開発環境: WindowsにRust(MSVC)の開発環境を構築する (2023年版)
tl;dr
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Rust[1]開発のためには、Visual Studio Build Tools[2]をインストールが必要 - 環境変数を設定し、それに基づいて
Rustをインストールする - これらの手順は、
wingetコマンドを用いて効率的に行える
はじめに
プログラミング言語Rustを使用するためには、ソースのコンパイル/ビルド用にC++コンパイラが必須です。
Windows版Rust ではVisual C++か、もしくはGNU C++が求められます。
このため、Rust をインストールする前に C++の開発環境をセットアップする必要があります。
この記事では、Visual C++コンパイラを含む Microsoftのソフトウェア開発ツール、Visual Studio Build Tools`をあらかじめインストールしておきます。
Rust および Visual Studio Build Tools のインストールは、winget[3] コマンドで簡単に行えます。
wingetは Windows の公式パッケージマネージャーで、ソフトウェアのインストールをコマンドラインから一括で行えます。
この記事では、RustとVisual Studio Build Toolsのインストール方法をステップバイステップで説明します。
1. Visual Studio Build Toolsのインストール
Rust が正常に動作するためには、C++コンパイラが必要です。Rustを使うため、事前に、C++コンパイラを含む Microsoft のソフトウェア開発ツール、Visual Studio Build Toolsをインストールしておきます。
詳しい説明は、"Visual Studio Build Toolsのインストール手順ガイド"を見てください。
1.1. Visual Studio Build Toolsをインストールする
次の手順で、Visual Studio Build Toolsをインストールします。
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Visual Studio Installerの起動:
下記のコマンドを実行し、Visual Studio Installerを起動するwinget install Microsoft.VisualStudio.2022.BuildTools -
コンポーネントの選択:
[コンポーネントの選択]画面で、[C++によるデスクトップ開発]を選択する

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Build Toolsのインストール:
[インストール]ボタンをクリックし、選択したコンポーネントをインストールする

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Visual Studio Installerの終了:
右上の[×]をクリックし、インストーラーを終了する
これでVisual Studio Build Toolsのインストールは完了です。
次に、Visual Studio Build ToolsのPathを設定します。
1.2. Pathを設定する
次の手順で、Pathを設定します。
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[システムのプロパティ]ダイアログを開く:
下記のコマンドを実行するsystempropertiesadvanced.exe[システムのプロパティ]ダイアログが表示される

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[環境変数]ダイアログを開く:
[環境変数]ボタンをクリックする。[環境変数]ダイアログが表示される

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[システム環境変数]の
Pathを編集:
"システム環境変数"のPathを選び、[編集(I)]をクリックする。
[システムの環境変数]ダイアログが表示される

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C++コンパイラのパスを追加:[新規]をクリックし、以下の
Pathを追加するPath 概要 C:/Program Files (x86)/Microsoft Visual Studio/2022/BuildTools/VC/Tools/MSVC/14.36.32532/bin/HostX64/x64C++コンパイラ -
ダイアログの終了:
[OK]をクリックし、すべてのダイアログを終了する -
PC の再起動
設定したPathを環境に反映させるため、PC を再起動する
以上で、Visual Studio Build Toolsのセットアップは完了です。
2. Rust のインストール
2.1. 環境変数の設定
以下に、Rustのインストールおよび動作に関する環境変数をしめします。これらの変数をインストール前に設定することで、インストール先などを指定できます。
以下に、Rustが使用する環境変数とその設定を載せておきます。
| 環境変数 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
CARGO_HOME |
Cargoのインストール先 |
RustのパッケージマネージャーCargoのインストール先。Rustコンパイラなども、このディレクトリ下に保存する |
Path |
Rustツールパス |
Rustの各種ツールを実行するためのPathを追加する |
RUSTUP_HOME |
Rust用各種データ保存先 |
Rustのツールチェーン、コンパイラの実体や、C用のヘッダー、ライブラリなど各種データを保存する |
環境変数を設定する
次の手順で、環境変数を設定します。
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[システムのプロパティ]ダイアログを開く:
下記のコマンドを実行するsystempropertiesadvanced.exe[システムのプロパティ]ダイアログが表示される

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[環境変数]ダイアログを開く:
[環境変数]ボタンをクリックする。[環境変数]ダイアログが表示される

