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CreativeML Open RAIL-M ライセンスをわかりやすく意訳

2023/04/20に公開

これは、Stable Diffusionが採用している、CreativeML Open RAIL-M ライセンスを、一般の人向けにもわかりやすく、私の解釈で意訳・要約したものです。

  • わかりやすさを重視し
  • 正確性は重視せず
  • 冗長な部分は省き
  • 重要な部分は丁寧に

説明することを目的としました。よって、正確性を期する場合は必ず原文を参照してください。
筆者は法に関する資格を持ちません。本稿に不足や誤りがあったことによる結果について筆者は一切の責任を負いません。
下記は全文の拙訳ですが、こちらも正確とは限りません。原文を優先してください。
https://zenn.dev/hases0110/articles/8cc95543f0c1ae

さすがに間違いだろうという部分、わかりにくい部分、不足などあればお知らせください。可能な限り修正していきます。

2023/5/22: 弁護士のレビューにより、一部表現を修正しました。4.d項の追加以外、意味的に大きな変化はありません。なお、この修正はこの記事の正確性を保証するものではありません。

以下、意訳・要約です。


CreativeML Open RAIL-M (筆者による意訳・要約)

2022年8月22日付(2023年4月20日参照)

第I章 前文

生成モデルは、AIを使ってアーティストが作品を作る方法を革新する素晴らしいものです。しかし、悪用のおそれもあります。このライセンスでは、誰でも使えるようにしながら、悪用を防ぎ、責任を持って使ってもらうためのルールを定めています。

1. 定義

  • ライセンス: 本書で定められた使用、複製、配布の条件。
  • データ: モデルと一緒に使われるデータセットからの情報やコンテンツ。
  • 出力: モデルを使って得られる結果の情報。
  • モデル: 学習された重みやパラメータを含むチェックポイントなど。
  • モデルの派生物(または単に「派生物」): モデルをもとに作られた他のモデルや修正されたモデル[1]
  • 補完資料: モデルを操作するためのソースコードやスクリプト・説明など。
  • 配布: モデルを他人に送ったり共有したりすること。
  • ライセンサー: ライセンスを与える権利を持つ人や団体。
  • あなた: このライセンスによって許可された行為をする人や法人。
  • 第三者: ライセンサーやあなたと関係のない人や法人。
  • 貢献: モデルに対する改善や追加を提案する行為。
  • 貢献者: モデルに貢献する人や法人。

第II章:知的財産権

著作権と特許権のライセンスは、「モデル」、「モデルの派生物」、「補完資料」に適用されます。また、それらには第III章に書いてあることも適用されます。

2. 著作権について

(著作権そのものはあなたに渡しませんが、)このライセンスに従う限り、このモデルと派生物について、著作権のことは気にせず、下記のことをして構いません。

やっていいこと

  • 複製(コピー)
  • 派生物の作成[2]
  • 公での表示・展示(インターネット・物理的展示などによる)
  • 公での演奏・パフォーマンス(画像以外のデータの場合などに「聴かせる」など、見る以外の方法でも相手に感じさせることを含む)
  • 第三者にライセンスを与えること(サブライセンス)
  • 配布(インターネットなど、たとえばHugging FaceやCivitaiなどでの公開を含む)

条件

上記の「やっていいこと」は、

  • 永久に許可されます
  • 全世界でできます
  • あなたが独占することはできません(他の人がこのモデルをこのライセンスで使うことなどを止めることはできません)
  • 無償です
  • ロイヤルティフリーです(同じ条件で、何度でも、複数の用途に使えます)
  • これらの権利を他の人が取り消すことはできません(ライセンサー、たとえばStability AIであってもです)

3. 特許について

このモデルには、貢献者の特許が含まれているかも知れませんが[3]、上記2.の「条件」と同じ条件で、特許のことは気にせず、下記のことをして構いません。ただし、あなたがこのモデルについての特許訴訟を起こしたら、下記の権利はなくなります。

やっていいこと

  • プログラムの作成や、物の製造など(と、それらを誰かにさせること)
  • それら[4]を販売すること(と、それを申し出ること)
  • それらを輸入などの方法で移転すること

第III章:使用、配布、再配布について

4. 配布・再配布

あなたは、下記の条件で、このモデルや派生物を配布・再配布できます[5]。どんな媒体でもOKです。

  • a. 「5. 使用時の制限」に書かれている制限と同等以上の制限をかけなければなりません(「5.」と「別紙A」の制限を緩めることはできません)。
  • b. このライセンスのコピーを提供しなければなりません[6]
  • c. 変更したファイルは、わかりやすく表示しなければなりません。
  • d. すべての著作権、特許権、商標権および帰属の表示を残さなければなりません。
  • e. 変更部分にはあなたの著作権を表示できます。
  • f. 派生物には、このライセンスと異なるライセンスを適用しても構いません。ただし、その場合でも、上記「a.」の通り、「5.」「別紙A」同等以上の制限をかけなければなりません。
  • g. 上記「e.」「f.」は、あなたがこのライセンスに従っている場合のみ許可されます(何らかの違反をしていたら、自動的にこのライセンスと同じライセンスになります)。

