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エンジニア組織のナレッジマネジメントにチームで立ち向かう

2024/12/19に公開

この記事は atama plus Advent Calender 2024 12月19日の記事です。


みなさんのエンジニア組織では、開発にまつわる様々なナレッジの属人化問題であったり、ドキュメントの継続的メンテナンスやナレッジシェアの促進など、ナレッジを取り巻く諸問題にどのように対応されているでしょうか?

atama plus ではこれら様々な問題に対して「ナレッジマネジメント」という軸で横断的に腰を据えて取り組み続けるために、エンジニア組織の中に有志で立ち上がったナレッジマネジメント組織が存在します。

この記事では atama plus のナレッジマネジメント組織の目的、スコープ、活動の考え方などを紹介します。同じような課題感を持っている方が持続的に問題に取り組むための体制づくりの参考になれば嬉しいです。

ナレッジマネジメント組織組成までの経緯

なぜ立ち上げようと思ったか

自分や@pandineerでエンジニア組織内のナレッジマネジメントをもっとやっていけないか、と話をしたところから始まりました。
その背景として、現在の atama plus はプロダクトの規模が大きくなり仕様の複雑さも上がりプロダクトの種類すら増えている状況で、開発者アンケート(※)でもナレッジにまつわる課題が目立ってきていました。

開発者の声には例えば以下がありました。

  • 都度周りの人に聞いているが、概念の数が多くあり、それぞれに歴史もあるのでコスト高いなと感じる
  • 聞けばわかるが、聞かないとわからない(資料が散らばっていて探しきれない)のがつらい
  • など

そして他メンバーにも声をかけて何かやっていけないか考える中で、これをギルド化(※)して進めたいと考えました。

なぜギルドの形式を取ったか

なぜギルドという形でチームを組んで進めたかったかというと、

  • ナレッジにまつわる問題は重要性は高いが緊急性の低いものが多いです。それゆえに短期集中プロジェクトでリソースを確保するのは難しいと考えました。
  • 何か施策を打ってそれで解散するのでは施策や制度のその後に責任を持てず、徐々に形骸化・荒廃していく経験則と予感もありました。
  • 問題に対してはっきりとした正解が中々ないので、チームで多角的な視点を持ち寄って考える必要があると感じました。

そこで少しずつでも継続的にリソースを割き続け、状況変化や生まれ続ける課題に柔軟に対応できる体制を維持しながら、徐々に検討を深めて問題に対応していく道を選びました。

ギルドのスコープと活動方針の策定

ギルドメンバー間のギルド活動認識合わせ

ギルドが発足しました 🎉
自分はギルドマスター(リーダー的立場)を担当することにしました。

ギルドマスター
※実際は4人でした

しかしこの時点ではまだギルドの目的もスコープも曖昧です。
日頃あまり馴染みがない「ナレッジマネジメント」という概念に対して共通のイメージを持って向き合い、建設的な議論をしていくために、まずは全員の考えをすり合わせることから始めました。

具体的にはギルドの目的をどこに置き、スコープや活動方針をどうするか、個人の考えを事前に付箋に書き出してきた上で議論をしました。

Miroで付箋出しをしている風景
Miroで付箋出しをしている様子

そして以下の目的とスコープ、活動方針を定めました。

ギルドの目的

  • 一部の人・チームに属人化されたナレッジを減らしつつナレッジの利便性も高めることで、リスクや開発中の不安・ストレスを減らし、仕事の効率化も進めたい。
    • 既にナレッジマネジメントに対する課題意識が高まってきている状況に対処し、今後のプロダクト・組織のスケールに備えるため

ギルドのスコープ

対象 内容
対象のナレッジ種別 エンジニアが仕事をする上でナレッジ不足を感じるもの全般を対象にするが、主な例を挙げると以下になる

- 言語・フレームワーク ほかシステム開発全般の一般的な知識・スキル・経験
- atama plus の開発プロセス・コード・設計・プロダクト・ドメイン・運用等に関する知識・経験
扱う問題の側面 「ナレッジマネジメントをする」とは組織内でのナレッジの創造・共有・使用・保管のプロセス全体を統合的に管理することである

- どうすればナレッジ共有が促進されるか
- どうすれば蓄積されるナレッジを使いやすく整理したり、継続的なメンテナンスをしたり、存在や場所の認知形成、検索性などのアクセシビリティ改善をしていけるか
- 以上を実現するための体制、仕組み、文化等はどうあると良さそうか

