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CreativeML Open RAIL-M ライセンス 全文和訳(非公式)

2023/04/19に公開

Stable Diffusionが採用している、CreativeML Open RAIL-M ライセンスを全文和訳したものが見当たらなかったので、掲載します。
すでに和訳を公開されている方がいらっしゃいました……。書いた直後に発見しました。
https://estrilda.damonge.com/post/japanese-translation-for-license-of-stable-diffusion

別の訳者による訳の存在は無意味ではないと思うので、一応この記事は残しておきます。
急いで作成したので不備などあるかもしれません。(2023/5/22 弁護士にレビューしてもらいました)不備あればどんどんご指摘ください。可能な限りアップデートしていきます。

2023/4/20 正確性は重視せず、わかりやすさを重視する方はこちら↓
https://zenn.dev/hases0110/articles/7cff43c5baed7d

※本和訳はあくまで独自の訳文です。本和訳と原文に差異があった場合、原文が優先します。本稿に誤りがあったことによる結果について筆者は一切の責任を負いません。
※(* )は訳注です。
太字部分は訳者が独自に設定したものです。

2023/5/22 弁護士によるレビューを受けて表現を修正しました。ただし、これも正確性を保証するものではありません。主な変更点は下記のとおりです。

  • 4.d項を追加
  • 用語を一般的なものに修正
  • 定義語を「」で囲った
  • その他、表現が正確でない部分の修正

以下、和訳


Copyright (c) 2022 Robin Rombach and Patrick Esser and contributors.

CreativeML Open RAIL-M

2022年8月22日付

第I章:前文

マルチモーダル生成モデルは、広く採用・利用されており、他の個人の中でも特にアーティストがコンテンツ制作のツールとして人工知能(AI)や機械学習技術を考え、その恩恵を受ける方法を変革させる可能性を秘めています。
これらの成果物が社会全体にもたらす現在および(将来の)潜在的な利益にもかかわらず、技術的制約や倫理的考慮のために、それらの悪用の懸念もあります。
つまり、このライセンスは、付属のモデルのオープンな使用と責任ある下流での使用の両方を目指すものです。オープン性については、知的財産権の付与に関するオープンソースのパーミッシブ(*寛容)なライセンスからインスピレーションを得ました。下流での責任ある使用については、「モデル」の潜在的な悪用が発生した場合にライセンサーがライセンスを行使できるように、非常に特定のシナリオでの「モデル」の使用を許可しない使用ベースの制限を加えました。同時に、アートやコンテンツ生成のための生成モデルに関するオープンで責任ある研究を促進することを目指しています。
下流の派生バージョンのモデルが異なるライセンス条項の下でリリースされる場合でも、後続のモデルは常に、少なくとも元のライセンス(このライセンス)と同じ使用ベースの制約を含む必要があります。 私たちは、オープンなAI開発と責任あるAI開発の間の交差点を信じています。したがって、この「ライセンス」は、AIの分野で責任あるオープンサイエンスを可能にするために、両方の間のバランスをとることを目的としています。
この「ライセンス」は、モデル(およびその派生物)の使用に適用され、モデルに関連するモデルカードによって通知されるものです。

ここに、「あなた」と「ライセンサー」は、以下のとおり合意します:

