巨大企業でDX革新を起こすということ
メリークリスマス。今年もアドベントカレンダーの最終日を3年連続で投稿しています。
イオン株式会社CTO / イオンスマートテクノロジーCTOのやまけん( 山﨑賢 )です。
この記事は、AEON Advent Calendar 2023 最終日の記事です。
過去の私のAdvent Caledar投稿記事はこちら。
さて。本編です。
巨大企業の苦しみ
JTC
ここ数年、特にネット界隈ではJTC
という言葉が良く使われます。
Japanese Traditional Company の頭文字の略語であり、ネガティブを含んだ用語として良く使われます。
「え、イオンってJTCでしょ?」
「JTCなんて絶対いきたくねー」
的なね。
そういう意味合いで言うと、イオングループはまさにJTCのど真ん中でしょう。
創業1758年、従業員数57万人。
レガシー
同じような意味合いで、レガシー企業って言われ方もあります。
レガシーって直訳すると「遺産」なんですが、この場合もやっぱりネガティブ含みで、古臭い企業
っていう意味合いが強いですよね。
一方で特にエンジニア/IT界隈だと対義語として以下があります。
モダン企業
ベンチャー企業
スタートアップ
テック企業
現時点でも売り手市場であるエンジニア業界は、どうしてもモダンでベンチャーっぽい先進的なナニカ
が採用力が強く、レガシーでJTCで大企業なウチラ
は敬遠されがちです。
ポジティブに変換する
まぁ私はイオンのCTOなんで、そんなネガティブワードに踊らされません。
ベンチャーも経験したし、ゼロイチの技術選定からサービス立ち上げも経験したし、多くの古臭い企業も見てきました。そんな私だからこその大企業の捉え方は以下です。
Japanese Traditional Company ▶ 成功企業
伝統的であるっていうのは、つまり事業が継続しているってこと。
継続しているってことは、つまり様々な歴史的なシーンにおいて顧客ニーズを捉えて変化しながら今に至っているっていうこと。
意志を持った創業者が事業を立ち上げ、数度の世代交代を乗り越えて現代に至る企業ってのは、企業に文化自体が定着して存在してるってことです。
ベンチャーは創業者自身が文化
だったりするので、好き嫌いがはっきりする所ですが、伝統的な企業は創業者の想いを大事にしつつ、それを企業文化まで昇格させ想いを引き継いでいるということです。
まさにこれ。これを継承し続けて現代に至るのがJTC
。 あれ? 結構素敵じゃない?
レガシー企業 ▶ 大量の資産ホルダー企業
レガシーって「遺産」ですよね。
つまり、内部に多くの知見や資産や人
がいて、外部に多くの顧客や積み上げた価値
がある。
ベンチャーは全てゼロからです。ゼロからスタートするから楽しいってのは当然ありますが、ゼロから小さい規模で始めるスタートアップにおいて、最新の技術が採用されるなんて当たり前の話です。
スタートアップ/ベンチャーがモダン技術使ってる。という理由で大企業を「レガシー/JTC」と笑うのは大きく矛盾しています。
だって、スタートアップ/ベンチャー自体も拡大と継続を目指しているわけで、その目標は「レガシー/JTC」そのものです。
技術負債も語ってみる
技術負債をどう解消するかというテーマは、私よりもずっとずっと良い記事が多く存在するので、そちらに譲ります。
(参考)技術負債についてのmtx2sさんの超良記事
技術負債ってのも、「負債
」っていうと借金的なネガティブなものに捉えられますが、どうして私達が負債と呼んでいるかっていうと、それは解消(返済)しないとキツイ
からですよね。
ソフトウェアやインフラなど、技術負債になりがちなものは利用されていなければ、いつでも捨てることが出来ます。
もしくは、利用者が少ない場合に作り変えることは容易です。
つまり技術負債
という言葉で頭を悩めている、その負債の量は
- 資産が膨大である
- 実施するときの影響が大きい
- 初期リリース後に発生した追加開発の量
