SageMaker JumpStart で Whisper をホストし、Mac の音声をリアルタイムで文字起こし
はじめに
この記事は下記の内容について説明します。
- SageMaker JumpStart で Whisper をほぼワンクリックでホスティング
- PC の音声をリアルタイムで 10 秒ごとに文字起こしさせる
- Blackhole を使って、Macbook で PC システム音声の出力とマイクからの音声入力を両方文字起こしさせる方法
Whisper を SageMaker JumpStart でセルフホストする
Whisper で文字起こししたいが、外部の API を使いたくないのでセルフホストしたいときがあります。ただ、自分で設定すると依存関係の解決がかなり大変です。
色々試してみましたが、おそらく Sagemaker JumpStart で Whisper をセルフホストするのが一番簡単なのでその方法を紹介します。便利すぎてびっくりです。
Sagemaker JumpStart について
SageMaker Jumpstart は SageMaker Studio の機能の一つであり、事前トレーニング済みのモデルをワンクリックでデプロイできます。
モデルのラインアップが豊富であり、多くの有名なオープンソースのモデルが使えるようになってます。
SageMaker Studio のセットアップなどはここで省略するがこちらの記事は割と詳しくあるのでご参照ください。
Whisper をホストする
やり方は簡単。
- Jumpstart の画面で Whisper を検索する
- Whisper Large V3 を選択してデプロイボタンを押す
- 設定を確認し、デプロイボタンを押す
終わりです。
作り終わったら、左の Deployment -> Endpoints の部分で作成されたエンドポイントを確認できます。
In Service になったら使える状態です。
そこの Endpoint Name をメモっておきましょう。
ローカルデバイスの音声をリアルタイムで文字起こしさせる
ここからは、ローカルデバイスの音声をリアルタイムで文字起こしをしたいと思います。
Whipser のモデルの制限
注意点としては、Whisper はいくつか制限があります。
- 音声の長さは 1 min のみ
- 音声のサイズは 25 MB 以下
- 音声のフォーマットは .wav のみ
そのため、リアルタイムで細切れした音声を送るか、長い音声の文字起こしは 1 分ごとにする処理を自前で実装する必要があります。
私はせっかちで文字起こしの結果をすぐみたいので、リアルタイムで 10 秒ごとに推論させることにしました。
マイクからの音声のリアルタイムで文字起こしさせる
デバイスに入力した音声を 10 秒ごとにリアルタイムで SageMaker エンドポイントに送り、推論結果をターミナルに出力、終わったら文字起こし全文を txt に保存するようにしています。
また、このあと述べる、PC のシステム音声の出力とマイクの音声入力を一つにまとめてエンドポイントに送っている都合上、デバイスを指定するようにしています。
import pyaudio
import boto3
import json
from pydub import AudioSegment
from io import BytesIO
from datetime import datetime
import os
def find_device_index_and_info(audio, name):
device_count = audio.get_device_count()
for i in range(device_count):
device_info = audio.get_device_info_by_index(i)
if name in device_info['name']:
return i, device_info['maxInputChannels'], int(device_info['defaultSampleRate'])
return None, None, None
client = boto3.client('runtime.sagemaker')
audio = pyaudio.PyAudio()
device_name = "Input" # 文字起こししてほしい入力デバイスを設定する
transcript_name = input("Enter the name for the transcript: ")
device_index, CHANNELS, RATE = find_device_index_and_info(audio, device_name)
if device_index is None:
raise Exception("Audio device not found")
FORMAT = pyaudio.paInt16
CHUNK = 4096
RECORD_SECONDS = 10
ENDPOINT_NAME = "your-sagemaker-endpoint-name" # 先程作った Endpoint Name
stream = audio.open(format=FORMAT, channels=CHANNELS, rate=RATE, input=True, frames_per_buffer=CHUNK, input_device_index=device_index)
current_time = datetime.now().strftime("%Y%m%d_%H%M%S")
file_path = f"{current_time}_{transcript_name}.txt"
with open(file_path, "w") as f:
try:
print("start speaking...")
while True:
frames = [stream.read(CHUNK, exception_on_overflow=False) for _ in range(int(RATE / CHUNK * RECORD_SECONDS))]
audio_segment = AudioSegment(data=b''.join(frames), sample_width=audio.get_sample_size(FORMAT), frame_rate=RATE, channels=CHANNELS)
wav_io = BytesIO()
audio_segment.export(wav_io, format="wav")
response = client.invoke_endpoint(EndpointName=ENDPOINT_NAME, ContentType='audio/wav', Body=wav_io.getvalue())
transcription = json.loads(response['Body'].read().decode())['text']
print("Transcription:", transcription)
f.write(" ".join(transcription) + "\n")
except KeyboardInterrupt:
print("Speaking ends.")