1. 定義

  • 「ライセンス」 とは、本書に定義されている使用、複製、および「配布」の条件を意味します。
  • 「データ」 とは、「モデル」のトレーニング、プリトレーニング、または評価のためのものを含む、「モデル」と共に使用されるデータセットから抽出された情報および/またはコンテンツの集合を意味します。「データ」は、「ライセンス」の下ではライセンスされません。
  • 「出力」 とは、「モデル」を操作した結果、そこから得られる情報コンテンツとして具現化されたものを意味します。
  • 「モデル」 とは、「補完資料」に具体化されているモデル・アーキテクチャに対応する、学習された重み、パラメータ(オプティマイザの状態を含む)からなる、付属の機械学習ベースのアセンブリ(チェックポイントを含む)であって、「補完資料」を使用して「データ」に基づいて全体または一部をトレーニングまたはチューニングされたものをいいます。
  • 「モデルの派生物」 とは、「モデル」、「モデル」に基づく作品、または他のモデルが「モデル」と同様の性能を発揮するように、「モデル」の重み、パラメータ、活性化または出力のパターンを他のモデルに転送することによって作成または初期化される他のモデルに対するすべての修正(中間データ表現の使用を伴う蒸留法または他のモデルを訓練するための「モデル」による合成データの生成に基づく方法を含むが、これらに限らない)をいいます。
  • 「補完資料」 とは、「モデル」を定義、実行、ロード、ベンチマークまたは評価するために使用され、トレーニングまたは評価のためのデータを準備するために使用される(もしあれば)付属のソースコードおよびスクリプトを意味します。これには、付属の文書、チュートリアル、例などがあれば、それも含まれます。
  • 「配布」 とは、電子的またはその他の遠隔手段(APIベースまたはウェブアクセスなど)により利用可能となるホステッドサービスとしての「モデル」の提供を含む、「モデル」または「モデルの派生物」の第三者への送信、複製、出版またはその他の共有を意味します。
  • 「ライセンサー」 とは、「ライセンス」を付与する著作権者または著作権者によって権限を付与された団体を意味し、「モデル」および/または「モデル」の配布に関する権利を有する可能性のある個人または団体を含みます。
  • 「あなた」 (または 「あなたの」 )とは、「ライセンス」によって付与された許諾を行使し、および/またはチャットボット、翻訳機、画像生成器など最終用途のアプリケーションにおける「モデル」の使用を含む、あらゆる目的および使用分野において「モデル」の使用を行う個人または法人を意味します。
  • 「第三者」 とは、「ライセンサー」または「あなた」と共通の支配下にない個人または法人を意味します。
  • 「貢献(*コントリビューション / Contribution) とは、著作権者または著作権者に代わって提出する権限を付与された個人または法人によって、「モデル」に含めるために「ライセンサー」に意図的に提出された、「モデル」の原版およびその「モデル」または「モデルの派生物」の修正または追加を含む著作物を意味します。この定義において、「提出された」とは、「ライセンサー」またはその代理人に送られた電子的、口頭、または書面によるあらゆる形式のコミュニケーションを意味します。これには、「モデル」を議論し改善する目的で「ライセンサー」によって、または「ライセンサー」に代わって管理されている電子メーリングリスト、ソースコード管理システム、課題追跡システムにおけるコミュニケーションが含まれ、これらに限定されませんが、著作権者によって書面上『「貢献」でない』と明瞭に表示され、あるいはその他の方法で指定されるコミュニケーションを除きます。
  • 「貢献者(*コントリビューター / Contributor) とは、「ライセンサー」、および「貢献」がその者に代わって「ライセンサー」によって受領され、その後「モデル」内に組み込まれた個人または法人を意味します。

第II章:知的財産権

著作権および特許権に基づくライセンス付与は、「モデル」、「モデルの派生物」、および「補完資料」に適用されます。「モデル」および「モデルの派生物」には、第III章に記載された追加条項が適用されます。

2. 著作権ライセンスの付与

「ライセンス」の条件に従い、各「貢献者」は、「あなた」に対し、「ライセンス」により、「補完資料」、「モデル」、および「モデルの派生物」の複製、作成、展示(*公に見えるようにすること)、実演(*パフォーマンス、見る以外の方法で感じさせることを含む。例えば音楽などを聞かせることなど)、サブライセンス(*あなたが各貢献者から受けたライセンスに基づいて第三者にライセンスを与えること)、および配布を行うための永久的、世界的、非独占的(*あなたは各貢献者が他の人に同一のライセンスを付与することを制限できない)、無償、ロイヤルティフリー、取消不能の著作権ライセンスを付与します[1]

3. 特許権ライセンスの付与

「ライセンス」の条件に従い、そして該当する場合には、各「貢献者」は、「あなた」に対し、「ライセンス」により、「モデル」および「補完資料」の作成、作成委託、使用、販売の申し出、販売、輸入、およびその他の方法による移転を行うための永久的、世界的、非独占的、無償、ロイヤルティフリー、取消不能(本項に記載の場合を除く)の特許権ライセンスを付与します。この場合、当該ライセンスは、当該「貢献者」がライセンス可能な特許請求の範囲のうち、当該「貢献者」の「貢献」のみ、または当該「貢献」と当該「貢献」が提出された「モデル」との組み合わせにより必然的に侵害されるものにのみ適用されます。「あなた」が、「モデル」および/または「補完資料」、あるいは「モデル」および/または「補完資料」に組み込まれた「貢献」が直接または寄与的な特許侵害であると主張する特許訴訟(訴訟における交差請求または反訴を含む)を何らかの団体に対して行った場合、「モデル」および/または作品[2]に関して「ライセンス」の下で「あなた」に与えられた特許権ライセンスは、当該訴訟が主張または提起された日をもって終了するものとします。

