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技術書典16を終えて - 当サークルの日別頒布部数・収支報告

2024/06/12に公開

はじめに

技術書典16の出展者・来場者として参加した皆さま、お疲れさまでした。

当サークル「熊本技人舎」では開催期間中、電子版含めて363冊を頒布することができました。お買い上げいただいた人はありがとうございます。

https://techbookfest.org/organization/vtQ58jwGhy83d72WHX6XzV

技術書典16全体でなんと歴代No.1の売り上げを達成したということで非常に喜ばしいですね!今回は自身もその恩恵にあずかるとともに、手数料分で少しは収益面での貢献ができたのではないかと思います(それでも運営側は赤字かも知れませんが・・・)

ところで、コロナ禍以降の技術書典については、頒布部数に関する情報があまり出ておらず、もしサークル出展した場合にはどのような売れ方になるのか?というイメージをつかめない人が多かったのではないかと思います。

僕自身も出展前に少ない情報を手掛かりに頒布部数の見積もりをした立場なので、少しでも手掛かりになるように情報をできるだけ詳細に公開したいと思います。

出展者側でこの記事見てる人も収支を公開して、どうぞ(無茶振り)

頒布部数の集計結果

  • 頒布総数 ... 363冊
    • 新刊①: 英語ガチ勢エンジニアになる方法 ... 263冊
    • 新刊②: PowerShell Daily Recipe Book ... 100冊

会場

日時 新刊①(紙+電子) 新刊①(電子) 新刊②(紙+電子) 新刊②(電子) 1日あたり合計
5/26(日) 88 - 41 - 129

※ 注: ここでは、現金払い2件分を紙+電子としてカウント

オンラインマーケット

日時 新刊①(紙+電子) 新刊①(電子) 新刊②(紙+電子) 新刊②(電子) 1日あたり合計
5/25(土) 11 11 5 5 32
5/26(日) 20 13 7 2 42
5/27(月) 13 9 3 3 28
5/28(火) 6 5 6 17
5/29(水) 3 5 8
5/30(木) 4 2 1 7
5/31(金) 1 3 1 5
6/1(土) 3 2 1 1 7
6/2(日) 2 3 1 1 7
6/3(月) 3 2 1 1 7
6/4(火) 2 2
6/5(水) 6 1 7
6/6(木) 1 1
6/7(金) 3 2 1 6
6/8(土) 2 1 3
6/9(日) 22 15 12 5 54
6/10(月) 1 1
合計 102 73 40 19 234

※ 注: 最終日が終わり、日付が変わった直後の紙+電子の売上1件を、開催期間中の頒布としてカウント

頒布種別での合計(会場+オンラインマーケット)

販売形式 新刊①(紙+電子) 新刊①(電子) 新刊②(紙+電子) 新刊②(電子) 合計
会場 88 - 41 - 129
オンライン 102 73 40 19 234
合計 190 73 81 19 363

紙+電子の頒布部数 - 予測・実績

販売形式 予測値 実績値 差異
新刊① 英語学習本 会場 100 88 -12
新刊① 英語学習本 オンライン 50 102 +52
新刊② PowerShell本 会場 40 41 +1
新刊② PowerShell本 オンライン 20 40 +20
合計 - 210 271 +61
  • オフライン会場への搬入数
    • 新刊① 英語学習本 ... 120冊(別送:80冊)
    • 新刊② PowerShell本 ... 100冊(別送:50冊)

印刷部数(※再掲)

同人誌名称 サイズ・ページ数 印刷部数 金額 備考
新刊① 英語ガチ勢エンジニアになる方法 B5/130P 200 \66,530 50%割引適用
新刊② PowerShell Daily Recipe Book B5/136P 150 \67,700 40%割引適用

※注: 日光企画・オンデマンド印刷を利用

集計後の個人的感想

オフライン会場の頒布部数の予想はなかなかいい線を行っていたと思います。

当サークルは技術書典では珍しい英語学習本というキラーコンテンツを投入して実際にブースもかなり混雑していた方だったと思います。しかし英語本のオフライン会場での頒布実績は88冊と、100冊越えは達成できませんでした。

これを踏まえると、すでに何度も技術書典に参加しているような、知名度・頒布実績が相当あるサークルでもない限りは、100冊を超えて新刊を準備する必要はないかなと思います。

一方、オンラインマーケットでは予想を大きく超えて頒布することができました。開催期間を通して最初の3日と最終日の売り上げが多くなっていました。特に最終日の売り上げのブーストは壮観でした。

個人的には電子版の売り上げがオンラインマーケットでは主体になるのかなと予想していたのですが、紙の本("紙+電子"のフォーマット)が想像以上に売れていました。やはり紙の本には根強い需要があるようで、機会損失を防ぐにはある程度在庫を準備しておく必要がありそうです。

また、最初はオンラインでの "紙+電子" の売り上げはオフライン会場での売り上げの半分程度と予想していました。しかし集計した数字を見る限りでは、オフライン会場で売れたのと同じ程度の数量がオンラインマーケットでも売れる可能性が高そうです。

