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Discrete Variable Representation(DVR)

2021/12/20に公開

概要

Discrete Variable Representation(DVR)とは量子力学のポテンシャル項を近似的に対角化する基底を表現する方法である。

エネルギー固有値、固有関数が既知である項\hat{H}_0と、固有関数が未知であるポテンシャル項\hat{V}の和からなるハミルトニアンがあるとする。

\begin{equation} \hat{H} = \hat{H}_0 + \hat{V}v \end{equation}

ここで通常、\hat{H}_0を対角化する基底を用いるところであるが、あえて\hat{V}を近似的に対角化する基底を作り出すことができる。

\begin{equation} \bra{\phi_i} \hat{V} \ket{\phi_j} \simeq V( x_i ) \delta_{ij} \end{equation}

この方法をDVR、作り出した基底\{\phi_i \}をDVR基底と呼ぶ。DVR基底は直交多項式から構成され、V(x_k )の引数の\{ x_k \}は用いた直交多項式の零点である。

メリットとデメリット

メリット

ポテンシャル項\hat{V}の行列要素を直接計算することなく求められる。

デメリット

ガウスの求積法を用いているため、V(x)が多項式で表現できない場合は誤差が大きくなる。

DVR基底の作り方

DVR基底\{ \phi_k \}は以下のように構成される。

\begin{equation} \phi_k (x) = \sum_{i=1}^{N_g} \psi_i (x) A_{ik} \ \ \ \ (k=1, \cdots N_g ) \end{equation}

ここで、
$$
\begin{align}
\psi_i (x) &= \left( \frac{w(x)}{ g_{i-1} } \right)^{1/2} p_{i-1} (x) \
A_{ik} &= \psi_i (x_k) \sqrt{c_k}
\end{align}
$$

である。\{ p_i \}\{ x_k \}\{ c_k \}はそれぞれガウスの求積法で用いる直交多項式、分点、重みであり、N_gはガウスの求積法で用いた直交多項式の最大次数である。また、w(x)は直交多項式の重みであり、\{ g_i \}は正規化係数である。正規化係数は以下の形で与えられる。

\begin{equation} \int_a^b w(x) p_i (x) p_j (x) dx = g_i \delta_{ij} \end{equation}

直交多項式\{ p_i \}のスカラー積の定義には重み関数w(x)が含まれるが、関数\psi_i (x)のスカラー積には重み関数w(x)が陽に含まれないようにしたい。\{ g_i \}は重み関数をを含む直交多項式\{ p_i \}のスカラー積の定義と、重み関数を含まない関数の差を吸収する。
(4)を(5)に代入して、A_{ik}

\begin{equation} A_{ik} = \left( \frac{ c_k w(x_k) }{ g_{i-1} }\right)^{1/2} p_{i-1} (x_k) \end{equation}

とも書ける。

DVR基底の作り方の具体例

直交多項式としてLaguerre多項式を例にとってDVR基底を構成する。
Laguerre多項式L_n (x)は以下のように定義される関数である。

\begin{equation} L_i (x) = \sum_{r=0}^{\infty} ( -1 )^r \frac{ (i!)^2 }{ (r!)^2 (i-r)! } x^r \end{equation}

Laguerre多項式の直交関係は以下のように書ける。

\begin{equation} \int_{0}^{\infty} L_i (x) L_j (x) e^{-x} dx = (i!)^2 \delta_{ij} \end{equation}

従ってLaguerre多項式の重み関数w(x)および正規化係数g_iは以下のようになる。

\begin{align} w(x) = e^{-x} \\ g_i = (i!)^2 \end{align}

従って、Laguerre多項式でDVR基底を構成すると以下のように書ける。

\begin{align} \phi_k (x) &= \sum_{i=1}^{N_g} \psi_i (x) A_{ik} \ \ \ \ (k=1, \cdots N_g ) \\ \psi_i (x) &= \left( \frac{ e^{-x} }{ ( (i-1)! )^2 } \right)^{1/2} L_{i-1} (x) \\ A_{ik} &= \psi_i (x_k) \sqrt{c_k} \end{align}