第III章:使用、配布、再配布に関する条件

4. 配布および再配布

「あなた」は、以下の条件を満たすことを条件に、「モデル」または「モデルの派生物」を、 改変の有無にかかわらず、「第三者」のリモートアクセス目的(例:Software-as-a-Service)のためにホスティングし、あらゆる媒体で複製および配布することができます[3]

  • a. 第5項で言及される使用ベースの制限は、「モデル」または「モデルの派生物」の使用および/または配布に適用されるあらゆる種類の法的合意(ライセンスなど)に、「あなた」による強制力のある条項として含まれなければならず、「あなた」は「モデル」または「モデルの派生物」が第5項の対象となることを、「配布」する後続ユーザーに通知しなければなりません。この規定は、「補完資料」の使用には適用されません。
  • b. 「あなた」は、「モデル」または「モデルの派生物」を受け取る「第三者」に対して、「ライセンス」のコピーを与えなければなりません。
  • c. 「あなた」は、変更したファイルには、「あなた」がファイルを変更したことを示す目立つ通知を表示させなければなりません。
  • d. 「あなた」は、「モデル」、「モデルの派生物」のいかなる部分にも関係しないものを除き、全ての著作権、特許権、商標権および帰属の表示を残さなければなりません。
  • e. 「あなた」は、「あなたの」改変に独自の著作権宣言文を追加することができ、また、第4. a項を尊重して、「あなたの」改変の使用、複製、または「配布」、または当該「モデルの派生物」全体に対して、追加のまたは異なるライセンス条件を提供することができます。ただし、「モデル」の使用、複製、および「配布」が、その他の方法で「ライセンス」に記載されている条件に従っている場合に限ります[4]

5. 使用ベースの制限

付属書Aに記載された制限は、使用ベースの制限とみなされます。このため、「あなた」は「モデル」および「モデルの派生物」を、指定された制限用途に使用することはできません。「あなた」は、合法的な目的のみのために「ライセンス」に従った場合を含め、「ライセンス」に従って、「モデル」を使用することができます。使用には、「モデル」を使ったコンテンツの作成、「モデル」のファインチューニング、更新、実行、トレーニング、評価、および/または再パラメータ化が含まれます。「あなた」は、「モデル」または(*あなたが作成や配布などを行う)「モデルの派生物」を使用するすべての「あなたの」ユーザーに対し、本項(第5項)の条件を遵守することを要求するものとします。

6. あなたが生成する出力

「ライセンス」に定める場合を除き、「ライセンサー」は、「あなた」が「モデル」を使用して生成した「出力」について、いかなる権利も主張しません。「あなた」は、あなたが生成した「出力」およびその後の使用について責任を負うものとします。出力のいかなる使用も、「ライセンス」に記載されているいかなる規定にも違反することはできません。

第IV章:その他の規定

7. アップデートと実行時の制限

法律で認められる最大限の範囲において、「ライセンサー」は、「ライセンス」に違反する「モデル」の使用を(遠隔的にまたはその他の方法で)制限する権利、電子的手段による「モデル」の更新、または更新に基づく「モデル」の「出力」の改変を行う権利を有します。「あなた」は、「モデル」の最新版を使用するために合理的な努力をするものとします。

8. 商標および関連するもの

「ライセンス」のいかなる条項も、「あなた」が「ライセンサー」の商標、商号、ロゴを使用すること、または支持を示唆したり当事者間の関係を誤認させたりすることを許可するものではなく、「ライセンス」で明示的に付与されていない権利は、「ライセンサー」によって留保されています。

9.保証の免責

適用される法律で要求されるか、または書面で合意されない限り、「ライセンサー」は、明示または黙示を問わず、いかなる種類の保証または条件(権原、非侵害、商品性、特定目的への適合性の保証または条件を含むがこれに限定されない)もなく、「現状のまま」ベースで「モデル」および「補完資料」を(および各「貢献者」はその「貢献」を)提供します。「あなた」は、「モデル」、「モデルの派生物」、および「補完資料」を使用または再配布することの適切性を判断することに単独で責任を負い、「ライセンス」に基づく「あなたの」許諾の行使に伴うあらゆるリスクを引き受けるものとします。

