企業価値はMCPサーバー数で決まる時代が到来?125名以上が集まったMCP実践テクニック祭りレポート#CA.ai
CA.ai#2 〜明日から使える実践MCPテクニック〜 レポート
皆さん、こんにちは!
株式会社グロースリンクのAIエンジニア Hayate Esaki(haya21_8)です。
はじめに
本日はなんと、Abema Towersで開催された「CA.ai #2 明日から使える実践MCPテクニック」に参加してきました。
Abema Towers前での集合写真
企業競争力にも直結する注目技術「MCP」の最新動向や実践ノウハウが満載のイベントでした。本記事では、その内容をギュッと凝縮してお届けします!
イベント概要
CA.aiはサイバーエージェントが主催する生成AI特化の勉強会で、今回は約125名以上が参加してMCPをテーマに開催されました。
項目 | 内容 |
---|---|
イベント名 | CA.ai #2 明日から使える実践MCPテクニック |
参加者数 | オフライン:約125名以上 オンライン:約400名以上 |
ハッシュタグ | #caai |
会場 | Abema Towers(東京都渋谷区宇田川町40-1) |
詳細 | イベントページ(connpass) |
タイムテーブル
時間 | 内容 |
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19:30 | 本番開始 |
19:30 - 19:35 | 挨拶 |
19:35 - 19:45 | オープニング |
19:45 - 20:00 | はじめてのMCP:開発現場で役立つMCPの基礎 |
20:00 - 20:25 | MCP活用事例LT① |
20:25 - 20:50 | MCP活用事例LT② |
20:50 - 21:15 | MCP活用事例LT③ |
21:15 - 21:20 | クロージング |
21:20 - 21:30 | 休憩 |
21:30 - 22:30 | 懇親会 |
基調講演:企業の時価総額はMCPサーバ数で決まる時代へ
講演の様子
2026年の未来予測
MCP保有数が示す企業競争力の新指標として、投資家がMCPエコシステムの重要度を企業評価の重要指標とする時代が到来すると予測されています。アメリカではすでに始まっており、日本でも同様の動きが予想されます。
MCPの革新性
従来のAPIの管理やカスタムAPIの開発工数などの問題を解決し、文化の変化を引き起こしています。特に以下の点が注目されています:
- DXT MCP:App Storeのように配布可能
- ローカルファイルシステムへのアクセス
- レガシーシステムとのブリッジとして機能
社内システムやセキュリティが厳しい日本では、MCPの浸透が特に期待されています。
そもそも、MCP(Model Context Protocol)とは?
MCPは、AI(LLM)と外部のツールやデータをつなぐ共通のインタフェースです。
例えるなら「USB-Cのような規格」で、1つの仕組みで様々な外部サービスとつながることができます。
詳細は、Anthropic公式サイトをご覧ください:
MCPの基本構成
コンポーネント | 説明 |
---|---|
ホストアプリ | Claude Desktopなど、MCPクライアントを動かすアプリケーション |
MCPクライアント | AIが外部とやりとりするための中継層 |
MCPサーバー | GitHub、Figma、ファイルシステムなど外部サービスに実際に接続する側 |
AIが「この情報が欲しい」と要求すると、クライアントがサーバーと通信して応答を受け取り、AIに渡します。これにより「接続の共通化」「開発効率化」が図れます。
MCPが注目される理由
- 一度作ったMCPサーバーは、複数のAIクライアントから再利用可能
- リアルタイムに外部データやサービスへアクセスできる
- OAuth認証やアクセス制御によるセキュアな実装が可能
- 社内のレガシーシステムともつなぎやすく、日本企業と相性が良い
非エンジニアにこそClaude Desktopを
MCP Elicitationsにより、非エンジニアでもMCPの恩恵を受けられる環境が整いつつあります。
MCP Elicitationとは?
