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【資格】技術士(情報工学部門) 試験対策

2023/05/06に公開

技術士資格とは

技術士は産業、生活に関わる建設、情報、機械、環境等の技術部門で先進的活動、計画、調査、研究、設計等を行う職業であり、技術士の専門性と課題解決力を示す資格として技術士資格が作られている。
技術士資格は21にわたる技術部門が用意されている技術系の国家資格であり、取得難度が高い資格とされる。
年によってばらつきがあるが、全体で毎年約23,000人程度が受験し約2,500人程度が合格している。

技術士(情報工学部門)の概要

技術士試験では技術的な問題解決に当たっての専門知識と対応の考え方を問われる。
良いシステムを作ること、プロジェクトを成功させることに関して、その資質を対外的に示すときに技術士資格の価値がある。
情報工学部門の受験者数は毎年400人程度で合格者は50人程度であるため、情報工学部門の受験者数は多くなく、合格率も低いのが現状である。
近年は、情報技術が分野横断的に活用されており、技術のトレンドになっているため、情報工学分野のスキルを客観的に示して活用することに関して、情報工学部門の技術士に期待される役割も増しているはず。

技術士二次試験の基礎データ

技術士二次試験に合格することで技術士の資格を取得することが可能になる。情報工学部門の技術士二次試験はとにかく受験者数が少ない上に合格率が低い。また、参考書はほとんどないため事前情報が少ない。

令和4年度の情報工学部門の試験データ

・申込数:490 人
・受験数:395 人
・合格者数:50 人
・対受験者合格率:12.7%
https://www.engineer.or.jp/c_topics/001/001013.html

受験要件

技術士二次試験の受験要件として実務経験は必須である。実務経験の必要年数は大別すると以下2パターンになる。

  1. 実務経験7年以上
  2. 技術士一次試験合格後もしくは技術士補登録後に技術士の指導のもと実務経験4年以上(理系大学院修士課程修了者は実務経験2年以上)

※留意点

  • 実務経験が7年以上あれば、技術士一次試験に合格していなくても最初から技術士二次試験を受験可能である。また、実務経験は科学技術に関する業務であれば必ずしも情報系でなくても受験自体は可能。
  • 技術士一次試験合格後もしくはJABEE認定カリキュラムを通っていると技術士補という資格に登録することができる。
  • パターン2の場合、受験申込書の準備が面倒で資料準備に時間がかかるので注意したい。
  • 一度受験すれば次年度からは前の年の受験票原本が受験要件を満たす証明書になる。受験票は残しておく。

試験スケジュール

・願書申し込み:4月中旬
・筆記試験:7月中旬
・筆記試験合格発表:11月頭
・口頭試験:12月~1月
・口頭試験合格発表:3月中旬

筆記試験問題形式

本番は手書きで原稿用紙9枚の解答を書く必要がある。

合否判定基準

試験は、情報工学全般で共通した問題が出る「必須科目」とコンピュータ工学やソフトウェア工学などの選択した分野の問題が出る「選択科目」の2つで構成されている。合格には両方で6割以上の得点となる必要がある。

  • 必須科目1問 (専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力):60%以上の得点

  • 選択科目3問 (専門知識及び応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力):60%以上の得点

https://www.engineer.or.jp/sub02/

技術士資格のメリット

国家資格

技術士は国家資格であるため、肩書きとしての機能を持つ。対外的な場面で、初対面の人に対して自分の技術的な専門性を認知してもらうことに役に立つ。また、社内に対しても自分の技術的プレゼンスを示して裁量権を増やすことにはプラスに働く。
特に、知っている人からはその専門知識と経験をある程度認識してもらえる。情報工学分野に限らなければ技術士自体は年間23,000人程度が受験する規模の試験であるため、それなりに知っている人も多い。
情報系のスキルを示す試験で技術士試験よりも良く知られるIPAの試験は資格ではないためそこの点では差異がある。他の情報系の国家資格としては情報処理安全確保支援士もあるが、こちらはセキュリティに特化しているため、広範な情報工学の経験・知識を示す場合には技術士資格の利点がある。