10. 責任の制限

「ライセンス」の結果、または「モデル」および「補完資料」の使用または使用不能から生じる、あらゆる性質の直接的、間接的、特別、付随的、または結果的な損害を含む損害(営業権の喪失、業務停止、コンピュータの故障もしくは誤動作、またはその他のあらゆる商業的損害もしくは損失に対する損害を含むが、これらに限定されない)について、不法行為(過失を含む)、契約、またはその他のいかなる法的理論においても、たとえそのような損害の可能性について助言を受けていたとしても、適用法の要求(故意および重大な過失行為など)または書面による同意がない限り、「貢献者」は「あなた」に対して責任を負わないものとします。

11. 保証または追加責任の受諾

「モデル」、「モデルの派生物」、およびその「補完資料」を再配布する際に、「あなた」は、「ライセンス」と一致するサポート、保証、補償、またはその他の責任義務や権利の受諾を提供し、そのための手数料を請求することを選択できます。ただし、そのような義務を受け入れる際に、「あなた」は、他の「貢献者」のためではなく、「あなた」自身のために、「あなた」の唯一の責任で行動することができ、また、あなたがそのような保証または追加の責任を受け入れたために、当該「貢献者」に発生した責任、または主張された請求について、各「貢献者」を補償、防御、および免責することに同意した場合に限られます。

12. (*存続条項)

「ライセンス」のいずれかの条項が無効、違法または執行不能と判断された場合でも、残りの条項は影響を受けず、当該条項が「ライセンス」に規定されていなかったかのように有効であり続けるものとします。

以上、条件

付属書A

使用制限

「あなた」は、「モデル」または「モデルの派生物」を(*下記のとおり)使用しないことに同意します:

  • 適用される国、連邦、州、地方、または国際的な法律または規制に違反するいかなる方法においても;
  • いかなる方法であれ、未成年者を搾取し、害し、または搾取もしくは害しようとする目的での使用;
  • 他者に危害を加える目的で、検証可能な偽の情報および/またはコンテンツを生成または流布すること;
  • 個人を特定できる情報であって、個人を傷つけるために使用される可能性のある情報を生成し、または流布させること;
  • 他人の名誉を傷つけ、中傷し、またはその他の嫌がらせをすること;
  • 個人の法的権利に悪影響を与える、または拘束力があり強制力のある義務を作成または変更する完全自動化された意思決定のため[5]
  • オンラインまたはオフラインの社会的行動、既知のまたは予測される個人的または人格的特徴に基づき、個人または集団を差別しまたは害することを意図した、またはそのような効果を有する使用;
  • 年齢、社会的、身体的または精神的特徴に基づく特定の集団の脆弱性を利用し、その集団に属する人の行動を、その人または他の人の身体的または精神的危害を引き起こす、または引き起こす可能性がある方法で実質的に歪めるため[6]
  • 法的に保護された特性またはカテゴリーに基づく個人またはグループを差別することを意図した、またはそのような効果を持つ使用のため;
  • 医学的助言および医学的結果の解釈を提供するため;
  • 個人が詐欺や犯罪を行うことを予測するなど、司法、法執行、移民または亡命プロセスの管理に使用する目的で情報を生成または発信するため(例:テキストプロファイリング、文書内の主張の間の因果関係を描くこと、無差別かつ任意に対象を絞った使用によるものなど)。
脚注
  1. つまり、このライセンスに違反しない限りはこのライセンスに基づいて 「あなた」が得た著作権ライセンスは将来に渡って永久に取り消されることはありません。 ↩︎

  2. これは「補完資料」の誤りだと推測されます。原文では"Work"となっていますが、"Work"は本ライセンスで定義されておらず、あなたに"Work"のライセンスを与えるとはどこにも書かれていないからです。 ↩︎

  3. つまり、2. 3. とあわせて解釈すると、一度このライセンスで公開したものは、派生物も含め、同一ライセンスで複製され続けることを誰にも止められません。 ただし、このライセンスに違反した人はライセンスを解除される可能性があります。 ↩︎

  4. ライセンスに従わない配布については、本「ライセンス」と同一のライセンスを適用すると解釈できます。 ↩︎

  5. そのような法的な意思決定に補助的に利用してもよいが、ちゃんと人間を介在させてその正当性を判断しなさいということだと思われます ↩︎

  6. 例えば、日本人は食べ物を粗末にすることに敏感なので、その性質を利用して、食べ物を粗末にする映像を作って怒らせてやろう、炎上させてやろう、みたいなことです。これをもっと悪いことに応用すれば犯罪などに利用できてしまいます。 ↩︎

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