5. 使用時の制限

あなたがこのモデルを使用するときは、「別紙A」の制限に従わなければなりません。画像などを生成するときだけでなく、追加学習などを行うときも同じです。これは後続のユーザーに必ず守らせなければなりません。

6. あなたが生成する出力

ライセンサーは、ここに書いてあること以外の権利は主張しません。(その代わり、)あなたは、あなたが生成した出力についての責任を負います。

第IV章:その他の規定

7. アップデートと実行時の制限

ライセンサーには、下記の権利があります

  • このライセンスに違反した人の使用を制限することができます。
  • このモデルを更新できます。また、それにより出力を修正できます。

あなたには、このモデルの最新版を使用する努力義務があります。

8. 商標など

このライセンスでは商標について定めません。このライセンスによって何らかの商標権が誰かに付与されたり、制限されたりすることはありません。

9. 保証の免責

ライセンサーは、「現状のまま」このモデルを提供し、このモデルについて何も保証しません。あなたはこのモデルを使用・配布・再配布することの責任を単独で負います。ただし、法や契約で定められている場合を除きます。

10. 責任の制限

このモデルの使用、または使用できなかったことによる損害について、貢献者は責任を負いません。ただし、法や契約で定められている場合を除きます。

11. 保証・追加責任の受託

あなたは、このモデルや派生物を再配布するとき、あなた自身の責任で、有償でサポートなどを提供することができます。ただし、それによって貢献者に損害が及ぶことがあってはなりません。

12. 存続条項

このライセンスに無効な部分があっても、それ以外の部分は有効です。

別紙A

使用制限

このモデルと派生物を使用するときは、必ず下記の制限を守らなければなりません。

  • 法律や条約などに違反してはいけません。
  • どんな方法でも、未成年者を搾取したり、害したり、それらの目的で使用したりしてはいけません。
  • 他の人に危害を加える目的で、嘘の情報またはコンテンツ(画像・動画などを含む)を作成・公開してはいけません。
  • 個人を傷つける可能性のある個人情報を作成・配布してはいけません。
  • 他の人の名誉を傷つけたり、誹謗中傷をしたり、その他の嫌がらせをしたりしてはいけません。
  • 個人を法的に罰するなど、個人が損害を被るような意思決定の過程のすべてを、AIやコンピューターに委ねてはなりません。そのようなときは必ず人間が介入し、正当性を判断しなければなりません。
  • 個人や集団の特徴、過去の行動や予測される将来の行動にもとづいて、個人や集団を差別したり、害したりしてはいけません。また、そのような目的で使用することも禁止します。
  • ある集団の性質を利用し、その人たちを害するように行動をコントロールする目的で使用してはいけません[7]
  • 個人や集団を差別する目的での使用や、差別的効果があるような使用をしてはいけません。
  • 医師や医療職の代わりをさせてはいけません。補助的でもダメです。
  • 個人が犯罪を行うことを予測するなど、法的な執行のために使用してはいけません。
脚注
  1. 元のモデルの性能を引き継ぐために、元のモデルの出力を学習させたモデルを含みます。いわゆる蒸留法なども該当します。 ↩︎

  2. 定義はかなり広く、このモデルの出力を使って他のモデルを蒸留した場合なども含みます。詳しくは原文を参照してください。 ↩︎

  3. もし、ライセンサーや貢献者達も知らない第三者の特許がこのモデルに含まれていたら?それは大変ですが、Stable Diffusionの場合、最もありえるシナリオはStability AIが特許訴訟を起こされることです。SDの利用者一人ひとりを特定して特許訴訟を起こすことも理論上可能ですが、手間がかかりすぎて労力が見合わないためです。逆に、別の企業が利用して大きな収益を得ていた場合は、多額の特許料の徴収が期待できるため、労力が見合うとして訴訟を起こされる可能性も高くなると思います。 ↩︎

  4. このモデルや派生物そのものを含みます。 ↩︎

  5. つまり、2. 3. とあわせると、一度このライセンスで公開したものは、派生物も含め、同一ライセンスで複製され続けることは止められません。このライセンスに違反していれば別ですが。 ↩︎

  6. 一般的にはリンクでもよいですが、リンクは切れることがあり、切れた瞬間に理論上はライセンス違反になるため、コピーとともに配布することをおすすめします。リポジトリのフォークなら、そのときそのライセンスであったことも証明できます。 ↩︎

  7. 例えば、日本人は食べ物を粗末にすることに敏感なので、その性質を利用して、食べ物を粗末にする映像を作って怒らせてやろう、炎上させてやろう、みたいなことです。これをもっと悪いことに応用すれば犯罪などに利用できてしまいます。 ↩︎

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