なお、ガウスの求積法の分点\{ x_k \}N_g次のLaguerre多項式の零点の解、

\begin{equation} L_{N_g} (x) = 0 \end{equation}

として、重み\{ c_k \}

\begin{equation} c_k = \int_{0}^{\infty} \underset{j \neq k}{ \underset{ j=0 }{ \overset{n-1}{\Pi} } } \frac{x - x_j }{ x_k - x_j } \end{equation}

を計算することで求められるが、それぞれ"Abramowitz and Stegun"などの文献に値が記載されており、また使用する科学計算ライブラリやモジュール内に実装されているため自分で計算する必要は無い。

証明

以下の3つのポイントについて証明する。

  1. DVR基底を用いるとポテンシャル項\hat{V}を近似的に対角化できること。
  2. 上記対角化はガウスの求積法により実現されていること。
  3. ガウスの求積法で用いた分点\{ x_k \}は行列V_{ij} = \bra{\phi_i} x \ket{\phi_j}の固有値であること。

直交多項式を用いた基底の用意とその性質

まず、以下のように任意の演算子\hat{O}の行列要素を考える。

\begin{equation} O_{ij} = \bra{\psi_i} \hat{O} \ket{\psi_j} = \int_{a}^{b} \psi_i (x) O(x) \psi_j (x) dx \end{equation}

ここで基底\psi_i (x)として直交多項式p_i (x)を用いて次のように構成したものを用いる。

\begin{equation} \psi_i (x) = \sqrt{ \frac{ w(x) }{ g_{i-1} } } p_{i-1} (x) \ \ \ \ ( i=1,2, \cdots ,N_g) \end{equation}

直交多項式\{ p_i \}N_g \rightarrow \inftyのとき完全系を成す。数値計算上は有限の基底しか扱えないためその上限をN_gとしているが、以下の解析的な計算においてはN_g \rightarrow \inftyとして完全系がを成しているという前提で議論を進める。w(x)は直交多項式の重み関数、\{ g_i \}は正規化係数であり以下の直交多項式の直交関係により定義される。

\begin{equation} \int_a^b w(x) p_i (x) p_j (x) dx = g_i \delta_{ij} \end{equation}

w(x)\{ g_i \}はいずれも用いる直交多項式を選んだ時点で決まる。

基底\psi_i (x)の直交関係を確認するために以下の量を計算する。

\begin{equation} \int_a^b \psi_i (x) \psi_j (x) dx \end{equation} (18)
\begin{equation} \begin{align*} \int_a^b \psi_i (x) \psi_j (x) dx &= \int_a^b \frac{w(x)}{ \sqrt{ g_{i-1} g_{j-1} } } \ p_{i-1}(x) p_{j-1} dx \\ &= \frac{1}{ \sqrt{ g_{i-1} g_{j-1} } } \int_a^b w(x) p_{i-1}(x) p_{j-1}(x) dx \\ &= \frac{ g_{i-1} }{ \sqrt{ g_{i-1} g_{j-1} } } \delta_{i-1, j-1} \\ &= \delta_{ij} \end{align*} \end{equation}

と書ける。従って、基底\psi_i (x)の直交関係は

\begin{equation} \int_a^b \psi_i (x) \psi_j (x) dx = \delta_{ij} \end{equation}

となることが分かる。

直交多項式\{ p_i \}のスカラー積と基底\psi_i (x)のスカラー積を区別するために、次のように表現することにする。

  • 直交多項式のスカラー積
\begin{equation} \left( p_i | p_j \right) \equiv \int_a^b p_i (x) p_j (x) dx \end{equation}
  • 基底\psi_i (x)のスカラー積
\begin{equation} \braket{\psi_i | \psi_j} \equiv \int_a^b \psi_i (x) \psi_j (x) dx \end{equation}

