Denoでtextlintを使ってZennリポジトリを運用する
はじめに
お久しぶりです。今回の記事では二番煎じですが Deno 環境で textlint を動かす方法、および Zenn のリポジトリを Deno 運用する方法について語ろうと思います。
自分の環境では極力 node_modules
ディレクトリをなるべく作りたくないので、元々は pnpm を利用して、node_modules
内の容量を軽減していました。それでも結局はディレクトリ自体が作成されてしまっていました。これを回避する方法として Zenn のリポジトリでは Deno を使うことにしました。Deno で textlint を動かす方法についての基本は以下の記事を参考にしていますが、もっと簡単に利用できるための方法を見つけたので紹介したいと思います。
利用上の問題点
Deno で textlint を動かすこと自体はそれほど難しくないのですが、textlint のプレセットルールなどを一緒に動かすのが厄介です。素直にやるだけだとプレセットルールが動かないので事前にキャッシュなどをしておく必要がでてきます。今回はそういった回避方法を使ってより簡単に textlint をコマンドラインから使えるようにする方法を紹介します。
なお、この方法は Zenn のリポジトリの運用に限った話ではなく、何らかのドキュメントの執筆を行う時に汎用的に利用できます。
環境構築
実際に例として分かりやすいように自分の Zenn の公開リポジトリを Deno で動かすようにしたので、参考にしたい方は以下のリンクから見ることができます。
それでは、基本的な環境構築から始めていきます。まずはこれまで Zenn のリポジトリで利用してきた邪魔な node_modules
や package.json
、pnpm-lock.yaml
などを削除しておきます。ディレクトリは以下のような感じになります。大分すっきりしましたね。
❯ exa --classify --tree --level=1 -a
./
├── .git/
├── .gitignore
├── .prototools
├── .textlintrc
├── .vscode/
├── articles/
├── books/
├── images/
└── README.md
自分の環境ではツールチェインのバージョン管理に proto というツールを利用しており、このツールを使うことで Deno や Node、Rust のツールチェインなどを一元管理できます。
さらに、Deno 環境のバージョンを .prototools
というファイルに記載することでコマンドラインからの実行時に利用するバージョンを固定できます。
deno = "1.35.1"
依存パッケージの定義
実際に利用する依存モジュールの管理を行うファイルを作成します。Deno では基本的に package.json
を使わず、慣習的に deps.ts
ファイルにリモート依存として URL を配置しておきます。※ Node との互換性のために package.json
も利用可能です。
使い方は、以下のように npm specifier を使って副作用 import を記載しておきます。import_map を使ってもよいですが import_map では直接 cache することができず dep.ts
ファイルを介して利用することになるので、最初から deps.ts
を使って依存を import するようにした方がはやいです。
import "npm:zenn-cli@^0.1.144";
import "npm:textlint@^13.3.3";
import "npm:textlint-rule-preset-ja-spacing@^2.3.0";
import "npm:textlint-rule-preset-jtf-style@2.3.13";
import "npm:textlint-rule-preset-ja-technical-writing@^8.0.0";
zenn-cli と textlint のプリセットとしてとりあえず以下の 3 つを使うことにします。追加したいプリセットルールやモジュールがあれば同様に定義してください。
- https://github.com/textlint-ja/textlint-rule-preset-ja-spacing
- https://github.com/textlint-ja/textlint-rule-preset-JTF-style
- https://github.com/textlint-ja/textlint-rule-preset-ja-technical-writing
taskの定義
さて、Deno では基本的に設定などは必要がないですが、npm script のように定期的に実行したいタスクを deno.json
や deno.jsonc
などの設定ファイルを作成しておき、これに task として定義してあげることで簡単に実行できるようになります。
今回は deno.jsonc
ファイルを作成し、そこに textlint を使って実行したいチェックや修正などのタスクを定義しておきます。textlint のプリセットルールなどを利用する上で重要なこととして、プリセットのモジュールがストアにキャッシュされていることが必要です。したがって、textlint を実行する前にまずはモジュールのキャッシュを行いましょう。モジュールのキャッシュは deps.ts
ファイルに対して deno cache
コマンドを実行することで可能となります。これを task として定義しておきます。
{
"tasks": {
"cache": "deno cache deps.ts",
}
}
これでコマンドラインからモジュールのキャッシュが簡単に行えるようになりました。以下のコマンドで deps.ts
に配置された依存をキャッシュします。textlint を使う前にこのコマンドを一回だけ実行してください。これによって textlint がプリセットルールを認識できるようになります。
deno task cache
これで、textlint や zenn-cli をすぐに実行できます。
Deno は v1.28 から npm specifier という機能が使えるようになりました。これによって npm のモジュールを Deno から利用できます。deno run -A npm:zenn-cli --init
のように deno run
コマンドを使うことで npx
のようにコマンドを実行できます。このようなコマンド実行をいちいち CLI からやるのは面倒なので zenn-cli でのプレビューなどを実行するための task も定義しておきましょう。
{
"tasks": {
"cache": "deno cache deps.ts",
+ "zenn": "deno run -A npm:zenn-cli",
