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できるだけ多くのAI利用者に会うという目標とその結果

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今年の目標は「できるだけ多くのAIを使っている人に会う」というものでした。今までこう名乗ることはできるだけ避けてきていたのですが、AI の専門家としてこの目標を立てました。

僕はあまり旅行に行くことはありませんでした。正直に言えば行動計画を立てることは苦手で、旅先で今まで見聞きしたことがないものに出会いたいというよりは、休日は家でゆっくりと休みたい人間です。

ですが、この目標を立てたのにはそれなりの理由があります。この目標は弊社の業務のためでも、Google Developer Expert としての活動のためでも、コミュニティのためでもありました。

恥ずかしながらこの目標を立てたときに今年は半分ほど終わっていたのですが、ここではその目標を立てた背景と、その結果について振り返っていきます。

背景

話は去年にまで遡ります。

研究者と開発者の断絶を乗り越えたその先で

ちょうど去年の年末に研究者と開発者の断絶による問題、そしてそれを乗り越える価値についてという記事を書きました。ここでは身の回りの10人程度の活動状況をヒアリングして伝えたというのができた精一杯のことでした。

その後、この活動はAI セーフティ強化のための研究開発プロジェクトという形で、仕事として継続することになりました。来年の3月までこのような活動を仕事としてできるのは、正直偶然の賜物ですが、ありがたいことだと思います。

Google Developer Expert として

GDE (Google Developer Expert) は Google が認定する特定の技術分野のエキスパートです (おそらく)。もともと Champion Innovator として選定いただいていたのですが、Champion Innovator プログラムが Google Developer Experts に吸収されることになり、それに伴って Google Developer Expert の一員となりました。

これは図らずも Shoko Sato さんとの DevFest Tokyo 2019 での夢を叶えたことになります。打ち上げで「DevFest を未来の GDE の登竜門にする」とおっしゃっていた覚えがあります (自分も相当飲んでいたのでうろ覚えです)。というわけで、なりました。DevFest はいいぞ。

いつの間にやら6年経っていたわけですが、色々な方に色々なことを教えていただいたおかげで今があります。自分の見聞きしたことは誰かに還元したいと常々思っています。なので、GDE として色々な方に話したい、色々な方の話を聞きたいと思っています。

GDE になったからそのような活動をしているかというと、そのような活動をしていたらたまたま GDE になったので、やりたいことを後押ししてくれる人たちが増えてありがたいという感じです。

コミュニティのために

AI は単体では空虚な技術です。驚くようなインパクトのある技術ですが、驚かせることしかできませんでした (今はだいぶ変わった)。なんらかの課題解決をしなければ、なんらかのビジョンを実現しなければ、この技術は電力と水の浪費にすぎません。

僕は AI の専門家ではありますが、社会のデザインはできませんし、製造業などの社会へのインパクトが大きな産業の変革もできませんし、山間部で増え続けるシカを捕まえることもできません。僕自身、AI という技術は好きですが、それを活かす先は正直なところ見えていません。

幸い、日本にはさまざまなコミュニティがあります。地方のコミュニティ、小売や製造業といった業界のコミュニティ、あるいは趣味のコミュニティもたくさんあります。そのようなコミュニティに AI という技術の使い方を伝えることで、そのコミュニティの発展の一助となれるかもしれません。

そうであるのなら、AI の専門家として、さまざまなコミュニティに奉仕できるのならすばらしいことだと思いました。

このような背景から「できるだけ多くのAIを使っている人に会う」という目標を立て、今年は色々な場所に行っています。

以降ではどのような場所にいったのか振り返って見ます。

Result

毎月1回以上の頻度でどこかに行きました。

1月

ウィンターワークショップ2025・イン・下関

情報処理学会/ソフトウェア工学研究会が毎年冬に開催する「ウィンター・ワークショップ」というのがあるのですが、そこに参加してました。

産学合同で行うようなワークショップで、何かを発表するというよりは議論することに価値を見出す取り組みでした。この規模の学会で議論をリードするのは初めてでしたが、楽しかったです。

