遂行。
- レベル6:大規模契約(年15億円以上)を管理する責任者として活動。
● プロジェクトマネジメント(例:05_PM_Skill_V3_2011.docより)
- レベル3:プロジェクトメンバーとして業務遂行。
- レベル7:500人以上のプロジェクトを統括し、契約金額10億円以上を管理。
■ スキルレベルの活用目的
IPAのスキルレベルは、以下のような目的で活用されます。
- 人材育成計画の策定:どのレベルを目指すかを明確にすることで、育成方針が立てやすくなります。
- キャリアパスの設計:職種ごとの成長段階を可視化し、目標設定が可能になります。
- 人材評価・配置:業務内容に応じた適切な人材配置が可能になります。
■ 関連資料からの補足
- skill-henkaku2023-zentai.pdfでは、スキルレベルの向上が「自己市場価値の向上」や「キャリア形成」に直結することが示されています。
- skill-henkaku2023-kojin.pdfでは、特に先端IT人材において、レベル6以上のスキルを持つ人材が「生成AI活用」や「副業・転職意向」などに積極的であることが報告されています。
次にどう活かすか?
せとぅさんの業務や関心領域に照らして、どのスキル領域・レベルを目指すべきかを一緒に考えることもできます。
ご希望があれば、以下のような支援も可能です:
- ご自身の現在のスキルレベルの診断
- 目標レベルに向けた学習計画の提案
- DXパスポートやIPAスキル標準を活用した育成支援
(+α) 通常チャットの会話履歴をノートブックに追加する
Notebook上でAIとチャットすると必要以上にファイルを参照することがあります。
その時は通常のCopilotチャットで情報を調べて、
その回答を参照ファイルとして、既存ノートブックに追加できます。
よりオリジナルの用途に特化したLLMを作成できると思います。
(+α) Copilotの回答を他メンバーへ共有する
現時点では作成したノートブックやチャット全体の共有はできないようですが、
Copilotの回答をOneNoteやPagesに写すことで他メンバーへ共有できます。
特に 「コンポーネントへのコピー」 はTeamsやOutlookなどでもプレビューできるので、
共有が簡単です。
環境や初期設定によっては少し権限をいじる必要があるかもしれません。
コンポーネントリンクをTeamsチャットで共有するとこんな感じ。
4. 今後期待すること
リンクを参照できるようになってほしい
現在Copilot Notebookが参照できるのは Microsoft対応のファイルのみ です。
NotebookLMをすでに活用されている方などは、
どうしてもWebリンクを参照する機能が欲しくなるのではないかと思います。
今後のアップデートに期待。
Microsoft 365 アカウント内でサポートされているファイルの種類へのリンクは追加および固定できますが、Web リンクを含む他のすべてのリンクはサポートされていません。
ノートブックを共有&共同編集できるようになってほしい
PagesやWordにエクスポートして共有できるのですが、
やはりノートブックをそのまま共有したりお互いで編集できるほうが便利な気がします。
現在公開できない(はず)のに、ノートブック右上に「非公開ノートブック」という表示はあるので、
近々できるようになるのかもしれません。今後のアップデートに期待。
まとめ:まずは使ってみましょ
おそらくこの趣旨の記事ではCopilot Notebookのユースケースも紹介するのが普通だと思うのですが、Copilotをユースケースから考えるのは少しモッタイナイ要素があると考えているので割愛します。
最初は「結局どんな使い道があるんや?」と思われるかもしれませんが、
実際に使ってみることで、自分の業務に合った使い方が自然と見えてくる と思います。
と言いつつあくまで参考程度にですが、私は以下のような場面で活用しています。
- 複数ファイル間の平仄・整合性確認
- 見積もりの検討・比較
- 資格試験の勉強・要点整理
Copilot Notebookは、使いながら自分だけの業務支援AIに育てていけるツールだと思います。
まずは気軽に試してみましょう!
みなさんの業務効率化の幅が広がるのではないかと思います。
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