Elicitationは、MCPサーバーがユーザーに対して追加情報を求めるための仕組みです。
対話中に必要な情報(例:日付やIDなど)を動的に取得できます。
処理の流れ
-
入力要求の送信
サーバーはelicitation/create
を使って、ユーザーに入力を求めるリクエストをクライアントへ送信します。 -
入力形式の指定
要求にはJSON Schema
が含まれ、入力される値の型や制約(文字列、数値、選択肢など)を定義します。 -
ユーザーへの表示と入力
クライアントがUIを通じてユーザーにフォームなどを表示し、情報の入力を促します。 -
ユーザーの応答
ユーザーは以下のいずれかの方法で応答します。-
accept
: 入力を完了し、送信 -
decline
: 入力を拒否 -
cancel
: 処理を中断
-
詳細な仕様はこちら:
推奨MCPサーバ
現在、MCPサーバーとして特に注目されているのが Task Master です。
-
開発者:Eyal Toledano
-
概要:AIエージェントからの指示でタスクを操作・管理できる汎用MCPサーバーです。
GitHub IssueやPRDを読み取って要約したり、タスクを作成・更新・削除するなど、対話的なプロジェクト管理をサポートします。 -
特徴:
- ClaudeやCursorなど複数のLLMクライアントと連携可能
- タグや依存関係を含むタスク構造の操作に対応
- CLIベースでの導入が簡単、コード量も最小限
-
用途例:
- 「このIssueを整理してタスクに分解して」→ 自動でタスク作成
- 「FigmaとGitHubをまたいだPRDから、やるべき開発項目を抽出して」→ 要件化・登録
MCPロードマップ(公式|2025年3月27日版)
Model Context Protocol (MCP) は、以下の領域を中心に中長期の開発が進められています。
項目 | 概要 |
---|---|
多言語SDKの整備 | C#、Java、Kotlin、Python、Ruby、Rust、Swift、TypeScript 向けの MCP SDK を公式提供予定。 |
UI SDK | MCP クライアント用の共通 UI コンポーネント群。MCP 対応アプリのフロント実装を効率化。 |
リモートMCP対応 | ローカルだけでなく、ネットワーク越しの安全なサーバー接続(mTLS、署名付き登録)を標準化。 |
マルチエージェント対応 | 複数の AI エージェントが連携・分担して MCP サーバーとやり取りできる基盤を構築中。 |
検証/レジストリ | MCP サーバー・クライアントの登録、発見、スキーマ検証、署名付き配布の仕組みを拡充予定。 |
マルチモーダル対応 | 画像・音声・構造化データなど、テキスト以外のモーダルも MCP 経由でやり取りできるように拡張中。 |
ガバナンスと標準化 | 公式レジストリ、セキュリティルール、運用ガイドラインなど、信頼性あるエコシステム整備。 |
開発戦略
UIを作る前に、MCPサーバを作れ
MCPに対応したアプリケーション開発では、まずAIと外部ツールをつなぐ「MCPサーバ」を構築し、
その後にAIエージェントとの連携を検証しながら、必要に応じてUIを設計していくという段階的なアプローチが推奨されています。
推奨される開発フロー
-
MCPサーバの作成
- まずはバックエンド機能を担当するMCPサーバを用意。外部ツールやAPIとの接続処理をここに実装します。
-
AIエージェントでの検証
- ClaudeやCursorなどのLLMクライアントを通じて、サーバーの挙動や応答をテストします。
-
必要に応じてUIを作成
- 要件に応じて、ユーザー向けUIを後から追加。UI SDKなどの活用も視野に入ります。
企業への問いかけ
あなたの会社は、今どの段階にあるでしょうか?
-
MCPサーバーを100個持つ企業
各業務・各部署に特化したMCPサーバーを構築し、AIと連携した業務オートメーションが当たり前になっている企業 -
MCPサーバーを1個も持たない企業
外部ツールとの連携も、AIによる操作も行われておらず、MCP導入の第一歩すら踏み出していない企業
この問いは、MCPが“未来の標準インタフェース”になる中で、自社がどの程度その波に乗れているのかを見つめ直すきっかけとなります。
LT1:はじめてのMCP:開発現場で役立つMCPの基礎
講演の様子
MCPとは?