このとき、(19)、(22)の直交関係はそれぞれ以下のように書ける。

\begin{align} \left( p_i | p_j \right) &= g_i \delta_{ij} \\ \braket{\psi_i | \psi_j} &= \delta_{ij} \end{align}
\hat{x}の行列要素とその対角化

\hat{x}の行列要素、つまり(17)において\hat{O}=\hat{x}とした場合の行列要素を考え、これを\{ X_{ij} \}と書く。

\begin{equation} X_{ij} \equiv \bra{\psi_i} \hat{x} \ket{\psi_j} = \int_a^b \psi_i (x) x \psi_j (x) dx \end{equation}

X_{ij}が求まれば、\hat{x}のn乗の演算子に対しても行列要素が簡単に求まることが分かる。\hat{x}^2を例にとって示す。

\begin{equation} \begin{align*} \bra{\psi_i} \hat{x}^2 \ket{\psi_j} &= \bra{\psi_i} \hat{x} \hat{x} \ket{\psi_j} \\ &= \bra{\psi_i} \hat{x} \left( \sum_{n=1}^{\infty} \ket{\psi_n} \bra{\psi_n} \right) \hat{x} \ket{\psi_j} \\ &= \sum_{n=1}^{\infty} \bra{\psi_i} \hat{x} \ket{\psi_n} \bra{\psi_n} \hat{x} \ket{\psi_j} \\ &= \sum_{n=1}^{\infty} X_{in} X_{nj} \end{align*} \end{equation}

ここで基底\{ \psi_i \}の完全性、

\begin{equation} \hat{I} = \sum_{n=0}^{\infty} \ket{\psi_n} \bra{\psi_n} \end{equation}

を用いた。\hat{I}は恒等演算子である。

X_{ij}を行列要素に持つ行列を\bold{X}と書くことにすると、(27)、(28)は

\begin{align} X_{ij} &= \left( \bold{X} \right)_{ij} \\ \bra{\psi_i} \hat{x}^2 \ket{\psi_j} &= \sum_{n=0}^{\infty} X_{in} X_{nj} = \left( \bold{X}^2 \right)_{ij} \end{align}

のように書ける。

次に、ポテンシャル項V(x)の行列要素を考える。(17)において\hat{O} = \hat{V}とおいて、

\begin{equation} V_{ij} = \bra{\psi_i} \hat{V} \ket{\psi_j} = \int_{a}^{b} \psi_i (x) V(x) \psi_j (x) dx \end{equation}

と書ける。ここでV(x)をTaylor展開する。

\begin{equation} V(x) = v_0 + v_1 x + v_2 x^2 + \cdots \end{equation}

このとき、(32)は

\begin{equation} \begin{align*} V_{ij} &= \bra{\psi_i} \left( v_0 + v_1 x + v_2 x^2 + \cdots \right) \ket{\psi_j} \\ &= v_0 \braket{\psi_i | \psi_j} + v_1 ( \bold{X} )_{ij} + v_2 ( \bold{X} )^2_{ij} + \cdots \\ &= v_0 ( \bold{I} )_{ij} + v_1 ( \bold{X} )_{ij} + v_2 ( \bold{X} )^2_{ij} + \cdots \end{align*} \end{equation}

と書ける。ここで\bold{I}は単位行列である。よってV_{ij}を要素にもつ行列を\bold{V}とおくと、

\begin{equation} \bold{V} = v_0 \bold{I} + v_0 \bold{X} + v_2 \bold{X}^2 + \cdots \end{equation}

と書けることが分かる。

ここで、行列\bold{X}の固有値、固有ベクトルをそれぞれ\{ \lambda_i \}\{ \bold{u}_i \}とすると、

\begin{equation} \bold{X} \bold{u}_i = \lambda_i \bold{u}_i \end{equation}

と書くことができ、

\begin{equation} \bold{U} = \left[ \bold{u}_1, \bold{u}_2, \cdots ,\bold{u}_n \right] \end{equation}
\begin{equation} \bold{\Lambda} = \begin{bmatrix} \lambda_1 \\ & \lambda_2 & & \text{\huge{0}} \\ & & \ddots \\ & \text{\huge{0}} & & \ddots \\ & & & & \lambda_n \end{bmatrix} \end{equation}

