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大学の研究室におけるDiscord導入の一例

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Ⅰ. はじめに

本記事は大学院の化学系研究室にDiscordサーバーを導入した流れを報告するものです。
導入以前の状況としては以下の通りです。

  • 研究室の共用Googleアカウントがあった。
  • 研究室内のやりとりは基本メールで行う。
    • 共用Googleアカウントを含む、GoogleGroupsのメーリングリスト機能を使用していた。
  • 研究室のHPの更新は担当の学生(HP係)が行うことになっている。

「大学の研究室にdiscordを導入したい」という方の参考になれば幸いです。

導入の目的

私は今春から研究室に配属された新人ですが、コロナ禍の影響で研究室内での飲み会というのも殆ど無く、実験室で実験をしていても実験以外の話をすることは多くなくい、というダブルパンチで研究室メンバー間の距離が縮まりにくい状況にありました。
また弊研究室では基本的にメールで資料の配布や連絡などが行われており、研究に関する内容でもちょっとした質問を先輩方にするハードルも高かったため、これを改善すべくチャットツールの導入を決意しました。

Discordとは

Discordはグループチャットツールの一種で、テキストチャンネルとボイスチャンネルを複数設定できます。これらのツールはLINEのように「1グループ1トークルーム」ではないため、"雑談"や"重要なアナウンス"、"会議についての意見"など、トピック毎にトークルームを分けることができます。
メールでやり取りする際は「件名を予めパターン化した上でフィルタリングする」などの手順を踏まないと内容によって情報を時系列に追う、ということは困難になりますが、Discordなどの複数チャンネルを設定できるツールを用いると情報の見通しが改善し、目的の情報に素早くアクセスできるようになります。

類似サービスとの違い

Discordのように「テキストチャンネルとボイスチャンネルが複数設置できるグループチャットツール」はいくつかあり、特にSlackやMicrosoft Teamsが有名です。
Teamsはmicrosoftアカウントが必要で、discordやslackのようなbotによる拡張性が乏しい(情報が少ない)ため今回は採用が見送られました。
大学の研究など、ビジネス用のグループチャットツールと言えば普通第一候補になるのはSlackです。Discordとの違いは以下の表の通りです。

Discord Slack
ターゲット ゲーマー ビジネスシーン
参加方法 Discordに登録の上、リンク一つで参加 グループごとにメールアドレスを登録して参加
課金対象 個人 グループ
課金サービス オリジナルスタンプなどの追加要素 閲覧できるメッセージ数上限など制限の撤廃
権限の設定 厳密 比較的緩い

参考: https://blog.aimof.net/201903/190303-slack-discord/

今回は大学の研究室に導入するため

  • 教授>学生,業務の担当(係)という役職(ロール)をしっかり定める必要がある
  • 課金要素は排したい(Slackでは無課金だと制限がかかる)
  • 学生にDiscordを使っている人がいる

ということから、今回はDiscordを採用することになりました。

Ⅱ. 導入したDiscordサーバーの仕様

今回導入したdiscordサーバーの仕様(機能)としては以下の通りです。

  1. 研究室共用アカウントを管理者とする。
  2. ロールは「教員」「修士学生」「博士学生」「学部生」を基本として、各係を用意する。
    • 学生のロールに権限の違いはありませんがメンションする場合にそういった区分けが必要な場合があることを考慮しました。
    • ロールの設定はCarl-botを用いて自動的に行うようにしました。
  3. 従来のメーリングリスト(Googleグループ)に対して送信された内容をdiscordに転送する。
  4. 共用アカウントのカレンダーに記載されたイベント(ゼミや学会)を通知する。