2月

どこにも行ってませんでした。

3月

言語処理学会第31回年次大会 (NLP 2025)

言語処理学会に弊社がスポンサーとして参加したので行ってきました。

初長崎で、このイベントで知り合った方も多かったです。

4月

どこにも行ってませんでした。が、とあるイベントに参加してました。

5月

KOZA から始まる AI ハッカソン presented by Jagu'e'r

沖縄に行ってました。

イベント自体のレポートは熱いブログ記事があるのでそちらに任せます。

2025年度 人工知能学会 (第39回)

大阪に行ってました。

丸山先生とインタビューを進めたり、AI セーフティ強化のための研究開発プロジェクトのヒアリングのお願いを大量にしていました。

6月

どこにも行きませんでした。この辺りで目標を立ててます。

7月

MLSE 夏合宿 2025

箱根に行ってました。

丸山先生とやっていた WG の発表を丸山先生が進めてくださったり (あまり主体的に進められませんでした、すみません) MLOps を扱う WG のセッションを行ったりしてました。

8月

AI 品質マネジメント 夏合宿

伊東に行ってました。

この合宿は実りが多く、監査の専門家、品質管理の専門家、セキュリティの専門家といった、さまざまなバックグラウンドを持った方々と AI の品質保証プロセスについて集中議論しました。成果は近々公表できるのではないかと思います。

Google Cloud Next Tokyo 2025

ビッグサイトに居ました。

Google Cloud Next Tokyo では毎年 Ask the Expert というブースがあり、そこで来場者からのどんな質問にも答えるという企画をしています。個人的にはこのイベントの中で最も楽しいブースなので毎年かなり長いこと立っています。

Flutter 入門ハンズオン おしゃれな名前生成アプリを作ろう

Flutter を久しぶりに触りたくなったので Flutter のイベントに参加者として出て居ました。

CNCF や Flutter のような AI が主眼じゃないイベントにも顔を出すようにしました。あとはハンズオンのやり方をみて教わってました。

9月

生成AIなんでも展示会 Vol.4

「女オタ生成AIオンリー」の方でボランティアで警備してました。

熱意が形になる様子を見て、イラスト界隈との軋轢に痛めていた心が浄化されるようでした。このイベントではさまざまな貴重な発見をしましたが、発表資料には載せる予定はありません。

GDG on Campus Japan Convention 2025

渋谷ストリームにいました。


イベントの内容はブログ記事があります。

GDG on Campus は Google のテクノロジーに興味を持つ学生のコミュニティで、様々な大学にコミュニティがあります。

GDE として参加したのですが、コミュニティの方から「GDEを呼ぶのが難しい」「イベントの内容を確定させて、話してもらいたいことを明確にしないとなかなか呼びにくい」という悩みを聴きました。

基本的にどんな GDG がいるのか知る術はないので、こちらから話しかけようと認識を新たにしました。

製造業でも生成AI活用したい!名古屋LLM MeetUp#8

名古屋にいました (日帰り)。

東京 - 名古屋はサクッといけるのでいいですね。製造業の普段会わない人たちに会えるのですが、もともと製造業系で働いていたのと、名古屋に 15 年ほど住んでいたので、馴染みがあり行きやすいです。

10月

DevFest Nagoya 2025

名古屋にいました (1泊2日)

東京 - 名古屋はサクッといけるのでいいですね。

Gen AI Skillup by GDG Okayama

岡山に行きました。

イベントの内容はブログ記事があります。

東京から半日足らずで行けるのはありがたいです、前泊なしで行けました。AI に関する教材をみんなで学習するというスタイルのイベントだったんですが、解説されていない用語があったり背景がないとわからない内容が唐突に出たりするので (仕方がない) 解説のためにイベント参加というのはアリな気がします。