公官庁発注業務の管理技術者要件になっている

技術士が公官庁発注業務の技術者要件になっていることがある。技術士を持っていることで仕事を受ける幅を広げることができる。仕事に直接的に活かす場面としては一番可能性が高い。
(ただし、ほとんどの場合IPAの高度区分でもまかなえるため、技術士だけのメリットではない。)

社内のキャリア形成や転職に強くなる

会社では技術士資格を評価するところが多い。会社の人事考課のアピールとして使い、自分のキャリア形成を有利に進めることができる。
また業界の人に自身の職能を理解してもらうには、業務経歴を語るよりも技術士の資格をもっているといえばよりシンプルである。例えば中途社員の採用では資格をもっていることはプラス要素であり、採用にあたって有利になる。技術士を持っているといえばある程度の実務経験があることもわかるし、筆記・口頭試験を通じて文章力やコミュニケーションに問題ないことを客観的に確かめられていると見てもらえる。

会社から報奨金や手当がもらえる

会社によっては取得を推奨し、取得した際には報奨金や手当がもらえる会社もある。報奨金や手当がある場合、実利として最もわかりやすい。

資格試験を通じて知識やスキルが得られる

資格試験の対策をすると、網羅的に勉強することになるので、偏らない知識を習得できる。いろいろな技術ブログや情報通信白書などの文書を読むので新しい発見もある。
また、専門知識を数十文字の文章で説明することや、論理的につながっている文章を書くことを求められるため、ものごとをわかりやすく簡潔に説明することのトレーニングになる。

勉強する目標になる

技術系の仕事をこなすためには多かれ少なかれ専門知識の勉強をしなければいけない。どうせ勉強するのであれば、せっかくであれば何かの形になった方がよい。勉強すること自体に価値があると考えれば、勉強するモチベーションになるという意味で資格試験が役に立つ。スポーツでいうところの大会や競技会みたいたもの。

試験対策

僕の場合は土木系の会社で仕事をしているため、社内での技術士の認知度が高く周りにも受験者が多かった。技術士建設部門、基礎情報技術者、応用情報技術者に合格した後に技術士情報工学部門に受験し合格した。
合格の要因としては試験の特性を理解していたことが大きかった。
筆記試験本番は想定問題の内容で対応でき、解答は準備した文章が9割、アドリブで作成した文章が1割であった。多少のアドリブは必要であるが、準備で本番をカバーできる部分も大きい。

論文試験であるため、腕に自信のあるプログラマーが必ずしも合格するものではない。専門知識も必要だが、作文の力が試される試験でもある。試験のコツがつかめていないだけで、実力は十分である人も数多くいると思う。

能力としては問題ないが、周囲に試験を受けている人がいないなどが理由で事前情報がなく、そのため試験のコツがつかめなかったりモチベーションが湧かなかったりして合格していない人が相当数いると予想する。
公式HPの統計情報を見ると僕の受けたソフトウェア工学部門に限定すると毎年100人程度しか受験しておらず、その内、合格しているのは10人程度しかいない。
毎年10人合格するとして20年やって全国に200人と少数である。知り合いに合格者がいることは珍しい。直接的に添削指導してもらえる人は恵まれている。

試験に慣れていないせいで多くの人が不合格となってしまうのであればもったいない。今後、技術士の認知度や価値の向上を目指すためにみ、まずは試験に合格する人の母数が増え、少しでも活用する場面が増えることを願い、試験のポイントを書き残す。

やったこと

僕は令和4年度(2022年度)の技術士情報部門ソフトウェア工学を受験し合格した。

試験準備として実際にやったことを順番に並べた。
目安として費やした実時間とかかった期間を大まかに記載する。それぞれの項目ごとの準備は独立しているわけではなく、同時並行的に準備を進めた。
試験に対する準備期間は直前の2ヶ月勉強時間は大体150時間程度であった。