頒布価格の設定について

英語本はいろいろな人に読んでもらうことを念頭に置いていたので、いくらかの利益の上積みを捨てても価格を1,000円に設定しました。PowerShell本の方も注目度の低いテーマのため、少しでも高値感が出ると購入してもらえないリスクがあると思い、こちらも1,000円に設定しました。

今回出した新刊2冊とも120ページを超えており、利益を最大化するならページ数的にも1,500円としてもよかったかもしれませんが、短期的な利益よりも頒布部数を伸ばす方針を取りました。そして、この値付けでも損益分岐点を超えられるように早期入稿による早割を効かせることを意識しました。

余談ですが、僕自身技術書典16開催の3週間くらい前にオンラインマーケットが公開されたばかりのころ、発送手数料がかかることを意識して紙+電子版の価格を1,200円にしておりました・・・(気づいた人はいたでしょうか?)。

1冊あたり100円の発送手数料がかかるのは痛いなと思い、電子版購入に誘導できるよう少し高い値段にしていたのですが、周りのサークルの値付けの様子をみて最終的に1,000円の価格で統一することにしました。

今回の出展による収支

売上

種別 金額 備考
会場売上(紙+電子) \127,000 127冊
会場売上(紙;現金払い) \2,000 2冊
オンライン売上(紙+電子) \142,000 142冊
オンライン売上(電子) \92,000 92冊
合計 \363,000 363冊

費用

種別 金額 備考
印刷代 \136,230 日光企画・オンデマンド印刷
備品・消耗品費 \40,388 主に展示用備品・消耗品等
ソフト購入 \5,000 CLIP STUDIO PAINT PRO
フォント購入 \8,800 パンダベーカリー
飛行機代金 \18,440 JetStar(熊本⇔成田)
本発送費用 \2,000 日光企画・分納2箱分
コピー代金 \180 コンビニ・カラーコピー
技術書典・販売手数料 \62,200 通算売上\50,000超過分に対して20%
技術書典・配送手数料 \14,200 紙の本の発送手数料(1冊あたり100円)
合計 \287,438

費用についてのnoteは以下記事を参照
https://zenn.dev/furaiboxyz/articles/3d39f6b40c84a9

損益

\363,000(売上) - \287,438(費用) = \75,562

\75,562の黒字になりました。

総括

おかげさまで黒字です。確かに黒字なのですが、この黒字を生み出すのに新刊2冊分で累計250時間以上の執筆時間がかかっていますし、今回記事には載せていない隠れ費用もあります。

思い返せば、早割の入稿期限に間に合わないかもしれないプレッシャーを抱えながら、原稿の執筆やイラストの作成をして、それが終われば校正作業、印刷データの作成と入稿作業、X(Twitter)上での告知、お品書きやらサークルのロゴの準備をして・・・と執筆以外のところでも結構な作業量がありました。

特に執筆が終わった後の校正作業がキツかったです。原稿を読むたびに誤植やおかしな日本語が見つかるので校正が一生終わらないのではないかという錯覚を覚えたほどでした。原稿データにlintをかけて山のように出てくるエラーを少しずつ修正したり、また何度も原稿を読み返したりして結局50時間以上はかかりました・・・(それでも取り切れない誤植のしぶとさ!)

時間単価に直せば、東京都はおろか安いと言われる熊本県の最低賃金(898円/時間)さえも余裕で下回っているので、どう考えても儲かってウハウハ(激古)みたいな状況ではありません。今回書いた本の電子版がロングテールで売れていけば話は変わってくるかもしれませんが、そこまで大きな金額にはならないかなと思います。

しかし、自分の知識をまとめ上げて体系化し、それを外部に公開するという経験は本を書いたからこそできたことだと思います。締め切りが無い状態では人は本気を出さないので、技術同人誌を書くことをモチベーションにして新しい技術に挑戦してみるのはアリだと思います。

今後も読者からの需要と自分の興味範囲をうまくすり合わせながら、ある程度は利益を出しつつ、継続して技術同人誌を出していきたいですね。

備考

他サークルの収支状況について

https://pilefort.hatenablog.com/entry/2024/06/08/135330

https://pokosho.com/b/archives/5635

出展前に印刷部数見積もりの参考にしたページ

技術書典16以前で、コロナ禍以降に開催されたときの頒布部数の情報は、

  • AWS本の佐々木さん
  • NoStr本の四谷ラボさん
  • IoT本のyuuuさん

のブログ記事だけでした。

主にこれらの記事の記述を参考にして印刷部数の見積もりをしました。

https://blog.428lab.net/entry/2023/11/13/011600

https://blog.takuros.net/entry/2023/11/20/075352

https://blog.takuros.net/entry/2023/05/23/090122

https://ylgbk.hatenablog.com/entry/2022/09/14/120000

今現在の技術書典出展の参考になるのは上記の記事くらいではないかと思います。これ以外の記事となると、オンラインマーケットが存在しなかったコロナ禍以前のものばかりです。

特に5年前の開催では会場が大混雑していて、初出展でも1日に何百冊も売れたという景気のいい話もあったようです。ただ今はオンラインマーケットが整備され、来場者の目も肥えてきているので、オフライン会場だけで何百冊も売るというのはまず期待できないかなと思います。

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