輪読会で共鳴するマネージャーたちの志。一緒に学び、解決する
はじめに
クラウドエース株式会社 Frontend Division でマネージャーをしているシュプレです。
クラウドエースのメンバーは毎年増えており、人数が増えるに従ってマネージャーの数も増えてきました。
それに伴って、今までマネジメント経験の無いメンバーもマネージャーになる機会が増え、体系的なマネジメントの知見を継続的に得る機会が必要になってきました。
そこで、Divisionのマネジメントを担当するメンバーに向けた、定期的なマネジメントの勉強会を企画し、運用することに決めました。
今回は体系的にマネジメントを学べる本を選定し、その本を題材にした輪読会という手段をとりました。
伝えたいこと
今回の輪読会を通じて得られた気づきは以下の二つです。
- 本の内容をベースに、テーマに沿ってディスカッションをすることで自分ごとに咀嚼できる
- 共通言語化することで、コミュニケーションコストが下がり、問題認識や問題解決がはかどる
輪読会の目的
輪読会を行う上で、以下の三つを目的としました。
- マネージャーのマネジメント知識の体系化と共通言語化
- マネジメント業務の質の向上
- マネージャーのオンボーディング資料として将来的に活用
輪読会の企画
なぜ輪読会か
輪読会というやり方を選んだ理由は、主に二つあります。
一つは、マネジメントを広く網羅的に学ぶために、一冊の本を通読することが最も効率的だと考えたからです。
一つの情報源に集中し、体系的な知見を順序建てて学ぶことができます。
もう一つは、読んだ本に対して複数人で意見交換をし、振り返ることで、より意義のある知見が得られるからです。
一人で本を読んで考えを整理することも重要ですが、他の参加者とのディスカッションを通じて、新たな視点や深い洞察を得ることができます。
参加者のバックグラウンドや経験の違いから生まれる多様な意見が、気づきを得る機会を増やしてくれると信じています。
まとめると、輪読会はマネジメントの幅広い知識を効率的に習得し、複数人の意見交換を通じてより深い知見を得るために有効だと考え、輪読会を開催することに決めました。
候補となった本
輪読会の開催にあたって、日々のマネジメント活動に際し、参考になりそうな本をいくつかピックアップしました。
いずれも普段の業務に直結し、かつマネジメントについて書かれた本です。
題材に選んだ本
今回は、佐藤大典さんの著作、エンジニアのためのマネジメント入門を選びました。
理由は以下の三つです。
- マネジメントに関して広く簡潔に書かれており、網羅的にトピックを扱える
- 分厚い本ではないので、手軽に読むことができる
- エンジニアの視点で書かれている
これらの理由から、輪読会の目的に沿った内容が期待できました。
輪読会の構成
輪読会のルール
よりよい輪読会にしたいという想いから、以下のようなルールを明文化しました。
- 頻度
- 毎週45分程度
- 前提
- 全員、輪読会当日までに、最低限該当章まで読んでおく
- 準備
- 担当者は担当した章の内容をスライドにまとめて、ファシリテーションの準備を行う
- 当日の流れ
- 担当者は準備したスライドを利用して発表を行う(約20分)
- 全員でテーマに沿ってディスカッション(約20分)
- 気づき、実体験、不明点、疑問点の共有を行う
- スキップについて
- 過半数が不参加の場合はスキップとする
- 担当者の準備が当日までに間に合わなそうな場合は、前日までに全員へ連絡すること
- その他
- 改善点等があれば、既存のやり方にとらわれず、都度検討し改善していく
輪読会の進め方
該当章の担当者がスライドにまとめて、内容を発表します。
以下は私が作ったスライドの一部です。
最後に担当者が決めたディスカッションテーマに沿って、参加者が好きに喋ります。
参加者は私を含めて三人(Division内のマネージャーの総数)でしたが、2テーマ20分でちょうどいい配分でした。
実際のディスカッションの内容
実際に行われた対話の流れの一部をご紹介します。
テーマ1 - 普段の活動の中で、説明責任を果たさなければならないときってどんなときだろう
A「説明責任を果たさなければいけない機会って、たくさんあるよね」
B「普段の1on1で会社の施策の意義について聞かれたときとか?」
C「アサイン時にプロジェクトについて聞かれたときもそうかも」
C「そもそも上司から降ってくる内容が不透明だと説明が難しい」
A「メンバーに説明するために、それができるだけの情報を貰えるよう、上司にしっかり追求していくという姿勢が必要なのかもしれない」
B「メンバー側も、実行した結果をマネージャーに説明する責任がある気がする」
A「ホウレンソウの話だと思うので、多分実行責任に包括されるのでは?」
A「マネージャーはメンバーに実行権限を委譲し、メンバーがホウレンソウするようマネジメントする責任があるし、メンバーは実行した結果や成果をマネージャーに報告する責任はあるので、それぞれの責任は勿論あるよね、という話なんじゃないかな」
テーマ2 - クラウドエースのマネージャーのマネジメントドメインはどうなっているだろう
A「どちらかというとピープルマネジメント寄りだよね」
B「プロダクトマネジメントとプロジェクトマネジメントってどう違うの?」
A「プロダクトマネジメントはプロダクト自体にフォーカスして、プロダクトのライフサイクルに関わるものをマネジメントする」
A「開発や運用もそうだけど、リサーチやマーケティング、リリース後にユーザーにどう使われてどうビジネス価値を作り出すのか、などもマネジメント対象だよ」
A「プロジェクトマネジメントはプロジェクトの成功を目的に、納期やリソース、リスクなどを管理するよ」
C「クラウドエースのマネージャーはプロダクトからは遠い気がします」
A「マトリクス組織という構造上、Division内でメンバーを育成して、プロジェクトチームに送り出している構図になるので、たしかに間接的になりがちかもね」
A「引き続き、自分たちにできることを模索してやっていこう」
輪読会の効果
日々の業務の中で、マネージャーの方々から以下のような発言が出てきました。
「このケースは、説明責任を果たせてないよね」
「この中の仕事のうち、メンバーに委譲できる仕事って何か無いかな?」
これはつまり、マネージャー間で、"何が大事か" という共通認識が作られたということです。
その流れで、
「説明責任を果たせてないなら、明日のこの時間で説明機会を作りましょう」
「この仕事をマネージャーがやっちゃっているけど、これはメンバーに委譲できそうだから、まずはこの部分をお願いしてみましょうか」
といったように、その後のアクションまでがとてもスムーズにつながり、実際に施策を行うことができました。
ディスカッションを通じて、本の内容が咀嚼されて共通言語となり、マネージャー間でのコミュニケーションの土台を構築することにつながったんだと思います。
おわりに
一人で本を読んで終わりにせず、輪読会の中でディスカッションをすることで有意義な時間になることが実感できました。
また、参加者の多様な視点をもとに、様々な気づきを得ることができ、何より思った以上に盛り上がるので楽しい時間になりました。
輪読会を開催でき、とても良い時間を過ごせたのは、すばらしい本を届けてくれた著者や出版社、並びに本をしっかり読んで輪読会に参加してくれたマネージャーの方々のおかげです。
この記事を読んでくれた方々にも心から感謝します。少しでも何かのお役に立ったら幸いです。
ご意見やフィードバックもお待ちしております。
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