自作冷蔵庫の作り方(実践編)
概要
読む対象者 自作冷蔵庫の製作過程に興味がある方、自作冷蔵庫界隈の人
読んでわかること 自作冷蔵庫の流れの雰囲気と、「冷えない原因(電流・循環不足)」から学ぶ冷却の仕組み
読んでできること 自作冷蔵庫を作る上でのヒントが得られる(?)
序章

ハッピーホワイトクリスマス!!!
いやー、沖縄でもついにホワイトクリスマスが見られるようになりましたね。
上の画像は、自作冷蔵庫の制作過程で実験したヒートシンクについた霜の様子です。
みなさんの中にも、自作冷蔵庫について興味ある方がいるかと思います。
ということで(?)、今回はホワイトクリスマスらしく自作冷蔵庫について熱く語っていきたいと思います!
成果物
今回作ったものはこちらです。

蓋の上に仰々しい装置が鎮座しており、これが冷却ユニットになっています。

↑ふたを開けた時の様子。ふたの下にオレンジ色の物体(ヒートシンク)が見えるかと思います。
ざっくり言うと、制作期間や費用、性能は以下の通りです。
- 制作期間: だいたい1年くらい
- 費用: 合計で1万円くらい
- 性能: 室温より2〜3度(条件によっては5度)下がるくらい
結論から言うと、以下のようになります。
- 労力・費用・性能の面:市販のものを買った方が圧倒的に良い
- 作るメリット:「冷蔵庫がある」という幸せを得られた(ような気がします)
今回は、作った手順や苦労したポイントを備忘録として残したいと思います。
材料
今回私は以下のものを購入しました。
ヒートシンク
熱伝導率の高い「銅」が使用されているので、こちらを選びました。
ただし、個人的には思ったより高価だったことやサイズが小さかったので、別の素材のヒートシンクでも良かったかなと思います。
CPUファン
元々は別のCPUファンを使っていたのですが、凸部分があるこちらのタイプに変更しました。
多分この購入リストの中で一番高かったパーツです。
ファンアダプターコネクターケーブル
CPUファン単体では電源に繋げないため、ファンの3ピンと電源プラグをつなぐためのケーブルを購入しました。
ペルチェ素子
5枚入りで価格が安く、レビューもそこそこ付いていたのでこちらを選びました。
ACアダプター
ペルチェ素子へ給電するためのACアダプターです。
後述しますが、出力が12V 1000mA (1A) 12Wのものを選びました。電流容量が小さかったので、もう少し余裕のあるものを買っても良かったかもしれません。
発泡クーラーBOX
冷気を閉じ込めるための筐体です。
安価で買えて加工もしやすい発泡スチロール製のBOXを選びました。
近くの百円ショップには売っておらず、手に入れるのに苦労しました。
あと、瞬間接着剤を使う場面があったのですが、使うと発泡スチロールが溶けるというアクシデントがありました。
見た目の高級感を求めるなら、ホームセンターで売っているプラスチック製のクーラーボックスにするのもアリかと思います。

↑ 瞬間接着剤で発泡スチロールが溶ける様子
作り方
今回作ったのは、「自作簡易ペルチェ素子表面冷却器(ペルチェ素子方式)」です。
ざっくりいうと、
断熱箱の一面に「冷たい金属プレート」を作ってしまう装置(=箱付きのペルチェ冷却機)
というイメージです。
本格的な冷蔵庫というより、缶飲料やお菓子を“ちょっとだけ冷やしておきたい”用途に向いた簡易冷蔵庫です。
作り方の流れをざっくり共有します!
断熱箱を用意する
まずは、冷蔵庫の外側を作っていきます。
冷蔵庫ですので、冷気を逃さない程度の断熱性(保冷性)が必要になります。
発泡スチロール箱やクーラーボックスなど、断熱性の高い箱を用意しましょう。
箱は小さいほど冷えやすいので、用途に合わせてほどほどのサイズを選びます。

箱の一面にペルチェ素子を取り付ける
断熱箱が用意できたら、次にペルチェ素子を取り付けます。
ここで重要なポイントは、ペルチェ素子の吸熱面(冷える側)と排熱面(熱くなる側)を間違えないことです。
(一度テストで電流を流して触ってみると、どちらが吸熱でどちらが排熱かわかると思います。)
- 冷える側のヒートシンク(または冷却プレート)が箱の内側に来るようにする
- 熱い側のヒートシンク+ファンが箱の外側に来るようにする

