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日本数学オリンピック(JMO)2025年予選解答私的解説 その1

2025/01/19に公開
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はじめに

背景

さる2025年1月13日(月,祝)実施された、第35回日本数学オリンピック予選につき、公開された問題を解いてみましたので、解説を挙げてみようと思います。
予選は全部で12問あり、例によって前半と後半とでは大分難易度が違います。最初の方はあっさりと、後の方はややしっかりめにバランスを考え、3回くらいにわけて解説します。

参考情報

解説

それでは、今回の「その1」では、前半の6問を解説していきます。

第1問

  • 問題: 図のように六角形のマスが7個並んでおり、それぞれのマスに1以上7以下の整数を重複のないように1つずつ書き込む。辺を共有して隣りあうどの2マスについても書き込まれた整数の和が10以下となるように書き込む方法は何通りあるか。
    ただし、回転や裏返しにより一致する書き込み方も異なるものとして数える。
  • 答: 72通り

これはもう、7 の特殊性に気付けるかどうかが全てです。
「和が10以下」という条件から、7 に隣接できるのは 1,2,3 だけで、当然 7 は中央に置けないというだけでなく、7 に隣接できる3マスが 1,2,3 で埋まります。
後は、5,6 同士 ( 和が11 ) が隣接できないことも考慮し、7 の対面に 4 を配置して 5,6 を分離するのが必然です。

結局、

  • 中央以外で 7 を置くマス … 6通り
  • 7 に隣接する 1,2,3 の配置 … 3!通り
  • 5,6 の配置 … 2通り

ということで、これらを掛け合わせた 6\times 3!\times 2=72 が答えとなります。

第2問

  • 問題: abcd=2025 をみたす正の整数の組 (a,b,c,d) であって、ab,~bc,~cd,~da がいずれも平方数であるようなものはいくつあるか。
  • 答: 44組

2025年に関わる問題がここで来ました。しかも 45^2=2025 という特性を活かした平方数絡みの問題です。
ということで abcd=2025 が平方数なので、ab,~bc が平方数であれば同時に cd=\frac{2025}{ab},~da=\frac{2025}{bc} も平方数ということで、ab,~bc だけを考えれば十分です。

平方数かどうかについては指数で整理すればよく、2025=3^4\cdot 5^2 なので
a=3^{a_3}\cdot 5^{a_5},~b=3^{b_3}\cdot 5^{b_5},~c=3^{c_3}\cdot 5^{c_5}~(a_3,b_3,c_3,a_5,b_5,c_5\ge 0)
と置くことができ、

  • a_3+b_3,~b_3+c_3,~a_5+b_5,~b_5+c_5 がそれぞれ偶数
  • かつ a_3+b_3+c_3\le 4,~a_5+b_5+c_5\le 2

が必要十分条件となります。

いずれにせよ、それほどパターン数が多いわけではないので、特に小細工せずに列挙します。

  • (a_3,b_3,c_3)
    (0,0,0),(0,0,2),(0,0,4),(0,2,0),(0,2,2),(0,4,0),
    (1,1,1),(2,0,0),(2,0,2),(2,2,0),(4,0,0)
    … 11通り
  • (a_5,b_5,c_5)
    (0,0,0),(0,0,2),(0,2,0),(2,0,0)
    … 4通り

偶奇と和の上限から、a_3,b_3,c_3 については 3 が除外できること、a_5,b_5,c_5 については 0,2 以外が除外できることを考えると、数え上げも大変ではありません。

さて、この3の指数、5の指数の条件は独立なので、両者で任意の組を採用することができます。なので最終的なパターン数は掛け合わせて 11\times 4=44 これが答えとなります。

第3問

  • 問題: 正の整数 n に対して、図のような 3n+2 マスからなるピースを P_n とよぶ。いま、ピース P_1,~P_2,~P_4,~P_5,~P_7,~P_8 が1枚ずつある。10×10のマス目にこれら6枚をマス目にそって重なりなく置く方法は何通りあるか。
    ただし、ピースを回転させてもよい。また、マス目の回転や裏返しにより一致する置き方も異なるものとして数える。
  • 答: 512通り