ギルドの活動方針

大きく3点あります。

1. ナレッジマネジメントの活動は atama plus で言うところのカルチャーガーデニング(※)に近い。一度良い状態を達成したら終わり・解散ではなく、組織やプロダクトを取り巻く状況の変化によって問題が移り変わるので対応し続ける必要がある

2. 日々ナレッジのガーデニングをしていく主体は全員である

全員でナレッジガーデニングをしていくために、ギルド活動では以下を主に行なっていくこととしました。

  • みんなでナレッジガーデニングをする大切さの啓蒙や文化の醸成
  • みんながガーデニングをしやすくするガイドラインや仕組みの整備
  • みんなが感じている困りごとの一次受けと深掘りや優先順位決め
  • 課題の継続管理
  • ナレッジ課題に対する解像度が比較的高い(ギルド活動を通して高めていく)視点から全体のボトルネックの探索や解決策の立案

3. 具体的なトピックのドキュメント執筆みたいなナレッジを生み出す活動は、可能な限り各チームや個人に依頼を行うようにし、ギルドでタスクをあまり抱えない

ギルドのリソースは非常に限られているので、ナレッジを生み出す活動まで抱えて対応しようとするとパンクして課題解決の速度が低下してしまいます。
全員でナレッジガーデニングを進めていきたい、そのための支援や仕組みづくりに集中したいと考えました。

認識合わせと知見獲得のための読書会実施

組織定義の議論の後は、チームビルディングを兼ねて『Googleの ソフトウェアエンジニアリング』から「3章 知識共有」「10章 ドキュメンテーション」の読書会を行いました。

読書会では、事前に各自で本を読んで Miro のボードに付箋を出してきたものを読み上げながら議論していきました。
付箋出しの際は本に書いてあることを atama plus に当てはめて、「できている / 微妙 / できていない / 知らない・疑問・わからない」点をそれぞれ書き出しました。

読書会の付箋出しの様子
Miroで付箋出しをしている様子

この取り組みはギルド内に共通言語や価値観を形成するためにとても良かったです。
読書会を通してアクションアイテムの種も獲得することができ、次のギルド活動に繋がっていきました。

読書会で出たアクションアイテム候補のまとめ
読書会で出たアクションアイテム候補のまとめ

基本のギルド活動

ギルド活動は週に1回の定例会議を軸としました。新たな課題について共有し優先順位を決め、目下の重要課題・施策について各々の進捗を共有したり検討を深めます。

課題管理の手段はギルドのタスクを管理するバックログと、ナレッジの課題を管理するバックログの2つを用意して日々管理しています。

ギルドを発足してみて

  • ナレッジマネジメントに関連する制度の運用主体を明確にできたことがまずは良かったです。
    • ギルド発足以前を振り返ると、過去にも Engineering Manager 組織によってドキュメントを継続的にメンテナンスするための制度が作られたことがありました。
      • しかしその時は Engineering Manager 組織のリソース不足や Engineering Manager 組織内での厳密な運用主体の不在から、制度に対して日々生まれる課題が放置され徐々に機能しなくなり、あまり使われなくなっていました。
      • それにも関わらず厳密な責任主体がいないので制度の廃止も行われず、半ば形骸化された制度が公式に存在し続けてしまっていました...。
  • ナレッジにまつわる課題の相談窓口が公式にできたことと、加えてアンケートを取ってギルドからも能動的に課題の収集を行うようにしたことでエンジニア各自の中にモヤモヤが抱え込まれることが減り、課題を把握しやすくなったことも良かったです。
  • 同じ課題感を持つ仲間と日々一緒に検討を進められることは心強く、そのおかげで活動を続けられています。時間が経つにつれてナレッジマネジメント領域にまつわる知識や理解がメンバー内で深まっていることを感じ、深い議論を行えるようになり課題に立ち向かいやすくなっていることも感じます。
  • atama plusエンジニア達のギルド活動のご紹介〜2024夏版〜にも書いたような施策や運用をしていますが、先日のアンケートでは「いつも細部にわたり運用したり声掛けしてくれて助かってます。ありがとうございます!」との声をもらえました。
    • 打った施策を形骸化させずに運用し続けることがギルド組成の狙いの1つなので、この声は嬉しかったです。

おわりに

今回はエンジニア組織の横断的なナレッジマネジメントにチームで立ち向かっていく考え方についてご紹介しました。
同じような課題感を持っている方の参考に少しでもなれば幸いです。

ギルドの具体的な施策や活動内容はまた後日書いていきたいのでご期待いただけたら嬉しいです!

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