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マクロで捉える2025年AI駆動開発の歩みと、2026年の動き

に公開

はじめに

本記事は、カンリー Advent Calendar 2025の12月3日分の記事です。

https://adventar.org/calendars/11622

本記事は、2025年のAI駆動開発を点ではなく線で、ミクロを見つつマクロから捉える試みです。
1年の出来事を振り返りつつ、大きなトレンドがどう動いてきたのか、今後どうなるかを予想していきます。

自己紹介

株式会社カンリーのエンジニア部CTO室の福田です。

https://x.com/ryu_f_web

もともと名古屋のIT企業でPHPメインのバックエンドエンジニアを12年間勤め、キャリアの中ではEM(Engineering Manager)としての期間が長いです。リードエンジニアや新規事業立案、経営企画・経営管理業務の担当経験も若干あります。
また、仕事をしながら経営大学院に通いMBAを取得するなど、技術特化ではなく経営やマネジメント全般、特に人・組織に強い興味があります。

カンリーには2025年8月に、エンジニアリングオフィスという役割で入社しました。
「エンジニアリングオフィス」は知名度が低い役割なので、転職前後で周囲に伝えても誰も知りませんでした(笑)。
会社によって業務の幅は異なりますが、一言で言えば「エンジニア組織の人事」、もう少し詳しく説明すると「エンジニアの組織開発・人材開発・採用などを組織横断で担う役割」と説明しています。

当社ではコーポレート部門にエンジニアの採用担当が在籍しており、エンジニア採用で多大な貢献をいただいています。しかし、AI駆動開発をはじめとした変化の激しい外部環境の中で、組織の戦略立案や変革、評価制度設計、採用などは日々難易度が上がっています。その状況下でも持続的にエンジニア組織を成長させるためには、エンジニア組織にコミットし続ける専任人材が必要と考えており、その役割を担わせていただいています。

エンジニアリングオフィスとして入社したものの、組織の横断課題を考えるために現場感を把握することになりました。そのため、まず入社から3ヶ月間は、当社メインのプロダクトである「カンリー店舗集客」のエンジニアとして現場に入らせていただきました。
11月からはエンジニアリングオフィスとしての業務を中心に切り替え、直近では組織サーベイや全員との1on1を基にエンジニア組織の課題抽出、戦略立案などを担っています。
また、2025年5月頃からDevinやClaude Codeなど、AI駆動開発に強く興味を持ちました。離職期間中にClaude Codeに触れていたこともあって知見があったため、入社後すぐ社内での情報発信やハンズオンを実施してきました。そんな背景もあり、当社制度の「AIアンバサダー」も拝命し、エンジニア部門のAI推進担当も担っています。

そんなわけで業務と個人的な興味もあり、ここ半年ほどAI駆動開発の動向を追いかけつつ、気になる話題は社内発信に加えてQiitaやZenn、外部登壇でアウトプットを続けています。もしよろしければXZennQiitaなどをフォローいただけると嬉しいです。

2025年のAI駆動開発を振り返って

「2025年はエンジニアの働き方が激変する」
と直感したのは、4〜5月頃にDevinClaude Codeを触りはじめたことがきっかけでした。

2025年のAI駆動開発を端的にまとめると

  • AIアシスタントからAIエージェントへ
  • バイブコーディングの登場とその限界
  • AI中心への変革

といったところでしょうか。

では改めて、2025年のAI駆動開発を振り返ってみましょう。

1〜3月 AIエージェントへの注目とバイブコーディングの登場

2023〜2024年のAI駆動開発は、AIアシスタントが中心でした。
GitHub CopilotやCursorの「タブ補完」によって、「人間がコードを書く手助けをしてくれる」存在がAIでした。
複雑な業務を自律的に実行してくれるAIエージェントも存在していましたが、そこまで大きな流れにはなっていなかったと記憶しています。

日本において流れを変えた1つのきっかけは、2月にmizchiさんが投稿された「CLINEに全部賭けろ」だったと思います。この記事がバズったことでClineやAIエージェントが一層注目を浴びました。
また、同じく2月にバイブコーディングという概念が提唱されはじめ、日本でもバイブコーディングという言葉が徐々に浸透していきました。

また、5〜6月に一気に普及するClaude Codeですが、2月25日にリリースされています。
この時点では大きな話題にならず、それは後述するQiita記事投稿数からも見てとれます。

つまり1〜3月頃、「人間が中心でAIが補助するAIアシスタント」から、「AIが中心で人間が補助するAIエージェント」の流れができはじめたと言えます。同時に、エンジニアが操るものが「プログラミング言語から自然言語へ」、そして「アプリケーションをエンジニア以外も実装できる」動きが進みつつありました。

4〜6月 AIエージェントの波

AIエージェントツールの導入は、4〜6月頃に一気に加速しました。

4月3日、Devin 2.0が登場しました。DevinはクラウドIDEで自律的に開発をしてくれるAIエージェントです。
話題になり一部で利用が広まった理由は機能アップデートに限らず、料金体系の変更もその一つでした。Devin 1系は最低でも月額500ドルと、個人が手を出すのは厳しい料金プランでした。Devin 2.0では20ドルから始めることができ、従来に比べて個人開発でも手が出しやすくなったことで、認知と利用を広げていきました。

