[2025年5月23日] 一週間で世界変わりすぎ Google I/O, MS Build, Code with Claude (週刊AI)
こんにちは、Kaiです。
むりです。情報量が多すぎる。
何もこんなに各社被せなくてもいいじゃないですか……。
検証などで手一杯なため、各トピックスへのコメントはなし、または最小限にして、ダイジェスト版でお送りします。
それにしても、しょっちゅう前提とノウハウのグレートリセットが起きるというのは、個人的には楽しいですね。ここまで被せなくていいと思いますが(二度目)。
まず各社発表へのファーストインプレッションを冒頭にまとめておきます。キーワードは 「脱構築」 です。
Microsoft、Googleは、ともに既存ビジネスを根本的にとらえ直して、脱構築を図ろうとしていると感じました。Googleは創業者であるセルゲイ・ブリンが舞い戻ってAIシフトを推進したように、抵抗勢力とイノベーションジレンマに対峙したのでしょう。MSはある程度これまでの延長線上にあるとはいえ、プロプライエタリなソフトウェア販売企業から明らかに変化したスタンスを感じます。順番に考えてみます。
Googleは、明らかに 「無料のインターネットの終焉」 を意識していると思います。これまで、巨大なC向けインターネットビジネスの多くは、広告モデルで成立していました。大多数のユーザは広告付きの無料サービスを利用し、広告解除またはプレミアムなサービスを有料で購入する、というモデルです。
その代表がGoogleの検索連動広告でしたが、AIの進化に伴って無意味になるのでは?という声が徐々に大きくなっていったように思います。恐らくGoogleも強烈にそれを感じていたのでしょう。今回のGoogle I/Oで感じたのは、 「情報を得ることの有料化」 でした。
そもそも、Google検索は1回の検索にかかるコストが限りなくゼロに近いがゆえに、滅多にクリックされない広告を差し込むことでもペイすることができました。しかしながら、AIをベースとした情報提供の世界では、非常に低いクリック単価の広告を差し挟むことでは推論コストをペイできません。
そのため、Googleは既存ビジネスを全て捨てる覚悟で、情報を得ることは有料なのだ、という方向に舵を切ったのだと思います。
それでも無料枠は残ると思いますが、近い将来の検索体験はこうなるのではないでしょうか。
| 課金状況 | 検索体験 | 
|---|---|
| 無料 | 冒頭にはユーザの各種データ、履歴に基づくAI広告が差し込まれる。検索結果は数件のサイトをサマライズした程度で、AI広告とコンフリクトする内容は排除 | 
| 微課金 | AI広告はなくなるが、検索結果はトップ10件程度をサマライズした程度 | 
| 重課金 | 複数言語で数百のサイトを横断検索した詳細レポート | 
これはかなり大きな変化であり、現在は誰であっても基本的にGoogle検索の結果=知識を得る手段に大きな差がないわけですが、お金をかければ質のよい知識が得られるという世界がやってきます(というか既にやってきている)。
既に様々なところで予見されている通り、これは知識のみならず、人間としてのCapabilityにも波及するでしょう。AIに課金できない人と、AIに月10万円払う人、月100万円払う人では、知的処理のレベルがそれこそ数十倍、数百倍になる可能性があります。Googleは、それに向けて「インターネットというインフラの脱構築」を図っているように思います。
さて、一方のMSは、インターネットというよりもローカル環境、手元で動くものの脱構築に取り組んでいるように思います。WindowsそのものがMCPをサポートしたり、WSLをオープンソース化したり、ExplorerがGit統合されたりなど、これまで「有料のクローズドなソフトウェア」を脱構築し、 「ローカルで動作するAIハブ」 というポジションを取ろうとしているのかなと感じます。
ローカルで何かをするためには、ソフトウェアプラットフォームは必要であろう。そして単体のソフトウェアが有料で売れる時代は終わる。であれば、 全てのソフトウェアに接続する手元のAIハブ=人間のCopilotを目指す 、というように受け取りました。
ただ、Googleほどドラスティックなシフトチェンジはしていないように思われます。ソフトウェアの未来の姿や、今後何にお金が投じられるのか、といった点を考えると、イノベーションジレンマにまだ直面しているなという印象が残りました。
最後のClaudeは、守るべきものを持っていないため脱構築という文脈ではありませんが、今回の発表を見てもチャットUIや既存サービス統合というよりも、開発者が自らのサービスやプロダクトに組み込むためのAIインフラを目指しているように思います。