MCPはクライアントとサーバーに分けられます。
区分 | 説明 |
---|---|
MCPクライアント | LLMを搭載したアプリケーション。 例:Gemini、Claude など |
MCPサーバー | 外部サービスに接続し、データや機能を提供するサーバー。 例:AWS、GitHub など |
MCP 活用事例
サービス | 概要 |
---|---|
GitHub MCP | リポジトリの Issue や PR 内容を読み取り、仕様や問題点を自然言語で解釈・要約できる。 |
AWS CloudWatch MCP | 過去のエラーログを時系列で取得・分析し、原因究明やトレンド可視化を支援する。 |
Figma Dev Mode MCP | デザイン要素(レイヤー、プロパティなど)を構造化データとして取得し、仕様書やコード生成に活用。 |
Notion MCP | 会議議事録やナレッジから論点・TODO・キーワードを自動抽出し、整理されたレポートを生成。 |
複合利用(例) | 「GitHubの最新IssueからFigma設計に反映すべき修正案を提示して」といった複数ツールの連携も可能。 |
MCPサーバーのリスクと対策
MCPはセキュリティ対策が必須です:
対策項目 | 内容・目的 |
---|---|
ユーザー確認の強制 | 操作のたびに認証を行い、なりすましや誤操作を防ぐ |
権限の明示的な付与 | 各ツール・サービスに必要最小限のアクセス権のみを与える |
アクセスログの記録 | すべての操作履歴を記録し、後からの確認や監査を可能にする |
本番データは読み取り専用 | 書き込みを禁止し、重要なデータの破壊や変更を防ぐ |
コンテキストの自動憶測の抑制 | モデルが不完全な情報で勝手に判断しないよう、入力を明示的・構造的にする |
現時点ではMCPの仕様や実装も発展途上であり、想定外のリスクが生じる可能性があります。
そのため、こうした対策を前提として使うことが重要です。
開発現場への導入
MCPポータル(社内向けにリリース)
- 事例を社内に展開して推進中
開発現場への導入
導入形態 | 内容 |
---|---|
MCPポータルの構築 | 社内向けにMCPサーバをまとめて管理。利用中のツールやステータスを可視化し、統制を取りやすくする。 |
業務ごとの事例展開 | GitHub、Slack、NotionなどのツールにMCPを接続。自動化された実例を共有し、部署間で横展開。 |
RPA/BPMとの連携 | 業務フローにAI判断や自然文入力を追加。既存の自動化システムに柔軟性と対話性を加える。 |
ナレッジ共有・教育活用 | 社内BotやLLMを使ったQA支援、ドキュメント案内、オンボーディング支援などにMCPを活用。 |
勉強会・イベントの開催 | 社内でハンズオンや発表会を開き、MCP導入の成功例や活用ノウハウを共有。 |
まとめ
-
MCPとは
LLMと外部サービスを繋ぐ共通インタフェースです。 -
メリット
MCPと連携することで、ツール間の情報自動化、エージェントとの対話ワークフローなど、業務効率化の範囲が大きく広がります。 -
注意点
信頼できないMCPやデータソースは使わない
自動承認によるアクセスは要検討 -
次の一手
社内勉強会を開催し、導入事例を共有・発信できる環境を整備する
LT2:Playwright MCPで変わるフロントエンドAI運用
講演の様子
AI駆動開発とテストの課題
動作確認に時間を取られている
- コーディングの実装速度は向上
- テストや動作確認がボトルネックに
- AIをいかに自走させるかが効率化のポイント
フロントエンドテストの複雑性
UIの確認
- 人の目でしかわからない細かなズレなど、複雑で困難
Coding Agentの制約
- UIの確認が難しい
- 仕様の把握が難しい
- アクセシビリティの確認
フロントエンド領域では、Coding Agentを活かしきれていない現状があります。
Playwright MCPの登場
MCPからブラウザの操作や画面認識、要素の取得が可能になり、AI Agentに「目」と「手」を与えることができます。
推奨MCPサーバ
Playwright MCP
MCPからブラウザの操作や画面認識、要素の取得が可能になり、AI Agentに「目」と「手」を与えることができます。
- 開発者:Microsoft
-
役割:AIエージェントがWebページを開き、DOM構造を解析し、フォーム入力・クリック操作などを実行可能にします。
人間の代わりに「画面を見て動かす」ことができ、UIテストや業務アプリの自動操作に応用されています。
Playwright MCPの活用例
活用シーン | 説明(概要) |
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自然言語でのテスト実行 | LLMに対して自然言語でテスト指示を出すことで、Playwrightを通じたブラウザ操作・検証が可能に。 |
レスポンシブデザインの包括チェック | 異なる画面サイズやブラウザエンジンにまたがって一括UI検証が行えます。 |
開発サイクルの自動化 | コード生成 → テスト → 修正 の流れをAIが繰り返し、自律的に動作させることが可能です。 |
まとめ
Playwright MCP は、AIエージェントに「目」と「手」を与える仕組みです。
- 目:画面上のUI要素を認識・理解できる
- 手:ボタンのクリックや入力フォームの操作などを自動実行できる
これにより、従来人間が行っていたブラウザ上の作業やテストを、
自然言語による指示でAIが自動的に実行・修正・再実行することが可能になります。
Playwright MCPは、UIテスト・レスポンシブ検証・自動化サイクルの中心的役割を担い、開発現場における「ブラウザ操作の自動化」を現実のものにします。
LT3:AI駆動開発を最大化する効率化への挑戦
講演の様子
なぜAI駆動開発が必要なのか?