特に3, 4の機能を実装するに当たってGoogle Apps Script(GAS)、Googleカレンダー、IFTTTを使用しました。

カテゴリ・チャンネル構成

今回設置したカテゴリ・チャンネルは以下の通りです。

  • GENERAL:研究室のルールやアナウンスなどの一般事項をまとめたカテゴリー
    • introduction:Carl-botによるロールの設定と各チャンネルの説明を行うTextCh.
    • announce:学会の連絡などを行うTextCh.
    • mail-fwd:従来のメーリングリストに送信されたメールを転送するTextCh.
    • rules:研究室内のルール等をまとめた試料を投稿するTextCh.
    • schedule:ゼミや学会のリマインドを行ってくれるTextCh.
    • request:チャンネルの増設などの要求ができるTextCh.
  • SEMINAR:ゼミに関するチャンネルをまとめたカテゴリー
    • proceeding:ゼミの連絡会の議事録を投稿するTextCh.
    • documents:ゼミで使用する配布資料を投稿するTextCh.
    • meeting room:ゼミの連絡会の議事録を投稿するTextCh.
  • WORK SPACE:研究や研究室内のイベントに関する議論に関する
    • discussion:研究など業務について話せるTextCh.
    • talk room:研究や研究室内の話し合いの通話ができるVoiceCh.
  • LOUNGE:研究に関係ない雑談についてのチャンネルをまとめたカテゴリー
    • chat:業務に関係ない雑談用のTextCh.
    • talk room:雑談用のVoiceCh.
  • CHARGE OF ~:HP更新などいくつかある研究室内の業務を分担している係用のカテゴリー
    • manual:各係の業務のマニュアル(引き継ぎ書)を投稿するTextCh.
    • prodeeding:議論の結果決定した事項を投稿するTextCh.
    • discussion:業務内容についての議論ができるTextCh.
    • meeting room:業務内容についての通話ができるVoiceCh.

各カテゴリー・チャンネルのアクセス権限設定

  • GENERAL:パブリック
    • introduction:パブリック ※ロールの設定を行うため
    • introduction以外:プライベート(教員と学生)
  • SEMINAR:プライベート(教員と学生)
  • WORK SPACE:プライベート(教員と学生)
  • LOUNGE:プライベート(教員と学生)
  • CHARGE OF ~:プライベート(教員と、担当の係の学生のみ)

ロールの設定(Carl-botの利用)について

ロールの設定はCarl-botのリアクションロールを用いて設定しました。

https://zenn.dev/chem_akipe/articles/ceb60da5d053b2
この記事に従って"introduction"チャンネルの先頭にCarl-botから投稿しています。
なおCarl.ggのダッシュボードには設定済みのリアクションロールについてEditボタンが表示されていますが、実際には投稿済みのリアクションロール付きメッセージは編集できないので注意しましょう。

メールの転送システムについて

従来使用されていたGoogleGroupsのメーリングリストに送信されたメールをmail-fwdチャンネルに転送する機能を用意します。
私は以下のサイトを参考に、検索クエリに"to:~@googlegroups.com"を設定しました。

https://qiita.com/ihcamonoihS/items/fc8487d55a4feefa5dba

イベントの通知システムについて

共用Googleアカウントのカレンダーに設定されたゼミや学会などのイベントをscheduleチャンネルに通知する機能を用意します。
私は以下のサイトを参考に、IFTTTを用いて設定しました。

https://note.com/ryu_sv/n/n452fd6bf22ba

Ⅲ. 導入の流れ

1. グループチャットツール導入の打診

まずは教授に研究室にグループチャットツールを導入していいかのお伺いを立てます。

2. サーバーの設定

教授の許可が得られたらⅡの通りにサーバーを開設・設定します。

3. Discordサーバー開設の報告と実際の運用

週1の連絡会でDiscordサーバーの開設の報告をし、導入目的と使い方を説明します。
化学系の弊研究室では

  • 実験がメインの業務なのでリモート化すること自体が少なく、リモートで使うツールは必要ない
  • 係の業務はマニュアル化するコストが大きく、口伝で行ったほうがコミュニケーションが取れる

といった意見を先生・先輩の皆様からいただきましたが、

  • 今後コロナ感染者が再び増加して実験を実施することが難しい状況になった場合のコミュニケーションの場として必要である
  • 最初の作成コストは大きいだろうがそれでも装置の操作方法や研究室内の業務などのマニュアル化は必要である
  • 最初の業務は当然先輩に直接教えてもらい、その後忘れた部分や細かくてわからない部分などを自分で調べる参照先は必要である

ことを訴えました。
その結果、

  • 研究室内のイベントについての話し合いなどについては研究室共通のチャットルームとしてDiscordを使用しする
  • ゼミの資料配布などはDiscordに一元化せず引き続きメーリングリストを用いる。
  • メンバーが慣れてDiscordのほうが良いとなれば移行を検討する

という運用方針になりました。

Ⅳ. まとめ

  • 研究室内のコミュニケーションの場としてDiscordサーバーを設置しました。
  • 従来の連絡方法であったメーリングリストと併用できるようメールの転送機能を備えました。
    • 添付ファイルには対応できませんでした。
  • 活発に動かしたいため雑談用のチャンネルなどを用意しましたが使われることにはなりませんでした。
  • 研究室内の連絡手段の変更は研究室の運営方針に関わる重大事項なので教授との事前の打ち合わせは十分に行いましょう。

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