なんというか、視力検査の時に見るアレみたいなピースです。とにかくマス目に大きい方から置いてみることにします。

すると、実はP_8,P_7がマス目に対してギリギリのサイズで、しかもP_8が縦方向に開いているのに対し、P_7は横に向ける必要があります。つまり、右か左かの2通りしか選択肢がありません。
ただ、P_8自体を4方向どちらを開けるかの話があるため、この2ピースで配置は 4\times 2=8 で 8通りとなっています。

…。実はそうすると、その次に小さい P_5,P_4 に対しても、P_7 の内側の 7×7 のマス目に対して全く同じことが言えます。さらにその次の P_2,P_1 ( 4×4のマス目 ) に対してもそうです。
例えば次の図は、(下開け→右開け)×3 のパターンで配置したものですが、実際に空いたマス目にピッタリと、縦横2ピース3組で収まっているのが分かると思います。

ということで、全体としては上で述べた8通りを3回選ぶパターンということで、8^3=512 で数えることができてしまいます。なんともあっけない計算ですが、これで答えです。

第4問

  • 問題: 1以上1000以下の整数であって、2,3,4,5,6 それぞれで割った余りがどの2つも異なるようなものはいくつあるか。
  • 答: 49個

続いては余りに関する問題です。対象の数を x とでも置いて、まずは、制約として影響の大きそうな偶奇での場合分けで条件を絞っていくことにします。

  • xが偶数の場合
    「余りがどの2つも異なる」ということは、一度現れた余りが使えないということに注意して、2,4,6 で割った余りを整理していきます。
    まず、偶数ということは 2で割った余りは 0、次に4で割った余りは 0 が使えないので 2、更に 6 で割った余りは 0,2 が使えないので 4 と確定します。これを ( 4,6の最小公倍数である ) 12 で割った場合を考えると余りは10、つまり x=12n+10 という形になります。
    ※6で割った余りだけだと x=12n+4 の形もありそうに見えますが、それだと4で割った余りが整合しないことに注意してください。
    ついでにこのとき x=12n+10\equiv 1~\mod~3 なので3で割った余り 1 も確定します。
     
    残りは 5 で割った余りですが、残っているのは 3 しかありません。
    すなわち、x=12n+10\equiv 3~\mod~5 で、両辺に 3 をかけて整理することで n\equiv 4~\mod~5 と分かります。まあ、mod 5 なので5通りの状況を虱潰ししても構いません。
    ともかく、n\equiv 4~\mod~5 すなわち n=5m+4 の形になるため、結局 x=60m+58 の形となることが分かります。
  • xが奇数の場合
    偶数の場合の話と同じく、2,4,6 で割った余りを整理していくと、同じような理由でそれぞれ 1,3,5 となることが分かります。12で割った余りは 11、つまり x=12n+11 です。
    ついでに x=12n+11\equiv 2~\mod 3 なので3で割った余り 2 も確定します。
     
    ところが今度、5 で割った余りとして、候補が 0,4 の2通りあります。なので更に場合分けします。
    • 5で割った余り0の場合
      x=12n+11\equiv 0~\mod~5 の両辺に3をかけて整理して、n\equiv 2~\mod~5 と分かります。すなわち n=5m+2 の形になるため、結局 x=60m+35 です。
    • 5で割った余り4の場合
      x=12n+11\equiv 4~\mod~5 の両辺に3をかけて整理して、n\equiv 4~\mod~5 と分かります。すなわち n=5m+4 の形になるため、結局 x=60m+59 です。

以上により、x=60m+58,~60m+35,~60m+59 と3系統あることが分かりました。該当する x の範囲は 1~1000 の間と指定がありますから数えてみると、

  • x=60m+58 の場合
    58,~118,~178,\cdots,~958 の16個 ( (958-58)\div 60+1=16 )
  • x=60m+35 の場合
    35,~95,~155,\cdots,~995 の17個 ( (995-35)\div 60+1=17 )
  • x=60m+59 の場合
    59,~119,~179,\cdots,~959 の16個 ( (959-59)\div 60+1=16 )

