東京大学大学院 工学系研究科の入試対策
東京大学大学院 工学系研究科(修士課程)の大学院入学試験(院試)対策・体験談についてまとめます.
筆者は2020年度に合格しています.
スケジュール
例年のスケジュールは下表のようになっています.
イベント | 時期 |
---|---|
出願 | 7月上旬 |
外国語試験 (TOEFLスコア提出) |
8月上旬 |
筆記試験 (一般教育科目・専門科目) |
8月下旬 |
口述試験 | 8月末 or 9月初め |
合格者発表 | 9月上旬 |
初めに英語の試験があることを意識して,計画的に英語・一般教育科目・専門科目の勉強をしておきましょう.
筆記試験後は口述試験で答える内容を整理しておきましょう.
各専攻の試験科目と募集人員
全ての専攻で外国語試験と口述試験が行われます.
各専攻の筆記試験科目と募集人員については下表のようになっています[1].
専攻 | 一般教育科目 | 専門科目 | 募集人員 |
---|---|---|---|
社会基盤学 | — | 社会基盤学 | 52 |
建築学 | — | 建築関係科目 | 32 |
都市工学 | — | 都市工学関係科目 | 25 |
機械工学 | 数学 | 機械工学 | 52 |
精密工学 | 数学・物理学 | — | 27 |
システム創成学 | — | システム創成学関連科目 | 45 |
航空宇宙工学 | 数学 | 航空宇宙工学 | 37 |
電気系工学 | 数学 | 電気電子工学・情報工学 | 70 |
物理工学 | 数学 | 物理学 | 42 |
マテリアル工学 | 数学 | マテリアル工学基礎 | 45 |
応用化学 | 化学 | — | 33 |
化学システム工学 | — | 物理化学,無機化学,有機化学,化学工学,化学数学から選択 | 28 |
化学生命工学 | — | 無機・分析・物理化学,有機化学,高分子化学,生命化学,バイオテクノロジーから選択 | 32 |
原子力国際 | — | 論理的思考能力を見るための数理的問題及び小論文 | 22 |
バイオエンジニアリング | 数学・物理学・化学 | — | 24 |
技術経営戦略学 | — | 数理的及び論理的思考能力を見るための問題 | 14 |
他大学・他学部・他学科の外部生は専門科目の試験がない専攻(精密工学専攻・応用化学専攻)を受験することが多いと思われます.なぜなら,専門科目は出題内容や過去問解答といった情報の得やすさの観点から内部生が有利だからです.とはいえ,外部生でも数年分の専門科目過去問は入手できるので,学力に自信のある方は挑戦してみるとよいと思います.
各試験の内容と対策
外国語(英語)
2020年度(2019年実施)以前
外国語の試験としてTOEFLテストが課されます.出願時にTOEFLスコアを提出するか,東大の本郷キャンパスで実施されるTOEFL ITPを受験します.
ほとんどの受験生はTOEFL ITPを選択し,他の筆記試験と同様の日程で受験します.ただ,他の筆記試験の直前にTOEFL対策に時間を取られないようにするには,出願時にTOEFLスコアを提出した方がよいでしょう.
2021(令和3)年度以降はTOEFL ITPの試験が開かれず,ほとんどの専攻でTOEFLスコアの提出が求められます.一部専攻ではIELTSやTOEICのスコア提出でも可となっています.化学生命工学専攻では独自の英語試験を課し,TOEFLは使わないことになっています[1:1].
対策としては,問題の形式に慣れるために問題集を1つやっておけばよいでしょう.外国語(英語)の成績は他の筆記試験の成績よりも軽視されるという噂がありますので,あまり時間をかけて対策する必要はなさそうです.
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一般教育科目
一般教育科目は,工学系研究科共通の試験問題であり,理系科目の基本的な学力を測るものです.過去問は研究科のWebページから見ることができます.
数学
数学は
- 微分積分・微分方程式
- 線形代数
- 複素関数論
- ベクトル解析・解析幾何
- フーリエ変換・ラプラス変換
- 確率
の分野からそれぞれ1問の計6問が出題されます.この中から3問(専攻によっては2問)を各自が選んで解答します.
試験時間は2時間半なので,1問あたりの時間は50分です.
受験生の学部・学科や好みに応じて問題を選べるのは嬉しいですが,問題間に難易度の差があると問題選びが命取りになります.それゆえ,どの分野の問題を解くのかを事前に決め打ちせず,全ての問題に目を通して簡単そうな問題を選ぶこと,およびどの分野の問題でも解けるように勉強しておくことが大事です.