などに依存します。
巨大なプログラムで多くの顧客が使っている
とか、重要な処理で止めることが出来ない
とか。そういう状態。
大企業には技術負債が多く存在していると思います。仕組みとして解消することをサイクルに入れたとしても少なからず存在するでしょう。
それは大企業で伝統的に価値を提供し続けている企業だからこその結果です。
ベンチャーに技術負債が少ないなんて、当たり前過ぎて比較にもなりません。
これを理由にJTCでレガシーなとこは技術負債が多いんだぜ。ひどいよな」 風潮は真実から目を背けていると思います。
どんなに技術負債があっても、価値を生み出さないソフトウェアよりも、価値を生み出しているソフトウェアの方がずっと偉い。
エンジニアとして向き合うべき「価値」
「モダンな技術を学びたい。」
これについて全力で同意します。
いつだって手段は多く取れる状態が良いし、多くの場合において、最新のほうが古いものよりも優れています。
一方でエンジニアの価値は「新しい技術を知っている」
では決してありません。それは間接的な価値であって直接的な価値ではない。
エンジニアの直接的な価値は、
- 課題解決の質と
- その提供先の量
です。つまり手法でなく結果。
エンジニアリングでない手段で課題解決出来るテーマなら、エンジニアの専門性は必要ないですし、価値の提供先の量が例えば人数で1名だとしたら、それはアウトカムとしては非常に小さい状態です。
そして、これからのエンジニアの「価値」
現状エンジニアは超売り手市場です。
特に若い世代でどんどん新しい技術を学んだエンジニアが増えていきます。これは宿命です。
新しい技術の方が簡単だし楽しいし。
その後、エンジニアの市場はどうなるでしょうか?
ここからは未来予想です。
巨大企業でDX革新を起こすということ
だからこそ、私はそこに立ち向かいます。その為に仲間も集めます。
モダンではないし、難易度も高いし、負債も多くあるかもしれない。 だが、それに立ち向かった結果のアウトカムは、日本全体の小売業界/買い物市場、そして日本の生活洋式を、変貌させるポテンシャルがあります。
同じ苦しみの同士に送る言葉
そして、こういったレガシーでJTCな大企業でDX革新を起こすコツを、同じような困難に立ち向かっている同士に捧げます。
2023年4月にイオンに入って、この巨大さに一時期途方に暮れました。
が、現状は多くの仲間を巻き込みつつ、外部へ力強く発信し、エンジニアドリブンな組織に組み換え、内部改革も推進しています。
これらは、社内で多くの承認や調整をするよりも、結果で理解を得る。という事を重視した成果です。
このアドベントカレンダー自体も、おそらく1年前のイオンでは想像のつかない事態ですし、これこそが成果そのものです。
最後に。最近の活動
アレコレ承認取らずに、楽しく仲間を集めてDevRel作ったり発信したりした結果、すごい事になっています。
エンジニア採用サイト立ち上げました
めっちゃ外部発信しています
イオン変わったね。という言葉たくさんいただきます。
And, We're hiring.
イオンではエンジニア全方位で採用を強化しています。ぜひカジュアル面談からお願いしますmm
Discussion
良いですね。
一方でここからが本番。やり方を変えたり、働く環境を変えたりすること。それと、結果が変わることには雲泥の差がある。結果とは、イオンの理念である、「お客さま原点」の結果です。
おそらく、「エンジニアが参画できる舞台が出来ました」。ここまでは結構色々な企業が挑戦してるように思います。しかし、それは手段であって目的ではない。1年後、ここからちゃんと社会変革に繋がる状態まで持っていかないとですね。ネクストは、事業会社としてここをリードします。
来年はもっと絡ませてください。
引き続きご協力をお願いします。
たるいしさん ありがとうございます!
私の発信は多くは自分自身への不退転の覚悟の表明なんですw
臆病者なんで先に意思表明して退路を絶ってます。 今後ともよろしくお願いします〜!