横断的なQAによる“知識資産化”と“スピード最優先”の品質標準化戦略
株式会社GENDA Platform Engineering部のどぅさんです。
この記事は、GENDA Advent Calendar 2025 シリーズ1 Day16 の記事です。
はじめに:なぜGENDAでQA標準化が必要なのか
私たちGENDAのVisionは「2040年世界一のエンタメ企業」になることです。
この大きな野望の実現に向け、GENDAはアミューズメント施設、カラオケ、キャラクターMDなど、多様な事業を「仲間入り」によって急速に拡大しています。
事業が拡大するにつれ、私たちが提供するサービスの品質保証(QA)のあり方も進化が求められます。
昨年までのQAは自分1人だけだったため、1プロダクトずつQAの導入を進め、主にマニュアルテストによる品質担保を行っていました。
しかし、「Speed is King」(スピード最優先)を掲げるGENDAにおいて、この体制のままでは拡大し続けるエンタメ・プラットフォーム事業の品質を担保し続けることは困難です。
そこで今期、私はPlatform Engineering部の一員として、横断的なQAの品質標準化、そしてプロダクト開発のスピードを止めないQA体制の構築に注力してきました。
本記事では、この挑戦の具体的な取り組みについてご紹介します。
1. 開発プロセス上流への参画:QAのシフトレフトを徹底する
QA標準化の最初の取り組みは、テストフェーズを待つのではなく、開発のより上流で品質を作り込む「シフトレフト」の徹底です。
具体的には、要件定義やデザインの段階から仕様の詳細について詰めていきます。この早い段階で、デザイナー、エンジニア、プロダクトマネージャーとともに仕様の穴や考慮漏れとなるパターンを洗い出すことで、開発後の手戻りを大幅に削減し、QA工程に入る時点で一定以上の品質が担保されている状態を作り出しました。
これは、最終的なリリースまでの期間を短縮する、「Speed is King」の実現に不可欠な取り組みです。
2. スピードと網羅性を両立するテスト自動化基盤の導入
マニュアルテストに頼る体制では、コア機能[1]以外の品質担保が手薄になるリスクがありました。この課題を解決するため、今期はテスト自動化の導入に注力しています。
自動テストの実装は専任の自動化担当メンバーが担っていますが、導入における以下のプロセスをPlatform Engineering部として推進しました。
採用: 自動化の専門知識を持つメンバーのチームへの迎え入れ。
ツール選定と導入: 複数のプロダクトへ横断的に適用できる汎用性の高いツールの選定。
導入プロダクトの選定と実装: 影響範囲が大きく、頻繁に改修が入るコア機能を持つプロダクトから優先的に自動化を適用。また、自動化との相性も見ながら選定しました。
この取り組みにより、コア機能以外の改修が入る際にも自動テストが品質のベースラインを担保できるようになり、マニュアルテストの工数を削減し、より重要度の高いテストに集中できる環境を整えることを推進できています。
3. 根拠に基づく品質向上:不具合分析の開始
昨年まではQAチームが一人体制であったため、テスト実施時には不具合を検出・報告するフェーズで手一杯でした。しかし、メンバーが増強された今期は、さらに品質を一段階引き上げるため、「不具合分析」の取り組みを始めました。

不具合原因を開発チーム単位で分析
不具合の発生源、発生フェーズ、種類などを詳細に分析することで、どの開発プロセス、どのチーム、どのスキルセットに改善の余地があるのかを客観的に把握できるようになります。この分析結果を開発チームにフィードバックすることで、根本的な品質向上に繋げることを目指しています。
4. QAの知識資産化:横断体制を支えるドキュメント標準化
Platform Engineering部では、特定のプロダクトに所属するのではなく、複数のプロダクトを横断的に担当しています。今後もQAの増員を継続していくため、「誰でも、どのプロダクトでも、一定の品質でQAが実施できる」状態、つまり脱属人化が必須です。
この実現のため、現在、すべてのプロダクトで以下の4種類の基本資料を作成し、QAの知識資産として整備を進めており、今期中の整備完了を目指しています。
① オンボーディング資料
新規参画時に必要なアカウント情報、基本的な資料の場所、会議体、Slackチャンネルなど、立ち上がりに必要な情報を網羅しています。
② 許容不具合一覧
過去に許容された不具合、OS間の表示差分、仕様判断がつきにくいグレーな事象などを一覧化し、関連するチケットやSlackの会話を紐づけています。これにより、QA実施者が疑問に思った際の自己解決率を向上させ、開発側への確認コストを削減しています。
③ テスト実施のためのTips
テスト実施に必要なデータ作成方法、特定の機能の表示出し分けロジックなど、テスト実施に特化したノウハウを書き残しています。久しぶりに担当するプロダクトや、初めて担当するメンバーでも、このTipsを参照することでスムーズなQA実施が可能となり、効率化に大きく貢献しています。
また、資料はConfluenceで管理していますので、QAだけではなく、プロダクトへ新規で参画されたエンジニアやプロダクトマネージャーの導入時や、仕様を調べる際などにも役立っていると思います。
④ 画面一覧
運用コストがかかる画面遷移図の代わりに、画面一覧に「遷移元」と「どの案件で改修が入ったのか(PRD:Product Requirements Documentのリンク付き)」を記載した資料を作成しています。
遷移元: 影響範囲の特定を容易にする
PRDリンク: 詳細な機能仕様の確認を容易にする
リグレッションテストの項目書とこの画面一覧を組み合わせることで、改修の全体像と詳細な仕様を素早く理解できる体制を整えています。
おわりに
Platform Engineering部による横断的なQA標準化の取り組みは、GENDAのエンターテイメント事業の拡大を支える、まさしく品質の要です。私たちは「Grit and Grit」(やり抜く力)の精神で、この標準化をさらに徹底し、自動化の適用範囲を広げ、「世界中の人々の人生をより楽しく」(英訳:More fun for your days)するというAspirationを、技術と品質保証の面から実現していきます。
この記事を通じて、GENDAのQAに対する考え方と、Platform Engineering部の活動に興味を持っていただけたら幸いです。
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各プロダクトにおける中心となる機能。このコア機能に影響がある案件をQAチームが入るべき大型案件として定義しています ↩︎
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