11月

#bq_sushi #24 BigQueryとAIで話してみる、

合同会社DMMにいました。

普段行かないコミュニティに行ってみるキャンペーンを展開するうちに、bq_sushi に参加したことがないのに気がつきました。初参加だったことにみんなで驚いてました。

IBIS 2025 (第28回情報論的学習理論ワークショップ)

沖縄にいました (2度目)

宿泊場所がホテルではなくマンションの一室を帰るスタイルで、ほぼ自宅みたいな感じだったのですが、仕事の繁忙期に学会出張に行くと稼働時間がえらいことになりますね。

観光する時間はなかった。

12月

NeurIPS 2025

アメリカにいました。

仕事の繁忙期に学会出張に行くと稼働時間がえらいことになりますね (2回目) 時差ボケというものをはじめて体験しました。早朝に起きて仕事して、カンファレンスに参加して、帰ってきて眠くなるまで仕事してただけの日々でした。

一応ここに行かなければ知り得なかった研究に出会ったのと、著者に質問できたのは良かったですね。

DevFest Okayama 2025 (予定)

岡山にいる予定です。岡山の町の様子が好きなので楽しみですね。あと、うどんがうまい。

学生AI Coder Meetup in 京都 (予定)

京都にいる予定です。多分日帰り。

振り返り

普段あまり交流がないか、初対面の方が多かったイベントへの参加を書いて見ましたが、いろんなところに行ったなあと思います (参加したイベントを全部書いた訳ではなく、主催したのは書いていないのが多い)

Keep

GDG 関係では、イベントを主催したい方にこちらから声をかけに行くのは良かったかなあと思います。

去年よりは圧倒的にフットワークが軽くできたのも良かったかなと思います。

Problem

無計画に色々行きすぎました。全部自分で行くのではなく、誰かを誘ったり、誰かに行ってもらったりしても良かったかなという気もしています。

GDE への声のかけにくさという問題も観測したのですが、こちらはまだ解決できてないですね。

GDE というプログラムや、AI セーフティ強化に関する研究開発プロジェクトで色々なところに行きやすかったというのはありますが、まだまだ会えていない方の方が多い印象です。

Try

来年は次の事項を GDE としては挑戦してみようかと思います

  • AI の専門家としてのコミュニティでの知名度を高めていく
  • GDG (GDGoC) と共同でイベントを企画する
  • 日本の北の方や、製造業、金融、ヘルスケアなど普段会わない人に会いにいく
  • 名札を用意する (目の前の人が何者なのか普通分からないため)

最後に

目標を目指す中でやってしまった失敗を述べます。

Google Cloud Next Tokyo 2025 では懇親会の用意がありました。広い会場で軽食と飲料を自分で取り、数人がけの机に座る形式でした。僕も参加していましたし、仲の良いグループで着席して会話を始めていました。ただ、数人、1人で着席していた方がおられたのは気になっていました。

そしてその中の1人は、ゆっくりと食事を食べ、ゆっくりと飲料を飲み干し、しばらくそこに座ったあと、何かを諦めたのか帰って行かれました。

その方に話しかけようか戸惑うくらいならさっさと話しかけるべきでした。色々なイベントに参加するたびその方のことを思い出します。

少し話は変わりますが、優れたエンジニアがコミュニティの中でしていることという本を読みました。僕は登場人物たちと近い場所にいるためよく慣れ親しんだ組織の社内報のような気持ちで読みましたが、その本に書かれていなかったことがひとつありました。それは、僕は色々な参加者の方の話を聞きたいということです。

どんな取り組みをしているのか、どんな課題があるのか、どんなことに興味を持っているのか、何にも興味を持てないのか、今日のイベントに参加してどんな感想を持ったのか、それとも何も感想を持つことができなかったのか (これは事前知識がない場合、自然です) 今日どんな話があったのか思い出せないのか (これも自然です)

とにかく、僕はあなたの話を聞きたいのです。

来年はどういう仕事をしているのかまったくわかりませんが、できる限りのことをやろうと思います。

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