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VideoCom Bridge for Zoom はいいぞ

2023/12/05に公開

自己紹介あるいは前置き

@ikkou です。お仕事では XR 屋や DevRel 屋の他、社内外における配信屋をやっています。

2020 年のコロナ禍を契機として、あらゆる物事のオンライン化が加速しました。いわゆる勉強会イベントもそのひとつで、会場に集まる形の、今で言う「オフライン開催」から、YouTube Live や Zoom を利用した「オンライン開催」への切り替えを余儀なくされました。もちろん、この「オンライン開催」の波に乗らず、あるいは乗れずに休止したり終了してしまったイベントもあります。

そして 2023 年 5 月の「5類感染症」への移行を契機に、少しずつ「オフライン開催」が復活してきました。「オフライン開催」が以前同様の雰囲気に戻ったとしても、「オンライン開催」の需要はありますし、この 4 年間の間に多くの人が身につけた「オンライン開催」の知見やスキルは今後も役に立つでしょう。

「オンライン開催」では Zoom を用いることがよくあります。本記事ではこの Zoom を用いた配信において、とても便利なツールである『VideoCom Bridge for Zoom』を紹介します。

VideoCom Bridge for Zoom とは?

VideoCom Bridge for Zoom は Zoom のカメラ映像や画面共有をひとつひとつ NDI として出力できる有償のソフトウェア です。前身として Gumroad で販売されていた VideoCom Bridge for Zoom がありますが、現在は VideoCom Bridge for Zoom に移行しています。

https://www.videocom.at/zoom-bridge

Zoom を利用したオンライン配信に課題を感じていたとき、ちょうど Adobe CC 道場のライブ配信で、旧バージョンの VideoCom – Zoom Bridge for NDI を利用している記事を見かけ、そのまま購入しました。

https://videosalon.jp/report/adobe-cc_wirecast/

この旧バージョンは、いつかの Zoom 本体のアップデートをきっかけとして手元の環境では動作しなくなってしまいました。その後、アップデートを知り、現在は VideoCom Bridge for Zoom を愛用しています。

Zoom を利用したオンライン配信の方法

Zoom を利用したオンライン配信では、一般的に次のふたつの方法が挙げられます。

  1. Zoom の標準機能を利用して Zoom の画面をそのまま YouTube Live などで配信する
  2. OBS などを利用して Zoom の画面を取り込んで YouTube Live などで配信する

Zoom の標準機能を利用して Zoom の画面をそのまま YouTube Live などで配信する

これは Zoom の公式サポートページにも記載されている、よく使われている方法です。

https://support.zoom.com/hc/ja/article?id=zm_kb&sysparm_article=KB0062296

特に難しいこともなく圧倒的に簡単な反面、画面を作り込めず、どうしても Zoom を使っているな感を拭えません。配信画面に一定のこだわりを持ちたいことから、この方法を選択することはありませんでした。

OBS などを利用して Zoom の画面を取り込んで YouTube Live などで配信する

以降 OBS の場合として説明しますが、配信画面を作り込みたい場合は、Zoom の画面を「ウィンドウキャプチャ」で取り込みます。

ほぼ Zoom の画面をそのまま、例えばイベントのロゴや発表中のタイトルなどを重ねる程度であれば、この「ウィンドウキャプチャ」はひとつで済みます。しかし、例えば発表資料と登壇者のカメラに手を加えたい場合は、発表資料用の「ウィンドウキャプチャ 1」と、登壇者のカメラ用の「ウィンドウキャプチャ 2」の用意が必要です。

下図は 2023/05/25 に開催した「ZOZO物流システム今昔物語〜モノリスからマイクロサービスへ〜」の YouTube Live アーカイブ動画の画面キャプチャです。


Ref. https://www.youtube.com/watch?v=PlvgiZgl9Jc

この場合、赤枠で囲った左側の発表資料を「ウィンドウキャプチャ 1」、青枠で囲った右側の小さい登壇者のカメラを「ウィンドウキャプチャ 2」としています。

ウィンドウキャプチャは文字通りアプリケーションウィンドウをそのままキャプチャするものです。当然 Zoom のアプリケーションウィンドウをそのままキャプチャすると、不要なエリアが含まれているので、「ウィンドウキャプチャ 1」は登壇資料を残してトリミングし、「ウィンドウキャプチャ 2」は登壇者のカメラを残してトリミングしています。

この例では 2 枚の「ウィンドウキャプチャ」で済んでいますが、これが 3 人 4 人 5 人と増えていくとトリミングも含めて少々面倒です。そこで VideoCom Bridge for Zoom の出番です。

👍 VideoCom Bridge for Zoom の何がいいのか?

