迷った時は、主語を取り戻そう
迷った時は、主語を取り戻そう
そろそろ様々な会社で評価や目標設定の期間になり、なりたい姿を考えるきっかけになると思い、書いてみました。誰かの救いになれば。
背景
目標設定の時期になると、多くの人が「会社から降りてくる目標」をどう扱うべきか悩むのではないでしょうか。確かに、会社の目標は「やらなければならないもの」として与えられる側面があります。しかし、その目標をただの義務として捉えるのではなく、自分自身の成長や価値観に結びつけることで、「主語=私」に変えることができると思います。
これは、特にエントリーキャリアの段階では重要なファーストステップです。与えられた目標を「自分事化」することで、仕事に対して主体が生まれ、結果として自分の人生の舵を自分で取る感覚を育むことができます。
この記事では、まず「主語を取り戻す」という考え方を通じて、会社から与えられる目標をどう自分事化するか、そしてその先にある「自分軸で生きる」ためのTipsや、マネージャーがどうやって目標設定でメンバーを導くのかについてお伝えしたいと思います。
主語を取り戻す
「主語を取り戻す」ーー
この言葉はとても深い意味を持っています。
これは一体なんなのか簡単に説明すると、「他人軸」ではなく、「自分軸」で生きること、
つまり、「自分の主導権を自分自身の手に取り戻す」 という意味になります。
例えば、こんな状態の時に、
人は「主語」を見失いやすくなります:
- 誰かの期待に応えようとしてばかりいる
- 誰かの気持ちを優先しすぎて、自分の感情がわからなくなる
- 「誰かがこう言ったから」「誰かのせいで」と、自分の人生が他人次第になっている
- 認められたいという気持ちに振り回されてしまう
このようなとき、「私はどうしたいのか」「私はどうありたいのか」という"主語=私"が消えてしまいます。
もし、あなたがこの記事を見て少しでも共感したとしたら、
おそらくあなたは一度、自分を見失いそうになったことがあるのかもしれません。
そういう時、もしあなたに「師」やあなたをちゃんと見てくれる仲間がいれば、ぜひその人と対話を通して自分の気持ちや願いにちゃんと向き合ってみてください。
そうすることで、"私"という主語をもう一度取り戻し、能動的に人生を選ぼうとする、そういう前向きなプロセスに入っていけるようになると思います。
主語が「私」になったとき、人生の方向性も、自分自身の手で舵を取れるようになります。
もし、誰かが主語に悩んでいたら、この記事をきっかけに第一歩を踏み出していただければ幸いです。
主語を失った状態
「主語を取り戻す」という言葉は、主語を失っていることになります。
「主語を失った状態」とは、言い換えると、自分の舵を他人や状況に明け渡してしまっている状態のことです。
「主語を失った状態」とは?
1. 自分の感情や欲求がわからない
- 「本当はどう感じているのか」が見えない
- 「やりたいからやる」「好きだから選ぶ」ではなく、「やらなきゃいけない」「嫌われたくないから」という選択ばかりになる
2. 言動が他人の期待や評価に強く左右されている
- 「あの人にどう思われているか」「傷つけたくない」「失望させたくない」が基準になる
- 本当はしたくないのに「いい人」でいようとする
3. 誰かに振り回されている感覚がある
- 相手の気持ち次第で自分の気分や人生が揺さぶられる
- 認められていないと感じたとき、自分の存在価値まで見失ってしまう
4. 自分の選択を「環境」や「他人」のせいにしてしまう
- 「仲間が冷たいからこうなった」「認められないしんどさを埋めるためにはこれしかなかった」など、状況が主語になる
- 自分の意思で選んでいる感覚が希薄になる
つまり、「主語を失っている状態」とは?
つまり、「主語を失っている状態」とは、「私はどうしたい?」という問いが自分の中に存在しないか、あっても答えられない状態です。
他人の感情、反応、期待、恐れ、義務感……そういったもので自分が覆い尽くされて、"自分の声"が聴こえなくなっている状態です。
この状態から「主語を取り戻す」とは?
主語を失った状態から脱して、
- 「私は何を大切にしたいのか」
- 「私は何に傷つき、何に救われてきたのか」
- 「私はどんな人生を選びたいのか」
といった問いを、自分の内側から発して、答える責任も、行動も、自分で引き受けることです。
あなたはきっと、その「自分の声」を丁寧に聴きなおし、自分の人生に再び"私"という主語を置き直そうとしているところなんだと思います。
それは、ものすごく価値のあるプロセスです。
答える責任も、行動も、あなたはどうやって引き受けるのか
自分の人生の選択に対して、他人や環境のせいにせず、自分が責任を持つということです。
具体的にどういうこと?
1. 「どうしたいか」を自分で決める責任
たとえば、
- 「認められず寂しいから誰かに求める」のではなく、「私は寂しさを感じている。どう向き合うのかを選ぶのは自分だ」 と自覚する。
- 「今この職場を辞めたら楽になる」ではなく、「私は今、何を大事にしたくて、誰とどう関わっていきたいのか」 を自分で明らかにする。
2. 選んだ行動の結果を引き受ける覚悟
- 誰かを傷つけてしまう選択であれば、その責任を「自分が選んだこと」として受け止める。
- 誰かに遠ざかられてしまったとしても、「それでも自分の正直な選択だった」と受け入れる。
3. 「仕方なかった」ではなく「選んだ」
- 「仕事がうまくいかないからこうなった」「相手が優しくしてくれたので甘えた」ではなく、「私は認められなかった寂しさに飲まれて、その相手の優しさに甘えた」 と、自分の選択として認めること。
なぜそれが大事なのか?
