Google Jules(ジュールズ)入門:AI開発初心者向け解説
1.はじめに
こんにちは。SKYこと関谷です。
本日は、執筆途中であと一歩で埋もれていた内容のブログをお届けします。
今回の題材は、これまでとは異なる 自律型のAIコーディングエージェント です!
興味がありながらも本業とは少し領域がことなりますが、インフラエンジニアであるからこそ、こういった AI を活用した開発ツールは自己を別の次元に飛び立たせてくれるものでした。IaC(Infrastructure as a code) が当たり前の昨今、今までのポジションでは生き残れないなと思うところでもあります。
さて、本題に入ります。
近年、ChatGPT や GitHub Copilot などの登場でプログラミングを支援するAIツールが注目を集めています。Google labs が新たに公開した Google Jules(ジュールズ) は、これまでの「コード補完アシスタント」とは一線を画す存在です。
Jules は、単なる入力補助ではなく自分でコードを読み取り、意図を理解して作業を進める ことを目指すものです。
Jules 開発の意図は、開発者の負担を減らし生産性を高める ことにあります。開発者が本当に書きたいコードやクリエイティブな作業に集中できるよう、Jules が煩雑な、また、toil (トイル、手作業で繰り返され、自動化が可能で、長期的な価値を持たない作業)を肩代わりしてくれます。
「Julesはあなたの書きたくないコーディング作業を引き受けてくれる」ものであり、その結果、開発者には「本当に書きたいコードを書く時間と余裕を生む」大きな利点を享受できます。
その他の Google Labs 発のツールも紹介しています。
2.Julesが解決する課題について
Julesが解決しようとしている主な課題は、ソフトウェア開発における反復的・煩雑な作業の自動化 です。従来、バグ修正やテストコードの作成、ライブラリのバージョンアップなど、多くの開発タスクはエンジニアの手作業に頼っていました。
Julesはそうした「開発者があまりやりたがらない作業」を代行することで、チームの生産性を向上させます。
具体的には次のようなケースでJulesが役立ちます。
- バグ修正 :不具合の原因をコードから見つけ出し、自動的に修正。開発者がデバッグに費やす時間を削減します。
- テストの追加・更新 :既存コードを読んでテストケースを生成し、コードの信頼性向上に貢献。
- 機能追加:新しい機能の実装も、要件を指示すれば必要なコードを生成。複数のファイルにわたる変更も一括で対応可能です。
- 依存関係のアップデート :フレームワークやライブラリのバージョンアップ作業(例:Next.jsをv10からv15へ更新など)も自動で行います。
- コード変更の要約(音声対応含む) :変更履歴を解析し、音声による変更ログ(音声サマリー) を提供する機能もあります。これにより、プロジェクトの最近の変更点を耳で聴いて把握できます。
以上のように、Julesは Google Cloud 上の隔離された VM 上で ソフトウェア開発の一連のワークフロー(コード生成、バグ修正、テスト作成、リファクタリング等)を実行し し、アイデアから実際のコードまでの時間を短縮してくれる協力者です。特にAI開発が初めての人にとって、複雑なコーディング作業を任せられるのは大きな助けとなります。
3.主な機能
Julesは上記の目的を果たすために様々な機能を備えています。専門的な知識がなくても扱いやすいよう、会話形式で操作できるデザインや自然な文章で指示できるインタフェースが特徴 です。また、コードの動作確認や結果のエクスポート まで一貫してサポートします。以下にJulesの主要な機能を整理します。
機能 | 内容と特徴 |
---|---|
会話形式のAI設計 | チャット画面でJulesと対話しながら開発。まるで同僚と相談するように作業が進む。 |
自然言語での指示入力 | 日本語または英語の文章でタスク依頼が可能。コーディング未経験者にも扱いやすい。 |
プラン提示と編集 | 変更計画を提示し、ユーザーが確認・修正・承認できる。 |
コードの自動生成・テスト実行 | クラウドVM上でコード編集・実行。テストによる動作確認も行う。 |
変更内容の確認とエクスポート | 差分表示、変更サマリー、プルリクエスト(PR)作成が可能。 |
GitHubとシームレス連携 | GitHubとの統合により、既存の開発フローに自然に組み込める。 |
モデル技術 | Google Geminiをベースにした高精度AIモデルを搭載。 |
4.画面構成例
初回ログイン後の画面には、リポジトリ選択、指示入力欄、環境設定セクション(npm install
など)、実行計画のボタンなどが含まれています。①リポジトリ選択 → ②タスク入力 → ③環境設定 → ④プラン要求 という流れをたどります。
Julesの画面構成例
上図はJulesのWebインタフェース画面例です。
初回利用時にGoogleアカウントでログインし、GitHubアカウントを連携すると、上図のようなダッシュボード画面 に進みます。
画面上部では接続中のGitHubリポジトリ名 (例:「tomoaki/testjules」)とブランチ名 (例:「main」)を選択できます。その下の大きなテキスト入力欄がJulesへの 指示入力フィールド です。
ブランチ名の右にある「<>」をクリックすると、必要な環境を作成するための指示文入力画面に遷移します。
また、指示入力フィールドには、「Ask Jules to work on a task(Julesにタスクを依頼)」と書かれており、ここにやってほしい作業内容を自然言語で入力します。