finally:
print(f"transcription saved: {file_path}")
stream.stop_stream()
stream.close()
audio.terminate()
このコードは、指定されたオーディオ入力デバイスから音声をキャプチャし、Amazon SageMakerのエンドポイントを使用してリアルタイムで文字起こしを行うものです。
-
find_device_index_and_info
関数は、指定されたデバイス名に一致するオーディオデバイスのインデックス、最大入力チャンネル数、およびデフォルトのサンプルレートを取得します。 -
boto3
クライアントを使用してSageMakerのエンドポイントに接続し、pyaudio
を使用してオーディオストリームを設定します。 - ユーザーに文字起こしファイルの名前を入力させ、その名前でファイルを作成します。
- 指定されたデバイスからオーディオをキャプチャし、10秒ごとにSageMakerエンドポイントに送信して文字起こしを取得します。
- 取得した文字起こしをファイルに保存し、リアルタイムでコンソールに出力します。
- キーボード割り込み(Ctrl+C)で録音を停止し、ファイルに保存された文字起こしのパスを表示します。
Blackhole を使って Macbook からの音声とマイクの音声両方を文字起こしさせる
ここからは余談ですが、普通に録音すると自分のマイクの音声しか入りません。システム音声の出力もキャプチャーするためには、工夫が必要です。
オンライン会議など、マイク入力音声とシステム出力音声両方をキャプチャして束ねた状態で文字起こしさせたいときはあります。
その場合、仮想オーディオドライバーの Blackhole を使って実現可能です。
Blackhole
Blackhole は、PC からの出力音声をキャプチャーするときに使えます。OBS でシステム音声を含めて配信するときや、PC 音声付きで録画したいときには結構使われるかと思います。
今回は Blackhole を使って、システム出力音声をキャプチャーして、システム出力とマイクからの入力音声で機器セットを作り、両方の音声が束ねた状態で SageMaker Endpoint に投げます。
Blackhole のダウンロードとインストール手順は省略します。
やること
基本的には Mac の Audio MIDI 設定でオーディオ装置を設定します。
概要としては、PC の出力音声を仮想オーディオドライバーの Blackhole と通常の出力デバイス(ヘッドホンやスピーカー)に同時に送ります。Blackhole で PC の出力音声をキャプチャーし、その音声とマイクの入力音声を一つのデバイスにまとめます。
1. 複数出力装置 (Multi output device) の設定
目的は、PC の音声出力を実際利用しているデバイス(ヘッドホンやスピーカー)と Blackhole の両方に同時に送ることです。
私の場合、Output という名前で複数出力装置を設定しました。
また、文字起こしをする際には PC の出力デバイスは常に Output に設定する必要があります。これにより、システム音声が Blackhole にも送られます。
2. 仮想デバイス機器セット (Aggregated Device)の作成
目的は Blackhole(システム出力音声)とマイクの入力音声を一つのデバイスにまとめるため。
私の場合、入力と出力を Input という機器セットに設定した。
3. SageMaker Endpoint への入力
前述したコードで、実際コンピューターで設定している入力デバイスと関係なく、デバイスを Input
に設定して音声をキャプチャーして SageMaker Endpoint に入力している。
コードを実行すると、マイクからの音声とシステム出力音声(例えば Youtube で流した音声)両方がきれいに文字起こしされました。
おわりに
このように、Macbook でマイクからの入力と PC からのシステム出力音声を束ねて SageMaker JumpStart でセルフホストした Whisper で文字起こしすることができました。
Whisper の文字起こし自体の感想として、私の場合は10秒に一回の文字起こしのため、かなり限られた文脈でしか文字起こしできないので、精度がとても高いとは言えないです。
また言語は自動判別をしているので、途切れた文章だとほかの言語だと判断される場合もあります。10 秒に一回の文字起こしなので、しょうがないと思います。
ただ、文字起こしを取っておくとまた生成 AI で整形をしたり、要約することが可能なので、LLM で後処理をすることにより文字起こしの精度不足をかなりカバーできます。
10秒間無言のときは、thanks for watching
とかが出力されることも多いので、トレーニングで使われそうなデータを想像しながら眺めてました。
また、Mac 入出力両方を取るのは良いが、そのために常に出力デバイスをデフォルトのものではなく複数出力装置 (Multi output device) に指定する必要があります。
指定すると実は場合によって音量の調整が聞かなくなったり、利用している出力デバイス、例えばスピーカーやヘッドセットやイヤホンなど、変えることも結構多い場合があるので、設定がめんどくさい面もあります。
Discussion