実時間には勉強に腰を入れるまでのアイドリングの時間や休憩の時間が入っていないので、それを考えれば実際にはもっと試験のために時間を費やしている。
自分にあったやり方やライフスタイルによって準備にかける期間はかわる。僕の場合はゴールデンウィーク後の週末は毎回喫茶店に行き、想定解答を作るという日々を送った。周囲の技術士受験者も5月のゴールデンウィーク付近から準備を始めて試験を受けるという流れの人が多い様に思う。
毎週末が作業につぶれるのは苦しかったが、なにかに集中して取り組む楽しさや新しい発見がある新鮮さはあった。試験までの期間限定と割り切ればいい時間だったように思う。

番号 項目 時間 期間 雑感
1 過去問の整理 3時間 1日
2 他人の解答読み 10時間 1週間 ブログにアップしている人たちに感謝
3 設問の構成に沿ったテンプレートの作成 2時間 1日 建設部門を受験したときに作成済み
4 情報通信白書を読む 5時間 3日 トレンドの把握は想定問題を設定することに役立つ
5 専門技術用語の単語帳作成 60時間 2ヶ月 説明できない用語を見つける度に作成
6 必須、専門Ⅲの解答作成 50時間 1.5ヶ月 対策のメイン、誰かの添削を受けることが望ましい
7 専門Ⅱ-2の解答作成 15時間 2週間 誰かの添削を受けることが望ましい
8 手書き練習 10時間 2週間 手首・指先の強化

過去問の整理

準備を効率的にこなすためにも、問題の傾向や問われる技術水準をつかむと良い。どのような問題がでるのか、については過去問を見ることにより類推することが一番良い。
過去問をみるときには自分で想定問題を設定できるようにするため設問の言い回しや特徴も把握したい。

例えば、選択科目Ⅱ-1には〇〇の留意点を答えよという問いが見られる。そのため専門用語を整理するときにはメリットだけでなく、留意点が書けるように注意すべき点と問題の回避方法などを整理する必要があるということがわかる。

過去問のpdfは公式HPに全てアップされている。僕は通勤中にも過去問を眺めることができるようにするため、また、年度ごとの問題を比較するため、過去問平成28年から令和3年を表形式で整理していた。
https://www.engineer.or.jp/c_categories/index02022236.html

他人の解答の読み込み

設問を読んだだけでは解答のイメージがわかないため、まずは合格している他人の解答を読んで具体的なイメージをつかむと良い。
あくまでも試験だと割り切ってしまえば100点をとる必要はなく60点でよい。筆記試験通過を目標とすればマニアックな情報は必ずしもなくてもよい。どの程度のレベルのことを記述すれば十分であるのかを理解する上でも合格解答を読むことはとても役に立つ。すべてが必ずしもレベルが高い解答ばかりではなく、こんなものでいいのか、と気付かされる解答もあり、そういう解答で良いとわかって気持ちが楽になることもある。
また、他人の解答を読んでみると、高い専門性があっても論理の流れが悪い文章は、まず理解できないことがわかる。大前提として、設問に対した解答になっていることと、書いてある内容を理解してもらうことが必要である。読みやすい内容を書くことに気をつけるだけで筆記試験通過の難易度は格段に下がる。
受験者の半数の文章はそもそも読めない文章になっていて、そのせいで内容はともかく合格できないという事態になっているように思う。

他人の解答としてはブログで公開している人の解答が大変参考になった。勝手に読んで勝手に感謝している。
https://zenn.dev/dimeiza/books/professional_engineer_guide_book/viewer/chapter2_1

https://itsiken.com/eng/

また、講座のホームページにある模範解答例も納得感がありとても参考になった。
http://www.gijutsushi1.com/article/16395011.html

技術士建設部門の受験の際に建設部門の合格解答を多数読んだことも役に立っている。建設部門の解答例についてはSukiyaki塾が量・質・価格ともに大変優れている。
https://www.pejp.net/pe/

残念ながら2023年時点で出版されている情報工学部門の参考書はほとんど参考にならなかったように思う。

解答のテンプレートの作成

普通に書けば筆記試験の時間的余裕はあまり無く、時間が足りなくなるくらいである。そのため本番はなんとか短時間で解答を作ることになる。設問の雛形はあまり変わらないので、解答のテンプレートも準備した方が良い。解答のテンプレートもあらかじめ準備することで当日考える時間を短縮することができる。
事前準備も雛形を埋めるだけだと思えば楽になるので、雛形をあらかじめ準備して、その中身を埋めるという方法が楽だった。準備の負担を減らすためにも解答のテンプレートは重要な要素だった。

