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Google Cloudでマネージャーをやってみた

2022/12/18に公開

Google Cloud Japan Advent Calender 2022 (通常版) の 18 日目です!

あっという間にもう年の瀬ですね。みなさんいかがお過ごしでしょうか。
Google Cloud Customer Engineer のマネージャーというロールを務めている Kenny Suzuki です(こちらの記事の Yasushi さんと同じチームでよく一緒に働いております)。Customer Engineer は一般的には Sales Engineer 、Solution Consultant などと呼ばれるロールに近く、セールス組織の一部として営業メンバーとペアでお客様の技術面での支援を行います。

私はこれまで 20 年間、いくつかの会社で individual contributor(IC、日本ではよく一般社員と呼ばれています)として働いてきて、ここで一念発起してマネージャーロールにシフトし、ちょうど半年が経ちました。IC の頃の記憶がまだ新しく、マネージャーワークとのギャップを新鮮なものとしてとらえられる今しか書けないこともあるかも、と思い立ちブログを書くことにしました。
当たり前ながら IC で考えるべきこととマネージャーが考えるべきことは全然違うので、この半年はマインドチェンジが求められることがたくさんあって苦難の連続だったと言えるけれど、それだけに学びと気づきの多い半年だったとも言えます。

なお、Google の外でマネージャーをやったことがないので、以下に記すような気づきが Google 特有なのかマネージャーにとって普遍的なものなのか、あるいは自分に固有なものなのかはわかりません。

マインドの変化

個人として「今期どう成果を出すか」から、組織として「いかに継続的に成果を出し続けるか」

IC のときは半期に一度のパフォーマンスレビューのサイクルに合わせて、次のサイクルに何をなすかというのを考えていることが多かったです。また目を向ける先も自分自身のキャリア・関わりのあるお客様・パートナーやマーケットといった形で自身+外部が中心でした。マネージャーになってからは、「組織として」が常に先頭に来て、また(IC の時の半期単位よりも)もう少し長期を見据えて考えることがほとんどになりました。より強い組織になるためには・チームとして数字を達成するための戦略・人材の維持のためにすべきこと・チームの編成とメンバーのキャリアのバランス、などです。なお、本来であればこれに加えて「マネージャー個人としての成果をどう定義してそれに向かうか」までがあるべきですが、現時点ではここまで目を向けられていません。

チームメンバーのキャリアとアサインメント・人材の維持と成長のバランスなど

自分が IC の時に意識していたのと同じように、チームに所属するメンバーも各自がどのようにキャリアを形成すべきかを考えていて、自身の Career Journey の中で Customer Engineer として何を学び次にどこにいくべきかを常に念頭に入れて仕事をしています(と思います)。
そうすると、各メンバーにとって意味のあるアサインをしたり講演やブログなど外部露出の機会を設けてキャリアにとって何かしらのアドオンがあるように構成し、一方でチームとしての数字的なゴールを達成しなければなりません。また、Customer Engineer の経歴が長いメンバーの方がこなれてきて安定的に成果を期待できるようになりますが、その人もずっと現職を続けるわけでなくどこかで次のステップを見つけて旅立っていく時がくるので、その時を急に迎えても組織としてのパフォーマンスを落とさぬようなバックアッププランが必要です。このような目線は IC として働いていた時には一切持ち合わせていなかったので、マネージャー特有と言えると思います。

行動の変化

採用活動に積極的に携わる

自チームのヘッドカウントに空きがあるという状態はチームの活動において致命的でして、ひとつの枠に空きがある場合はそこでカバーすべきアカウントのケアが薄くなってしまったりそれを補うために一部のメンバーに無理を強いてしまうことになります。また、この期間が長ければ長くなるほど機会損失が大きいので一刻も早く埋める必要があります。一方で、拙速な採用活動によりロールにあっていない人材を採用した場合はその後の対応・ケアに大きな時間とコストがかかってしまうので、急いで無理に埋めることは禁物です。そのため、1日でも早くロールにあった人材を採用できるよう、採用チームからいただく候補者の情報に加えて自分でも積極的に知人や Linkedin を通じた候補者の創出を行うことになりました。