そして5月2日にClaude CodeがMAXプランで利用可能になり、5月23日にOpus 4、Sonnet 4と同時に一般提供開始となりました。Claude Codeは6月頃から爆発的に浸透しましたが、その最大の理由は「AIエージェントのサブスク」にありました。それまでのツールは従量課金が多く、せっかくお金を出したのに動かないコードが生まれたり、使いすぎて高額請求になってしまう心理的ハードルが存在しました。Claude CodeはRate Limitはあるものの、月20ドル〜と比較的安価な月額定額のサブスクとして提供されたため、エンジニアがバイブコーディングすることが一般化しました。

Claude Codeの裏で、OpenAIからCodexも登場しました。Codexは4月16日にプレビュー公開され、5月16日にCodex Cloudも公開されました。しかしClaude Codeの影に隠れて、この時点では大きな話題にはなりませんでした。
Qiitaの技術記事数やトレンドなどからもそれが窺い知れます。Codexが話題になるのはもう少し先のお話です。

2025年Qiitaの記事投稿数推移

データ元:Qiita 2025/12/1時点

Zennは期間での投稿数を簡単に追えないため、Qiitaのタグ検索で集計

2025年Google Trendsの推移

2025年のGoogle Trends

引用元:Google Trends 2025/12/1時点

キーワードだけだとノイズが混じるため(特にCursor)、カテゴリを「ソフトウェア」として検索

関連ツール

https://devin.ai/

https://www.claude.com/ja-jp/product/claude-code

https://openai.com/ja-JP/codex/

6〜8月 バイブコーディングの限界

Claude Codeが爆発的に伸びてきた6月、コンテキストエンジニアリングという言葉が生まれました。従来、AIから適切な回答を引き出すプロンプトエンジニアリングが謳われていましたが、背景や状況といった情報を必要なタイミングで設計する「コンテキストエンジニアリング」が必要であると主張されました。

同時期に大きな変化もありました。7月14日にAWSからKiroがリリースされ、7月31日にはAI-DLCも提唱されました。

Kiroは SDD(Spec Driven Development=仕様駆動開発) という新しい概念で作られたIDEです。従来のバイブコーディングでは要件定義や設計をせずに実装できるため、保守性や品質に欠けるコードが生まれることや、実装中のauto compactで初期のコンテキストが失われやすい問題が起きていました。KiroのベースにあるSDDという手法は、AIエージェントとともに仕様書を先に作り、実装はその仕様書を基に作るというアプローチです。上流工程をしっかり文章化してコンテキストとして与えることで、その後作られるコードのブレを抑えることを可能とします。

AI-DLC(AI駆動開発ライフサイクル) では、従来の人間を中心に置いた開発ライフサイクルではなく、AIを中心に置いた開発ライフサイクルを提唱しています。AIが実行して人間が監視する役割と、ダイナミックなチームコラボレーションの2つを軸にしています。
AIエージェントの浸透では個人業務の範囲で人間中心からAI中心への転換がありましたが、AI-DLCにおいては組織やワークフロー全体を再構築する発想が取り入れられています。
とはいえ大きな組織やプロダクトであるほど変革は大変であるため、AIツール導入と比較して、組織全体に実装できているケースはまだ少ないように思います。

仕様駆動開発の波はAWSに留まらず、8月23日にはGitHubからSpec Kitがリリースされ、9月7日はOpenSpecがリリースされました。日本でもcc-sddが8月25日にリリースされ、話題となりました。

関連ツール

https://kiro.dev/

https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/ai-driven-development-life-cycle/

https://github.com/github/spec-kit

https://github.com/Fission-AI/OpenSpec

https://github.com/gotalab/cc-sdd

7〜10月 CLIツールの競争と並列開発

※赤✔がCLIツール競争、青✔が並列開発

Claude CodeとCodexの進化

並行して、Claude Codeも進化を続けていました。
7月1日にはHook機能、7月25日にはサブエージェント、8月14日には出力スタイルなどがリリースされました。記事執筆時点においてもClaude Codeは他のCLIツールの追従を許さないほど多機能で、特にカスタマイズ性に強みがあります。

CLIツールで一強を築いていたClaude Codeですが、8〜9月頃、バグによる性能低下問題に悩まされます。その時に代替手段として脚光を浴びたのが、OpenAIのCodex CLIでした。CodexはClaude Codeと比較するとクラウド上で動作するCodex Cloudに独自性がありましたが、CLIツールもリリースされていたため、Claude Codeの代替品として話題になりました。その後、Claude CodeからMCP経由でCodexを使う方法も紹介されるなど、一部でClaude Codeからの乗り換えも発生しました。9月15日のGPT-5-Codexや、当時Claude Codeにはなかったクラウド環境との連携も注目を浴びました。

その後Claude Codeはバグ解消により性能を取り戻すとともに、新モデルClaude Sonnet 4.5を9月30日にリリースします。さらに10月10日にプラグインおよびマーケットプレイス機能、10月17日にエージェントスキル、10月21日にClaude Code on the webと、怒涛の目玉機能リリースが続きます。

