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エンジニアとビジネスと、の手前の話 - あなたの給与はどこから?

2023/03/11に公開

まえおき(本題と関係ありません)

最近、エンジニアとビジネスという謎の話題が流行っています。
エンジニアとビジネスということについては、私は次のように思っています。

  • 仕事には役割分担があるので、エンジニアの人は必ずしも利益最適化を考えなくてもよい
    • 下手の考え休むに似たり、餅は餅屋
    • ただし、自分で考えないとすればそれは委任であって、結論に従う義務がある
    • もし自分で考えたとしても、チームや会社の結論は個人の意見と関係なく是とすべき
      • 法律や道徳的信念に反する場合は別
    • また、ゼロベースで考えることはしなくても、出た結論について誰かがエンジニアリング観点で再設計・最適化することは実装上必要
  • ただし、私個人に関しては、プログラムを書くにあたって利益構造を理解しないという事は考えられない
    • 例えば、サービスとしてある機能を作るべきか否かの判断の大きな部分は本質的な利益構造に基づく
      • 技術的負債を返済すべきか否かも、長期的な利益最適化による判断である
        • ドラクエで言えば、バイキルトやスカラやフバーハをどのタイミングで唱えるかみたいな話
          • メラミで倒せる敵にバイキルトを唱える必要はないが、ボス戦では重要
      • 枝葉末節の機能追加ではない本質を追求しようとすると、必然的に自分たちの生み出す価値がなにかを問う必要があり、それは利益構造を問うこととニアリーイコール
    • メンバー全員にそのような利益構造への考えを求める訳ではない、役割に準じた考えがあればOK
  • 組織構造によって、例えば役割分担があまり進んでいなかったり、短期的な売上や利益が必要となる組織構造の場合には、エンジニアも積極的に利益最適化や技術の効果を考える必要がある
    • 事業会社、特にベンチャーの事業会社においては、事業の収支に直結しない研究開発は難しく、比較的短期のマネタイズが前提になる
      • そのような意味で、研究開発的な業務であっても利益構造や収支について見通しを立てて説明する能力が求められる

ところで、それと似て非なるもっと手前の話として、「自分自身の給与はどこからやってくるのか?」という根本的な事について、個人の考えをまとめておいた方がよいかなと思いました。
そこで、この記事では 上記のエンジニアとビジネスの話とは関係なく もっと手前の話をします。(まえおき長すぎ)

本題

給与をどのように解釈するか

みなさんは、自分の給与が適正な金額か否か、と考えたことはあるでしょうか。
私はあります。
「適正」という事にもいろいろな定義がありますよね。例えば、最低賃金を満たしているかどうかとか、サービス残業を含まないかどうかとか、世間的な相場と外れているかどうかとか。
私が個人として特に気になった「適正」は、「ある会社において、その会社の中での利益配分が適切に行われているか」ということでした。
元々は、自分の給与がだいぶ安いのでは?と思った事がきっかけでしたが、とはいえ 自分たちが稼いでいる以上に会社から給与を出すことはできません。売上と利益から計算される可能な給与と比較をすると、単に稼ぎが悪いから給与が上がらない状態なのか、誰かがズルをしているのかという事がわかります。
そうやって考えた結果、私がこれまで働いた環境では誰かがズルをしていたという事はなく、単純に出資も含む稼ぎが給与と"連動"していて、その意味では適正でした。
(もちろん、直接的に毎年個人の給与が業績と直接連動しているというような事ではなくて、ざっくり計算で極端な不正は無いということでした。事業等としてズルではない無駄な出費みたいなものはありましたが。)

そのように考える習慣ができた私は、「自分の給与がどこからやってきているのか」ということを気にしています。
すごくざっくり言えば、私は自分の給与を自分が提供した価値に対する対価であると捉えており、その自分の給与の原資を探ることは、自分の行動に付随して本質的な価値が生まれているか否かに直結していると思うからです。
もちろん、事業の内容によっては、給料が上がらない・儲からないが社会的に欠くことのできない大事な事業というものもあると思います。そのような事業について、額によって直ちに貢献を否定するという事は意図しておらず、もし額が少ないとしたらそれを是正するにはどうすればよいかを考えるという事も含めて、まずは給与の原資が何なのかを探る、という説明の方が適切かもしれません。研究開発の事業についても類似のことは言えると思います。極端な話では100年後に役立つ知識を調べることは、いま直接的に評価することができないので、この世のあらゆる事業について、その原資が本質的な価値であるとは到底言えません。それでも、ビジネスとして成立させることや自分の取り分を増やすことを考えるならば、その原資に対する理解は重要です。