開発現場のあるあるを解決できるから:
- 必要なドキュメントを探すのに時間がかかる
- 巨大なコードの解析で1日が溶ける
- レビューやテスト作成で時間がかかる
生成AIの信頼性
生成AIが作ったコードやドキュメントの信頼性について、LLM-as-a Judgeという手法があります。
LLM-as-a Judge
- LLMのテキスト出力の品質を、定義された基準に基づいてLLMが評価
重要な原則
- AIのパフォーマンスは提供される文脈の質と量に直結
- 毎回のコンテキスト入力は非効率
- そこでMCPの導入がスポットライトに
MCPを活用した事例
n8nのMCPサーバー
ノーコードのワークフロー自動化プラットフォーム「n8n」をMCPサーバーとして利用。
AIが自然言語でn8nのフロー(例:Google CalendarやSlack連携など)を操作可能です。
Context7のMCPサーバー
AIが参照するドキュメントのコンテキストを動的に調整し、最新の情報を常にAIに供給します。
「use context7」とプロンプトに記載するだけでリアルタイム情報取得が可能です。
Claude Code Action
GitHub Actions上でClaudeモデルを呼び出し、PR分析やコード変更の自動実行ができるMCPベースのアクション。
まとめ
開発プロセス全体をAIが支援する時代へ向かっています。
- 開発プロセス全体をAIが支援する時代へ。
- AIの力を最大限引き出すには、良質な「文脈」を与えるMCP が不可欠。
- アシスタントより自律的な「AIエンジニア」との協業を目指す。
- 明日から、AIに任せてみましょう!
LT4:PipeCDとBucketeerのDocument MCP Serverを作って公開した話
講演の様子
PipeCDとは?
デプロイ関連のオープンソースソフトウェアです。
GitOpsスタイルで、Kubernetes、Terraform、AWS Lambda、ECSなど幅広いプラットフォームに対応し、セキュアでマルチクラウド環境の継続的デリバリを実現します。
開発したMCPサーバーの概要
PipeCD ドキュメントローカルMCPサーバー
- PipeCD公式のドキュメントをローカルで利用可能にし、全文検索や特定ページの参照APIをMCP経由で提供。
-
npx pipecd-docs-mcp
で簡単に起動できます。
PipeCD コントロールプレーンMCPサーバー
- PipeCDのコントロールプレーンAPIに接続し、アプリケーション情報・デプロイ状況の取得・操作をMCP経由で行えるGo製サーバー。
- ローカルnpxではなく、Goランタイムで動作します。
Bucketeer ドキュメントローカルMCPサーバー
- Bucketeerのドキュメントを自動クロール&キャッシュし、全文検索や取得APIをMCP対応。
-
npx bucketeer-docs-local-mcp-server
で起動可能です。
なぜ開発したか?
ユーザにとって手動でのドキュメント検索が面倒だから
- 特にPipeCDではYAML設定ファイルが複数あるため大変
- 通常のAIツールでは、情報が不正確/古い場合がある
実装時の工夫
GitHubとの整合性(Bucketeer)
- GitHubに置いてあるドキュメントをローカルにダウンロード
- ハッシュ値を保持
- npxコマンドが叩かれるたびに比較して更新をチェック
git sparse checkoutによる効率的なファイル取得(PipeCD)
- PipeCDのリポジトリにはドキュメント以外も含まれる
- git cloneの--sparseオプションにより、必要なディレクトリのみをダウンロード
MCPサーバーの実装時に役に立ったもの
- Awesome MCP Servers(https://mcpservers.org/)で参考にしたいMCPを探す
- GitHubやRepomixでコードをまとめる
- Claudeのproject機能に投入して壁打ちしたり、ref.xmlとかにしてディレクトリに置いて参照
まとめ
- MCPサーバは意外と簡単に作れる
- 意外な効果:以前開発していた、PipeCDの設定ファイル簡易生成ツールが不要になった
- 今後の展望:ドキュメント以外のMCPサーバも開発したい
- 例:AIがBucketeerのFeature Flagを設定する
懇親会
懇親会でいただいたお食事
イベント後に懇親会も行われ、初めての方ともAIや仕事について気軽に語り合える場となり、 若いAIネイティブ世代の勢いや、生成AIの楽しさ・可能性を実感できました。
全体のまとめ
MCPは単なる技術的な接続手段を超えて、企業の競争力を決定づける重要な要素となりつつあります。特に日本企業にとって、レガシーシステムとの橋渡しとして大きな戦略的価値を持つことが期待されています。
開発現場では、MCPを活用することで従来の開発フローを大きく変革し、AIを真のパートナーとして活用できる環境が整ってきています。セキュリティ面での注意は必要ですが、適切に活用すれば開発効率の大幅な向上が期待できるでしょう。
最後に、貴重な機会をいただいた運営の皆様、本当にありがとうございました!
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