delyでAIとともに新しいプロダクトに挑む
「新しい会社で本当にやっていけるだろうか?」
転職や新卒入社を控えたエンジニアなら、誰しも一度は抱く不安ではないでしょうか。特に、これまで経験のない技術スタックや、大規模なプロダクトに関わることになった時、その不安は一層大きくなると思います。
こんにちは!クラシルリワードでバックエンド開発をしているkiyokuroです。
私自身も2024年8月にdelyに入社し、2025年4月にクラシルリワードという新しいプロジェクトチームに異動しました。そこで待っていたのは、これまで深く関わったことのないインフラ領域を含む、新しいドメイン知識と技術スタックでした。Railsの経験はあったものの、Terraformの運用経験は凄く少ない。「ちゃんと戦力としてやっていけるだろうか」という不安を抱えていました。
しかし、delyでAIツールとともに、この状況を大きく変えられました。Claude CodeやDevinなどのツールを活用することで、未知の技術領域でも効率的に学習し、実際にプロダクトに貢献できるようになったと感じています。
ここではAI時代の新しい働き方として、「AIとともに新しいプロダクトに挑む」経験をお伝えできればと思います。
新しいプロダクトとの出会い
複雑な技術スタックへの挑戦
クラシルリワードチームに異動となった私が担当することになったのは、認証系の重要なシステムでした。このシステムでは複数の技術要素が組み合わされており、特にこれまで経験の少ないインフラ管理の部分で大きな学習が必要でした。
Ruby部分については既存の知識で対応できそうでしたが、Terraformについては「どのように読むのか」「コード間の参照関係はどうなっているのか」というところから学ぶ必要がありました。
「本当に貢献できるのか」という不安
新しい環境での不安は、技術的な部分だけではありませんでした:
- ドメイン知識の習得:クラシルリワードというプロダクト自体の理解
- 技術スタックの多様性:Rails、Terraform、AWSサービス全般
- 運用責任の重さ:重要なID基盤システムの安定稼働への責任
- チームへの貢献:早期に戦力として認められるかの不安
このような状況で、「果たして期待に応えられるのだろうか」という気持ちは常にありました。
AIを相棒にした学習と貢献のアプローチ
全体像把握:Devin Wikiの活用
未知の技術領域に立ち向かうため、まずは社内で利用できるAIツールを最大限活用することにしました。特に効果的だったのがDevin Wiki機能です。
Devin Wikiは、リポジトリ全体を解析して、そのシステムの概要や構成、主要な機能を自動でドキュメント化してくれます。膨大なコードベースの中から重要なポイントを抽出し、分かりやすい形で整理してくれるため、初見のプロダクトでも効率的に全体感を掴むことができました。
社内のDevin Wikiでキャプチャを掲載できるものは何もないので、画面イメージと具体的な機能はこちらを参照してください。
学習のコツ:
念入りに全てを読み込むのではなく、 「必要な時に戻ってこられるセーブポイント」 くらいの気持ちで斜め読みし、「こんなことが書いてあった」程度に把握することから始めました。
作業時の仕様理解:Ask Devin機能
実際の作業時には、Ask Devin機能を活用して作業対象の仕様を説明してもらい、変更すべき箇所を特定するようにしました。例えば:
- 「このAPIエンドポイントはどのような処理をしているのか?」
- 「この設定変更が影響する範囲はどこか?」
- 「セキュリティの観点で注意すべき点は何か?」
このような質問を通じて、作業の前に必要な情報を整理し、少しでも自信を持って実装できるようにしました。
実装作業:Claude Code Plan Mode
実際にコードを変更する際には、Claude CodeのPlan Modeを活用しました。これは、変更の計画を立ててもらってから実装に移るモードで、AIをペアプログラミングのパートナーとして活用できます。
安全な学習方法:
慣れないうちは 「Accept Edits」を自動承認にせず 、変更されていく箇所をAIと一緒にコードを追いながら進めました。この方法により:
- 変更内容を理解しながら進められる
- 予期しない変更を防げる
- 学習効果を上げる
未経験技術への具体的なアプローチ
Terraformでの学習体験
特に苦労したTerraformの習得において、AIとの対話が威力を発揮しました。
段階的な理解プロセス:
私:「S3バケットを作りたいんですが...」
AI:「S3のmoduleがあるので、それを参照してリソースを作成しましょう。
IAMロールも必要ですね。IAMポリシーテンプレートがすでにあるので、
ロールを作ったらそれをアタッチしましょう。」
このように、Terraformの構造を説明してもらいながら作業を進めることで、数時間でapplyできる状態まで構築できました。
対話的な深掘り学習:
ドキュメントを読むよりも、気になることを一つずつ質問しながら進められるのがAI活用の大きなメリットでした:
- 「S3のアクセス制限設定のベストプラクティスは?」
- 「ファイルサイズ制限の実装方法は?」
- 「大量アップロード時のアラート設定は可能か?」
AI活用の課題と現実的な対応
ハルシネーションへの対策:
Terraformの設定で、AIが存在しないプロパティを提案することがよくありました。この場合は:
- AWS ConsoleのGUIで正確な設定を確認
- 公式ドキュメントとの照合
- terraform planでの事前検証
MCPによる精度向上:
私は試してませんが、TerraformやAWSのOfficial DocumentationをMCPで直接参照できるようになれば、より精度高くAIを使って学習できますし、ハルシネーションの問題も解決できると思います。
プロダクト品質向上への貢献
delyのフルサイクル開発体制とProduction Readiness Check
delyでは「フルサイクル開発体制」という取り組みを推進しており、エンジニアが開発だけでなく運用まで一貫して担当します。この体制の一環として、新しいプロダクトで確実に貢献するため、SREチームが用意した包括的なチェックリストに基づいて、Production Readiness Check(PRC)を実施しました。
delyのフルサイクル開発体制についてはjoeさんのこちらの記事を参照してください。
AIを活用した効率的な調査:
- Ask Devinでサービス全体の構成と問題点を調査
- Claude Codeで詳細な設定内容を分析
- Notion MCPで社内ドキュメントを効率的に検索
このようにAIツールを組み合わせることで、どのリポジトリで管理されているのか、どこにドキュメントがあるのか探すところから始める必要がありましたがかなり効率化できたと思います。従来なら先輩エンジニアに質問攻めをするか、ドキュメントを片っ端から読み漁る必要があったところを、AIとの対話で効率的に進められたのは大きな収穫でした。
発見された問題と改善:
- SLI/SLO未定義 → 社内基準に合わせた指標策定
- ドキュメント分散 → 運用ドキュメントの整理
- テスト体制不足 → 障害想定テストの計画策定
問題改善でのAI活用
新しい設定を追加する際は、以下のアプローチを取りました。例えばSLI/SLOを設定する時には:
- 他のプロジェクトの目標値の調査:AIに社内の類似プロジェクトでの設定例を調査してもらう
- 指標の評価:他のプロジェクトで設定されている基準と目標を叩き台としつつ、これから設定するプロジェクトのコンテキストを理解してもらった上で妥当な水準なのか、より高い目標値が必要なのかアドバイスをもらいました。
特に今回関わった認証系システムでは他の社内システムからアクセスされるため、スマホアプリ用のAPIと同じ水準ではスマホアプリ用のAPIのレイテンシが増加するため、より高い目標値を設定した方が良いといったアドバイスがされたりしました。
もちろんAIに頼り切るとdelyでのルールや規約に沿わない部分、AIが間違っている部分も出てくるので人間がレビューする必要はこれまでと変わらず必要です。
AI時代の新しい働き方
技術習得スピードの革命
従来との比較:
- 従来:ドキュメント読み込み → 試行錯誤 → 先輩への質問 → 実装
- AI活用:AI対話で理解 → 計画立案 → 協働実装 → レビュー
AIとの協業により、新しいプロダクトに関わったエンジニアが開発・運用に早期に並走できるようになったと感じています。
重要な心構え:人間とAIの協働バランス
AI活用の注意点:
理解の深さや正確性はすぐには獲得できず、「荒さ」が残ることも事実です。この点を謙虚に受け止め、以下を心がけています:
- プロジェクトごとのルールや規約があるので他のメンバーをリスペクトしてレビューやアドバイスをもらう
- 最終的な判断と責任は人間が担うという姿勢を保つ
- AIの成果物を人間が適切に評価する習慣を身につける
delyでの成長を支える環境
積極的なAI活用文化:
delyでは組織全体でAIを積極的に活用しようという考えがあります。これは流行への追従ではなく、エンジニアの成長加速と事業の成長を考えたものだと思っています。
安全な実験環境:
同時に、AIが暴走しないようなガードレールも整備されており、自由な実験と安全な運用のバランスが取れています。
新しい技術への参入障壁の低下:
AI活用により、新しい技術領域への参入障壁が大幅に下がりました。「経験がないから貢献できない」ではなく、「AIと協働して素早く貢献する」という新しい働き方が可能になっています。
おわりに
新しいプロダクト、新しい技術スタック、新しい環境──こうした「新しさ」への挑戦は、確かに不安を伴います。しかし、AI開発支援ツールとの協働により、その不安を大幅に軽減し、むしろ成長の機会に変えることができるようになりました。
重要なのは、AIを万能の道具として過信するのではなく、人間とAIが協働する最適なバランスを見つけることです。AIの力を借りながらも、最終的な判断と理解は人間が担う──この姿勢を保つことで、どのような新しい環境でも安心して挑戦できると考えています。
もし「新しい環境でやっていけるか不安」と感じているエンジニアの方がいらっしゃるなら、AI時代の新しい働き方を体験してみませんか?delyでは、そのような挑戦を全力でサポートする環境が整っています。AIとともに、一緒により良いプロダクトを作っていきましょう。
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