とおくと、(36)は

\begin{equation} \bold{X} \bold{U} = \bold{U} \bold{\Lambda} \end{equation}

と書ける。

\bold{X}は実対象行列であるから\bold{U}はユニタリ行列であり、

\begin{equation} \bold{U}^{\dag} \bold{U} = \bold{U} \bold{U}^{\dag} = \bold{I} \end{equation}

が成り立つ。従って(39)は

\begin{equation} \bold{X} = \bold{U} \bold{\Lambda} \bold{U}^{\dag} \end{equation}

と書ける。同様に\bold{X}^2に対しても、

\begin{equation} \bold{X}^2 = \bold{U} \bold{\Lambda} \bold{U}^{\dag} \bold{U} \bold{\Lambda} \bold{U}^{\dag} = \bold{U} \bold{\Lambda}^2 \bold{U}^{\dag} \end{equation}

のように書ける。従って(35)は

\begin{equation} \bold{V} = \bold{U} \left( v_0 \bold{I} + v_1 \bold{\Lambda} + v_2 \bold{\Lambda}^2 + \cdots \right) \bold{U}^{\dag} \end{equation}

または

\begin{equation} \bold{V} = \bold{U} \bold{V}^{diag} \bold{U}^{\dag} \end{equation}

と書ける。ここで\bold{V}^{diag}

\begin{equation} \left( \bold{V}^{diag} \right)_{ij} \equiv ( v_0 + v_1 \lambda_i+ v_2 \lambda_i^2 + \cdots )\delta_{ij} = V(\lambda_i)\delta_{ij} \end{equation}

であるような行列である。
つまりポテンシャル項\bold{V}の具体的な値を求めたければ、行列\bold{X}の固有値\{ \lambda_i \}、固有ベクトル\{ \bold{u_i} \}と行列\bold{V}x=\{ \lambda_i \}における値のみを知っておけばよいことが分かる。

ガウスの求積法

ガウスの求積法を用いて積分を評価することを考える。


(Topic)ガウスの求積法とは

積分値を近似的に求める手法の1つである。
以下のように、区間[a,b]の積分を重み\{ c_i \}と分点\{ x_i \}における被積分関数の積の和で表現する。

\begin{equation} \int_a^b f(x) dx \simeq \sum_{i=1}^{N_g} c_i f (x_i) \end{equation}

ここで重み\{ c_i \}

\begin{equation} c_i = \int_a^b \overset{ N_g }{ \underset{ j \neq i }{ \underset{ j=0 }{ \Pi } } } \frac{ x - x_j }{ x_i - x_j } dx \end{equation}

と求まり、分点\{ x_i \}はガウスの求積法で用いる直交多項式[1]N_g次の零点、つまりp_n (x)
を用いる直交多項式とするとき、

\begin{equation} p_{N_g} (x) = 0 \end{equation}

の解である[2]


ここでガウスの求積法を次のように変形しておく、(46)において

\begin{equation} f(x) = w(x) g(x) \end{equation}

とおいて、

\begin{equation} \int_a^b w(x) g(x) dx \simeq \sum_{i=1}^{N_g} c_i w(x_i) g(x_i) \end{equation}

と書き、さらに

\begin{equation} c_i w(x_i) \equiv w'_i \end{equation}

とおくと、

\begin{equation} \int_a^b w(x) g(x) dx \simeq \sum_{i=1}^{N_g} w'_i g(x_i) \end{equation}

