0→1で開発生産性の可視化に取り組み、不安と向き合った2年間
はじめに
株式会社Hacobuでは、2022年から開発生産性を可視化するという取り組みが始まり、Findy Team+が導入されました。
これまでの取り組みについては下記の記事にまとめています。
開発生産性に取り組み始めたばかりの方だと相談相手がいなかったり、周囲の理解が得られなかったりして大変なこともあると思います。そこで本記事ではHacobuで開発生産性に取り組み始めた僕の心境がどのように変化していったのかについてまとめてみました。
こんな方にオススメ
Findy Team+導入の目的と期待
Findy Team+の導入が始まった2022年は『LeanとDevOpsの科学』という書籍が話題になり、開発生産性やFour Keysという言葉がチラホラ聞かれるようになった頃でした。
僕もHacobuに入社する前に『LeanとDevOpsの科学』を読んでおり、「開発生産性」という言葉があるんだなあくらいに思っていました。
そういった状況の中でFindy Team+を使ってFour Keysが計測できると知り、どんなものなのかが気になっていました。ちょうど弊社のCTOも開発生産性の可視化に関心を持っていたようで、Four Keysを計測するためにFindy Team+を導入することになりました。
導入前の状況
Findy Team+の導入が始まった頃は、ちょうど僕がHacobuに入社したタイミングでもありました。
Hacobuに入ってから驚いたことは、プルリクを見てくれるスピードがとても早く、承認待ちで作業が止まるということがほぼない開発体制でした。
この頃はまだFindy Team+の見方がまだよく分かっていない上に、開発のテンポの良さを体感していたため、Findy Team+を入れてどの辺が改善されるんだろうと思っていました。
CTOからも「効果がなければ別の施策を検討しても良い」と言われてはいたのですが、Findy Team+の活用に効果がないと早期に結論を出すのは、現状維持バイアスが働いてしまうような気がしたため、それなりに使い倒す必要はあるだろうと思ってFindy Team+を見る時間を取っていたのを覚えています。
導入後の変化
導入当初はFour Keysを計測することにフォーカスしていたのですが、そうしようと思ったのもGoogleが提唱しているからなんとなく計測をしてみるというような温度感でしかなく、手段の目的化になっているような気がしていました。
そのため、もう少し日々の開発で感じている問題からアプローチしようと、Four Keysからはいったん離れてサイクルタイムだけを見るようにしました。開発であれば毎日行っているので、サイクルタイムを見ることでFindy Team+の使い方や開発の状況をイメージしやすくなると思ったためです。
開発生産性をどのように捉えるかを試行錯誤する中で、軌道に乗った取り組みが次の2つでした。
- Findy Team+を使ってサイクルタイムを見ながらふりかえりをする
- SPACEを使って定性・定量の両側面から分析する(SPACE導入はメンバーからの提案だった)
これらの取り組みを行う過程で小さな改善はいくつか行ったものの、体感としてはすでに開発者体験が良かったこともあり、これまでと比べてリードタイムが大幅削減されるといったインパクトのある改善ができたわけではありませんでした。
良い状態であれば観測しなくていいのか?
しかし開発生産性を捉える上でふと思ったことがあります。
悪いところから大幅に改善すれば確かに話題性があるのですが、もともと良い状態を維持できているチームも十分優れたケイパビリティを持っているのではないか?ということです。
サービスのグロースや人員の増加に合わせて開発環境は悪化していくはずなので、いい状態を維持し続けられているというのは非常に良いことではないかなと思いました。
リプレイスができれば話題性がありますが、そもそもリプレイスの必要性を感じさせずに地道にメンテできている方が優れている、といった話に近いかも知れません。
「Findy Team+を導入する」というメッセージは「悪いところを改善する」ということを示唆しているように感じていた部分があったように思います。しかし良い状態を維持できていることを確認するためのヘルスチェック機構としてFindy Team+を活用してもいいなと感じるようになりました。
またCTOの次の記事にも書かれているのですが、サービスの状態を観測しないというのは「目隠しをしてフライトするようなもの」であり、開発生産性についてもちゃんとモニタリングが必要であるというメッセージをもらいました。
こうして定期的にFindy Team+をチェックする体制が組織全体に広がっていき、現在に至っています。
成功の要因
開発生産性の取り組みがうまくいった要因を次の4つの観点でまとめてみました。
1. 自分
新しい取り組みは現状維持バイアスを持ちやすいことを常に意識していました。そのためFindy Team+の導入に効果があったかどうかについては早期に結論を出さないように気をつけていました。
また、たとえ開発体制が良かったとしても「目隠しをしてフライトする」のは避けた方が良いというスタンスを持つようにしていました。
2. 周囲のメンバー
どのように進めたらいいか分からないなりにも試行錯誤をしてくれるメンバーがいてくれたことに救われました。またSPACEを使って定量だけでなく定性面でも評価してみようという提案があったのも転機だったと思います。
3. 経営陣
開発生産性の取り組みに対して経営陣からの理解があったこと、また開発生産性をモニタリングする必要性について、CTOからの具体的な説明があったことが推進力を高められたのではないかと思います。
4. 外部環境
結果論ではありますが、Findy Team+ Awardを受賞したことで「やってきてよかった」という気持ちになりました。成功の要因というよりは成功の証左が得られたという面が大きいです。
これらのうち、どれか1つでも欠けていたら、ここまで進められてはいなかったかも知れません。
今後の展望
僕は現在、開発生産性の取り組みからは離れていますが、開発生産性に取り組み始めたばかりの方は自分と同じ悩みを抱えているかも知れないと思い、下記の D-Plus などの勉強会に参加して登壇したり交流を深めたりするようにしています。
今では経営陣に向けてFindy Team+のアクティビティを報告するなどの取り組みも行われており、今後も上手に活用していければいいなと思っています。
まとめ
会社によって状況は異なると思いますが、この記事が開発生産性に取り組み始めて悩んでいる方への一助になれば幸いです。
参考までに『開発生産性の教科書』という書籍の概要をシンプルにまとめた記事も書いていますので、こちらも合わせて参考にしてみてください。

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