はじめに
Google Workspace Studio (以下、Workspace Studio) は Google Workspace で使える、Gemini が搭載されたワークフローを自動化するサービスです。基本的なコンセプトやユースケースのイメージについては下記のブログを書きましたのでご覧ください。
Workspace Studio には Google からデフォルトで提供しているテンプレートがあり、よくあるユースケースはテンプレートを元に作り始めることができます。
テンプレートはカテゴリごとにグルーピングされており、概ね Workspace Studio でできること・解決できることの方向性 をそのまま表しています。イチから Flow を作りたい！という場合の指針にもなると思います。この記事では カスタマーサポート に役立つテンプレートの使い方をご紹介します。
Customer connections - カスタマーサポート
[Discover] メニューで表示される [Customer connections] セクションでは、主にタスク管理のためのテンプレートが提供されています。2025 年 12 月現時点で提供されているテンプレートではどういったことができるのか、簡単にまとめました。
| 名前 | どういったことができるか | 関連サービス |
|---|---|---|
| Draft email replies to questions using a doc & Gemini | Gemini で質問へのメール返信案を作成する | Gmail, Gemini, Google Docs |
| Create Salesforce contacts & tasks from a form | フォームの入力内容から、Salesforce の連絡先とタスクを作成する | Google Forms, Salesforce |
| Update a Mailchimp audience from a form | フォームの入力内容から、Mailchimp のオーディエンス (顧客リスト) を更新する。 | Google Forms, Mailchimp |
Gmail や Forms といった Google Workspace のサービスを起点に、外部の SaaS と連携するテンプレートが提供されています。顧客との最初の接点となるサービスから、CRM や MA ツールにシームレスに連携することで、カスタマーサポート業務の効率化・自動化が期待できます。
顧客からのメール内の質問の回答のドラフトを作成する
この記事では Draft email replies to questions using a doc & Gemini のテンプレートを使い、顧客からのメール内の質問の回答のドラフトの作成を自動化したいと思います。
Flow 全体としては、メールの内容が質問かどうかを判定し、質問だった場合に回答内容を Gemini で生成するような流れになっています。
Step 1: メール受信のトリガー
Starter (トリガー) は [When I get an email (メールを受信したとき)] が設定されています。トリガーとするメールの条件が設定できます。
「顧客からのメール」というユースケースの場合は、メールの条件は [From (送信元)] を特定の顧客に設定するようにします。
Step 2: メールの内容の判定
Step 2 では [Decide] というアクションを設定しています。ここでは Gemini に対して Yes / No で回答できる質問を投げています。
デフォルトで設定されているプロンプトは下記のようになっています。シンプルに、質問が含まれているかどうかを確認しています。
Does the email include questions that require a response?
Email: <メール本文>
Step 3: 条件分岐
Step 3 では [Check if] というステップを使って処理を分岐させています。 Step 2 の Gemini の判定結果を受けて、その後の処理を行うかどうかを判定させます。
設定では Step 2 の [Decide] が [true] だったら、という条件を設定しています。これだけで、Step 2 の判定結果に応じて処理を分岐させることができます。
Step 4: 質問内容の抽出
Step 4 では [Extract] を使って、メール本文から質問内容を抽出します。
[Extract] では [Content] に抽出元となるデータを入れます。ここでは Step 1 からメールの本文を引っ張ってきています。
[What to extract] では [Predefined] に Questions to answer を登録しています。質問を抽出するための事前定義が用意されているので、非常に簡単に設定できるようになっています。
Step 5: 回答文の作成
Step 5 では [Ask Gemini] を使って、Gemini にプロンプトを送信しテキストを生成しています。
[Enter a prompt] では、回答文を生成するためのプロンプトがプリセットされています。翻訳すると下記の通りです。
目標：あなたは熟練した Q&A アシスタントです。あなたの仕事は、以下の質問に簡潔かつ正確に回答することです。
制約：回答は、リンクされた参考資料の内容のみに基づいて行ってください。外部の知識は使用しないでください。
参考資料：<参考資料へのリンク>
質問：
出力：
1. 各質問に対して、直接的かつ簡潔な回答を記入してください。質問で必要とされない限り、段落全体を記述しないでください。
2. 出力は、質問とそれに対応する回答を並べた、明確なリスト形式にしてください。
3. 参考資料に回答が見つからない場合は、必ず「**情報は参考資料に見つかりません。**」と返信してください。
4. 質問や回答に、太字やアスタリスクなどの余分な書式設定を追加しないでください。
このプロンプトではハルシネーション (根拠のない誤った生成) を抑制するために、参考資料を元にした回答のみ生成するようになっていることがわかります。実用的なプロンプトサンプルだと思います。
この記事では参考資料として、架空のサービス利用規約を Gemini で作成し、ドキュメントのリンクを貼ることにしました。
Step 6: メールのドラフトの作成
Step 6 では [Draft a reply] を使って、返信メールのドラフト作成を行っています。回答は Step 5 で生成された文章が Variables で指定できるため、その回答を埋め込んだ本文を設定しています。
最後に [Turn on] をクリックして完了です。
動かしてみる
実際に Flow を動かしてみましょう。下記のようなメールを送ってみます。
架空のサービスに対する問い合わせのイメージです。サービスを商用利用して良いか質問しています。
参考資料として与えている利用規約には商用利用が不可である点が記載しており、Gemini が正しく参照できれば、質問の回答としては「商用利用不可である」が期待値になっています。
メール送信後、アクティビティを見てみると受信メールが質問を含んでいると判定され、回答が生成されていることが確認できます。
Gmail を開いてみると「商用利用不可」という旨の回答が含まれた返信メールのドラフトが作成されていることが確認できました。
まとめ
この記事では、カスタマーサポート向けのテンプレートの中から、Gemini を活用して顧客からの質問メールに回答する Flow をご紹介しました。単純な定型文の返信ではなく、参考資料を元に Gemini が回答を生成してくれるため、より柔軟で質の高い顧客対応の自動化が可能です。
このテンプレートをベースに、判定条件やプロンプトをカスタマイズすることで、さらに自社のユースケースに特化した Flow を作成できると思います。Workspace Studio を活用して、日々の業務を効率化にぜひチャレンジしてください。
Google Workspace Studio の使い方をもっとよく理解いただくため、またユースケースを共有しあうための Google Workspace Studio アドベントカレンダー を実施しています。これから毎日、各機能の使い方や具体的なユースケースを公開していく予定ですのでお楽しみに！すでにお使いいただいている方の参加も大歓迎です！
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