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[システム環境変数]の編集:
"システム環境変数"に以下の環境変数を設定する環境変数 設定 備考 CARGO_HOMEc:\lang\rust自分の環境では、 c:\lang下に各種言語が入るPath%CARGO_HOME%\binPathに左記の設定を追加する -
[ユーザー環境変数]の編集:
"システム環境変数"に以下の環境変数を設定する環境変数 設定 備考 RUSTUP_HOME%XDG_DATA_HOME%\rustupXDG Base Directory[4]に対応 -
ダイアログの終了:
すべてのダイアログの[OK]をクリックし、ダイアログを終了する -
PC の再起動:
設定したPathを環境全体に反映させるため、PC を再起動する
以上で、環境変数の設定は完了です。
2.2. Rustをインストールする
Rustを公式サイトからインストールする際には、Rust toolchainのインストーラーであるRustup[5]を使用します。
Rustupはcargoやそのほかの Rust でのソフトウェア開発に必要なツールチェーンも一緒にインストールします。
Rust開発環境全体の管理・構築・アップデートができるツールです。
wingetのパッケージにはRust言語とそのインストーラーRustupのパッケージが含まれています。
今回は、Rustupを使用するためにrustupパッケージをインストールします。
下記に、winget内のRust言語関連のパッケージをまとめています。
パッケージID |
説明 | 備考 |
|---|---|---|
Rustlang.Rustup |
The Rust toolchain installer |
Rustupのインストーラー。Rust はインストールされたrustupによって、自動的にインストールされる |
Rustlang.Rust.MSVC |
Rust (MSVC) |
Rust言語、C/C++モジュールに VIsual C++ を使用する版 |
Rustlang.Rust.GNU |
Rust (GNU) |
Rust言語、C/C++モジュールにGNU C++を使用する版 |
次の手順で、Rustをインストールします。
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rustupのインストール:
Windows Terminalで次のコマンドを実行し、Rustupをインストールするwinget install rustlang.rustup -
Rustのインストール:
rustupが自動的に実行され、rustをインストールするrustupinfo: profile set to 'default' info: default host triple is x86_64-pc-windows-msvc info: syncing channel updates for 'stable-x86_64-pc-windows-msvc' . . ,
以上で、rust のインストールは完了です。
2.3. Rustの動作チェック
インストールが正常に終了していれば、Rustコンパイラrustcが使用可能です。
次の手順で、rustcの動作をチェックします。
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rustcのバージョン ;
Windows Terminalで次のコマンドを実行するrustc --version -
バージョンのチェック:
Terminalに次のようなバージョン番号が表示されるかチェックrustc 1.71.0 (8ede3aae2 2023-07-12)
( rustc 1.71.0 ...) のようなバージョン番号が表示されれば、Rustは正常にインストールされています。
3. 開発環境の確認
Rustを正常にインストールし、Rust によるプログラミングができることを確認するためにHello,Worldを出力する簡単なプログラムを作成します。
3.1. RustでHello, World
次の手順で、Rust の開発環境を確認します。
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作業用ディレクトリに移動:
PowerShellを開き、プログラミング用の適当な作業用ディレクトリに移動するcd ~/workspacies/temp/rust -
hello.rsの作成:
hello.rsファイルを作成し、ファイルに以下のRustコードを記述する// hello.rs fn main() { println!("Hello, rust World!") } -
hello.exeの作成:
hello.rsをコンパイルしてhello.exeを作成するrustc hello.rs -
hello.exeの実行:
hello.exeを実行し、正常に動作するかを確認するHello, rust World!
上記のように"Hello, rust World!"が出力されていれば、Rustは正常に動作しています。
さいごに
以上の手順で、Windows 環境に MSVC版Rust をインストールできます。
まとめると、以下の主要なステップで Rust のインストールが可能です。
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Rustのインストール前に、C++コンパイラを含む"Visual Studio Build Tools"をインストールします - 環境変数を事前に設定すれば、
Rustのインストール先などを自由に変更できます -
wingetコマンドを使うことで、簡単にRustをインストールします
これらのステップを実行すれば、スムーズにRustの開発環境が構築できます。
今回の記事を参考に、Rust の開発環境構築を進めてみてください。そして新たに手にした Rust の力を活用し、あなたのエンジニアリングの世界をさらに広げてみてください。
それでは、Happy hacking!
参考資料
Webサイト
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Rust: 高速で安全性が高く、並行性と実用性を兼ね備えたシステムプログラミング言語。その特徴として、メモリ安全性の維持と高速性を両立した設計があげられる。 ↩︎
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Visual Studio Build Tools: マイクロソフトが提供するクロスプラットフォーム用のソフトウェア開発ツール。Rust のインストールにはこれが必要となる。 ↩︎ -
winget: WIndows 公式のパッケージマネージャー ↩︎ -
XDG Base DIrectory: Linux/UNIX で設定ファイルを保存するときに用いられる標準的なディレクトリ仕様 ↩︎ -
Rustup: Rust開発環境を構築、管理する公式のツール。Rust言語の開発環境を構築する際には、rustupの使用が推奨されている。 ↩︎
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