令和3(2021)年度(2020年実施)の特例
令和4(2022)年度(2021年実施)の特例
- 主に「微分積分および微分方程式」と「級数・フーリエ解析および積分変換」
- 主に「ベクトル・行列・固有値(線形代数)」と「曲線・曲面」
- 主に「関数論・複素数」と「確率・統計,情報数学,その他」
の3問のみが出題されます[3].これまで以上に全分野を勉強しておくことが求められると思います.
対策としては,まず出題事項を確認し,教科書などで復習しましょう.その後,本番同様に時間を計って過去問の演習をしていきましょう.
問題をもっと解きたい人は情報理工学系研究科の数学の問題も解いてみるとよいと思います.
物理学
物理学は
- 力学
- 電磁気学
- 熱力学
- その他(量子論,振動・波動,材料力学など)
の分野からそれぞれ1問の計4問が出題されます.この中から2問を各自が選んで解答します.試験時間は2時間なので1問にかけられる時間は1時間です.
令和3(2021)年度(2020年実施)の特例
令和4(2022)年度(2021年実施)の特例
- 力学
- 電磁気学
の2問のみが出題されます[3:1].
化学
化学は
- 基礎物理化学
- 基礎無機化学
- 基礎有機化学
- 物理化学
- 無機化学
- 有機化学
- 分析化学
の分野からそれぞれ1問の計7問が出題されます.この中から,応用化学専攻の博士とバイオエンジニアリング専攻は4問,応用化学専攻の修士は5問を選んで解答します.試験時間は2時間です.
令和3(2021)年度(2020年実施)の特例
令和4(2022)年度(2021年実施)の特例
- 物理化学
- 無機化学
- 有機化学
の3問のみが出題されます[3:2].
口述試験
口述試験は,いわゆる面接です.教授陣が勢揃いしている部屋に受験生が一人ずつ招かれて口頭で試問に答えます.試問内容は専攻によって異なり,専門知識を確認されるところもあれば,志望動機や研究計画を聞かれるだけのところもあります.合格したら本当に入学するのかについて尋ねられることもあります.受験生のそうした本気度が見られているので,やる気満々で受け答えするようにしましょう.
服装はスーツの人がほとんどです.ノーネクタイのクールビズでも全く問題ないでしょう.私服で口述試験を受けても受かる人は受かっています.
一般教育科目の出題事項(傾向)
過去の試験で出題された事項,必要となった知識を以下にまとめます.忘れているものがあれば復習し,知らないものがあれば調べて過去問演習に臨んでください.
数学
第1問(微分積分・微分方程式)
- 対数微分
- 置換積分・部分積分
- 部分分数分解
- ガウス積分
- 2階定数係数線形常微分方程式
- 2階変数係数線形常微分方程式
- オイラーの微分方程式(非斉次)
- クレローの微分方程式
- リッカチの微分方程式
- 積分因子
- 連立線形常微分方程式
- 変数分離による偏微分方程式の求解
第2問(線形代数)
- 固有値,固有ベクトルの計算(3次正方行列)
- 対角化(対称行列・非対称行列)
- 行列の冪乗・平方根・指数関数
- 固有値と跡(トレース)・行列式の関係
- ケイリー・ハミルトンの定理
- レイリー商
- 正則行列の条件
- 余因子展開
- 連立一次方程式の解の数と階数(ランク)の関係
第3問(複素関数論)
- 極形式
- ド・モアブルの定理
- 主枝・分枝
- コーシーの積分定理
- 極・位数
- 真性特異点
- 留数・留数定理
- ジョルダンの補助定理
- コーシーの主値
物理学
第1問(力学)
- 円筒・円柱などの慣性モーメントの計算
- 並進・回転の運動方程式
- 力学的エネルギー保存の法則
- 運動量と力積の関係
- 運動量保存の法則
- 反発係数
- 二階定数係数線形斉次微分方程式の求解
- 単振動
- 角運動量保存の法則
- 回転体が滑らずに(滑りながら)転がるときの運動
第2問(電磁気学)
- 電束・電束密度
- 誘電率
- 電界(電場)・電気力線
- 静電ポテンシャル・電位
- 導電率
- ジュール熱・ジュールの第一法則
- 静電容量
- 静電エネルギー
- 複素インピーダンス
- ガウスの法則
- 磁化・磁化電流
- 透磁率
- E-B対応,E-H対応
- 磁界(磁場)
- 磁束密度
- ローレンツ力
- ファラデーの電磁誘導の法則
- アンペールの法則
一般教育科目の過去問解答
数学
2023年度
2022年度
2021年度
2020年度
2019年度
2018年度
2017年度
物理学
2021年度
2020年度
2019年度
2018年度
2017年度
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