結果的に、記事執筆時点(2025年11月)のCLIツールはClaude Codeが依然として他ツールより機能面やコミュニティ、ドキュメントなどで優位に立っています。Codexはレビュー機能やCloudの開発体験などで差別化されています。

並列開発の需要増加

人間がつきっきりだったAIアシスタント時代とは異なり、AIエージェントは自律的に動いてくれます。
するとリーダーが部下に指示するように、人間が複数のAIエージェントをマネジメントして並列開発する需要が高まってきました。
ですが1つのローカルリポジトリで並列開発をすると、当然作業が衝突します。そのため、Git Worktreeを使うことで複数の作業ツリーで並列開発することが導入されはじめました。

並列開発の波は、IDEやツールにも訪れます。日本では8月頃にvibe kanbanというツールが紹介され、Claude CodeやCodex CLIをローカルで並列実行管理するケースが出てきました。
Codex Cloudは早い段階から2つの意味で並列開発を実現していました。まずクラウド実行なので、複数プロセスを並列実行可能であること。加えて6月13日のアップデートでbest of Nという概念を導入し、同じ実装を複数バージョン実装させて好きなものを採用できるという手段です。
Cursorも10月29日にCursor 2.0を発表しました。目玉機能の1つが、マルチエージェント・インターフェイスです。Git Worktreeやリモートマシンを活用して、複数のエージェントを並列実行できます。それぞれ別のモデルを指定することも可能で、Cursor自前モデルのComposer、サードパーティのSonnet、Gemini、GPT Codex、Grok等で同時並列実装させることも可能です。
Anthropicもその動きに追従します。10月21日のClaude Code on the webは、それまでCodexが強みとしていたクラウドの牙城に手を広げた一手であり、並列開発を可能とするものでした。11月28日にはClaude DesktopがClaude Codeに対応し、ローカルでもGit Worktreeを利用して、並列開発ができるようになりました。

関連ツール

https://www.vibekanban.com/

https://cursor.com/ja

11月〜 IDEも戦国時代へ

CLIツールと並行して、IDEも進化を続けています。
AI駆動開発以前の時代、IDEはVSCodeが圧倒的なシェアを誇っていました。VSCodeのUI/UX、そして拡張機能のマーケットプレイスというエコシステムができあがっていました。
AI駆動開発の波が到来した後はVSCodeのメリットを享受できるように、VSCodeからforkしたIDEが次々に誕生しました。Cursor、Windsurf、Kiroなどがそれにあたります。

11月にGoogleから公開されたAntigravityもその系譜を辿っています。しかしそれまでのIDEと異なり、AIエージェントを用いた開発ワークフローを大幅に再設計し、UXが大幅に向上しています。例えばMCPを接続せずにChrome拡張でブラウザ連携し、スクリーンショットや自動録画を実現しています。コードの差分や自動撮影されたスクリーンショットの一部を直接指定して、コメント指示を出すこともできます。Antigravityは、今後IDEの台風の目となる予感がします。

関連ツール

https://antigravity.google/

2025年の動向まとめ

記事上部で、以下のようにまとめました。

  • AIアシスタントからAIエージェントへ
  • バイブコーディングの登場とその限界
  • AI中心への変革

それぞれの意味を補足します。
DevinやClaude Codeが個人でも試せる料金体系になり、AIエージェントが浸透した4〜6月頃。
バイブコーディングの限界が見え、コンテキストエンジニアリングやSDDが提唱されはじめた6〜8月頃。
開発ワークフローをAI中心に据えたAI-DLCが提唱された7月、AIエージェント中心に再設計されたAntigravityが登場した11月。

こういった流れと言えます。

当社でも、

  • Cursor全エンジニアへの配布
  • Devin全エンジニア利用可能化
  • AWS Bedrockを用いたClaude Codeの利用拡大
  • cc-sddのトライアル
  • Claude Codeマーケットプレイスの利用
  • Antigravityを触ってみる会の実施

https://zenn.dev/canly/articles/d06828073eb545

https://zenn.dev/canly/articles/c77bf9f7a67582

https://zenn.dev/canly/articles/d76a950bbeefc6

などを行ってきました。
今後はAI-DLCを導入し、AI中心のワークフローを再構築していく予定です。

2026年はどうなるか

怒涛のアップデート続きだったClaude Code、CodexといったCLIツールの進化も、落ち着きを見せてきました。
そこでGoogleからAntigravityというIDEの黒船来航がありました。
OpenAIやAnthropicが静観しているとは思えず、IDE新時代が幕開けする可能性があります。

また、AI駆動開発の活用度合いは組織によって様々です。2026年はAIエージェントが当たり前となり、AI中心の組織構造やワークフローに変化を遂げていくと思われます。
そしてますます、エンジニアとビジネス職といった職能の境界は曖昧となり、それぞれが染み出して働く未来が待ち構えていそうです。
その波に乗り遅れないよう、ツールアップデートといったミクロだけではなく、世の中全体のマクロ環境を捉え、変革を遂げていく必要があります。

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