テンプレートを決めるにあたってのポイントは、設問に対する答えになっている、ということだ。解答の文章は、設問に対応する答えが書かれている必要があり、例えば「課題を述べよ」という設問に対しては課題を書いたということがわかりやすいとよい。

また、技術者に求められるコンピテンシーなるものや合格判定基準を意識して項目の数や文章量は調節している。
技術者に求められるコンピテンシーに「複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析する」とあるため、雛形を作る際はそれも意識した。
文章の量について、技術者に求められるコンピテンシーに「複数の選択肢を提起し」とあるため、課題や解決策などは基本的に3つ書くことを想定して文の量を調節した。

合格の解答例は正解のイメージから外れていないと思われるので、合格解答例をたくさん読み、それをもとに自分なりの解答の雛形を持つのが良いと思う。例えば僕の場合は次に示すテンプレートを作ってそれに当てはめるように準備をした。

必須Ⅰ、選択科目Ⅲの解答テンプレートの例

必須、専門Ⅲの解答テンプレートの例

近年〇〇が〇〇となり〇〇が期待されている。〇〇が〇〇なので〇〇がますます重要になっている。

(1)〇〇の課題
課題①タイトル
〇〇の観点
〇〇が要因となり〇〇が問題になっている。〇〇が〇〇となることが求められる。
課題②タイトル
〇〇の観点
〇〇が要因となり〇〇が問題になっている。〇〇が〇〇となることが求められる。
課題③タイトル
〇〇の観点
〇〇が要因となり〇〇が問題になっている。〇〇が〇〇となることが求められる。

(2)最も重要と考える課題と解決策
〇〇が〇〇であると〇〇に大きな影響を与えるため〇〇が最も重要な課題と考える。
解決策①タイトル
〇〇することで〇〇が改善される。〇〇することが解決策となる。
解決策②タイトル
〇〇することで〇〇が改善される。〇〇することが解決策となる。
解決策③タイトル
〇〇することで〇〇が改善される。〇〇することが解決策となる。

(3)懸念点と対応
懸念点①タイトル
〇〇が〇〇となり〇〇が問題になる懸念がある。
対応策:〇〇を〇〇することで〇〇が向上する。〇〇をすることが対応策となる。
懸念点①タイトル
〇〇が〇〇となり〇〇が問題になる懸念がある。
対応策:〇〇を〇〇することで〇〇が向上する。〇〇をすることが対応策となる。
懸念点③タイトル
〇〇が〇〇となり〇〇が問題になる懸念がある。
対応策:〇〇を〇〇することで〇〇が向上する。〇〇をすることが対応策となる。

(4)求められる要件(必須のみ)
公益確保の観点から〇〇を〇〇とする。
公衆の安全を優先するために〇〇を〇〇とする。
社会の継続性の観点からは〇〇を〇〇とする。
法令遵守の観点から〇〇を〇〇とする。

求められるコンピテンシー
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu7/attach/1413398.htm

用語集作成(主に選択科目Ⅱ-1対策)

試験では技術専門用語を簡潔に説明することを求められる場面がある。試験対策として単語帳を整理した。直接的には専門Ⅱ-1の対策であるが、その他、必須や専門Ⅱ-2、専門Ⅲを書くにあたっても、そもそもの基礎知識として専門用語の意味がわかることは必須である。

過去問に対する解答を作成する中で、説明できない専門用語がでてきたらピックアップして表に整理し、技術系ブログを読み漁ってそれぞれ20~50文字程度で簡潔に説明する文章を考えてメモを作成するという準備をした。専門Ⅱ-1では留意点を問われることが多いので、留意点が答えられるように準備した。今ならchatGPT先生に教えてもらえる。

