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(登壇レポート) CoLab Conf【U35限定テックカンファレンス】 2025/12/13

に公開

はじめに

こちらのイベントに、機会あって登壇してきました。
https://supporterz-seminar.connpass.com/event/371963/

当初は参加レポートのつもりでしたが、実際に登壇し参加者の方々と会話する中で、考えが変わりました。今回のイベントのテーマである「AI」と「キャリア」について、自分が伝えたメッセージと登壇体験は、切り離さずに書いた方がよいと感じたのです。

このブログでは、登壇者としての体験を通して感じたこと、そして超大規模開発の現場でAIをどう使っているのか、AI時代にエンジニアがどう向き合えばよいのか、という3つの視点から書いています。

これから登壇を考えている人や、AIとどう付き合っていくべきか悩んでいるエンジニアの方にとって、何かしらのヒントになれば嬉しいです。

登壇準備を通して感じたこと

登壇準備に使える時間は、正直それほど多くありませんでした。日々の業務をこなしながら、限られた時間をやりくりしてスライドを作る必要があり、「十分に準備できているのか」という不安は常にありました。

しかし、資料準備のための整理の過程で周囲の人からフィードバックをもらう機会があり、「その考え方でいいと思う」「それは価値がある視点だ」といった反応をもらえたことで、自分の考えの背中を押してもらえた感覚がありました。結果として、登壇準備だけでなく、普段の業務に対しても少し前向きに向き合えるようになった気がしています。

現場でバリバリと働いている人ほど、「登壇はハードルが高い」と感じがちかもしれません。しかし、もし似たような機会を得られたなら、完璧を目指しすぎずに一度挑戦してみる価値はあると思います。特に、聴衆の顔が見えるタイプのイベントであれば、登壇者側が想像しているほど一方的な緊張状態にはならず、結果的に心理的なハードルが下がると感じました。

当日の空気感と登壇中の体験

今回のイベントは、オンラインではなく現地に集まっての開催でした。イベントの雰囲気はこちらの記事を参考にしてください。
https://zenn.dev/acntechjp/articles/1851c5897a5171

自分の登壇順は比較的最後の方だったので、それまでの間はスポンサーブースに立ち、多くの参加者の方と直接会話する機会を持つことができました。

そこで印象的だったのは、参加者の皆さんが抱えている課題や疑問、日々感じていることが、自分が普段の業務で感じている感覚ととても近いという点でした。「同じようなところで悩んでいる人がこんなにいるんだ」と実感できたことで、登壇に向けて自分が感じていたプレッシャーは、思っていた以上に軽くなっていったように思います。

また、実際に登壇して客席を見回したとき、ブースに立ち寄ってくれた方々の顔が見えたのも、強く印象に残っています。「知らない誰か」に向かって話すのではなく、「さっきまで会話していた人たち」に向けて話している、という感覚があり、非常に安心感がありました。

登壇してみて改めて感じたのは、登壇者からは想像以上に聴衆の皆さんの表情がよく見えるということです。大きくうなずいてもらえたり、反応が返ってきたりすると、それだけで登壇者の緊張は和らぎます。良い講演は、登壇者だけで完結するものではなく、聴衆の皆さんとの間で一緒に作られていくものだと感じました。少しでも反応を返してもらえると、登壇者としてはとても心強い、ということを今回身をもって体験しました。

改めて、こうして同じ場所に集まって行われるイベントはいいものだな、と思いました。

これから登壇に挑戦する人へ

今回の登壇を通して、「これから登壇に挑戦しようとしている人」にぜひ伝えたいと感じたことがあります。

「自分は言語化が苦手だ」「スライド作成が得意ではない」と感じている人も多いと思います。ですが、今はAIがあります。構成を一緒に考えてもらったり、文章を整えてもらったり、表現の壁打ち相手になってもらったりと、登壇準備の多くの部分をAIに手伝ってもらうことができます。

AIをうまく使えるようになることで、これまで「自分には無理だ」と感じていた挑戦のハードルは、確実に下がっていきます。登壇もその一つですし、登壇をきっかけに、今までの自分では踏み出せなかったキャリアに挑戦できる可能性も広がると思います。

今回の登壇を通して改めて感じたのは、自分の考えを多くの人と共有することの楽しさと、それが結果的に自分自身にとっても大きなメリットになる、ということでした。アウトプットは、誰かのためだけでなく、自分のためにもなるのだと実感しました。

もし登壇の機会が目の前にあるなら、完璧を目指しすぎず、AIの力も借りながら、一度挑戦してみてほしいです。その経験は、きっと登壇当日だけで終わらず、その先のキャリアにもつながっていくはずです。

今回の登壇で伝えたかったこと

ここまで登壇者としての体験を書いてきましたが、最後に今回の登壇で自分が何を伝えたかったのかについても触れておきたいと思います。

私たちの組織には多くのエンジニアが在籍しており、超大規模かつミッションクリティカルなシステム開発プロジェクトにも取り組んでいます。そうした現場においても、私たちはAIの活用をかなり積極的に進めています。そして、大規模案件は「AIを使えばすべてうまくいく」という世界ではありませんでした。

大規模案件では、課題の数も関係者も膨大になります。AIにそのまま投げると、確かに大量のアウトプットは返ってきますが、その量と粒度を人間側が処理しきれないという新しい問題に直面しました。また、スケールの大きさゆえに、AIでさえも追随しきれない場面も多くありました。

そこで私たちが取ったアプローチは、一見すると地味なものです。

  • 課題を人間にも扱えるサイズまで細かく分解する
  • その単位ごとにAIを活用する
  • 最終的な判断と責任は、これまで通り人間が持つ

しかし、この「地味さ」こそが、実は最も重要なポイントでした。人間がこれまで大規模案件を回してきたやり方を捨てずに、そこにAIを組み込むというアプローチ。これが、再現性が高く、持続可能で、そして何より現場で実際に機能する方法だったのです。

私たちは「大規模なものを大規模なまま扱う術」をすでに持っています。AIを、その術を置き換える存在としてではなく、そのスピードを劇的に上げたり、その術を使える人を増やすための道具として扱いました。この考え方があったからこそ、大規模開発において最も重要な以下のポイントを損なうことなく、AIの恩恵を受けることができたと感じています。

  • 人間がAIのアウトプットを評価できる
  • 何をやっているかを説明できる
  • その成果物に責任を持てる

今回の登壇内容を一言でまとめると、「AIを使いこなせるエンジニアが次の時代を作る」 というメッセージになります。エンジニアは無理に変わる必要はありません。今までのやり方を捨てる必要もありません。ただし、AIという新しいツールを使って、どう効率化し、どう高度化するかは真剣に考える必要があります。AIがエンジニアの仕事を奪うのではなく、AIを使いこなせるエンジニアが次の時代を作っていく。そういう世界に、私たちはもう足を踏み入れているのだと思います。

Accenture Japan (有志)

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