と書ける。ここでw(x)は直交多項式の重み関数であり、(4)に含まれているw(x)と同一である。g(x)は任意の関数である。つまりガウスの求積法において直交多項式の重み関数を陽に表した表現となる。
p_n (x)を直交多項式として(52)にg(x)= p_{i-1}(x) p_{j-1}(x)を代入すると。

\begin{equation} \int_a^b w(x) p_{i-1}(x) p_{j-1}(x) \simeq \sum_{k=1}^{N_g} w'_k p_{i-1}(x_k) p_{j-1}(x_k) \end{equation}

と書ける。(4)を左辺に代入して、

\begin{equation} {\rm L.H.S.} = \sqrt{ g_{i-1} g_{j-1} } \int_a^b \psi_i (x) \psi_j (x) dx \end{equation} (4)
\begin{equation} \begin{align*} {\rm R.H.S.} &= \sum_{k=1}^{N_g} c_k w(x_k) p_{i-1}(x_k) p_{j-1}(x_k) \\ &= \sum_{k=1}^{N_g} c_k \sqrt{ g_{i-1} } \psi_i ( x_k ) \sqrt{ g_{j-1} } \psi_j (x_k) \\ &= \sqrt{ g_{i-1} g_{j-1} } \sum_{k=1}^{N_g} c_k \psi_i (x_k) \psi_j (x_k) \end{align*} \end{equation}

よって、

\begin{equation} \int_a^b \psi_i (x) \psi_j (x) dx \simeq \sum_{k=1}^{N_g} c_k \psi_i (x_k) \psi_j (x_k) \end{equation}

と書ける。(56)の左辺は(24)のスカラー積の定義に他ならないから、

\begin{equation} \delta_{ij} = \braket{\psi_i | \psi_j} \simeq \sum_{k=1}^{N_g} c_k \psi_i (x_k) \psi_j (x_k) \end{equation}

となることが分かる。
次に、(52)においてg(x) = p_{i-1} (x) x p_{j-1} (x)とおくと、

\begin{equation} \int_a^b w(x) p_{i-1} (x) x p_{j-1} (x) dx \simeq \sum_{k=1}^{N_g} w'_k p_{i-1} (x_k) x_k p_{j-1} (x_k) \end{equation}

これまでの議論と同様に、(4)、(51)を代入して、

\begin{equation} \begin{align*} \sqrt{ g_{i-1} g_{j-1} } \int_a^b \psi_i (x) x \psi_j (x) dx &\simeq \sum_{k=1}^{N_g} c_k w(x_k) p_{i-1} (x_k) x_k p_{j-1} (x_k) \\ &= \sqrt{ g_{i-1} g_{j-1} } \sum_{k=1}^{N_g} c_k p_{i-1} (x_k) x_k p_{j-1} (x_k) \end{align*} \end{equation}

従って、

\begin{equation} \int_a^b \psi_i (x) x \psi_j (x) dx \simeq \sum_{k=1}^{N_g} c_k \psi_i (x_k) x_k \psi_j (x_k) \end{equation}

よって(27)より

\begin{equation} X_{ij} = \bra{\psi_i} \hat{x} \ket{\psi_j} \simeq \sum_{k=1}^{N_g} c_k \psi_i (x_k) x_k \psi_j (x_k) \end{equation}

ここで、次のような基底を新たに定義する。これがDVR基底である。

\begin{equation} \phi_k (x) = \sum_{i=1}^{N} \psi_i (x) A_{ik} \end{equation}

ここで

\begin{equation} A_{ik} = \psi_i (x_k) \sqrt{c_k} \end{equation}

であり、\{ c_k \}\{ x_k \}はそれぞれガウスの求積法の重みと分点である。
(57)と(63)より

\begin{equation} \delta_{ij} = \int_a^b \psi_i (x) \psi_j (x) dx \simeq \sum_{k=1}^{N_g} A_{ik} A_{jk} = \left( \bold{A} \bold{A}^{\dag} \right)_{ij} \end{equation}