情報工学としての業務経験は少なく、大学も仕事も土木分野であったため、まず専門用語を理解することが大変であった。技術士受験の前年に基本情報技術者試験、応用情報技術者試験を通じて専門用語の勉強をしていたことがとても役に立った。またZennやQiitaなど技術系ブログや記事が無数にあることはありがたかった。基本的な知識はTACの基本情報技術者試験の対策本が最後まで役に立った。

受験分野はソフトウェア工学として結果的にまとめたのは以下のような専門用語。概ね100語。

■開発手法
アジャイル、ウォーターフォール、DevOps、継続的デリバリー(CD)、継続的インテグレーション(CI)、スクラッチ開発、パッケージ開発、、ソフトウェア・プロダクトライン、System of Systems(SoS)
■要件定義
機能要件、非機能要件、RASIS、SLA、インタビュー、プロトタイピング、ゴール志向分析
■設計
マイクロサービス、アーキテクチャー、デザインパターン、アンチパターン、イディオム、UML、ユースケース、ミスユースケース、クラス図、シーケンス図
■実装
モジュール強度、モジュール結合度、オブジェクト指向プログラミング
■テスト
動的テスト、静的テスト、ブラックボックステスト、ホワイトボックステスト、境界値分析、同値分割、ディシジョンテーブルテスト、二因子間網羅、ファジング、状態遷移テスト
■レビュー
ウォークスルー、ラウンドロビン、インスペクション、パスアラウンド、ペネトレーションテスト、バグ密度
■信頼性
フェールセーフ、フェールソフト、フールプルーフ
■セキュリティ
ファイヤーウォール、デバイス認証、トンネリング
■サイバー攻撃
DDos攻撃、ゼロデイ攻撃、水飲み場攻撃、SQLインジェクション
■運用
目標復旧時間、目標復旧時点、平均故障間隔、稼働率、ホットスタンバイ、コールドスタンバイ、フルバックアップ、差分バックアップ、増分バックアップ、無停電電源装置、BCP
■ライセンス
コピーレフト、準コピーレフト、非コピーレフト
■開発マネジメント
アーンド・バリュー・マネジメント(EVM)、PMBOK
■工程管理
ガントチャート、アローダイアグラム
■見積り
類推法、積算法、ファンクションポイント法、LOC法
■DX
RPA、デジタルツイン、サイバーフィジカルシステム、デジタルファースト、ワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップ、リカレント教育

必須Ⅰ、選択科目Ⅲ対策

過去問から自分が選択しそうな問題を選んで解答を作成した。解答は雛形を埋める形で表形式で作成した。こうすることで、課題や解決策を他の設問にも流用できる形に整理しやすい。ほぼすべての問題に対してセキュリティ対策と信頼性向上を課題に挙げることができるため、この2つをしっかりと準備できれば強い。

個人的には必須と専門Ⅲの設問範囲はかなり重複する部分があるように思うので、準備時点ではあまり区別していない。それだけ細かいところまで気を配った準備は間に合わなかった。

準備は技術系ブログやIPAの文書を読み漁り、「課題」×3、「解決策」×3、「リスク」×3、「対応についての考え」×3に落とし込む作業を行った。技術系ブログには「リスク」「対応についての考え」などの深いところはなかなか書いていないので、一度自分で仮説を立ててから複数の記事を調べて、それらを整理してつなぎ合わせるといった作業が必要であった。経験が少ない中で準備するにあたっては、ここが一番苦しかった。

受験分野はソフトウェア工学として特に参考にした資料はIPAの手引きやガイドラインだった。
IPAの手引きやガイドラインは非常にわかりやすく実践的なことが書かれており、結果的に解答内容の5割程度はIPAの文書に記載されている内容を自分なりに解釈したものを書いた。今後の仕事にも役に立ちそうな実践的な知識を身に付けることができた意味でもIPAの文書を読んだことはとても有意義な内容であった。

IoT開発におけるセキュリティ設計の手引き
https://www.ipa.go.jp/security/iot/iotguide.html

ITプロジェクトのリスク予防への実践的アプローチ
https://www.ipa.go.jp/sec/reports/20130327_3.html

「技術専門用語を用いて説明」することが求められているため、専門用語を適切な意味で記載することも必要。単語帳を整理しておいたことが役に立った。解答はキーワードを入れようとしすぎて関係がないことが書かれている、といった会話が成り立たない解答にならないことに注意が必要である。

