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属人化の対策について考えたこと

2024/05/05に公開

属人化とは何か

属人化とは、タスクが特定の個人がもつスキルや知識・ノウハウに強く依存している状態のこと。属人化している状態では、下記のような状況を生むリスクがある。

  • 担当者にかかる負荷を分散できず過大な負荷がかかってしまう。
  • タスクの実施方法などに関する妥当性がレビューされず改善が進まない。
  • 担当者が不在の時や離職したときにタスクが実施できなくなったり、極端に生産性が下がってしまう。

こういったリスクに対応するため、組織として属人化に対策を講じなければならない。

属人化への対策

担当者の多重化

モブワークや訓練を通じて他のスタッフに知識を共有し、複数のスタッフがタスクを実施可能な状態を維持する。実施可能な状態を維持するためには、継続的なモブワークやローテーションなどの仕組みで実際に複数のスタッフがタスクを実施している状態にしておく。

タスクを確実に実施できるスタッフが複数いる状態はメリットだが下記のデメリットもある。

  • 担当者が複数になっても暗黙知が残る。二人の担当者がいても二人ともが不在だったり離職することを考えればリスクは残る。
  • 知識を共有し続けるコストが高い。
  • 人員の都合などで追加の担当者を立てることが難しい場合がある。

ドキュメント化(形式知化)

タスクの実施に必要な知識をドキュメント化する。手順書や内容を把握するための資料を準備しておくことで、担当者の不在や離職に備えることができる。ただし、ドキュメント化しただけでは陳腐化や不備などにより実際には担当者以外がタスクを実施できないといったことが起きがちであるため、ドキュメントを適切な状態に維持する仕組みも併せて必要となる。

担当者の多重化と比べると、下記のようなメリット・デメリットがある。

メリット

  • 誰にでもいつでも低コストで情報を共有できる
  • 担当者の不在や離職が影響しない
  • レビューや振り返りを通してタスク内容を改善しやすい

デメリット

  • 不備や不十分なメンテナンスなどが原因で実際にはドキュメントだけではタスクを実施できないことがある

自動化する

タスク内容をシェルスクリプトやIaaCツールのコードに落とすなどして自動化を行う。タスク内容をコード化することで形式知化できる。最初はコストがかかるが、高頻度のタスクであれば実施コストが大幅に減り、誰にでもタスクが実施可能になるためメリットが大きい。
複雑なタスクの自動化の場合はそのコードのメンテナンスが属人化するリスクがあるが、ドキュメント化していない手動タスクと比べるならば圧倒的にベターな状態になる。

担当者の多重化、ドキュメント化、自動化のどれを実施すべきか

理想はできるものすべてをやることだが、実施コストやさまざまな制約から現実的にそこまでできないこともある。状況によるが、基本的な優先度は 自動化 > ドキュメント化 > 担当者の多重化 となる。

自動化はドキュメント化としての効果もありながら他の2つと異なりコストを下げる効果もあるため、可能ならばまず選ぶべき選択肢になる。担当者の多重化とドキュメント化はいずれも継続的にコストがかかるが、コストの大きさや担当者の多重化に関連するデメリットを考えるとドキュメント化を優先すべきケースが多いはずだ。

しかし、手順が多かったり暗黙知が入り込みやすい難易度の高いタスクではドキュメント化だけでは不十分になりやすく、ドキュメント化に加えて担当者の多重化も必要になってくる。

属人化の罠

属人化の定義は「特定の人しか担当していないタスク」ではない

「特定の人しか担当していないタスク」が属人化しているタスクなのではない。「特定の人しか担当できないタスク」が属人化したタスクだ。つまり、特定の人しか担当していないとしても、代わりに他のスタッフが実施することができる程度に簡易なタスクや適切にドキュメントが整備されたタスクは属人化したタスクではない。

属人化は絶対に潰さなければならない悪ではない

属人化の対策はゼロコストではないため、具体的なリスクとその許容範囲を理解したうえで必要な対策を実施すべき。リスクがないか、許容できる範囲のリスクであるならば無理に属人化の解消をする必要はない。

生産性向上など別の観点の話を属人化の話と混同しない

属人化の解消と生産性向上は別の課題ではあるが、実践内容としては知識の伝搬や訓練など被る面が多い。同じ内容でも、属人化解消の観点では不要であっても生産性向上の観点では必要という判断になることもある。

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