「哲学」はUMLで考えると面白い vol.04 〜 アリストテレス1 - プラトンを乗り越えて
はじめに
「「哲学」はUMLで考えると面白い」、今回からアリストテレスを取り上げていきます。万学の祖とも言われるアリストテレスは、多くの学問の基礎を作り上げていった、スーパーな人物です。前回は、プラトンを取り上げましたが、今回はその師弟関係を超えて、アリストテレスがどのように独自の哲学を築き上げたのかをUMLを使って表現していきたいと思います。
師匠プラトンとの考え方の相違
アリストテレスは、師匠であるプラトンと異なる考えを持っていました。プラトンはこの世で目にすることのできる現象を、超越的な存在である「イデア」に求めました。「現象」は、「現象界」に存在するが、「イデア」は、物理的な空間を超えた「イデア界」に存在し、「イデア」こそが不変の真実を表現するものだと考えていました。
プラトンのこの考えをクラス図で表現すると、下記のようになります。
これに対してアリストテレスは、物事の原因や真実を具体的な物質世界そのものの中に見出そうとしました。決して、物質を超えたところに本質があるとは考えませんでした。そして、現象、物の中には「形相(ギリシャ語eidos, 英語form)」と「質料(ギリシャ語hyle, 英語matter)」が内在する、と考えたのです。「形相」と「質料」の具体例として、ガラスでできたコップを考えます。コップは、水が飲める形をしているという「形相」とガラスという「質料」で成り立っているのです。
このアリストテレスの考えを、クラス図およびオブジェクト図で表現すると、下記のようになります。
可能態と現実態
アリストテレスは物事が時間を通じてどのように変化・発展するかを理解するために、「可能態(ギリシャ語Dunamis 英語Potentiality)」と「現実態(ギリシャ語Energeia 英語Actuality)」という概念で捉えました。
可能態はその物や事象が持つ潜在的な能力や状態を、現実態はその潜在的な能力が実際に現れた状態を指します。
例えば、「スギの木の種」という現実の物(=可能態)は、「スギの木の苗」になる可能性を秘めています(=現実態)。また、「スギの木の苗」という現実の物は、「スギの木」になる可能性を秘めています。さらに「スギの木」は、「イス」や「机」になる可能性を秘めています。
そのようにして、可能態と現実態は、無限に続くと思われる連鎖を形作ります。ただ、アリストテレスは、一切のものの可能態にならないもの、つまり、物事の要因のスタート地点があるはず、と考えるのです。それを「不動の動者(英語Unmoved Mover)」と呼びました。この「不動の動者」はすべての運動や変化の最初の原因とされました。自らは動かされることなく、他のものを動かす原因として存在するこの「不動の動者」の考えは、後のキリスト教哲学、特にトマス・アキナスによって神の概念と結びつけられました。
上記をクラス図、オブジェクト図で表現すると、下記のようになります。
参考文献
※ 本記事を書くきっかけになった書籍。
※ 非常にわかりやすく、かつイラストを使って哲学の概念を説明している。
関連記事
Discussion