想定問題の設定

想定問題は過去問の出題傾向と近年のトレンドや関心を踏まえて設定するとよい。業界のトレンドを抑えるには情報通信白書を流し読みをするのが楽。情報通信白書は総務省から毎年9月ごろ発刊される情報通信に関する政治・社会・経済の実態及び政府の施策の現状についてまとめた報告書である。マクロ政策やトレンドをざっくり理解するためには役に立つ。必ずしも文章や数字を覚える必要はない。最初の導入部を書くための前提知識を得たり、セキュリティ対策、インフラ老朽化、クラウド化、5Gなどのトレンドを把握して想定問題を考えるのに役に立つ。
情報通信技術の変遷、海外と日本のやり取りの状況などは、技術士試験という目的からすると読み飛ばしても問題ない。

想定問題8題

  • オープンソースソフトウェアを活用したシステムの開発
  • マイクロサービスによるシステムの開発
  • レガシーシステムの刷新
  • サイバーフィジカルシステムの開発
  • 業界のDX化
  • AIを活用したシステムの開発
  • スマートフォンで利用されるシステムの開発
  • IOT機器と接続したシステムの開発
  • 5Gを活用したシステムの開発

手書き

本番は手書きで原稿用紙9枚の解答を書く必要がある。パソコン打ちと異なり後から文章の順番を入れ替えたくても無理である。パソコン上に答案を事前準備していてもいざ手書きで書くと、意味不明な文章を書いてしまうことに気付く。本番直前には何回か手書きで書いてみることが役に立った。

手書きで書いた設問数
必須・専門Ⅲ 4題

選択科目Ⅱ-2対策

過去問を見ると、システムの開発のプロジェクト立ち上げからプロジェクトを成功させるための手順と留意点について記載する、ということが毎年問われている。基本はウォーターフォール型開発とアジャイル型開発の手順と留意点をそれぞれ説明できるようにすることと、関係者との調整方策を説明できるようにするといった準備になる。テーマが既存システムの刷新だったりまったく新しいシステムの開発だったり、微妙に異なるため、応用も必要。結果的には「IOT機器と連携したシステム開発」が問われ、準備できていない応用部分の記載が弱くなりB判定だった。

ここでもIPAの「ITプロジェクトのリスク予防への実践的アプローチ」は大変役に立った。

ITプロジェクトのリスク予防への実践的アプローチ(再掲)
https://www.ipa.go.jp/sec/reports/20130327_3.html

また、アジャイル開発の手順についてはデジ庁の実践ガイドブックも大変役に立った。

アジャイル開発実践ガイドブック
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/9fc931f7/20220422_resources_standard_guidelines_guidebook_01.pdf
デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン 実践ガイドブック
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/2d9df6c5/20220509_resources_standard_guidelines_guideline_05.pdf

想定問題3題

  • 効率的な開発管理
  • 既存システム刷新
  • まったく新しいシステム開発

試験本番

設問をよく読み、「課題」×3、「解決策」×3、「リスク」×3、「対応についての考え」×3の骨子を設問冊子のすみっこに作成してから原稿用紙に解答を書くというテクニックを用いてなるべく短時間でロスなく記述する。
可能な限りきれいな文字で書き、見出しには定規を使って下線を引いた。見た目にも読みやすいことは(採点者の心理上は)加点要素になり得ると信じている。
また、受験番号、名前、設問の選んだ番号は最後に見返す。結果が届いたら名前がないから0点だったというパターンもあり得る。

令和4年の技術士情報工学部門ソフトウェア工学を受け、合格した。判定は必須Ⅰ:A、選択科目Ⅱ:B、選択科目Ⅲ:Aであった。選択科目ⅡがB判定になってしまったが、なんとか合計点で6割を超えていたらしい。想定した問題が多かったため、準備したものを多く使えたことは運が良かった。

技術士資格がさまざまな業界の情報工学分野の技術水準向上にあたって活用されることを期待。

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