そして、箱に開けた穴との隙間は、ペルチェ素子の大きさに合わせて切り抜きます。
ここが大きすぎると冷気が逃げるので慎重に開けます。
(私は一度大きく開けすぎてしまい、発泡スチロールを買い替える羽目になりました…)

ペルチェ素子とCPUファン、ヒートシンクをつなぐ
ペルチェ素子単体では効率よく冷えないので、CPUファンとヒートシンクでペルチェ素子を挟む必要があります。

ペルチェ素子の両面に薄く熱伝導グリスを塗ります。
そして、発熱面(排熱面)にはCPUファン、吸熱面にはヒートシンクを乗せます。

電源を配線する
最後にペルチェ素子とファンに電源を繋げます。
まず、ペルチェ素子に対応した12V電源を用意します。今回は安定化電源を使用しました。
次に、ペルチェ素子とファンを、極性を間違えないように接続します。
ファンにも同様にファンアダプターコネクターケーブルを使って電源に繋げます。

もっと詳しいやり方について
今回自作冷蔵庫を作るにあたって、もっと詳しく知りたい方は YouTubeで「自作冷蔵庫」と調べてみてください!
自分も作る時、いつくかの動画を参考に見様見真似で作ってみました。
結果
もちろん環境や作り方によって変わりますが、
ペルチェ素子1枚+小さい断熱箱という構成だと、おおよそ次のような結果になりました。
- 室温:30〜35℃
-
庫内温度:室温 −2〜3℃程度
- 例)室温35℃ → 庫内32℃くらい
- 「冷蔵庫レベル(2〜5℃)でガチ保管」は難しい
- 「常温よりだいぶ冷えた飲み物」「溶けやすいお菓子の保冷」レベルでも、今回の構成では厳しい
家庭用冷蔵庫がいまだにコンプレッサー式なのは、同じ電力で冷やせる熱量がペルチェの比じゃないくらい多いからです。
一方でペルチェは「小型・静音・精密制御」が特徴なので、自作冷蔵庫は“実用家電の代替”というより“熱と電気の勉強用ガジェット”として楽しむのが良さそうです。
今回、結果として「冷蔵庫」と呼ぶほどにはならなかったのですが、その敗因は以下の3つにあると思います。
① 内部の冷気の流れがなかった
これが一番大きかったかもしれません。ペルチェ素子の直下は冷たいのですが、空気が動かないため庫内全体に冷気が広がりませんでした。
「庫内に熱源(ファン)を置きたくない!」とこだわってファンレスにしましたが、多少の発熱には目をつぶってでも、ファンで空気を撹拌させるべきでした。
② 圧倒的な電流不足
ペルチェ素子は、電気を食う代わりに仕事をします。
今回使用したACアダプターは「12V 1A」だったのですが、ペルチェ素子のポテンシャルを引き出すには電流が弱すぎました。もっと容量の大きな電源(5A〜6A程度)を使っていれば、結果は違ったはずです。
③ ペルチェ素子の枚数(多段化)
これは「もっと冷やすには」という話になりますが、ペルチェ素子は1枚よりも2枚重ねた方が、温度差を稼げます。
今回はシングル構成でしたが、ここをダブルにしていれば、もう少し実用的な温度まで下げられたかもしれません。
「冷蔵庫ってどういう風に作れるんかな」という疑問は解決できたと思うので、作って良かったかなと思います。
結言
冷蔵庫が完成するまでの間、生鮮食品が保存できず本当に大変でした。
「買ったらすぐ食べる」が鉄則なので、生卵を一度に10個食べたり、牛乳1Lを無理やり飲んでお腹を壊したりと、フードファイトのような生活をしていました。
で、結論ですが……結局、市販の冷蔵庫を買いました。
自作を通して「冷やすことの難しさ」を知ったからこそ、コンセントを差すだけで食材が腐らず、飲み物がキンキンに冷える「冷蔵庫のある生活」の幸せを噛み締めています。

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