Windows で WSL を使った Dev Container の始め方
Windows で WSL(Windows Subsystem for Linux)と VS Code の Dev Container を使って開発環境を構築する手順を、初心者向けに分かりやすく解説します。
この記事でできるようになること
- Windows 上で Linux 環境(WSL2)を動かす
- Docker コンテナ内で開発できる環境を作る
- VS Code から簡単にコンテナを開いて開発する
前提条件
- Windows 10(バージョン 2004 以降)または Windows 11
- 管理者権限のあるアカウント
手順
1. WSL2 をインストールする
PowerShell を管理者として実行して、以下のコマンドを順番に実行します。
wsl --install
Ubuntu 初回起動でユーザー名とパスワードを設定する(重要)
WSL のインストール後、スタートメニューから「Ubuntu」を起動すると初期セットアップが始まり、以下の順で質問されます。ここで作成するアカウントは Ubuntu 内のあなたのユーザーです(ホーム: /home/<username>)。
- 「Installing, this may take a few minutes...」という表示の後、次が出ます。
Enter new UNIX username: _
- 半角英小文字・数字・ハイフン(
-)が無難(例:taro,my-dev)。 - 先頭に数字や大文字、スペースは使わないのが安全です。
- 続けてパスワードの入力を2回求められます。
New password:
Retype new password:
- 入力中は画面に何も表示されません(正常です)。
- このパスワードは
sudo実行時に使います。必ず控えておきましょう。
- セットアップ完了です。次回以降の起動方法:
- スタートメニューから「Ubuntu」を起動
- または PowerShell で
ubuntuまたはwslを実行
WSL2 がインストールされているか確認する
PowerShell(Ubuntu ではなく Windows 側)で以下のコマンドを実行します。
wsl -l -v
以下のような出力が表示されます。
NAME STATE VERSION
* Ubuntu Running 2
VERSION の列が 2 になっていれば WSL2 が正しくインストールされています。
作業用フォルダを作成する
Ubuntu ターミナル(PowerShell で ubuntu または wsl を実行して起動)で以下のコマンドを実行します。
cd ~
mkdir projects
この projects フォルダは、後で開発プロジェクトを保存する場所として使います。
2. Docker Desktop をインストールする
Docker Desktop 公式サイトからインストーラーをダウンロードして実行します。
インストール後、Docker Desktop を起動して設定を行います。
Settings(設定)を開く
- 画面右上の歯車アイコンをクリック
- General → Use the WSL 2 based engine にチェックを入れる
- Resources → WSL Integration → Ubuntu(またはインストールした Linux)をオンにする
- Apply & Restart をクリック
オプション: Docker Desktop を使わず、WSL(Ubuntu)に Docker Engine を直接入れて Dev Container を使う
対象: Windows 11 + WSL2 + Ubuntu(例: 22.04)。Docker Desktop を使わない構成です。
- WSL の準備
- 本記事の「1. WSL2 をインストールする」と「Ubuntu 初回起動でユーザー名とパスワードを設定する」を完了しておきます。
- Ubuntu を最新化(WSL 内の Ubuntu ターミナル) ※数分かかる場合があります。
sudo apt update && sudo apt upgrade -y
- Docker Engine のインストール(公式リポジトリ)
sudo apt install -y ca-certificates curl gnupg lsb-release
sudo mkdir -p /etc/apt/keyrings
curl -fsSL https://download.docker.com/linux/ubuntu/gpg | sudo gpg --dearmor -o /etc/apt/keyrings/docker.gpg
echo \
"deb [arch=$(dpkg --print-architecture) signed-by=/etc/apt/keyrings/docker.gpg] \
https://download.docker.com/linux/ubuntu $(lsb_release -cs) stable" | \
sudo tee /etc/apt/sources.list.d/docker.list > /dev/null
sudo apt update
sudo apt install -y docker-ce docker-ce-cli containerd.io docker-buildx-plugin docker-compose-plugin