それぞれの系統の個数を合計して 16+17+16=49個が答えとなります。

第5問

  • 問題: 円に内接する四角形ABCDが半径6の円に外接している。また、半直線ABと半直線DCが点Pで交わり、半直線ADと半直線BCが点Qで交わっている。三角形PBC,~QCDの内接円の半径がそれぞれ5,3であるとき、\frac{BC}{CD}の値を求めよ。
    ただし、XYで線分XYの長さを表すものとする。
  • 答え: \frac{15}{11}

今回3問ある内の図形問題の第一弾です。まだ問題に図を描いていてくれるのが有難いところです。
そしていたるところに円があるため、円絡みの性質をどう使うかが焦点と言えます。

まず、一般的な話として四角形に外接する円がある場合、次の図のような三角形の相似が現れます。

ということで問題を眺めてみると、ちょうど同じような相似があることが分かります。

しかも内接円付きなので大きさの比も分かると言うおまけ付き。
ここから \triangle QCD\sim\triangle QAB 相似比 3:6=1:2
同じように (抽出して図示はしませんが) \triangle PCB\sim\triangle PAD 相似比 5:6

ここまでの話で、適当な x,y を持ってきて CD=x,~AB=2x,~CB=5y,~AD=6y と表すことができると分かります。

そうすると残ったのは四角形とその内接円です。なので、向かい合う辺同士の長さの合計が等しく CD+AB=CB+AD すなわち 3x=11y です。これは、次の図のように内接円によって4組の合同な直角三角形ができることから、同じ長さの線分が上下・左右に対で現れることで分かる性質ですね。

後は大詰めです。最終的に必要なのは \frac{BC}{CD}=\frac{5y}{x} でした。先程の 3x=11y からこれは \frac{15}{11} と計算できます。
円絡みの性質を適切に使うことができれば瞬殺出来る問題であり、見抜けるとなかなか気持ちいいところかと思います。

第6問

  • 問題: 正の整数からなる2つの数列 a_1,a_2,\dotsb_1,b_2,\dots があり、任意の正の整数 n について以下をみたしている。

    • (a_{n+1},b_{n+1})=(\frac{a_n}{2},b_n+\frac{a_n}{2}) または (a_{n+1},b_{n+1})=(\frac{a_n}{2},b_n+\frac{a_n}{2}) が成立する。

    このとき、(a_1,b_1)としてありうる40以下の正の整数の組はいくつあるか。

  • 答え: 1064組

それでは前半最後の問題です。
しかしまず、問題の意図を掴む必要があります。「(a_1,b_1)としてありうる」をどう解釈するかというところです。ただ、これは次のような意味と捉えることができます。

  • (a_1,b_1) を用意したときに、(a_{n+1},b_{n+1})=(\frac{a_n}{2},b_n+\frac{a_n}{2}) または (a_{n+1},b_{n+1})=(\frac{a_n}{2},b_n+\frac{a_n}{2}) という数列の次の項を作る操作を繰り返して、正の整数列 {a_n},~{b_n} をどこまでも構成することができる。

となると制約となるのは「正の」と「整数」です。が、数列の次の項を作る操作で、大きさが小さくなるのは a_{n+1}=\frac{a_{n}}{2},~b_{n+1}=\frac{b_{n}}{2} のように値を半減させるところだけなので「正の」の部分が崩れることは考えなくて良いところです。
そうすると制約として考えるのは「整数」です。これは2で割るという操作を行う関係で「a_n,b_n が揃って奇数になると破綻、どちらかでも偶数になっていれば破綻しない」という単純な話に落ち着きます。

とは言え、ここからどう考えるかですが、先に結論を言ってしまうと「a_1,b_1 を素因数分解した時の 2 の指数が同じなら破綻する、異なるなら破綻しない」で済みます。
なぜそんなことが分かるのか、というのは破綻が発生する「a_n,b_n が共に奇数となる」という状況から前の項を遡って調べていったからです。共に奇数の前は共に奇数×2、その前は共に奇数×4、…となることが分かるため先ほどのような話になるわけです。