Claudeというモデル自体も、MCPという共通言語も、「ものをつくる人の最善のツールに」という姿勢を感じます。これはこれで、上記2社とは全く異なるポジショニングで大変興味深いです。ただ、ビジネスとしてはAPI従量課金がメインになるはずですが、Googleのように大資本かつ別のレベニューソースを持つ企業の低価格戦略と渡り合っていけるのか、という点は少し不安です。
いずれにせよ、競争が維持されるということは極めて重要なので、各社とも頑張って欲しいところです。でも発表を同じ週にまとめるのはやめて。
ではダイジェスト版のトピックスです。
注意事項
- 直近収集したAIおよびWeb系の記事やポストが中心になります
 - 私のアンテナに引っかかった順なので、多少古い日付のものを紹介する場合があります
 - 業務状況次第でお休みしたり、掲載タイミングが変わったりします
 
AI新着モデル、サービス、アップデート
Anthropic: Code with Claude
(ぬこぬこさんまとめ) (npakaさんまとめ)
Google: Google I/O
(速報) (Google公式のまとめNotebookLM) (ぬこぬこさんまとめ) (五味さんまとめ)
Microsoft: Build 2025
(AIトピックスごとまとめ)
Microsoft: Agentic retrieval in Azure AI Search
MSもAIエージェント検索を発表。
OpenAI: Codex
Google I/Oで上書きされた感はありますが、これも大きい発表。使ってますが、Cursorなどとはかなり大きく異なる体験。
(公式)
(使用感など)
OpenAI: Remote MCP
OpenAIのAPIからリモートMCPを直接呼べるように。
Amazon: Strands Agent
AWSからオープンソースのAIエージェントSDKがリリース。
Anthropic: Claude Code in GitHub
GitHub ActionsにClaude Codeを統合可能。Codexに近い体験かな。
その他AI系話題(既にグレートリセットが起きているので多くの前提が変わっています)
AI時代のソフトウェアアーキテクチャ
大作で、考えを整理するのにとてもよいです。ただ、この一週間で既に世界観が変わっている部分も……。
AIエージェントのオブザーバビリティについて
実務上のポイントまとめ。
MCPサーバーを使って請求書作成から送付まで自動化してみた話
こういう泥臭い実務に即した話はめちゃくちゃいいと思います。
o3, o4-mini についてちゃんと理解する【o1と何が変わったの?】
いいまとめ。そろそろGPT-5が出そうではありますが。
AutoPentest:LLMで自動化する脆弱性管理
いいですね、レッドチームエージェントは既にAIで作れそう。
Cloudflare Workersで進めるリモートMCP活用
CloudflareでさくっとリモートMCP。
LayerX における mastra の活用と課題
自前で作るならMastraいいですよね。
バイブコーディングノウハウ
「何々を作れ」と指示して祈るのはカオス。AIと一緒にきちんとドキュメントを作り込むところから始めろ、というお話。
新卒デザイナーがFigma MCPとCursorを試してみた
初心者の方の記事からしか得られない栄養がある。
SaaStr Annual 2025で感じた、AI変革に対する日本とシリコンバレーの温度差
日本では他国に比べて圧倒的に危機感が低いというアンケート結果が出てましたね。
(アンケート)
ObsidianのノートをVS CodeのAI(Cline)を通して活用する
流行りのObsidian+AIエディタにClineを添えて。
TypeScript で AI エージェントを構築する VoltAgent
これは知らなかった。TSだとWeb側との親和性が高そう。
WEB開発系話題
地味に大事!VPCの名脇役たち~DHCP、リゾルバ、時刻同期~
なんだかんだこういう部分で沼るときもあるので知識は大事。
5つのWebフレームワークで10億リクエストを実行してみた — 残ったものはこちら
面白い!!!!GoとRustはさすがの強さ。そして意外なことにNodeがかなり強い。
【注意】 AWS で複数のサービス終了が発表されているのでご注意下さい
既に直接アラート出ていると思いますがリマインド的に。
その他一般テック話題
技術選定の審美眼(2025年版)
歴史を振り返りながらポイントを押さえていく。
チームでドキュメントを育て、 質を高める装置としてのCursor
コーディングだけではなく、あらゆるテキストを編集していくツールとしてとらえる。
Discussion