最後に画面下部の「Create plan (プランを作成する)」ボタンを押せば、Julesがタスク実行プランの作成を開始します。
このように、Julesの画面は
①リポジトリ/ブランチ選択 → ②タスク内容入力 → ③環境設定(任意) → ④プラン要求
という流れで構成されており、初心者にも直感的に操作できるデザインになっています。
5.Julesの基本的な使い方(利用の流れ)
Julesを用いたAIコーディングの全体的な流れを、フローチャートで示します。ユーザーが依頼してからコードがプロジェクトに反映されるまで、どのように進むのか全体をイメージしてみましょう。
上記のように、まずユーザーがJulesにやってほしい作業を依頼すると、Julesはプロジェクト全体のコードを読んで実行計画(プラン) を作成します。
ユーザーはそのプラン内容を確認し、必要があれば修正点をチャットでフィードバックします。
プランが固まったらユーザーの承認(Approve)によりJulesが実際のコード変更作業を開始します。
Julesはクラウド上でコードを編集・追加し、同時にテストも実行して問題がないかチェック(動作確認) します。
テスト完了後、変更箇所の差分とサマリーが表示されるので、ユーザーは仕上がりを確認します。
最後にワンクリックで結果をGitHubにブランチとして反映し、プルリクエスト(PR)を作成 できます。
あとはそのPRをプロジェクトのメンバーとレビュー・マージすれば、実際のコードベースに変更が適用されます。
6.メリットとデメリット
6.1.メリット
- 専門知識なしでも自然言語で開発を依頼可能
- クラウドでコード編集・テストが完結
- PR作成・差分提示まで自動
- チーム開発と親和性が高い
6.2.デメリット・注意点
- 英語中心の操作(簡単な指示では使えるようですが、日本語完全対応されていない可能性あり。UIは日本語選択可能)
- GitHubなどの基本知識が必要
- 曖昧な依頼には弱いことも
- 出力コードの最終確認は必須
- 今後の料金体系に注意
7.競合ツールとの違いと比較ポイント
Google Julesとよく比較されるツールには、GitHub Copilot、Amazon CodeWhisperer、Cursor AI、Replit Ghostwriter などがあります。それぞれの特徴と、Julesとの違いを以下の表に整理しました。
ツール名 | 提供元 | 主な特徴 | Julesとの違い |
---|---|---|---|
GitHub Copilot | GitHub + OpenAI | エディタ補完に特化。リアルタイムでコード補完・提案を行う。 | IDE補完中心で会話型プラン提示やタスク実行には非対応。 |
Amazon CodeWhisperer | AWS | AWS連携、セキュリティスキャン機能あり。 | AWS利用者に最適だが、タスク計画やPR作成機能はない。 |
Cursor AI | Anysphere | ローカルコードを深く読み込むチャット型IDE。 | JulesはGitHub統合型でクラウド仮想環境上で作業する。 |
Replit Ghostwriter | Replit | Replit内のクラウドIDEで補助作業を行う。 | IDE一体型だが、Julesのようなプラン承認→実行の流れはない。 |
Devin | Cognition Labs | エージェント対応のクラウドIDE。ブラウザ/シェル/エディタを備え、対話的に計画→実行→検証までこなす。 | JulesはGitHub連携の非同期タスク型(計画提示→承認→実行→差分→PR)。DevinはIDE内での対話・並列実行やWebブラウジングも可能。 |
Julesの強みは、単なる補完ではなく、タスクの立案・確認・実行・結果の反映までを一貫して担える点です。GitHubと連携し、開発者との対話を通じてプロジェクト単位で作業を進められる設計は、従来のツールとは一線を画します。
8.まとめと今後について
Google Julesは、AI開発初心者からプロのエンジニアまで幅広いユーザーにとって画期的なコーディングパートナーとなり得えます。背景にある開発思想や主要機能を見てきたように、Julesはこれまで人間が行ってきた面倒なコーディング作業を自動化し、対話を通じて共創できるよう設計されています。初めてAIを開発業務に取り入れる方にとっても、Julesは強力な助っ人となるでしょう。
なお、本記事ではJulesの概要に焦点を当てました。具体的な使い方(セットアップ手順や基本操作の流れ)については、別の記事にて詳しく紹介する予定です。
本記事で興味を持たれた方は、ぜひ次の記事でJulesの実践的な利用方法を確認してみてください。
今後もアップデート情報や活用事例が増えていくと思われますので、Julesの進化に注目しつつ上手に活用していきましょう。
Julesは今年(2025年)8月に正式版となったばかりですが、「AIが自動でコードを書く時代」先駆け層の一つです。
初心者の皆さんも臆せず触れてみて、新しい開発体験を楽しんでみてください。きっとこれまでにない体験と効率、発見が得られるはずです。(私もそうでした!)
今後の記事もぜひチェックをお願いします!
9.参考情報
Jules - An Asynchronous Coding Agent
Jules: Google’s autonomous AI coding agent
Jules introduces new tools and API for developers
Getting Started | Jules
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