念のためウラをとっておきます。

  • ある a_n,b_n で2の指数が同じになる場合
    a_n=a\cdot 2^x,~b_n=b\cdot 2^x ( ただしa,bは正の奇数、x\ge 0 ) と置くことができます。
    ここで x=0 だと既に共に奇数ということで破綻しているので、x\ge 1 の時を考えますが、次の項を作る操作として

    • (a_{n+1},b_{n+1})=(\frac{a_n}{2},b_n+\frac{a_n}{2}) を選択
      a_{n+1}=a\cdot 2^{x-1},~b_{n+1}=(2b+a)\cdot 2^{x-1} ということで、a,~2b+a いずれも奇数なので、a_{n+1},b_{n+1} の2の指数は x-1 と1少ない状態で揃います。
    • (a_{n+1},b_{n+1})=(\frac{a_n}{2},b_n+\frac{a_n}{2}) を選択
      a_{n+1}=(2a+b)\cdot 2^{x-1},~b_{n+1}=b\cdot 2^{x-1} となり、直前と同じ話でやはり 2の指数が x-1 と1少ない状態で揃います。

    つまり、次の項を作る度に2の指数が揃ったまま1ずつ減っていくことが避けられず、いつか揃って奇数ができて破綻となります。

  • ある a_n,b_n で2の指数が異なる場合
    a_n=a\cdot 2^{x+d},~b_n=b\cdot 2^x ( ただしa,bは正の奇数、x\ge 0,~d\ge 1 ) として、a_n の2の指数の方が大きい場合で考えてみます。
    b_n の2の指数の方が大きくても逆にして考えれば同じ話になるため、こちらで代表して考えれば十分です。
    この時、次の項を作る操作は (a_{n+1},b_{n+1})=(\frac{a_n}{2},b_n+\frac{a_n}{2})a_n を半減させる方を選択します。
    そうすると、a_{n+1}=a\cdot 2^{x+(d-1)},~b_{n+1}=(a\cdot 2^{d-1}+b)\cdot 2^x ですが、d によって状況が2つに分かれます。

    • d\gt 1 の場合
      a_{n+1}の2の指数は x+(d-1) で1減っていますが依然としてxよりは大きく、一方で (a\cdot 2^{d-1}+b) の部分が奇数であることから b_{n+1} の2の指数はx のままです。
      そのため a_{n+1},b_{n+1} とも2の指数は異なる状態が維持されます。
    • d=1 の場合
      a_{n+1}=a\cdot 2^x,~b_{n+1}=(a+b)\cdot 2^x となり a_{n+1} の2の指数はxですが、(a+b) の部分が偶数となるため b_{n+1} の2の指数が x より大きくなります。
      ということで、大きさが逆転する形ながら、やはり a_{n+1},b_{n+1} とも2の指数は異なる状態が維持されます。

    結局のところ、2の指数が大きい方を半減させる操作を選択し続ければ、2の指数が異なる状態はずっと維持される、つまり破綻はずっと避けられるということです。

では問題に戻ります。求めるのは 1~40 の範囲で2の指数が揃ってない2数 (a_1,b_1) の組の数ということになります。
なので、全体から「揃ってる」方の数を引くことで計算することができます。

1~40の数を2の指数で分類すると、
2の指数0 … 20個、2の指数1 … 10個、2の指数2 … 5個、2の指数3 … 3個、2の指数4 … 1個、2の指数5 … 1個
と6種類になるため、最終的に 40^2-(20^2+10^2+5^2+3^2+1^2+1^2)=1064 で答えが求まります。

おわりに

ということで、比較的難易度が低めの前半、一気に半分を解説しました。ここらへんはポイントに気付けばすぐに答えに辿り着くことができて爽快な気分を味わえるところでしょうか。
後半については、より緻密さが要求されることになります。4問分と2問分に分けて解説していきます。

Discussion

あすちあすち

解説ありがとうございます。非常に参考になりました。
細かいことで申し訳ないのですが、問8のa2=2025の時はa3=3038だと7076-2025=4051で条件的に不適なので、3037、3543、3796・・・・となると思うのですが、どうでしょうか?
追記
頭がこんがらがって間違えただけでした。気にしないでください。