冒頭で、VideoCom Bridge for Zoom は Zoom のカメラ映像や画面共有をひとつひとつ NDI として出力できる有償のソフトウェアであると説明しましたが、このソフトウェアの真髄はまさにこの「ひとつひとつ」出力できるところにあります。

VideoCom Bridge for Zoom は Zoom の 1 参加者として振る舞い、次の画面を取得できます。

  • Active Speaker (スピーカービューの画面)
  • Gallery View (ギャラリービューの画面)
  • Screen Share (画面共有の画面)
  • User (Zoom に参加しているユーザーを 1 名選択 / Pin を打つのと同義)

そして PC と回線速度に依存しますが、複数の画面を (必要に応じて音声込みで) NDI として送り込めます。NDI 化した映像は「ウィンドウキャプチャ」ではなく「映像キャプチャデバイス」で対象の NDI を選択して取り込みます。このとき、取り込まれる映像のトリミングは不要です。

発表資料と登壇者のカメラを NDI 化したい場合は、下図のように Screen Share と User (ここでは ikkou を選択している) の 2 つを用意するだけです。


Screen Share と ikkou の 2 つを 720p 取得している

特に User は Pin の差し替えが簡単にできます。Zoom の画面をウィンドウキャプチャする方法の場合、Zoom 側で Pin の付け替えが必要で、さらに複数の Pin は打てません。

また、ウィンドウキャプチャ方式の場合、カメラオン状態の人数が増減することで、キャプチャする位置が変わってしまうことがあります。複数人いる場合は表示されなくなってしまうことすらあります。しかし、User として Pin を打っておくことで、Zoom のウィンドウに表示されなくなってしまっても、映像を送り込めます。これは実際にやってみるとわかりますが、とても便利です。

😢 VideoCom Bridge for Zoom の残念なところ

VideoCom Bridge for Zoom では、各画面を 720p と 360p のいずれかで取得できます。いわゆる勉強会系の配信の場合、発表資料がメインとなり、多くの場合で登壇者のカメラは小さくなるので、発表資料を 720p で取り込み、登壇者のカメラを 360p で取り込むとパフォーマンス観点で効率的です。

しかし、現在 Zoom は 1080p 以上での画面共有が可能です。画面共有している送信側のスペックに加えて受信側のスペックにも依存しますが、VideoCom Bridge for Zoom では 1080p で打ち上げられている画面共有も 720p でしか取り込めません。

720p は横 1280px なので、1080p つまり横 1920px で YouTube Live 配信する場合、発表資料を画面いっぱいに映そうとすると少し画面が劣化することになります。実際、ZOZO Developers での YouTube Live 配信の場合は発表資料を 1600px 程度で取り込んでいるので、実は少しだけ劣化しています。

実は vMix なら VideoCom Bridge for Zoom いらず!

というわけで OBS を愛用している私は VideoCom Bridge for Zoom も併用することが多いですが、最近アップデートされた vMix であれば単体で VideoCom Bridge for Zoom 相当のことができるようになった そうです。

https://twitter.com/ken_hrd/status/1713812754321322005

おわりに

Zoom × OBS の組み合わせで VideoCom Bridge for Zoom はいいぞ! という話をしました。

用途や目的によって最適解は変わります。私も実際にソフトウェアベースの OBS ではなくハードウェアベースの VR-120HD に配信環境を寄せるケースもありました。必ずしもこの組み合わせにこだわる必要はありませんが、このケースを求めている方の参考になれば嬉しいです。


現場からは以上です!
明日の担当は @pokoyakazan san です!

株式会社ZOZO

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