医療AIを安全に導入!Azure OpenAIで始めるカルテ作成と音声認識のやさしい設定ガイド
📚 この連載の記事一覧
- 医療AIを使う前に知るべき大前提:“リージョン”と個人情報保護の基本ガイド
- 医療AIを安全に導入!Azure OpenAIで始めるカルテ作成と音声認識のやさしい設定ガイド
- はじめての Google Cloud:AIを日本国内だけで安全に使うためのやさしい設定ガイド
- 完全ローカル運用で安心!WhisperとLM Studioを使った音声認識&AI活用入門
この記事は「医療×AI」連載の第2回です。
第1回では「患者情報を普通のChatGPTに送ると危ない」という話をしました。
今回は、Microsoft Azure(アジュール)という業務用AIサービスを使って、
安全にAIを使う方法を丁寧に解説します。
1. Azureって何?ふつうのChatGPTと何が違うの?
❌ ChatGPTやGeminiは“個人向け”
-
私たちが普段使っている ChatGPT や Gemini(グーグルのAI)は、世界中のサーバーを使っているため、
入力した内容(プロンプト)がアメリカなど海外に送られています。 -
さらに、モデルの学習に使われる可能性もあります(規約にそう書かれています)。
✅ Azure OpenAIは“医療・業務向け”
- Azure(アジュール)は Microsoft が提供する企業向けクラウド。
- 「Azure OpenAI」という機能を使えば、ChatGPTと同じエンジン(GPT-3.5など)を
日本国内(東京・大阪)のサーバーで安全に動かせます。
➤ 入力したカルテの内容が海外に送られたり、学習に使われたりする心配がなくなります。
2. この手順で何ができるようになるの?
- AzureからchatGPTを使って、個人情報に配慮して初診カルテや紹介状などを作成
- 音声録音をテキスト化(Whisper APIの代わりにAzureの音声認識を使う)
3. 全体の流れ(ざっくり)
- Azure にログインし、「AIの入り口」を作る
- 使いたいAI(GPT)のモデルを“設置”する
- パスワードとURL(エンドポイント)をメモしておき、カルテメイトに入力
- (音声認識も使う場合)別途「Speech」という機能を有効にする
4. GPTを使えるようにする手順
ステップ①:Azureの無料アカウントを作る
- https://portal.azure.com にアクセス
- Microsoftアカウント(outlookやhotmail)でログイン
- 「無料で始める」からサブスクリプションを作成(クレジットカード必要、無料枠がある場合もあります)
💡 無料枠が終わっても、使った分だけ課金される「従量課金」制です。
ステップ②:「Azure OpenAI」という機能を作る
- ログイン後、上の方に表示されている検索欄で「Azure OpenAI」を検索してクリック。
Azureサービスの一覧から選択しても構いません。
- 「+ 作成」ボタンを押す
- 必須項目を入力:
設定項目 | 入力例 |
---|---|
名前 |
my-openai (任意) |
リージョン | Japan East |
価格レベル | Standard S0 |
リソースグループ | 既存または新規で作成(名前は自由) |
- 最後に「作成」ボタンを押す
- 数十秒待つと、準備が整って次の段階に進めます
ステップ③:モデルをデプロイする
ポイント:2024 年末以降、Azure OpenAI のデプロイ作業は Azure AI Foundry portal(旧 AI Studio)で行う方式に統一されています。
- OpenAI リソースの 概要ページ 上にある 「Go to Azure AI Foundry portal」 をクリック
- Foundry 画面が開いたら、左ペイン 共有リソース → デプロイ を選択
-
+モデルのデプロイ をクリック
- 基本モデルをデプロイする、をクリック。
- 使用するモデルを選択し確認。以下の項目を入力し、デプロイ で確定
項目 | 入力例 | 補足 |
---|---|---|
Model | gpt-4o-mini |
gpt-4.1 なども選択可 |
デプロイ名 | gpt-4o-mini-jp |
任意名。カルテメイトでは「モデル名」に入力 |
💡 注意点 「デプロイの詳細」の中に表示される「リソースの場所」がJapan Eastになっていることを確認してください!この部分が正しくないと、日本国外にデータが送信されます。
ステップ④:パスワードとURLを控える
- 「Azure OpenAI」のホームに戻り、リソース管理→「キーとエンドポイント」を開きます
(Azure AI Foundryのホーム画面でも確認できます) - 以下を控えておく:
項目 | どこで使う?(あとで説明) |
---|---|
キー1 | カルテメイトに貼る「APIキー」 |
エンドポイントURL |
https://xxxxx.openai.azure.com/ ← これをそのままコピー |
*キーは1でも2でもどちらでも大丈夫です
5. カルテメイトに設定を入力する
Azureの画面で控えた以下の3つを、カルテメイトの「設定画面」で入力します。
Azureで取得した情報 | カルテメイトでの入力場所(画面) |
---|---|
エンドポイントURL | 「AzureOpenAIエンドポイント」欄に貼り付け |
キー(APIキー) | 「LLM API Key」欄に貼り付け |