※なお、給与については、他にも「提供した価値などとは関係なく、知識や技術を伴う人物として存在しているだけで保障されるもの」「本質的な価値などと一切関係なく、商行為的に労働力を"トレード"して得られる報酬」といった考え方があると思います。人間としての生活を保障するためのものとしては前者ですし、商行為の本質、より安い値段で仕入れて高い値段で売るという意味では後者であると思います。ただ、そうした様々な考え方もあることを認めつつ、私は給与を 自分が提供した価値に対する"等価な"対価 であると思っています。これは個人の考え方です。私は儲けたいのではなくて価値を生み出したい(その結果儲かればよし)と思っているので、そういう考え方になったのかなと思います。

給与の原資

給与の原資は、その会社の売上と、資産や配当金・運用益などです。
これらが、実際にどのようにして積み上げられているのか?
売上以外のものについては、広義では何らかの価値を産出している場合もありますが(例えば、新しい企業に出資したことによる運用益は、その新しい企業が生み出す価値を支えた結果として得られるものと解釈できます)、それを自分自身が事業担当として行っていない限り、自分たち自身の手で作った価値ではない と私は思います。
大きな金額の投資を受けたり、大きなお金を動かせたりすることは、相応の信頼が必要でそれ自体すごい事だと思いますが、それが給与の原資であるとしたら、まだ価値を生み出している状態の前にあると思います。

そのような意味で私は売上を重視していて、また自分の給与がどのように生み出されているのか、という事が自然と気になります。売上がどのように立って、どのようにサービス提供されて、取引が継続していくのか。
最初の会社にいたとき、自分が携わる案件の商談をしたうえで見積書から請求書まで作って、その後は保守を続けたりしていた事もあって、その後環境が変わってからも、それに近い解像度で売上が立つメカニズムを把握しようとしてきました。自分自身で直接売上を立てるという事ではなくて、チーム・会社として売上がどう立つかを仕組みとして・概念的に把握するという意味です。ここでいう「売上が立つ」は単なる取引の形式ではなくて、本当にサービス提供がどう行われて、顧客が何に対して価値を感じて支払いをするのか、という事の一連を指します。

体験談 - お金に重いも軽いもないが

給与の原資に対して、感謝したいという体験談です。これは単純に私の経験と考えですが。

私はかつて会社を作り、代表ではない取締役になり、そこで会社として数千万のお金を使いました。
そのほとんどが役員報酬とインターン等の給与として消えましたが、私はその過程で借金をしませんでした。連帯保証などもなく、事実としては法的に何かの義務を負うような事もなく、特に問題も起こっていません。
その数千万は、今の会社からの出資によって相殺されました。
外部からの出資のない、当時は社員数10人ぐらいの会社で、その金を出資費用として用意するのは決して簡単なことではありません。すべてが売上の積立によって生まれたもので、私のチームの事業でいえば、イベント現場で日々働いて積み重ねた売上です。そうやって積み重ねた、還元しようと思えば社員への還元もできる大きな金を使って、私達が立ち上げた事業に投資をしてくれたのが今の会社でした。この事実はいろんな解釈の仕方ができて、事実としてはただの一トレードかもしれませんが、私はその気持を大切にしたいと思っています。我々の当時の給与の原資は、完全に日々の業務で汗を流して作られた売上の蓄積によるもので、それによって生き延びてきました。

今でこそ、出資をはるかに超える利益をチーム・プロダクトで上げられるようになっていますが、そうやって支えられて今がある、ということを忘れずに働きたいなあと思っています。

ビジネスがわからなくても、関わる人の気持ちを大切にしたい

「ビジネス」と給与の原資への感謝について。

私はビジネスのことを考えているつもりですが、しかし別の記事で書いたように

「電子招待券の受付システム」で電子招待券を販売するのか、「電子招待券の販売・受付システム」なのか

2019年2月、我々のサービスは「チケットのトータルソリューション」という触れ込みで展示会に出展したのですが、その時にもこの感覚が全然ピンと来ていませんでした。
これは「売り方が全然分かっていない」という事でもあるのですが、それ以上に「自分たちのシステムの本質的な価値が理解できていない」という事です。

といった、ごく簡単なレベルで理解できていない事が沢山ありました。
なので、(ビジネスのことを考えようとしていても)「私はビジネスのことをわかっている」などとは到底言えないのですが、しかし少なくとも、ビジネスに関わる人の気持ちは大切にしたいなと思っています。ここでいうビジネスには、例えば会社を守るためにする厳しい経営判断も含まれます。個人の意見と違うとしても、よほどの悪人でない限りは意図的に悪いことをしようというつもりはないはずで、少なくとも会社や事業をうまく進めたいと思っての判断であるという気持ちは共有したいなと思います。

あなたの給与はどこから?
私は売上から。

おまけ:

https://zenn.dev/339/articles/ecc4986473ca88

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