QAチームミッションのアップデート 〜進める上での工夫と学び〜
こんにちは!atama plusでQA Engineering Managerをしている池上です。
atama plus Advent Calendar 2024の12月18日の記事になります!
ミッションの策定のような抽象的なテーマを扱う際、どうやって全員を巻き込み、共通認識を形成するか悩んだことがある方もいらっしゃるのではないかと思います。
本ブログでは、QAチームがミッションをアップデートするプロジェクトで実際に取り組んだプロセスと工夫を紹介します。
Engineering Managerなどチームミッション/ビジョンなどを検討する方の参考になれば幸いです。
背景:ミッションアップデートプロジェクトの立ち上げ
atama plusは小中高生向けのAIを用いた学習システムを開発しています。
数年前にQAチームが発足した際には、「いいものを早く安定的にユーザーに届ける」というミッションを掲げて、これまで様々な改善活動を進めてきました。
しかし、提供する顧客の変化やプロダクトの多様化、事業状況の変化に伴い、現状の活動とミッションにズレが生じているのではないかという声があがるようになりました。
例えば、
ある事業では検証を素早く回すためにも高頻度のリリースが求められることがあります。
一方で他の事業では1年間の運営が決まっているため、高頻度のリリースは求められません。
このように「早くユーザーに届ける」という点で、ズレが生じているのではないかという声があがっていました。
この状態が続くと、限られたリソースの中で進める活動の方向性がずれてしまったり、各メンバーのモチベーション低下にもつながり、チームの組織運営に大きな問題が発生する可能性がありました。
そこで、新しいチームミッションを策定するために、ミッションアップデートプロジェクトを立ち上げました。
進め方:全員参加型のワークショップとミッションの合意形成
プロジェクトの全体像
本プロジェクトは大きく2つのフェーズで進めました。
- 全員参加のワークショップでアイデアを発散
- 意見を収束させ、ミッションのドラフトを作成し、チーム内で合意を得る
各フェーズで、どのように全体を巻き込みながら共通認識を形成し、合意していったかを具体的に解説します。
全員参加のワークショップでアイデアを発散
チームミッションはチームの行動指針となるため、チーム全員を巻き込み、当事者意識を持ってもらうことが不可欠です。
そのため、このワークショップを通して、以下の目的を達成することを目指しました。
- チームメンバーがミッション策定の目的やプロセスを理解する
- 必要な情報を洗い出し、対話/議論を通して共通認識を形成する
- 全員がミッション策定の当事者意識を持つ
ワークショップの工夫点
上記の目的を達成するために以下のような工夫を行いました。
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事前ワークの実施
事前ワークの内容:
各メンバーが「QAチームの目指す状態」を考え、事前に深く考え言語化しアイデア出しをする。事前ワークを通してミッションに必要な要素を発散するとともに当事者意識を持ってもらうことを意識しました。
その中でもメンバーが発散しやすいようにいくつかの工夫をしています。- アイデアが出やすいようにフレームや幅だしのヒントを提供
ただアイデア出しを課すのみでは必要な情報を洗い出したり、共通認識を形成することは難しいです。
そのため、あらかじめ考えやすいようなフレームを準備しました。
この画像は実際のフレームです。
目指す姿のアイデアが出やすいように、Why/What(=目指す姿)/Howの形で整理できるようにしています。
また、その際にどんなワードを使って考えるとよさそうかヒントを羅列しておくことで思考しやすいようにしました。
以下は実際の幅だしのヒントです。
プロジェクトメンバーであらかじめ思考の手助けとなるようなワードを用意しました。
- 「品質」というワードは禁止
QAエンジニアは「品質」というワードをよく使いますが、抽象的で認識がずれることがあります。
今回のワークショップでは「品質」というワードを禁止し、品質に関わることをアイデアとして出したいときは品質8特性など一段具体的に掘り下げてもらうことにしました。
- アイデアが出やすいようにフレームや幅だしのヒントを提供
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オンライン実施の工夫
ワークショップ当日はオンラインで実施をしました。
人数も10人を超える大人数であったことから、ワークショップ中の音声コミュニケーションの難しさや、発言のハードルを下げるために専用のSlackチャンネルを作成しました。
これにより意見交換や質問がしやすい環境を整えました。
以下は実際のSlackでの様子です。
アイデアを共有しながらそれぞれが感想やコメントをしていて、盛り上がりました!
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共有と相互理解の時間を確保
対話/議論を通して相互理解の促進、共通認識を形成するために、
事前ワークの内容を全員で共有し、深掘りするディスカッションタイムを設けました。以下は実際に共有したアイデアです。
緑の付箋がディスカッションの内容になっていて、対話/議論をしながら共通認識を形成していきました。
ミッションドラフトの作成と収束プロセス
続いて、発散したアイデアをもとに収束させて、ミッションを確定するフェーズの進め方についてです。
ワークショップ後、発散したアイデアをもとに、プロジェクトメンバーでミッションのドラフトを作成しました。
ドラフトに対してメンバー全員のレビューを通してブラッシュアップし、最終的にチームオーナーがチームミッションを確定させました。
※QAチームではチームオーナー直下にEngineering Managerがいる構造です
工夫点
この収束プロセスでもいくつかの工夫を行いました。
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アイデアを構造化
ワークショップで発散したアイデアを構造化しました。
これにより各自のアイデアをまとめ、共通認識を形成しやすいようにする狙いがありました。
以下は実際に構造化した画像です。
このようにワークショップの結果をわかりやすく整理することで共通認識を形成しやすいようにしました。
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役割分担の明確化
ドラフトの作成はプロジェクトメンバー、レビューは全員、最終決定はチームオーナーが行うという役割を明確にしました。
全員のレビューを通してブラッシュアップしていくことも大事ですが、全員参加でレビューをすることで当事者意識を持ってもらうことを意識しました。
ただ、ブラッシュアップして再度発散してしまう可能性もあるため、最終決定はチームオーナーが行うことを決めておくことでスムーズに合意形成を進めました。
以下は実際のメンバーのレビューの様子です。
メンバーみんなが当事者意識をもってレビューに参加いただき、ブラッシュアップできました。
学び
最終的に「いいものをタイムリーに安定的にユーザーに届ける」という現在のチームミッションとなりました。
このチームミッションをもとに、各メンバーは担当業務の目的とミッションを紐づけて業務の意義を明確にしたり、プロジェクトのキックオフ時にミッションとの紐づきを確認することで、よりチームとして一体感を持って進めることができています。
最後にプロジェクトを通じての学びについてです。
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全員を巻き込むための事前準備と設計の重要性
- 今回のように共通認識を形成していく場合、どのように全員を巻き込んで進めるかは事前準備/プロセス設計にかかっている。目的/やることを明確にし、アイデアを発散しやすい状況を作る工夫が鍵。
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発散と収束のバランスを取ることの大切さ
- アイデアを出し切った後の収束フェーズでは、意思決定をスムーズに進めるための役割分担が重要。
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ミッション策定はチームの目指す姿の相互理解を促進する絶好の機会
- ミッションについて深く考えることで、それぞれが考えるチームの目指す姿を共有/議論することで相互理解が促進された。それによりチームとしての一体感もより高まった。
最後に
本記事ではQAチームのミッションをアップデートする中での工夫と学びを紹介しました。
ミッションアップデートのような抽象的なプロジェクトを進める際には、全員を巻き込み、共通認識を形成するための準備と工夫が欠かせません。
今回のプロセスがみなさんの参考になればうれしいです!!
atama plusのQAチームはこれからも「いいものをタイムリーに安定的にユーザーに届ける」ために進み続けます!
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