それは、責任を引き受けることで、自分の人生にちゃんと「手応え」が戻ってくるからです。
誰かのせいにしている限り、
- うまくいかなくても「運が悪かった」「仕方なかった」で終わってしまう
- たとえ満たされても「他人がくれたもの」だから、また不安になってしまう
でも、自分で選んで、行動して、その結果を引き受けたとき、
- 後悔があっても「自分の人生だ」と納得できる
- たとえ傷ついても「自分で生きている」という手応えが残る
マネージャーがメンバーに主語を取り戻させるには
目標設定や1on1では、メンバーが「主語=私」を取り戻すきっかけを作る重要な機会だと思います。
マネージャーとして、メンバーが自分の軸で仕事に対して手応えを得られるようにするためには、以下のようなことが大事なのではないかと思いました。
1. メンバーの価値観や願いを引き出すように働きかける
メンバーが「自分はどうしたいのか」を考えるきっかけを作るために、以下のように問いかけてみる。
- 「あなたがこの仕事で一番大切にしたいことは何ですか?」
- 「どんな成果を出せたら、自分自身が誇りに思えますか?」
- 「この目標を達成した先に、どんな自分でありたいですか?」
- 「どんな仕事ができたら、あなたは幸せだと思いますか?」
このような質問を通じて、メンバーが他人の期待ではなく、自分の内側にある願いや価値観に気づけるように導きます。
2. 「他人軸」ではなく「自分軸」に気づかせるフィードバックをする
もし「他人軸」が見え隠れしている場合は、優しくその点を指摘し、「自分軸」に立ち戻るように導きます。
たとえば、
- 「この目標は、誰かに認められるためのものではなく、あなた自身が納得できるものになっていますか?」
- 「この目標を達成したとき、あなた自身がどんな気持ちになるかを想像してみてください」
こうしたフィードバックを通じて、メンバーが「自分の主語」を意識できるように導きます。
3. 選択肢を提示し、選ぶ責任をメンバーに委ねる
マネージャーが一方的に自らの主語を押し付けるのではなく、いくつかの選択肢を提示し、メンバー自身が選ぶ責任を持てるように導きます。
たとえば、
- 「あなたのなりたい姿を実現する方法として、A案とB案がありますが、あなたはどちらを選びたいですか?」
- 「それを実現するために、どんなアプローチがあなたにとって最適だと思いますか?」
このように選択肢を与えることで、メンバーが自分の意思で選択する感覚を得られるようにします。
4. 結果を引き受ける覚悟をサポートする
メンバーが自ら選択したあと、その結果を引き受ける覚悟を持てるように、メンバーをサポートします。
たとえば、
- 「このなりたい姿を実現する過程で、どんな困難が予想されますか?それにどう向き合いたいですか?」
- 「もしうまくいかなかった場合、どんな学びを得たいですか?」
こうした対話を通じて、メンバーが実現までのプロセスを自分の責任として捉えられるようにします。
5. メンバーの成長を見守り、適切なタイミングでフィードバックをする
サポートする中で、メンバーが「主語=私」を保ちながら進められるように、適切なタイミングで励ましやフィードバックを行います。
- 「しっかり進められているね。自分の選択を信じて進んでいいと思うよ。」
- 「困ったことがあればいつでも相談してね。あなた自身のペースで進めていこう。」
メンバーが自分の選択に自信を持てるよう、マネージャーとして寄り添う姿勢が重要です。
6. メンバーに委ねる、という責任を持つ
私が最も大事だと思う部分です。
メンバーに決断を委ねることは、マネージャー自身が責任を持つ行為です。単に「任せる」だけではなく、メンバーが安心して選択し、結果を受け止められるように支えることが大切です。
選択の土台を整える
メンバーが適切に選択できるよう、必要な情報や選択肢を整理して与える必要があります。
選択のプロセスを見守る
メンバーが迷ったり不安を感じたときには、アドバイスや質問を通じて伴走します。ただし、最終的な選択はメンバーに委ねます。
例:「どちらを選んでも良いけれど、あなたが大切にしたいことは何かを考えてみて。」
結果を共に受け止める
メンバーの選択が成功でも失敗でも、その結果を責任を持って受け止めます。特に失敗した場合は、責めるのではなく、次に活かすための学びを一緒に考えます。
例:「今回の結果はこうなったけれど、次にどう活かせるか一緒に考えよう。あなたの選択を尊重しているよ。」
マネージャーの責任とは?
「任せた以上、結果を共に引き受ける」覚悟を持つこと
メンバーが失敗しても、それをマネージャー自身の責任として受け止め、メンバーを守ります。
例:「この結果は私たちチーム全体で乗り越えることだよ。次に向けて一緒に改善しよう。」
「信頼を伝え続ける」こと
選択を委ねること自体が信頼の証であることを明確に伝え、メンバーが安心して選択できる環境を作ります。
例:「あなたに任せたのは、あなたを信じているからだよ。どんな結果でも一緒に考えて乗り越えるから、安心して進めてね。」
なぜこれが重要なのか?
マネージャーが責任を果たすことで、メンバーは「自分の選択に責任を持つ」感覚を得られます。これにより、他人の期待に振り回されず、自分の意思で行動する力が育まれます。また、マネージャー自身もメンバーの成長を支える役割を果たし、信頼関係を深めることができると思います。
また、私個人の考えになってしまいますが、自己開示を通して心理的安全性を担保できるとなお良いと思います。オープンな対話による信頼関係の構築はメンバーを前へ推し進めるためには必要な要素だと思います。
さいごに
自分と向き合うことは時には辛いこともあると思います。
ですが、これは厳しさではなく、自分を自分で守れるようになるための強さです。
誰かに答えを委ねるのではなく、「私はこう思う」「私はこう生きる」と言えること。
その積み重ねが、きっとあなたを楽にしてくれると僕は考えています。
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