デプロイメント名 | 「Azureデプロイメント名」欄に入力(例:gpt-4o-mini-jp ) |
💡 これでカルテ作成の機能が動くようになります。
6. 音声認識(録音→文字)もAzureで行いたい方へ
Whisper(ChatGPTが使っている音声認識)ではなく、
Azureの音声認識エンジンを使うこともできます。
中身はwhisperと同じ?のようです。
ステップ①:「Speech(音声)」機能を作る
- Azureポータルで「音声サービス」を検索
Azureサービスの一覧から選択しても構いません。
- 「+ 作成」ボタンを押す
- 入力内容:
項目 | 入力例 |
---|---|
名前 |
my-speech (自由) |
リージョン | Japan EastもしくはJapan West ← 忘れずに |
価格レベル |
Standard S0 (無料枠もありますが、カルテメイトでは使用不可) |
リソースグループ | 同じものを使うか、新規で作る |
💡 残りの入力欄は、初期値のままで大丈夫なはずです
💡無料枠での使用制限について(2025年時点)
Azureの音声認識サービス(Speech-to-Text)は、「価格レベル F0(Free)」を選ぶと次のような制限があります:
-
月あたりの無料利用枠:5時間(300分)
- 通常のリアルタイム音声認識、およびカスタムモデルの利用時間の合算です
- 長時間ファイルを一括で変換する「Batch Transcription」は使えません(カルテメイトでは使用しません)
-
同時リクエスト数:1まで
- 複数の診察室で同時に録音処理を行うような運用はできません(順番に処理されます)
-
音声データの取り扱い
- 無料枠であっても、送信した音声はMicrosoftの学習には使われません
- ただし「海外リージョン」や「ログ記録機能(Diagnostics)」を有効にすると、データの保存や国外送信の可能性があるため、リージョンは Japan East または Japan West を選び、診断ログは無効のままにしておくことを推奨します
📌 カルテメイトでは「Standard S0」で使用してください(無料枠では使用できないバッチ処理を採用しているため)
ステップ②:パスワードとURLを控える
- 作成したSpeechリソースを開く
- 「キーとエンドポイント」から以下を控える:
Azure側 | カルテメイトの入力場所 |
---|---|
キー1 | 「STT API Key」欄に貼り付け |
エンドポイント | 「Azure STTエンドポイント」欄に貼る |
7. よくある質問
Q. どのモデルが使えますか?
→ 2025年現在、GPT-4oシリーズやAPI専用のGPT4.1シリーズなどが日本リージョン(Japan East)で利用可能です。
そのため、GPT-4o(gpt-4o) を選ぶのが最も高性能でおすすめです。
以前主流だった GPT-3.5 Turbo(gpt-35-turbo) も引き続き利用可能です。
Q. お金はどのくらいかかりますか?
以下は、診察録音をバッチで文字起こしし、GPT-4o miniを使ってカルテ作成と紹介状作成を行う場合の費用の目安です。
■ 音声認識(STT)— Azure Speech バッチ処理
項目 | 内容 |
---|---|
処理方式 | 音声ファイルをまとめて変換(バッチ) |
単価 | 約 US $0.36 / 1 時間 |
試算例 | 60件 × 10分 = 10 時間 → $3.60/日 |
月額目安 | 22営業日 × $3.60 ≒ $80(約 ¥12,400) |
■ LLM処理 — GPT-4o mini を使ったカルテ+紹介状作成
処理内容 | 件数/日 | 入出力token数 | 単価 | 小計 |
---|---|---|---|---|
カルテ作成(全件) | 60件 | 入300 + 出400 = 700 tokens | $0.00015 + $0.00024 = $0.00039/件 | $0.0234/日 |
紹介状(10人分) | 10件 | 入500 + 出800 = 1300 tokens | $0.000195 + $0.00048 = $0.000675/件 | $0.00675/日 |
GPT-4o mini 単価:入力 $0.15/M tokens、出力 $0.60/M tokens
■ 合計費用の目安
項目 | コスト(USD) |
---|---|
STT(音声認識) | $3.60/日 |
カルテ作成(全件) | $0.0234/日 |
紹介状作成(一部) | $0.00675/日 |
合計 | 約 $3.63/日 ≒ ¥560/日 |
8. まとめ
- ChatGPTではなく、Azureを使って安全にAIを使いましょう
- 東京リージョンを指定すれば、患者データが海外に送られない
- カルテメイトと合わせて使えば、AIカルテ作成も安心
次回はもう一つの候補、「Google Cloud(Vertex AI)」を使う方法を紹介します!
カルテメイトのご紹介
カルテメイト1号:
簡単に Faster Whisper サーバーを立てられる Windows アプリです。
Windows ストアで見る
カルテメイト2号:
各種 LLM や文字起こしサービスを活用して、カルテや文書作成を効率化する Windows アプリです。
Windows ストアで見る
ご意見・ご相談はこちらへ
X (旧Twitter) @medrecmate へお気軽にDMどうぞ 📨
Discussion