Role Profile や会社のミッションステートメント・顧客対応指針などをよく読むようになった

これらのドキュメントには Customer Engineer や Google 社員がどう振る舞うことが期待されているかが明記されています。自身やチームメンバーの発言・行動が適切なものであるかを振り返る際に、迷った時はここに立ち返ることが多かったです。IC の時は、これらのドキュメントの存在は認識していたものの自身の行動がこれらと照らし合わせて適切かを振り返ることもあまり多くなく、恥ずかしながらあまり熟読してませんでした。

Context Switch が多く、熟考のための時間確保が困難に

マネージャーになってからはミーティングの総数が大きく増えました(お客様とのミーティングは減りましたが、一方で社内においては IC の頃よりも多種多様な相談が持ち込まれカバーすべき範囲が増えましたし、単純にステークホルダーの人数も以前より多いです)。結果として、30 分ごとに Context Switch をし続けることになるので、熟考をしたり長めの時間を要するタスクをこなすことが難しくなります。成り行きで空いた時間をこのようなタスクに当てるのではなく、カレンダーをブロックし参加できないミーティングは後からレコーディングを確認するなど、(今まで以上に)意図的に時間を確保する必要があります。

気づきと悩み、現在進行系

同じ事柄に対する捉え方・リアクションが人によって全然違う

例えば新しい取り組みを導入した時に、働きやすくなったと感じる人と煩わしいという感じる人がいて one size fits all 的なものは意外と少ないということがわかりました。自分の考えだけで何かをいきなりチームにアナウンスして始めるのではなく、1:1 で多様な視点を確認してから進めるほうがよい形に落ち着くことが多かったです。

1:1 の難しさ

1:1 はチームメンバーの時間を毎週 30 分いただきますし自分の時間の投資先としても最も大きいものの一つですので、最も意味のある時間にしなければならないです。そのため、その人の成果になるべく直結する貢献をしたいけど、自分がわからなくてメンバーのほうが詳しい技術領域もたくさんあり、アドバイスができないこともあります。そもそも人によって 1:1 に対する期待値も違っていると思います。各メンバーが担当するお客様・案件の状況はある程度自分も知ってないといけないけど、それを報告してもらうだけだとメンバーにとっては何ら有効な時間にはなりません。この時間をいかに意味のあるものにするか、またその度合いをどう測るべきか、今後も継続的に考えていかねばならないテーマです。

チームメンバーの活動や成果を 100% 知ることはできない

ある議論の中でマネージャーの一人が「自分が把握しているのはメンバーの活動の 10-15% くらい」と言っているのを耳にしました。これは極めて当たり前のことですが、全員のメンバーが出ている全てのミーティングに自分も参加することはできませんし、そのような過干渉はすべきではありません。結果として、メンバーの活動の全てを知ることはできないし、それは認めてしまっていいのだと思います。その上で、周囲からの意見・評判だけでなく実際の活動をなるべく自分の目で見て把握・理解する努力は必要と感じます。一次情報として実際に見てみると、必ずしもそれまでの認識が正しくなかったことに気づくことがありました。また、活動の部分は 100% は無理ですが、成果はなるべく 100% 把握して適切に評価することはマネージャーの責務ですので、なるべくその部分に目を向けるようにしています。

チームメンバーの相乗効果をいかに作り出すかの難しさ

Customer Engineer は営業のメンバーとペアになり、またその他の社内のメンバーと協業してお客様とエンゲージしていきます。そのため、Customer Engineer 同士は必ずしも会話がなくても仕事が成立する場合も多く、ともすればチームが「個人商店の集まり」のようになってしまうことがあります。チームに所属する Customer Engineer たちがナレッジを共有しあい、相乗効果を持てる場を作ることがマネージャーの責務の一つだと思います(そして難しい!)。こちらも継続課題です。

ここまでの結論

これまでの半年を振り返ると、日々、自分はマネージャーとしての適性があるのだろうか IC に戻った方がいいのだろうかと迷いつつの半年でしたし今後もそうだと思います。現時点でとりあえず言えることは、
・考えなければならないことが増え、精神的にもICの時よりも負担が増えた
・一方で視座視点は大きくかわりこれまで気づけなかったことにたくさん気づいた、在籍期間も長くそれなりに知った気でいた組織だったがまだまだ勉強になることが多くあることに気づいた
といったところでしょうか。
決して全てが上手くいっているとは言えませんが、それもひっくるめて挑戦してみてよかったと思っています。

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