よって\{ A_{ki} \}を要素にもつ行列\bold{A}はユニタリ行列であることが分かる。
更に、(61)より

\begin{equation} \begin{align*} X_{ij} &\simeq \sum_{k=1}^{N_g} A_{ik} x_k A_{jk} \\ &= \sum_{k=1}^{N_g} ( \bold{A} )_{ik} x_k ( \bold{A}^{\dag} )_{kj} \end{align*} \end{equation}

と書ける。ここで以下の量を定義する。

\begin{equation} ( \bold{X}^{diag} )_{kl} = x_k \delta_{kl} \end{equation}

このとき、(65)は

\begin{equation} \begin{align*} X_{ij} &\simeq \sum_{k=1}^{N_g} \sum_{l=1}^{N_g} ( \bold{A} )_{ik} x_k \delta_{kl} ( \bold{A}^{\dag} )_{lj} \\ &= \left( \bold{A} \bold{X}^{diag} \bold{A}^{\dag} \right)_{ij} \end{align*} \end{equation}

これは行列で書くと以下のように書ける。

\begin{equation} \bold{X} = \bold{A} \bold{X}^{diag} \bold{A}^{\dag} \end{equation} (64)
\begin{equation} \bold{X} \bold{A} = \bold{A} \bold{X}^{diag} \end{equation} (69)
\begin{align} \bold{U} &= \bold{A} \\ \bold{\Lambda} &= \bold{X}^{diag} \end{align}

が成り立つことが分かる。なお、(71)は

\begin{equation} \lambda_k = x_k \end{equation}

と同義である。
(70)は行列\bold{X}を対角化するユニタリ行列\bold{U}がガウスの求積法で求めた重み\{ c_k \}と分点\{ x_k \}から作られる行列\bold{A}( (63)参照 )であることを示し、(71)、(72)は行列\bold{X}の固有値がガウスの求積法で求めた分点\{ x_k \}そのものであることを示している。

DVR基底の性質

(62)で定義したDVR基底にガウス求積法の分点\{ x_l \}を代入すると、

\begin{align} \phi_k ( x_l ) &= \sum_{i=1}^{N} \psi_i ( x_l ) A_{ik} \\ &= \sum_{i=1}^{N} A_{il} A_{ik} c_l^{-1/2} \\ &= c_l^{-1/2} \sum_{i=1}^{N} A_{li}^{\dag} A_{ik} \\ &\simeq c_l^{-1/2} \delta_{lk} \end{align}

と書ける。ここで(73)→(74)の式変形に(63)を、(75)→(76)の式変形に(64)を用いた。
(76)から、DVR基底というのはガウス求積法の分点\{ x_l \}の近傍にのみ値を持つような性質があることが分かる。

DVR基底\{ \psi_k (x) \}を用いてポテンシャル\hat{V}の行列要素を計算すると、

\begin{align} \bra{\phi_i} \hat{V} \ket{\phi_j} &= \int_a^b \phi_i (x) V(x) \phi_j (x) dx \\ &\simeq \sum_{k=1}^{N_g} c_k \phi_i (x_k) V(x_k) \phi_j (x_k) \\ &\simeq \sum_{k=1}^{N_g} c_k c_k^{-1/2} \delta_{ki} V(x_k) c_k^{-1/2} \delta_{kj} \\ &= V(x_k) \delta_{ij} \end{align}

ここで(77)→(78)の式変形ではガウスの求積法を、(78)→(79)の式変形ではDVR基底の性質(76)をそれぞれ用いた。
結果、

\begin{equation} \bra{\phi_i} \hat{V} \ket{\phi_j} \simeq V(x_k) \delta_{ij} \end{equation}

となり、DVR基底でポテンシャル\hat{V}の行列要素を表現すると対角行列となることが分かった。

脚注
  1. ガウスの求積法はその計算原理に直交多項式の性質を用いており、どの直交多項式を用いるかは計算者が選ぶ。 ↩︎

  2. 重み\{ c_i \}や分点\{ x_i \}は(47)や(48)を直接計算する必要はなく、予め計算された表(Abramovitz Stegunなどに載っている)を用いればよい。 ↩︎

Discussion