共助を可視化して、市民活動のリソースを拡大したい
父の影響で幼少期からボランティアに携わり、18歳からNPOで活動してきたことで、ソーシャルセクターの酸いも甘いも少しは経験させていただいた私が業界への恩返しを構想している話です。
2023年2月時点では、ソフトウェア開発を本業にしながら
- ウクライナ避難民の支援:3年前にウクライナ出身の方とシェアハウスしていた経緯から活動を始め、3世帯5名の来日・生活・就労・離日の支援を実施しています。学生時代の同期や後輩達が手伝ってくれているお陰で、最低限の生活基盤を整備できました。
- 野外・社会教育系NPOのDXを推進する:「大学生が推進する野外活動による子どもを中心とした社会教育」に魅了され、週末ボランティアで参加しています。
もやらせていただいています。
そして、ソーシャルセクターの方と接するなかで、彼らの他人に献身する姿勢に憧れながら「共助を加速的に発展するソフトウェアの可能性」を模索し続けた回顧録です。
最初は「拡張性の余地を残しながら、ちょっとしたデジタル化をする」を繰り返しており、代表例がグーグルスプレッドシートで作成した交通費精算表です。
「誰がいつ来たか」を選ぶだけで、月別・人別の精算表が完成するシート
いつか使うかもしれないと思い、交通費精算表を作る過程で活動履歴が残るようにしました。この不可欠な業務から生まれるデータに気付けたことが追々の構想に響いてきます。
さまざまな、ちょっとしたデジタル化を請け負い続けて1年が過ぎた頃に、ソーシャルセクターの発展手法に対する仮説がまとまります。
ボランティアの善意による活動量と発信量の不均衡さを解消(=共助の可視化)して、共助を循環させることを目指しています。営利企業と比べてコア機能の縮小を迫られ、数字を扱うことが困難な市民団体では、剛ではなく柔の(アメーバのような)ソリューションが必要ではないか、と思っています。「なぜボランティアでクチコミが広がらないのか」をKey Questionに検討・検証を重ね、主要SNSとAPI連携の元、所属している市民活動のソーシャルグラフ生成をエントリーにリリースする予定です。
ソーシャルセクターの活動量が発信量を遥かに上回っていることを解決したい
このように綴った2022年の振り返りを前提に、先程の活動履歴を活かした共助の可視化から始まる好循環を実現するソフトウェアを模索することになります。
また、現場では周年式典やクラウドファンディングなどのリソースを調達したいタイミングで、ボランティアの勢いを可視化するユースケースがあることが判明します。頻度は、月次や四半期です。
過去2年のボランティアの活動者数を振り返ったもの
共助の可視化に使えるデータは、大きく3つの選択肢があります。多分これだけです
- ⑴ メンバーシップデータ:「どこでだれが活動しているか」の所属を指します。名刺に近いです。
- ⑵ ロケーションデータ:「いつ(指定の所に)来たか」を指します。GPSを使うと利便性が爆増です、リモート会議出席もあえてロケーションデータに位置付けます。
- ⑶ タスクデータ:「何をしたか」を指します。事前・事後を問わず、業務管理が前提になります。
多くの市民団体に追加業務を担う余裕はないので、不可欠な業務から生まれるデータを活用するか、団体の管轄外でデータを生み出す必要性があります。
そして、すべてのデータをフル活用し、後者に重心を置いて作ってみたデモがこちらです。理想のイメージは深まりましたが、技術的な障壁があり、価値の検証には全く役立ちませんでした。
引用:身近な人のやさしさを紹介できる日本初のボランティアSNS「civicship」
STUDIOで制作したので、活動を記録するのに管理画面のログインが必要だったことが主要因です。元から分かっていたことだったんですが「イメージしているものを形にしたい」というエゴが凄く強いのがボトルネックです。エゴを捨てろというフィードバックは腐るほど聞いてきました
捉えていたインサイトで「自分の善行を周知したくない」があったんですが、それに「自分の活動履歴を発信できない」という制約を設けることで言い訳を作り、共助の可視化を加速させようという試みが最初のデモでした。これは「良い人アピールしたくないけど、実は良い人アピールしたい」のニーズを上手く扱えていなかったように思えます。ユースケースはAO入試や就活など。
これには、下記のように共助の可視化を段階化する必要性がありました。
- 市民団体内で、活動履歴を可視化する。
- 団体外に、活動履歴を可視化する。
良い人アピールして下手な反感を買う可能性のある既存SNSではパブリックなボランティアレコードは難しかったです。分かる人に分かってもらえばいいだけなんですから。
ちなみに、1段階目のイメージはCollaのような社内コミュニケーションを活性化するものです
また、このボランティアレコードを換金化してプロダクトを持続可能にするために、「民を中心とした産学官連携推進」に貢献するカタチで、クライアントに求人ターゲットとしてのデータベースを構築することが必要ではないかと仮説を立てています。
社会課題解決がホットワードになっている近代で、社会課題解決の専門家と繋がるこのプロダクトは間違いなくコレクティブインパクトへの試金石になると信じています。
引用:世界的方法論のセオリー・オブ・チェンジを日本に導入したい!