- Docker デーモンの起動(推奨: systemd を使う)
- 推奨: systemd を有効化して Docker を管理します。
printf "[boot]\nsystemd=true\n" | sudo tee /etc/wsl.conf > /dev/null
PowerShell(Windows 側)で WSL を再起動:
wsl --shutdown
再度 Ubuntu を開き、Docker を起動・自動起動化します。
sudo systemctl enable --now docker
docker run --rm hello-world
- 非 root で Docker を使う設定
sudo usermod -aG docker $USER
- いったんシェルを抜ける
exit
再度 Ubuntu を開いて確認:
docker ps
以下のような出力が表示されれば成功です(エラーが出なければ OK):
CONTAINER ID IMAGE COMMAND CREATED STATUS PORTS NAMES
メモ: Docker Desktop を使う構成との併用は推奨しません。どちらか片方に統一してください。
3. Docker が動作するか確認する
WSL のターミナルを開いて、以下のコマンドを実行します。
docker --version
dockerのバージョン情報が表示されれば成功です。
4. VS Code と拡張機能をインストールする
- VS Code 公式サイトから VS Code をダウンロードしてインストール
- VS Code を開いて、以下の拡張機能をインストール
- WSL(Microsoft 公式)
- Dev Containers(Microsoft 公式)
5. WSL 内のプロジェクトを VS Code で開く
- VS Code を起動(Windows 側)
- VS Code を開き、左下ステータスバーの
><(リモートインジケーター)をクリック。 - WSL: Connect to WSL(または WSL: New Window using Distro...)を選択し、Ubuntu を選ぶ。
- 初回は拡張機能のインストールを促されることがあります。案内に従い WSL と/com Dev Containers を WSL(緑の「Install in WSL: Ubuntu」)としてインストールし、再読み込みします。
- プロジェクトを開く(2通り)
-
方法A: Git リポジトリを
~/projectsにクローン(UI)- 左のアクティビティバーで Source Control(分岐アイコン)を開く → Clone Repository(またはスタート画面の Clone Git Repository...)。
- 「Provide repository URL」に Git の URL を貼り付け(例:
https://github.com/your-org/your-repo.git)。 - 保存先の選択ダイアログで、
projectsを選択して Select as Repository Destination。 - クローン後に表示されるダイアログで Open を選ぶと、そのままリポジトリが開きます。
- 注: 初回で Git が未インストールの場合、VS Code からインストール案内が出ます。案内に従うか、WSL ターミナルで
sudo apt-get update && sudo apt-get install -y gitを実行してください。
-
方法B: 既にあるフォルダを開く
- メニューの File > Open Folder... を選択。
- パスに
/home/<username>/projects/myappを指定するか、Home→projects→myappを選んで Select Folder。
6. Dev Container で開く
VS Code の左下の ><(リモートインジケーター)をクリックして、以下のいずれかを実行します。
既に .devcontainer/devcontainer.json がある場合
→ Dev Containers: Reopen in Container を選択
7. コンテナ内で動作しているか確認する
VS Code のターミナル(コンテナ内)で以下を実行します。
cat /etc/os-release
whoami
コンテナ内の OS 情報とユーザー名が表示されれば成功です。
よくあるトラブル
Docker が動かない
動作が遅い
プロジェクトが Windows 側(C:\ や /mnt/c/)に置かれていないか確認してください。
WSL 内(~/)に移動すると大幅に改善されます。
次のステップ
Dev Container の環境構築が完了したら、次は開発に必要なツールをインストールしましょう。
続編記事:
WSL で Sui 開発環境を構築する(Sui CLI、Node.js、pnpm)
この記事では、以下のツールのインストール方法を解説しています:
- Sui CLI: Sui ブロックチェーン開発用コマンドラインツール
- Node.js + npm: JavaScript/TypeScript 開発環境(NVM使用)
- pnpm: 高速パッケージマネージャー
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