+ "zenn:preview": "deno task zenn preview",
+ "zenn:create:article": "deno task zenn new:article",
+ "zenn:create:book": "deno task zenn new:book",
}
}
zenn-cli の各種コマンドの使い方は以下の公式ドキュメントを参照してください。
これで以下のコマンドでプレビューを実行できるようになりました。
deno task zenn:preview
さて、当該の textlint も同様に実行したい CLI からのコマンドを task として定義してあげます。
"tasks": {
"cache": "deno cache deps.ts",
"zenn": "deno run -A npm:zenn-cli",
"zenn:preview": "deno task zenn preview",
"zenn:create:article": "deno task zenn new:article",
"zenn:create:book": "deno task zenn new:book",
+ "lint": "deno run -A npm:textlint",
+ "lint:fix": "deno task lint --fix",
+ "lint:dry": "deno task lint --dry-run"
},
ついでの Deno のビルトインフォーマッターの設定も追加しておきます。
{
"tasks": {
"cache": "deno cache deps.ts",
"zenn": "deno run -A npm:zenn-cli",
"zenn:preview": "deno task zenn preview",
"zenn:create:article": "deno task zenn new:article",
"zenn:create:book": "deno task zenn new:book",
"lint": "deno run -A npm:textlint",
"lint:fix": "deno task lint --fix",
"lint:dry": "deno task lint --dry-run"
},
+ "fmt": {
+ "useTabs": false,
+ "indentWidth": 2,
+ "semiColons": true,
+ "singleQuote": false,
+ "proseWrap": "preserve",
+ "include": ["/articles", "/books"]
+ }
}
これで textlint を実行するための準備ができました。
textlintの設定
後は、textlint の設定ファイル .textlintrc
でリントルールを定義しておきましょう。設定ファイル作成のために以下の初期化コマンドを実行します。
deno task lint --init
.textlintrc
ファイルが作成されたら、以下のようにお好きなルールを定義してください。
{
"rules": {
"preset-ja-spacing": true,
"preset-jtf-style": {
"1.1.3.箇条書き": false,
"2.2.2.算用数字と漢数字の使い分け": false,
"3.2.カタカナ語間のスペースの有無": false,
"4.2.7.コロン(:)": false,
"4.3.1.丸かっこ()": false,
"4.3.2.大かっこ[]": false,
"4.3.3.かぎかっこ「」": false,
"4.3.4.二重かぎかっこ『』": false
},
"preset-ja-technical-writing": {
"sentence-length": false,
"no-exclamation-question-mark": false,
"no-hankaku-kana": true
}
}
}
後はコマンドを実行するだけです。ためしにこの記事を textlint してみましょう。全角文字と半角文字の間にスペースを入れてくれるルールによって修正がききましたね。
❯ deno task lint:fix ./articles/how-to-use-textlint-with-deno.md
Task lint:fix deno task lint --fix "./articles/how-to-use-textlint-with-deno.md"
Task lint deno run -A npm:textlint "--fix" "./articles/how-to-use-textlint-with-deno.md"
/zenn-repo/articles/how-to-use-textlint-with-deno.md
78:37 ✔ 原則として、全角文字と半角文字の間にスペースを入れます。 ja-spacing/ja-space-between-half-and-full-width
78:38 ✔ 原則として、全角文字と半角文字の間にスペースを入れます。 ja-spacing/ja-space-between-half-and-full-width
106:279 ✔ 原則として、全角文字と半角文字の間にスペースを入れます。 ja-spacing/ja-space-between-half-and-full-width
106:283 ✔ 原則として、全角文字と半角文字の間にスペースを入れます。 ja-spacing/ja-space-between-half-and-full-width
130:38 ✔ 原則として、全角文字と半角文字の間にスペースを入れます。 ja-spacing/ja-space-between-half-and-full-width
130:42 ✔ 原則として、全角文字と半角文字の間にスペースを入れます。 ja-spacing/ja-space-between-half-and-full-width
✔ Fixed 6 problems
リポジトリ内のすべての markdown ファイルについて実行したい場合にはリポジトリのルートで以下のコマンドを実行してください。
deno task lint:fix .
まとめ
Deno を使って Zenn のリポジトリを運用し、textlint を実行する方法を紹介しました。自分の執筆環境では node_modules
を可能な限り生やしたくないのでこのような構成としました。Deno を使うことでディレクトリが非常にスッキリしました。
実際に Zenn の公開リポジトリは上記の方法を使っているので、興味があればリポジトリを見てみるといいかもしれません。
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